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技研公開でも展示を予定

NHK、地デジの大容量伝送技術や電波テレビカメラ用新技術を発表

公開日 2010/05/24 19:51 ファイル・ウェブ編集部
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NHKはスーパーハイビジョンの地上波放送の実現に関連した大容量伝送技術や、高周波数電波を利用した撮影技術などを発表した。

地上波による大容量伝送の技術は、超多値OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)技術と、偏波MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術を用いて実現した。現在地上波による放送は、1チャンネル分の帯域で1番組を送るのに対し、この技術では同時に4chのハイビジョン伝送を可能にした。

超多値OFDM技術とは、OFDM信号のベースになる各キャリアシンボルの信号点数を増やして、より多くの情報を伝送する技術。現行の地上デジタル放送方式であるISDB-TのOFDM信号では、最大64個の信号点を用いて一度に6ビットの情報を伝送するのに対し、今回開発された新技術では最大1024個の信号点を用いた10ビット伝送が可能になる。

一方の偏波MIMO技術は、同一チャンネルに水平偏波と垂直偏波の両方を使い、異なる情報を同時伝送するもの。現行地上デジタル放送では混信を避けるため、水平、あるいは垂直偏波のいずれか一方だけを使って放送しているが、2つの電波を同時に使用することで、伝送できる情報量を2倍に増やすことが可能になる。

今回NHKが行った伝送実験では、試作装置を使って異なる情報で変調された2つの超多値OFDM信号を、それぞれ水平偏波と垂直偏波で送信し、それぞれに専用のアンテナで同時に受信。いずれも偏波で受信した信号は、互いに他方の偏波の信号が混ざった状態になっているが、2つの信号を精度良く分離し、大容量の情報が正しく復調できることが確認されたという。

電波テレビカメラ用のミリ波帯大型リフレクトアレーアンテナも開発した。電波テレビカメラは、煙や霧の向こうの様子など通常のテレビカメラでは撮影できない被写体をミリ波を利用して撮影するカメラで、災害報道などでの活用が期待されている。被写体に向けて60GHz帯のミリ波を放射し、受信アンテナのビームを上下左右に高速走査しながら反射波を受信する。その反射波の伝播遅延時間を解析して奥行き方向の距離情報取得。被写体以外の遮蔽物や背景からの反射波を消去し、画像を得る仕組みとなっている。

被写体を撮影するためには、電波の受信方向(アンテナビーム)を変えられる受信アンテナが必要となるが、これまでの試作機ではアンテナの向きを機械的に動かしてアンテナビームを変えていたため撮影に時間がかかり、動く被写体を撮影することができなかった。今回は受信アンテナとして、電子的にビーム走査が可能なリフレクトアレーアンテナが新開発された。このリフレクトアレーアンテナでは、多数の反射素子の特性を個々に制御することで、機械的にアンテナを動かさずにアンテナビームを高速に制御することができる。60GHz帯のミリ波という高周波数帯で57cm×57cmの大型リフレクトアレーアンテナを開発した事例は今回が初めてだという。

NHKでは上記の2つの技術を、5月27日から一般公開が始まるNHK放送技術研究所で展示する予定だ。

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