「東京ビデオフェスティバル2008」受賞式が開催 − 3作品が大賞に
第30回目となる今回は、世界53の国と地域から2,010作品(国内750作品、海外1,260作品)の応募があった。応募者の年齢は20代の若者を中心に9歳から91歳までと幅広い。本年は、昨年と同様3作品が大賞に選ばれた。
<ビデオ大賞>
『いまどきの21歳の主張』(黒川 優生・21歳・学生・大阪府)
『The Last chapter(最終章)』(Makiko Ishihara・59歳・ビデオ作家・カナダ)
<日本ビクター大賞>
『学びの場が消えてゆく〜夜間高校の教室から』(斎藤雅之・42歳・非常勤講師・神奈川県)
『いまどきの21歳の主張』は、女子大生の作者が生活空間での出来事を日記風に綴ったビデオで、「世の中プラスマイナスゼロ」という21歳の率直な心情と主張をテンポの良い映像で表現した私的ドキュメント作品。
『The Last chapter(最終章)』は、厳格だった父と作者との長い断絶、そして孫娘との交流をきっかけに絆を取り戻していく家族の肖像を描いた重厚なノンフィクション作品。
『学びの場が消えてゆく〜夜間高校の教室から』は、次々と統廃合が行われる夜間高校の実情にスポットを当て、実際に夜間高校に通っている生徒やその親、教師の言葉から、現在の日本の教育が抱える問題点を描き出したドキュメンタリー作品。
審査員を務める映画作家の大林宣彦氏は「現在、ビデオカメラは特別な人しか持てない特別なものではなくなった。そのため以前のように入念にカットやストーリーを考えるのではなく、見たものをすぐ撮る、というスタイルの作品が増えたように感じる。これは時代的な感覚とも言えるものだろう」とTVF2008の応募作を分析。「TVFは“コンテスト”ではなく“フェスティバル”。ナンバーワンを決めるのではなく、オンリーワンの作品を選ぶことを目的としてきた。表現することは希望を生むこと。自分の思いを表現してかたちにして欲しい」と語った。
同じく審査員で、ビデオ作家の小林はくどう氏は「大賞を受賞した3作はそれぞれ特色が分かれているが、共通しているのは編集の上手さ。特に『いまどきの〜』は話し言葉で作り上げ、場面や視点がどんどん変わるのが面白いし、『最終章』はアニメーションや父親が撮影した8mmビデオなどの映像を随所に挿入しているそのセンスが良い」とし、「TVFは国籍や作品のジャンル、伝えたいメッセージも自由な、まさしくボーダーレスのフェスティバル。“自分だったらどう表現したいか?”ということを考え、作品を製作し、次回のフェスティバルに是非応募して欲しいと思う」と述べた。
(Phile-web編集部)