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【短期集中連載】コレが我が社の4K/8K技術(5)KDDI研究所「スーパーハイビジョン映像の高圧縮技術」

公開日 2013/04/23 18:58 インタビュアー / 折原一也
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今年2月、KDDI、KDDI研究所、ジュピターテレコムの3社がスーパーハイビジョン映像の伝送実験を行った(関連ニュース)。既存の放送インフラであるケーブルテレビ網をそのまま使い、ハイビジョン、4K、8K映像の同時伝送を成功させたのは世界初だ。その中で、4K/8Kの膨大な映像データを高効率に圧縮する技術を開発したのがKDDI研究所である。彼らが開発した圧縮技術を中心に、4K/8K映像配信の可能性を聞いた。

■既存のCATV網からでも4K/8K映像は伝送できる


株式会社KDDI研究所 超臨場感通信グループ グループリーダー 内藤整氏 1996年KDDI入社。以来同社研究所(KDDI研究所)にて、モバイルからスーパーハイビジョンまでを対象とする、映像圧縮・伝送・コンテンツ制作に関わる研究開発に従事。関連成果として、ワンセグ放送向け受信機、映像中継用HDTVコーデック、自由視点映像合成システムを始めとする各種開発を手掛けた。
折原 まず始めに、KDDI研究所における4K/8Kへの取り組みを改めて教えて下さい。

内藤 総務省の委託研究として、スーパーハイビジョンの家庭向けテレビ放送に必要な圧縮技術の研究を2008年から開始しました。2011年には衛星回線を利用したリアルタイム8K映像伝送実験、そして2012年にはauひかりのODN回線(FTTH)を利用した4K映像伝送実験を実施しました。昨年からはJ:COMのCATV網を使い、4K/8K映像の配信実験などを行っています。

折原 今年2月の伝送実験はどのようなものだったのでしょう?

内藤 J:COMのCATV網を使い、練馬のセンター局から約40km離れた丸ノ内の施設まで、HD・4K・8K映像を同時にIPで伝送する実験を行いました。丸ノ内に設置された専用の受信機には、フルHDテレビ、4Kテレビ、そして8Kプロジェクターが繋がれ、それらに映像が表示されたことで、解像度の異なる映像信号を同時に伝送できたことを確認しました。

折原 既存のCATV網でも十分4K/8K映像は伝送できる、と。

内藤 そうです。そしてこの実験で重要なことは、特別な伝送機器を使っていないということです。今回使用したケーブルモデムは、CATVによるブロードバンドインターネット接続をするために一般のお客様が宅内で設置している機器と同じものです。

折原 4K/8Kのような非常にレートの高い信号を送ることで、他のサービスに影響はないのでしょうか?

内藤 実験では、J:COMのいち加入者と同じ環境、つまり放送や電話、インターネットを伝送する施設をそのまま使っています。既存のサービスに影響を与えずに4K/8K映像が送れるという安全性が確認できたことも、今回の実験の大きな成果と言えます。

■映像の差分情報を活用して4K/8Kを効率的に圧縮

折原 先ほど3つの異なる映像信号を伝送した、とありました。なぜ異なる信号を送る必要があるのでしょう?

内藤 2012年までの実験では、4Kや8Kの映像を単独で伝送していました。しかし現実的には、HDから4K/8Kへの移行過程において、これらの異なる映像信号が共存すると考えています。HD/4K/8Kを同時に、しかも低ビットレートで伝送できる技術を開発しました。

折原 具体的に異なる信号を同時伝送する、とはどのような技術なのですか?

内藤 階層符号化、もしくはスケーラブル符号化と呼ばれる技術を利用しています。解像度の異なる映像であっても画像内容に相関性があります。その相関性を利用して効率的に圧縮しています。

折原 具体的に圧縮の仕組みを教えて下さい。

内藤 まずは8Kのオリジナル映像から4K、HDの縮小映像をそれぞれ作ります。最初にHD映像を、H.264で圧縮して同時にそのデータを再生します。次に、再生された映像から今度は4Kの拡大映像を作ります。この拡大映像と8Kから生成した4K映像を比較し、差分情報を抽出・圧縮して伝送します。8Kについても同様の方法で、4Kからの差分情報を抽出・圧縮して伝送します。受信側では、HDの映像を差分情報と一緒にデコードすれば、4K/8Kを復元できるという仕組みです。これはインターネットでJPEG画像を読み込む際に、段階的に画像が鮮明になっていく仕組みと同じですね。


本記事は月刊「AVレビュー」2013年5月号(4月17日発売)の特集「4Kのすべて」からの抄録です。誌面では、この記事の倍のインタビュー全文がお読み頂けます。「続きが読みたい!」「特集をすべて読みたい!」という方、「AVレビュー」のご購入はこちらからどうぞ。

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