映画ファン待望の作品が勢揃い
【飯塚克味のコレクター魂2011:vol.3】ホラーの名作を次々と高画質化 − イギリスBDの勢いが止まらない!
ブルーレイ時代になって喜ばしいことのひとつに、イギリスやフランスなどのPAL圏のソフトを抵抗なく買えるようになったことがある。フレーム数が異なるPALでは1秒25フレームとなり、NTSCの日本のテレビ方式では、どうしても早回しになってしまい、リージョンフリープレーヤーで見ることはできても、見たいという気になれなかった。そうした問題がブルーレイでは見事に解消され、現在では各国のブルーレイソフトを楽しめるようになったのだから、映画ファンには至福の時代が到来したと言えるだろう。(もちろん、字幕など言語の障壁は残っているのだが)
2010年、個人的に注目したのがイギリス版のブルーレイソフトの数々だ。基本的に海外版は北米版を中心に購入しているのだが、どうしても見逃すことのできないソフトの発売がイギリスで続いている。代表的なメーカーのひとつにARROW FILMSという会社がある。VHS時代を思わせる画質の荒れたロゴが印象的なのだが、出すソフトのクオリティは全くの別物。BD時代を実感させる、ハイクオリティなものなのだが、セレクトする映画がホラーファンにはたまらないものばかりで、いくらイギリスでも果たして商売になるのかと心配してしまうほど、カルト色の強いものとなっている。
まず春先に驚かされたのがジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』と『死霊のえじき』だった。スゴイのが『死霊のえじき』で、ジャケットはリバーシブル仕様で、日本公開時のデザインも含まれている。映像特典も豊富な上に、ポスターとコミックも同梱されている。コミックの内容は、劇中、知性を身に付けるゾンビ、バブの生前の姿を描いた内容で、映画を繰り返し見ているファンなら、唸らずにいられないものとなっている。その他には単純な仕様だった日本版とは打って変わって豪華版となったダリオ・アルジェント監督の『インフェルノ』やイタリアンホラーの巨匠マリオ・バーバ監督の『血みどろの入り江』にもブックレットや膨大な特典が満載されている。もちろん画質&音質のクオリティは保証付きだ。
そんな中、筆者が最も心を揺り動かされたのは、67年製作の『世にも怪奇な物語』のブルーレイだった。映画ファンにとってはエドガー・アラン・ポー原作、ロジェ・バディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニという映画史の頂点に君臨した三大巨匠が手掛けたオムニバスホラーとして記憶されているが、これが当時の雰囲気も残しつつ、非常に美麗な画質に大変身。メニューデザインのセンスも抜群で、ポップアート風にコラージュされた主演俳優3人(ジェーン・フォンダ、アラン・ドロン、テレンス・スタンプ)の顔が徐々に写真に変わっていくセンスには完全に魅了されてしまった。ジャケットはリバーシブル仕様になっていて、オリジナルの横長ポスターに、どこで見つけてきたのか日本初公開時のポスターデザインまでが使われている。この日本版デザインが実にオシャレでムード満点。ブックレットは全60ページ。フェリーニのイラストや、全米配給したAIPのロビーカードなども見ることができる。音声面も充実。英語(第1話)、フランス語(第2話)、イタリア語(第3話)のオリジナル音声のほか、全話英語版、フランス語版(これは別撮りした本編をSD画質で丸ごと収録)という至れり尽くせりぶり。特典は予告編のほか、ヴィンセント・プライスがポーの詩を朗読するアメリカ版のOPとエンディングも収録し、もう涙もの。このブルーレイを作った担当者の熱意が伝わってきて、日本語がないことなんて、全く気になりません。因みに現在リリース中の国内版DVDはHDマスターではあるものの、吹替えもなく、特典は予告編だけという実に寂しい仕様。この映画がお気に入りであれば見逃すことは絶対できない。
その他のメーカーでも『血を吸うカメラ』や黒沢清監督大絶賛の『回転』、オリバー・リード主演の日本未公開作『PARANOIAC!』、邦画の『子連れ狼』を再編集した『ショーグン・アサシン』など、うれしすぎるラインナップに仰天させ続けられる。年末には深作欣二監督の『バトル・ロワイヤル』豪華版も登場。劇場公開版、ディレクターズ・カット版、特典ディスクの3枚組にコミック、ブックレット、ロビーカードなど日本版では想像できない仕様に、イギリスメーカーの映画愛を強く感じた。2011年も目が離せそうにない!
2010年、個人的に注目したのがイギリス版のブルーレイソフトの数々だ。基本的に海外版は北米版を中心に購入しているのだが、どうしても見逃すことのできないソフトの発売がイギリスで続いている。代表的なメーカーのひとつにARROW FILMSという会社がある。VHS時代を思わせる画質の荒れたロゴが印象的なのだが、出すソフトのクオリティは全くの別物。BD時代を実感させる、ハイクオリティなものなのだが、セレクトする映画がホラーファンにはたまらないものばかりで、いくらイギリスでも果たして商売になるのかと心配してしまうほど、カルト色の強いものとなっている。