ケースイが最新“REGZA”の進化に迫る − 録画機能は次世代のステージに到達した
東芝から“REGZAシリーズ”の春夏最新モデルが一挙に発表された。同社も北京五輪を前に、薄型テレビの需要が増すこの時期を商機と捉え、いままでのラインアップを一新してきた。
08年春夏モデルの特徴は、エントリーモデルの“CV500シリーズ”を除く、全てのシリーズで録画機能を備えている点だ。従来のハイエンドモデルであった“Zシリーズ”は、本体内にHDDを備えないので、単体では録画ができなかったが、外部にUSB HDDやLAN HDDを接続することで、あたかもHDD内蔵テレビのように番組の録画・再生が可能だった。東芝の調べによれば、“Z3500シリーズ”を購入したユーザーの9割以上が、HDDを接続して録画機能を利用しているという。
その結果を受けて、今回のラインアップでは、Zシリーズの上位モデルとして300GBのHDDを内蔵した“ZH500シリーズ”を用意。HDD内蔵テレビを旗艦とすることで“録画できるテレビ”としてのREGZAを全面的にアピールする。各シリーズの詳細はPhile-webのニュース記事を参照していただくとして、ここではラインナップの中から筆者が注目するモデルと、その機能を紹介したいと思う。
■録画機能付きテレビのメリットが最大限に活かされた仕様を盛り込んできた
これまで録画機能付きのREGZAシリーズを長期間テストしてきたが、その結果筆者は「REGZAは録画好きが真っ先に選択肢に加えるであろうテレビ」という感想を持っている。そこには筆者としての要望や願望も多々あるのだが、テレビが備える録画機能としては群を抜いており、ライバルがいないという実感だ。
テレビ番組の録画はレコーダーなどの外部機器で録画するより、テレビで録画した方が手軽さはより高い。とにかくAV機器が苦手な人ほど、録画機能付きテレビの恩恵に預かれると言えるだろう。これについては筆者が担当する連載ページでお話ししてきたので、詳細についてはそちらを参考にしていただきたい。今回は録画機能付きテレビのメリットのみ箇条書きにする。
・一つの番組表で録画予約が可能
・入力切替えを行わずに録画・再生が行える
・リモコンが一つで操作できる
・録画番組を一元管理しやすい
上記はいわゆるHDMIリンク機能などでも対応できるが、HDMIリンク機能には「入力切替え」という大きな敷居が存在する。この場合はレコーダーとテレビのどちらのチューナーで見ているのかがわからなくなり、操作に迷うことがあるが、録画機能を内蔵するテレビならその迷いはない。またHDMIリンク機能付きテレビでレコーダーを操作しようとすると、リモコンの操作が複雑になる傾向があるように筆者は感じている。
REGZAの場合、録画番組の再生操作はとてもスムーズだ。HDMIリンク機能の場合は録画機器を選択し、そこから録画リストを表示して、再生したい番組を選ぶのだが、最新のREGZAではそのような手間を踏まなくても、リモコンの再生ボタンを押せば、直近の録画番組、または再生途中番組の再生がスタートし、さらにスキップボタンでタイトルをスキップできる。この操作感はまるでテレビのチャンネルをザッピングするようで、実に快適だ。停止ボタンやチャンネル切替えを行えば、すぐにテレビ放送にも戻る。この操作感はリンク機能付きテレビでは体感できない。
有料放送を利用する際も、録画機能付きテレビの方が使いやすい。デジタルWOWOWやe2 by スカパー!などもテレビのリモコン一つで視聴・録画ができる。デジタル放送の有料放送はB-CASカードで管理するので、通常は録画できるレコーダー単位で契約する人が多い。これだとテレビと録画機器との入力切り替えを苦手とする人は、有料放送の視聴チャンスがかなり減ってしまう。録画機能付テレビなら、そのような心配はいらない。
ただ、かつてのREGZAシリーズにも弱点はあった。内蔵HDDや外付けHDDに番組録画をする際に、ローカル暗号をかけてコピーガードをしていたため、録画したレグザ以外の機器では、録画番組が見られなかった。これではHDDに録画番組を録り貯めても、本体を買い代えたら見られなくなってしまう。ところが、新型REGZAではこれに対して一つの解決策を講じてきた。ZH500/ZV500/RH500シリーズでは、HDDに録画した番組はアナログ入力端子を備えるDVDレコーダー等にダビングできる「アナログダビング」機能を備えたのだ。出力はアナログのみなのでハイビジョンの美しさは損なわれるが、これまでのようにHDDに保存した番組が“死蔵”されることはなくなった。
とはいえ、たいへん残念なことに東芝はHD DVDレコーダーの生産を終了してしまった。DVDにハイビジョン記録をするHD Recもあるが、長時間の高画質録画は望めない。筆者は東芝に限らず、テレビでハイビジョン録画を行い、それを次世代光ディスクへ手軽にダビングして保存できる製品を待ち望んでいる。今回のREGZAではかなわなかったが、次のモデルに期待をつなぐことはできたようだ。それはZH500/ZV500シリーズが搭載したサーバーダビング機能だ。
サーバーダビング機能はI-Oデータから発表されたDTCP-IP対応サーバーなどに、LAN経由で録画番組をダビングできる機能だ。実はDTCP-IP対応サーバーにダビングした時点で、ローカル暗号ではなくDTCP-IP対応での暗号管理になるので、仮にDTCP-IPのダビング機能を備えたBDレコーダーが発売されれば、レグザに録画した番組を他社のレコーダーを使ってBDに保存することも夢ではなくなりそうなのだ。そうなればBDへの記録は必ずしもレコーダーからでなくても良いかもしれない。DTCP-IP対応サーバーに直結して記録できるBDレコーダーができれば、ハイビジョン番組の次世代光ディスク記録は実現できそうだ。
ただ、筆者が妄想する方法では、手がかかりすぎるのも事実だ。本体がシンプルなのに、光ディスクに残すためにあれやこれやと買い足したり、設定をしなければならないのだろうか?もしソニーや三菱電機など録画機能に優れるレコーダーをラインアップするメーカーが録画機能付きテレビを発売し、「録画機能付きテレビ→BDレコーダー」の直結機能を備えてしまえば、この部分の優位性は薄くなりそうだ。今後の新製品動向は、このあたりをチェックしたいと思っている。
■注目すべきZHシリーズの「ワンセグ録画機能」
ラインアップ中でやはり気になるのは、最上位モデルの2機種である「52ZH500」と「46ZH500」だ。とくにこの2機種のみが搭載してきた「ワンセグ録画機能」には注目したい。この機能はREGZA本体で番組録画をした際に、同時にワンセグ番組も録画して対応する携帯電話などの機器に転送して再生できる機能だ。
筆者はかねがね録画機器に要求される次世代の機能として「モバイル機器との連携」が重要だと考えていた。すでにソニーは2005年に発売したDVDレコーダー「RDR-AX75」で、SCEのゲーム機「PSP」への録画ファイル転送を「おでかけ・スゴ録」機能として実現している。現在ではBDレコーダー「BDZ-X90」に「おでかけ・おかえり転送」機能として、その仕様は引き継がれているが、転送対象がPSP限定だったので、この機能の認知度はいまひとつになっている。先頃発表されたばかりの最新モデル「BDZ-A70」では“ウォークマン”や携帯電話への転送機能も追加してきているので、今後どれほど注目が集まるのかについても興味深いところだ。
東芝は録画番組をワンセグ対応機に転送できるようにしたことで、携帯音楽プレーヤーの“gigabeat”だけでなく携帯電話でも使えるようになった。ダビング10が運用されるようになると、この手の機能はレコーダーなど多くの視聴機器で楽しめるようになるはずだ。
この「録画番組持ち出し機能」をもっとも便利に活用できるのはレコーダーよりも録画機能付きテレビだと筆者は考える。テレビに録画した番組を携帯マルチメディアプレーヤー、携帯電話、パソコン、DVDやBDなどの光ディスクレコーダーなど、いろんな機器にディストリビュートできる。テレビはAVライフの中心における存在感をさらに増してくるはずだ。それだけでなく番組表から直感的に録画できる快適さも備えている。録画番組の管理を一元化するなら、録画機能付きテレビのメリットは計り知れないものになるだろう。
REGZAシリーズはこれまで、テレビ放送を積極的に楽しもうとするユニークな機能を次々と搭載してきた。今回紹介した録画機能以外にも「おまかせドンピシャ高画質」、「ドルビーボリューム」など新しい提案をしている。薄型テレビの高画質化はもちろん大切だが、それは各社も同じように取り組んでいることだ。REGZAは高画質化に心を砕きつつも、テレビを中心としたライフスタイルの提案も積極的に行っている。価格競争が激しくなるにつれ、こういった提案ができるメーカーが減りつつあるなか、新型REGZAが備えた機能には、大きな魅力を感じる。詳細なレビューについては今後あらためてご紹介して行いたいと考えている。
(レポート:鈴木桂水)
筆者プロフィール
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら
08年春夏モデルの特徴は、エントリーモデルの“CV500シリーズ”を除く、全てのシリーズで録画機能を備えている点だ。従来のハイエンドモデルであった“Zシリーズ”は、本体内にHDDを備えないので、単体では録画ができなかったが、外部にUSB HDDやLAN HDDを接続することで、あたかもHDD内蔵テレビのように番組の録画・再生が可能だった。東芝の調べによれば、“Z3500シリーズ”を購入したユーザーの9割以上が、HDDを接続して録画機能を利用しているという。
その結果を受けて、今回のラインアップでは、Zシリーズの上位モデルとして300GBのHDDを内蔵した“ZH500シリーズ”を用意。HDD内蔵テレビを旗艦とすることで“録画できるテレビ”としてのREGZAを全面的にアピールする。各シリーズの詳細はPhile-webのニュース記事を参照していただくとして、ここではラインナップの中から筆者が注目するモデルと、その機能を紹介したいと思う。
■録画機能付きテレビのメリットが最大限に活かされた仕様を盛り込んできた
これまで録画機能付きのREGZAシリーズを長期間テストしてきたが、その結果筆者は「REGZAは録画好きが真っ先に選択肢に加えるであろうテレビ」という感想を持っている。そこには筆者としての要望や願望も多々あるのだが、テレビが備える録画機能としては群を抜いており、ライバルがいないという実感だ。
テレビ番組の録画はレコーダーなどの外部機器で録画するより、テレビで録画した方が手軽さはより高い。とにかくAV機器が苦手な人ほど、録画機能付きテレビの恩恵に預かれると言えるだろう。これについては筆者が担当する連載ページでお話ししてきたので、詳細についてはそちらを参考にしていただきたい。今回は録画機能付きテレビのメリットのみ箇条書きにする。
・一つの番組表で録画予約が可能
・入力切替えを行わずに録画・再生が行える
・リモコンが一つで操作できる
・録画番組を一元管理しやすい
上記はいわゆるHDMIリンク機能などでも対応できるが、HDMIリンク機能には「入力切替え」という大きな敷居が存在する。この場合はレコーダーとテレビのどちらのチューナーで見ているのかがわからなくなり、操作に迷うことがあるが、録画機能を内蔵するテレビならその迷いはない。またHDMIリンク機能付きテレビでレコーダーを操作しようとすると、リモコンの操作が複雑になる傾向があるように筆者は感じている。
REGZAの場合、録画番組の再生操作はとてもスムーズだ。HDMIリンク機能の場合は録画機器を選択し、そこから録画リストを表示して、再生したい番組を選ぶのだが、最新のREGZAではそのような手間を踏まなくても、リモコンの再生ボタンを押せば、直近の録画番組、または再生途中番組の再生がスタートし、さらにスキップボタンでタイトルをスキップできる。この操作感はまるでテレビのチャンネルをザッピングするようで、実に快適だ。停止ボタンやチャンネル切替えを行えば、すぐにテレビ放送にも戻る。この操作感はリンク機能付きテレビでは体感できない。
有料放送を利用する際も、録画機能付きテレビの方が使いやすい。デジタルWOWOWやe2 by スカパー!などもテレビのリモコン一つで視聴・録画ができる。デジタル放送の有料放送はB-CASカードで管理するので、通常は録画できるレコーダー単位で契約する人が多い。これだとテレビと録画機器との入力切り替えを苦手とする人は、有料放送の視聴チャンスがかなり減ってしまう。録画機能付テレビなら、そのような心配はいらない。
ただ、かつてのREGZAシリーズにも弱点はあった。内蔵HDDや外付けHDDに番組録画をする際に、ローカル暗号をかけてコピーガードをしていたため、録画したレグザ以外の機器では、録画番組が見られなかった。これではHDDに録画番組を録り貯めても、本体を買い代えたら見られなくなってしまう。ところが、新型REGZAではこれに対して一つの解決策を講じてきた。ZH500/ZV500/RH500シリーズでは、HDDに録画した番組はアナログ入力端子を備えるDVDレコーダー等にダビングできる「アナログダビング」機能を備えたのだ。出力はアナログのみなのでハイビジョンの美しさは損なわれるが、これまでのようにHDDに保存した番組が“死蔵”されることはなくなった。
とはいえ、たいへん残念なことに東芝はHD DVDレコーダーの生産を終了してしまった。DVDにハイビジョン記録をするHD Recもあるが、長時間の高画質録画は望めない。筆者は東芝に限らず、テレビでハイビジョン録画を行い、それを次世代光ディスクへ手軽にダビングして保存できる製品を待ち望んでいる。今回のREGZAではかなわなかったが、次のモデルに期待をつなぐことはできたようだ。それはZH500/ZV500シリーズが搭載したサーバーダビング機能だ。
サーバーダビング機能はI-Oデータから発表されたDTCP-IP対応サーバーなどに、LAN経由で録画番組をダビングできる機能だ。実はDTCP-IP対応サーバーにダビングした時点で、ローカル暗号ではなくDTCP-IP対応での暗号管理になるので、仮にDTCP-IPのダビング機能を備えたBDレコーダーが発売されれば、レグザに録画した番組を他社のレコーダーを使ってBDに保存することも夢ではなくなりそうなのだ。そうなればBDへの記録は必ずしもレコーダーからでなくても良いかもしれない。DTCP-IP対応サーバーに直結して記録できるBDレコーダーができれば、ハイビジョン番組の次世代光ディスク記録は実現できそうだ。
ただ、筆者が妄想する方法では、手がかかりすぎるのも事実だ。本体がシンプルなのに、光ディスクに残すためにあれやこれやと買い足したり、設定をしなければならないのだろうか?もしソニーや三菱電機など録画機能に優れるレコーダーをラインアップするメーカーが録画機能付きテレビを発売し、「録画機能付きテレビ→BDレコーダー」の直結機能を備えてしまえば、この部分の優位性は薄くなりそうだ。今後の新製品動向は、このあたりをチェックしたいと思っている。
■注目すべきZHシリーズの「ワンセグ録画機能」
ラインアップ中でやはり気になるのは、最上位モデルの2機種である「52ZH500」と「46ZH500」だ。とくにこの2機種のみが搭載してきた「ワンセグ録画機能」には注目したい。この機能はREGZA本体で番組録画をした際に、同時にワンセグ番組も録画して対応する携帯電話などの機器に転送して再生できる機能だ。
筆者はかねがね録画機器に要求される次世代の機能として「モバイル機器との連携」が重要だと考えていた。すでにソニーは2005年に発売したDVDレコーダー「RDR-AX75」で、SCEのゲーム機「PSP」への録画ファイル転送を「おでかけ・スゴ録」機能として実現している。現在ではBDレコーダー「BDZ-X90」に「おでかけ・おかえり転送」機能として、その仕様は引き継がれているが、転送対象がPSP限定だったので、この機能の認知度はいまひとつになっている。先頃発表されたばかりの最新モデル「BDZ-A70」では“ウォークマン”や携帯電話への転送機能も追加してきているので、今後どれほど注目が集まるのかについても興味深いところだ。
東芝は録画番組をワンセグ対応機に転送できるようにしたことで、携帯音楽プレーヤーの“gigabeat”だけでなく携帯電話でも使えるようになった。ダビング10が運用されるようになると、この手の機能はレコーダーなど多くの視聴機器で楽しめるようになるはずだ。
この「録画番組持ち出し機能」をもっとも便利に活用できるのはレコーダーよりも録画機能付きテレビだと筆者は考える。テレビに録画した番組を携帯マルチメディアプレーヤー、携帯電話、パソコン、DVDやBDなどの光ディスクレコーダーなど、いろんな機器にディストリビュートできる。テレビはAVライフの中心における存在感をさらに増してくるはずだ。それだけでなく番組表から直感的に録画できる快適さも備えている。録画番組の管理を一元化するなら、録画機能付きテレビのメリットは計り知れないものになるだろう。
REGZAシリーズはこれまで、テレビ放送を積極的に楽しもうとするユニークな機能を次々と搭載してきた。今回紹介した録画機能以外にも「おまかせドンピシャ高画質」、「ドルビーボリューム」など新しい提案をしている。薄型テレビの高画質化はもちろん大切だが、それは各社も同じように取り組んでいることだ。REGZAは高画質化に心を砕きつつも、テレビを中心としたライフスタイルの提案も積極的に行っている。価格競争が激しくなるにつれ、こういった提案ができるメーカーが減りつつあるなか、新型REGZAが備えた機能には、大きな魅力を感じる。詳細なレビューについては今後あらためてご紹介して行いたいと考えている。
(レポート:鈴木桂水)
筆者プロフィール
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら