<折原一也のCEATECレポート>超薄型テレビや有機ELなど、話題のテレビ/プロジェクターを総まくり
10月2日から幕張メッセで開催されているCEATEC2007の会場では、大画面テレビやプロジェクターといった最新の映像機器の披露の場としても活用されている。今回は会場で見つけた未発売のディスプレイ技術や技術デモを中心としたインプレッションをお届けしよう。
●ソニー有機ELディスプレイは27V型も展示
CEATEC開催前日の10月1日に発表されたソニーの有機ELテレビ「XEL-1」を多数展示してブースの主役として多数展示されていた。
11V型という小型サイズで最薄部3mmというコンパクトなサイズもさることながら、そのコントラスト比の高さは圧巻。RGB各色の色乗りがリッチで濃厚な深みある色彩で、ネオンに照らされた路上のようなカメラでも撮影が難しい低照度のシーンの映像を選んで流していることからもコントラスト100万対1に対する自信のほどがうかがえる。
同ブースには27V型の有機ELパネルも展示しており、11V型同様の高いコントラスト比の映像を楽しめた。最大でも27V型と、まだまだ有機ELテレビのサイズは小さいが、画質ポテンシャルの高さは言うまでもなくCEATEC随一のものであった。
●ソニーがLEDバックライト”トリルミナス”を再び製品化
液晶の色再現力を向上させる技術として数年前から各社展示が行われていたLEDバックライト技術。本年は高画質化を狙った液晶の参考展示がやや少なめだったという印象もあったが、2つの液晶の映像を実際に見ることができた。
一つはソニーが11月20日に発売する70V型BRAVIA「KDL-70X7000」に搭載したLEDバックライト技術”トリルミナス”だ。2004年に発売された液晶QUALIAに搭載していたものだが、新世代のものに進化し、消費電力を大幅に下げている。色空間の再現性をNTSC比125%まで向上させるこの技術により、赤色、特に従来課題だった真紅の色再現力の大幅な向上が見て取れた。
●液晶テレビではバックライト局所制御技術に注目
ビクターのブースでは、ディスプレイ関連の様々な技術展示が行われていた。なかでもLEDバックライト液晶では、NTSC比116%の色空間もさることながら、液晶とは思えないほどの黒再現力の高さが印象的だった。新開発「エリアコントロール液晶ドライバー」によって、瞬間的に、かつ局所的にバックライトの発光をコントロールできるため、黒の部分ではバックライトが点灯しない。コントラスト比100,000対1の映像の黒色の落ち込み方は、まさに「真っ黒」と言えるほどのレベルまで再現できていた。参考出品ながら、これまで指摘されていた液晶の課題を一気に解決するだけのポテンシャルを秘めた技術として注目に値する。
通常の蛍光管を使った局所バックライト制御技術は、あの音声技術の雄であるドルビーが、テレビメーカー向けのライセンス技術としてデモ展示を行っていた。バックライト制御は、従来は画面全体の平均輝度に対して行うものだったが、新技術では映像に合わせて発光するエリアまで制御できるのが特徴である。ドルビーのブースでは、同一の液晶パネルを使った比較デモが行われていたが、新技術を採用したセットでは明らかに黒浮きが抑えられていた。採用が進めば液晶のコントラストも格段に向上するはずだ。
●ビクターが180Hz液晶駆動技術を搭載
また、ビクターのブースでは倍速120Hz駆動液晶の進化版にあたる3倍速180Hz液晶の展示デモも行っていた。説明員によると180Hzで動くパネルはまだ少ないとのこと。使用しているパネルはXGAで、同社が独自に手を加えている。
3倍速化による効果は更なる残像の軽減で、デモに使用していた映像も効果が明確に伝わってくる動きの激しいものだった。更なる進化の形として期待したい。
このほかビクターのブースでは、来年春モデルに搭載される予定の映像エンジン、「新GENESSA」の技術デモを実施していた。詳細は写真の説明に譲るが、同社技術の優位性をあらためて確認することができた。搭載モデルの登場が今から楽しみだ。
●ビクターの4Kプロジェクターシステムは圧巻
ビクターのブースでは、1.27インチD-ILAデバイスを使った4K2K業務用プロジェクターのデモも実施されていた。輝度3,500ルーメン、ランプに825Wキセノンランプを使いコントラスト比10,000対1の性能を実現したもので、CGのシミュレーターなどの用途などが想定されている。
会場内に設営された、4Kで撮影した映像を上映するミニシアターでは、画面の隅に小さく映った人物の一人一人がくっきりと映る、超高精細な映像を見ることができ、映画館以上のクオリティを実現している。4Kプロジェクターはすぐに民生用機が登場するようなものではないだろうが、ロケ地の沖縄の空気感まで伝わってくるような臨場体感シアターとして楽しめるはずだ。
●異色? 日立のハイブリッド液晶モニター
今回CEATECで見た展示で、最も異色に感じたのが、日立のブースにあった「高コントラストハイブリッドモニター」だ。説明員によると、これは液晶のバックライト光自体にリアプロの映像をそのまま使っているというもので、液晶モニターの一種。イメージとしてはリアプロジェクションテレビと液晶のハイブリッドと言えば伝わりやすいだろう。
実際の映像は、暗部から明部まで、ダイナミックなコントラスト感が再現できている。バックライトの元の映像に映像が乗っていて、更に通常の液晶と同じ階調処理を行うため、色を二重にコントロールでき、コントラスト比を上げられるという説明は納得のいくものだ。すぐに実用化という技術ではないが、非常にユニークな展示なのでぜひ体験してみて欲しい。
●次世代のテレビと現世代の間がどう近づくかに期待
今回のCEATECでのディスプレイ関連の展示では、ソニーによる有機ELテレビの展示が、次世代ディスプレイデバイス初の製品化として、最も注目を集めていたことは間違いない。しかしながら、今年は特に液晶テレビで様々な新技術の展示が行われ、特に解像度に続く争点となる色再現性や、コントラスト比の面での性能改善が著しい。また、日立、ビクター、シャープが展示した薄型液晶パネルも、壁掛けテレビなど新たな可能性を感じさせる。
画質の向上という点では有機ELテレビにも期待したいところだが、実際には数年後も液晶・プラズマが主流でありつづけることを予想させる展示内容と感じた。
(折原一也)
折原一也 プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。
●ソニー有機ELディスプレイは27V型も展示
CEATEC開催前日の10月1日に発表されたソニーの有機ELテレビ「XEL-1」を多数展示してブースの主役として多数展示されていた。
11V型という小型サイズで最薄部3mmというコンパクトなサイズもさることながら、そのコントラスト比の高さは圧巻。RGB各色の色乗りがリッチで濃厚な深みある色彩で、ネオンに照らされた路上のようなカメラでも撮影が難しい低照度のシーンの映像を選んで流していることからもコントラスト100万対1に対する自信のほどがうかがえる。
同ブースには27V型の有機ELパネルも展示しており、11V型同様の高いコントラスト比の映像を楽しめた。最大でも27V型と、まだまだ有機ELテレビのサイズは小さいが、画質ポテンシャルの高さは言うまでもなくCEATEC随一のものであった。
●ソニーがLEDバックライト”トリルミナス”を再び製品化
液晶の色再現力を向上させる技術として数年前から各社展示が行われていたLEDバックライト技術。本年は高画質化を狙った液晶の参考展示がやや少なめだったという印象もあったが、2つの液晶の映像を実際に見ることができた。
一つはソニーが11月20日に発売する70V型BRAVIA「KDL-70X7000」に搭載したLEDバックライト技術”トリルミナス”だ。2004年に発売された液晶QUALIAに搭載していたものだが、新世代のものに進化し、消費電力を大幅に下げている。色空間の再現性をNTSC比125%まで向上させるこの技術により、赤色、特に従来課題だった真紅の色再現力の大幅な向上が見て取れた。
●液晶テレビではバックライト局所制御技術に注目
ビクターのブースでは、ディスプレイ関連の様々な技術展示が行われていた。なかでもLEDバックライト液晶では、NTSC比116%の色空間もさることながら、液晶とは思えないほどの黒再現力の高さが印象的だった。新開発「エリアコントロール液晶ドライバー」によって、瞬間的に、かつ局所的にバックライトの発光をコントロールできるため、黒の部分ではバックライトが点灯しない。コントラスト比100,000対1の映像の黒色の落ち込み方は、まさに「真っ黒」と言えるほどのレベルまで再現できていた。参考出品ながら、これまで指摘されていた液晶の課題を一気に解決するだけのポテンシャルを秘めた技術として注目に値する。
通常の蛍光管を使った局所バックライト制御技術は、あの音声技術の雄であるドルビーが、テレビメーカー向けのライセンス技術としてデモ展示を行っていた。バックライト制御は、従来は画面全体の平均輝度に対して行うものだったが、新技術では映像に合わせて発光するエリアまで制御できるのが特徴である。ドルビーのブースでは、同一の液晶パネルを使った比較デモが行われていたが、新技術を採用したセットでは明らかに黒浮きが抑えられていた。採用が進めば液晶のコントラストも格段に向上するはずだ。
●ビクターが180Hz液晶駆動技術を搭載
また、ビクターのブースでは倍速120Hz駆動液晶の進化版にあたる3倍速180Hz液晶の展示デモも行っていた。説明員によると180Hzで動くパネルはまだ少ないとのこと。使用しているパネルはXGAで、同社が独自に手を加えている。
3倍速化による効果は更なる残像の軽減で、デモに使用していた映像も効果が明確に伝わってくる動きの激しいものだった。更なる進化の形として期待したい。
このほかビクターのブースでは、来年春モデルに搭載される予定の映像エンジン、「新GENESSA」の技術デモを実施していた。詳細は写真の説明に譲るが、同社技術の優位性をあらためて確認することができた。搭載モデルの登場が今から楽しみだ。
●ビクターの4Kプロジェクターシステムは圧巻
ビクターのブースでは、1.27インチD-ILAデバイスを使った4K2K業務用プロジェクターのデモも実施されていた。輝度3,500ルーメン、ランプに825Wキセノンランプを使いコントラスト比10,000対1の性能を実現したもので、CGのシミュレーターなどの用途などが想定されている。
会場内に設営された、4Kで撮影した映像を上映するミニシアターでは、画面の隅に小さく映った人物の一人一人がくっきりと映る、超高精細な映像を見ることができ、映画館以上のクオリティを実現している。4Kプロジェクターはすぐに民生用機が登場するようなものではないだろうが、ロケ地の沖縄の空気感まで伝わってくるような臨場体感シアターとして楽しめるはずだ。
●異色? 日立のハイブリッド液晶モニター
今回CEATECで見た展示で、最も異色に感じたのが、日立のブースにあった「高コントラストハイブリッドモニター」だ。説明員によると、これは液晶のバックライト光自体にリアプロの映像をそのまま使っているというもので、液晶モニターの一種。イメージとしてはリアプロジェクションテレビと液晶のハイブリッドと言えば伝わりやすいだろう。
実際の映像は、暗部から明部まで、ダイナミックなコントラスト感が再現できている。バックライトの元の映像に映像が乗っていて、更に通常の液晶と同じ階調処理を行うため、色を二重にコントロールでき、コントラスト比を上げられるという説明は納得のいくものだ。すぐに実用化という技術ではないが、非常にユニークな展示なのでぜひ体験してみて欲しい。
●次世代のテレビと現世代の間がどう近づくかに期待
今回のCEATECでのディスプレイ関連の展示では、ソニーによる有機ELテレビの展示が、次世代ディスプレイデバイス初の製品化として、最も注目を集めていたことは間違いない。しかしながら、今年は特に液晶テレビで様々な新技術の展示が行われ、特に解像度に続く争点となる色再現性や、コントラスト比の面での性能改善が著しい。また、日立、ビクター、シャープが展示した薄型液晶パネルも、壁掛けテレビなど新たな可能性を感じさせる。
画質の向上という点では有機ELテレビにも期待したいところだが、実際には数年後も液晶・プラズマが主流でありつづけることを予想させる展示内容と感じた。
(折原一也)
折原一也 プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。