加藤訓子さんらもゲスト出演
富士通テン、ECLISPE TD「新5シリーズ」の説明会を開催
富士通テンは23日、ECLISPE TDが2月上旬から発売する“新5シリーズ”「TD510zMK2/TD510MK2/TD508MK3」(関連ニュース)の媒体向け説明会を開催した。
説明会は、都内の小ホールを貸し切って行われ、同社副社長の小倉通孝氏らが新製品について紹介したほか、新たにECLISPE TDシリーズのエンドーサーとなる音楽エンジニアの深田晃氏、またECLIPSE TDシリーズをライブなどに活用しているパーカッショニストの加藤訓子さんがゲストとして出席。加藤さんのライブ演奏も行われた。
説明会の冒頭、挨拶した富士通テン副社長の小倉氏は、「ECLIPSE TDシリーズは、一貫して『正確な再現』というコンセプトで展開してきた。新製品はその方向性をさらに突き詰めた。ぜひご期待いただきたい」と製品の完成度をアピールした。
具体的な製品の内容については、同社のTD推進担当課長である小脇宏氏が説明した。
■10年間目指し続けてきたのは「正確な音」
小脇氏ははじめに、ECLIPSE TDシリーズが2001年4月、21世紀の幕開けと共に誕生したことを振り返り、その後、7/5/3の各シリーズとサブウーファーを展開してきたことを紹介。小脇氏は「10年間目指し続けてきたのは『正確な音』。この重要性を訴え続けているが、いまだに誤解されている場合がある」とし、改めてECLIPSE TDシリーズの考え方を紹介した。
小脇氏は、音源から再生音に至るまでに通る、プレーヤー、アンプ、スピーカーなどをレンズに例え、「各レンズが透明であれば、音源を忠実に再現できる。これが理想だが、現実は完全に透明とはいかない」と説明。その上で、レンズを音響システムとして捉え直したとき、各機器の「インパルス応答」がインパルスに近ければ近いほど、音楽波形がより正確になる、という同社の主張を改めて展開した。
その上で、インパルス応答波形の誤差オーダーを機器の種類ごとに比較すると、プレーヤーやパワーアンプなどと比べ、スピーカーは桁違いに誤差が大きいことを指摘。「音を最も崩していたのがスピーカー。そのスピーカーの音の正確さ、透明さにこだわってきたのがECLIPSE TDだ」とした。
■「新5シリーズ」の進化ポイント
新製品については、「TD510ZMK2」と「TD510MK2」が、これまでのTD510の後継機と説明。「TD508MK3」は従来のTD508IIの後継機となる。
新製品で改良を行ったポイントは「より正確な音を目指したインパルス応答の改善」「周波数帯域のワイドレンジ化」「パワー感向上」「角度調整メカニズムの改良」の4点だ。
ドライバーユニットでは、ロングボイス化により振幅を高め、これにより出力音圧を向上。またインパルス応答改善、ワイドレンジ化を実現するため、振動板のグラスファイバーの軽量化、ダンパーなどへのエア抜き穴の追加などの工夫を行った。
エンクロージャーは、まずボックス容積を高めた。TD510ZMK2/TD510MK2では、全モデルに比べ14%増、TD508MK3は同37%増とした。TD508MK3の方が増加割合が高いのは「TD307との差を広げ、より立ち位置を明確化するため」という。
また、内部構造ではアンカーをより重くしたほか、スペーサーを変更することで磁束密度を向上。さらに背面のポートについても断面積を広げた。
これらの対策を施した結果、スペックが向上。インパルス応答で比べると、初期パルス幅はTD510が70μsだったところ、TD510MK2は60μsに短縮。残響時間についても、TD510は28msだったが、新モデルは26msとなった。
TD508MK3は、初期パルス幅が前モデルのTD508MK2に比べ大幅に短縮し、70μsから50μsへ進化した。
周波数帯域での比較でも、TD510MK2は42Hz〜22kHzと旧モデルの45Hz〜20kHzに比べ向上。TD508MK3も52Hz〜27kHzとなり、旧モデルの55Hz〜20kHzに比べ、高域も低域も伸びた。なお両機とも、出力音圧レベルを高めながら、周波数帯域の向上を実現している。
スタンドもこだわった。TD510ZMK2は、フラグシップモデルのTD712ZMK2で採用た、3点スパイク支持構造を踏襲。アルミ押し出し材の採用や内部への砂の充填、アルミダイキャストベースなども採用した。
またTD510MK2/TD508MK3の2機種は、テーブルトップスタンドながら3点スパイク支持構造を採用。これにより音質をさらに高めたほか、デスクトップスタンド時には-10度〜+15度、計25度の角度調整が可能になった。従来、下向きに振ることはできなかったが、「スタジオなどでの使用で、高い場所に置く際に、下向きできた方がいいという意見があったため、今回改良した」(小脇氏)という。
なおTD510MK2/TD508MK3の2機種は、天吊り設置や壁掛け設置も可能。どちらの場合も計85度の角度調整が行え、「ほぼすべての場所に設置できる」と小脇氏は胸を張った。
■深田晃氏、加藤訓子さんが語るECLIPSE TD
新商品のエンドーサーも紹介された。1人は世界的に著名なレコーディングエンジニア&プロデューサーのジム・アンダーソン氏。グラミー賞受賞9回を誇り、AES(Audio Enginnering Society)の前会長でもある。
もう一人は深田晃氏。CBS/SONYのチーフエンジニアとして活躍後、NHK番組制作技術部のチーフエンジニアを歴任。映画音楽では山田洋次監督作品、ジョン・ウー監督作品などを担当した。現AESフェロー。
説明会にゲスト出演した深田氏は「ECLIPSE TDとの出会いは、2004年に小脇さんがスタジオに製品を持ってくれたのが最初」と振り返り、「スタジオでは色々なスピーカーを使うが、2ウェイ、3ウェイだと位相の問題があるので、シングルコーンを使うことがある。中でもECLIPSE TDは空間再現性が良いので重宝している」とコメントした。
なお深田氏は現在、NHKスタジオでTD712zを使っているほか、自宅ではTD510をシステムに組み入れているという。
また深田氏は、ジム・アンダーソン氏やジョージ・マッセンバーグ氏らも小脇氏に紹介。アンダーソン氏は現在、TD712ZMK2を使っているとのこと。
その深田氏もステレオミックスのスタッフとして参加したのが、加藤訓子さんの作品「kuniko plays reich」。録音はジョージ・マッセンバーグ氏、サラウンドミックスはオノ・セイゲン氏という豪華メンバーが手掛けた作品で、昨年のLinn Record ベスト1にも選ばれた。
「kuniko plays reich」は、スティーブ・ライヒ氏の80年代の作品「Counter Part」シリーズを、打楽器用にアレンジし直して演奏した作品。プリレコードした楽曲を再生し、それに生演奏を重ね合わせるという楽曲群で、加藤さんは再生用のスピーカーにECLIPSE TDを使っている。
加藤さんのECLIPSE TDとの出会いはオノ・セイゲン氏がきっかけ。録音中の楽曲を自宅で正確に再生するスピーカーが無いかと探していたところ、オノ氏にTD307を薦められて導入したとのこと。
音質についても、スピードの速さが気に入り、2009年には「Steel Drum Works」のライブ用に「TD712ZMK2」を10台使用。世界中のライブを回ったという。「それまで、スピーカーと演奏するというのはあまり興味が無かったが、ECLIPSE TDでは、まるで生楽器と一緒にアンサンブルしているような感覚が味わえる」と、その音質の高さを強調した。
説明会は、都内の小ホールを貸し切って行われ、同社副社長の小倉通孝氏らが新製品について紹介したほか、新たにECLISPE TDシリーズのエンドーサーとなる音楽エンジニアの深田晃氏、またECLIPSE TDシリーズをライブなどに活用しているパーカッショニストの加藤訓子さんがゲストとして出席。加藤さんのライブ演奏も行われた。
説明会の冒頭、挨拶した富士通テン副社長の小倉氏は、「ECLIPSE TDシリーズは、一貫して『正確な再現』というコンセプトで展開してきた。新製品はその方向性をさらに突き詰めた。ぜひご期待いただきたい」と製品の完成度をアピールした。
具体的な製品の内容については、同社のTD推進担当課長である小脇宏氏が説明した。
■10年間目指し続けてきたのは「正確な音」
小脇氏ははじめに、ECLIPSE TDシリーズが2001年4月、21世紀の幕開けと共に誕生したことを振り返り、その後、7/5/3の各シリーズとサブウーファーを展開してきたことを紹介。小脇氏は「10年間目指し続けてきたのは『正確な音』。この重要性を訴え続けているが、いまだに誤解されている場合がある」とし、改めてECLIPSE TDシリーズの考え方を紹介した。
小脇氏は、音源から再生音に至るまでに通る、プレーヤー、アンプ、スピーカーなどをレンズに例え、「各レンズが透明であれば、音源を忠実に再現できる。これが理想だが、現実は完全に透明とはいかない」と説明。その上で、レンズを音響システムとして捉え直したとき、各機器の「インパルス応答」がインパルスに近ければ近いほど、音楽波形がより正確になる、という同社の主張を改めて展開した。
その上で、インパルス応答波形の誤差オーダーを機器の種類ごとに比較すると、プレーヤーやパワーアンプなどと比べ、スピーカーは桁違いに誤差が大きいことを指摘。「音を最も崩していたのがスピーカー。そのスピーカーの音の正確さ、透明さにこだわってきたのがECLIPSE TDだ」とした。
■「新5シリーズ」の進化ポイント
新製品については、「TD510ZMK2」と「TD510MK2」が、これまでのTD510の後継機と説明。「TD508MK3」は従来のTD508IIの後継機となる。
新製品で改良を行ったポイントは「より正確な音を目指したインパルス応答の改善」「周波数帯域のワイドレンジ化」「パワー感向上」「角度調整メカニズムの改良」の4点だ。
ドライバーユニットでは、ロングボイス化により振幅を高め、これにより出力音圧を向上。またインパルス応答改善、ワイドレンジ化を実現するため、振動板のグラスファイバーの軽量化、ダンパーなどへのエア抜き穴の追加などの工夫を行った。
エンクロージャーは、まずボックス容積を高めた。TD510ZMK2/TD510MK2では、全モデルに比べ14%増、TD508MK3は同37%増とした。TD508MK3の方が増加割合が高いのは「TD307との差を広げ、より立ち位置を明確化するため」という。
また、内部構造ではアンカーをより重くしたほか、スペーサーを変更することで磁束密度を向上。さらに背面のポートについても断面積を広げた。
これらの対策を施した結果、スペックが向上。インパルス応答で比べると、初期パルス幅はTD510が70μsだったところ、TD510MK2は60μsに短縮。残響時間についても、TD510は28msだったが、新モデルは26msとなった。
TD508MK3は、初期パルス幅が前モデルのTD508MK2に比べ大幅に短縮し、70μsから50μsへ進化した。
周波数帯域での比較でも、TD510MK2は42Hz〜22kHzと旧モデルの45Hz〜20kHzに比べ向上。TD508MK3も52Hz〜27kHzとなり、旧モデルの55Hz〜20kHzに比べ、高域も低域も伸びた。なお両機とも、出力音圧レベルを高めながら、周波数帯域の向上を実現している。
スタンドもこだわった。TD510ZMK2は、フラグシップモデルのTD712ZMK2で採用た、3点スパイク支持構造を踏襲。アルミ押し出し材の採用や内部への砂の充填、アルミダイキャストベースなども採用した。
またTD510MK2/TD508MK3の2機種は、テーブルトップスタンドながら3点スパイク支持構造を採用。これにより音質をさらに高めたほか、デスクトップスタンド時には-10度〜+15度、計25度の角度調整が可能になった。従来、下向きに振ることはできなかったが、「スタジオなどでの使用で、高い場所に置く際に、下向きできた方がいいという意見があったため、今回改良した」(小脇氏)という。
なおTD510MK2/TD508MK3の2機種は、天吊り設置や壁掛け設置も可能。どちらの場合も計85度の角度調整が行え、「ほぼすべての場所に設置できる」と小脇氏は胸を張った。
■深田晃氏、加藤訓子さんが語るECLIPSE TD
新商品のエンドーサーも紹介された。1人は世界的に著名なレコーディングエンジニア&プロデューサーのジム・アンダーソン氏。グラミー賞受賞9回を誇り、AES(Audio Enginnering Society)の前会長でもある。
もう一人は深田晃氏。CBS/SONYのチーフエンジニアとして活躍後、NHK番組制作技術部のチーフエンジニアを歴任。映画音楽では山田洋次監督作品、ジョン・ウー監督作品などを担当した。現AESフェロー。
説明会にゲスト出演した深田氏は「ECLIPSE TDとの出会いは、2004年に小脇さんがスタジオに製品を持ってくれたのが最初」と振り返り、「スタジオでは色々なスピーカーを使うが、2ウェイ、3ウェイだと位相の問題があるので、シングルコーンを使うことがある。中でもECLIPSE TDは空間再現性が良いので重宝している」とコメントした。
なお深田氏は現在、NHKスタジオでTD712zを使っているほか、自宅ではTD510をシステムに組み入れているという。
また深田氏は、ジム・アンダーソン氏やジョージ・マッセンバーグ氏らも小脇氏に紹介。アンダーソン氏は現在、TD712ZMK2を使っているとのこと。
その深田氏もステレオミックスのスタッフとして参加したのが、加藤訓子さんの作品「kuniko plays reich」。録音はジョージ・マッセンバーグ氏、サラウンドミックスはオノ・セイゲン氏という豪華メンバーが手掛けた作品で、昨年のLinn Record ベスト1にも選ばれた。
「kuniko plays reich」は、スティーブ・ライヒ氏の80年代の作品「Counter Part」シリーズを、打楽器用にアレンジし直して演奏した作品。プリレコードした楽曲を再生し、それに生演奏を重ね合わせるという楽曲群で、加藤さんは再生用のスピーカーにECLIPSE TDを使っている。
加藤さんのECLIPSE TDとの出会いはオノ・セイゲン氏がきっかけ。録音中の楽曲を自宅で正確に再生するスピーカーが無いかと探していたところ、オノ氏にTD307を薦められて導入したとのこと。
音質についても、スピードの速さが気に入り、2009年には「Steel Drum Works」のライブ用に「TD712ZMK2」を10台使用。世界中のライブを回ったという。「それまで、スピーカーと演奏するというのはあまり興味が無かったが、ECLIPSE TDでは、まるで生楽器と一緒にアンサンブルしているような感覚が味わえる」と、その音質の高さを強調した。