年内目途に「リモートアクセス」対応テレビ発売
'20年の8K SHV放送にBS活用 − 4K VODも来年早々スタートへ
総務省は本日、「放送サービスの高度化に関する検討会」第3回会合を開催。8K/4K スーパーハイビジョンやスマートテレビ、またケーブルテレビプラットフォームについて、各ワーキンググループが検討してきた結果を報告した。また、それぞれのテーマについて具体的なロードマップが示された。
ロードマップが早急に出されたのは、第2回の会合時に柴山昌彦総務副大臣から「いつから、具体的に、何が見られるかを明確化してほしい」と要請があったことを受け、各ワーキンググループが検討してきた成果。今回の会合での検討結果は、今後ICT成長戦略会議において報告される。
■4K/8K放送にBSを活用
2月末に行われた第2回会合において、2020年の8K スーパーハイビジョン本放送を目標としたロードマップが示され、従来の目標が大きく前倒しされた。
前回までに、2014年に4Kの試験放送、2016年に8Kの試験放送、そして2020年に8Kの本放送開始という目標が提示され、より具体的な伝送路などの考え方が盛り込まれていたが、今回の第3回の報告には、4K放送や8K放送に対して、どの伝送路を使うかなど、よりくわしいロードマップや考え方が盛り込まれた。
まず4K/8Kの伝送路については、周波数の活用が総体定期に容易な124/128度CSや、CATV、IPTVを活用するという従来の方針に加え、新たに現在BSデジタルに使われている110度BS右旋も活用することと、110度CS左旋など、今後新たに用意される予定の伝送路を活用する考えが新たに加えられた。
110度BSは、現在はMPEG-2の24スロットで運用されているが、最新技術を用いれば使用スロット数にさらなる一定の圧縮を行っても、現状程度の画質・機能の確保は可能と判断し、活用することを決めたという。ただし、現在の2K放送を引きつづき見られるようにする必要があることから、4K/8K放送開始から一定期間は、4K/8Kと2K放送を混在させるか、テレビ側で2Kコンテンツも受信し、表示する機能を提供するなどの工夫が必要とした。さらに110度BSについては、現在進めている新たな周波数利用に関する研究開発を引きつづき進め、新たな周波数が確保できた場合は、この帯域も使って4K/8Kの利用を送信するとした。
さらに110度CS左旋については、2016年を目処に打ち上げが検討されている衛星に12トラポンが搭載されたらその帯域が活用できることを報告。なお現行の110度CSで使われている右旋については、4K/8K放送が始まっても2K放送を中心にし、多様なチャンネルを提供することを役割として想定している。
■2014年早々に4K VOD開始 − 2020年にはBS/CSで8K本放送
今回の会合で示された具体的なロードマップと伝送路、放送イメージを紹介。大規模なスポーツイベントにあわせて試験放送や本放送を開始するという基本的な考え方は前回紹介したとおりだ。
まずブラジル・ワールドカップの開催年にあたる2014年の4Kについては、124/128度CSを活用し、STBなどを通じて視聴を可能にする環境整備を目指す。またケーブル網も活用し、衛星と同時期に開始できるよう準備を進める、とした。さらにIPTVについても、VODサービスを2014年早々に、試行的に開始することを報告に盛り込んだ。
2016年はリオデジャネイロ・オリンピックの開催年で、この年に8Kの試験放送開始を想定している。伝送路には124/128度CSに加え、110度CSの左旋などの活用を想定。8KについてはSTBなどを通じて視聴を行える環境整備を目指すほか、4KについてはSTBなどを通じて、より多様な番組を視聴できる環境作りを行う。
2020年もオリンピックの開催年で、8K本放送の開始を想定している、伝送路は124/128度CS、110度CS左旋のほか、110度BSの活用も想定する。8K/4K双方の視聴が行えるテレビを通じ、より多くの視聴者が多彩な4K/8K放送を視聴できる環境整備を目指していく。
■2014年6月までに技術仕様を整備
技術仕様についても、検討・決定のロードマップが示された。放送を行うためには、映像符号化、フレーム周波数、音声符号化、音声チャンネル数、所用ビットレート、変調方式、帯域幅、回線稼働率、多重化方式、データ放送、CAS、フレームフォーマット、クロマフォーマット、ビット長、色域などを決める必要があるが、これらの技術については、衛星放送における電波利用に関するものを中心に、2014年3月までに技術的条件を具体化。さらに同年6月前に、具体化された事項を前提として、必要な技術基準の整備を行っていく。さらにその際、衛星、ケーブル、IPTVなど異なる伝送路間で、可能なかぎり共通化を図っていくことが重要、とも指摘した。
なお報告会では4K/8Kの円滑な普及のための課題として、既存ユーザーの保護について言及。地デジ対応などですでに2K対応テレビを購入したユーザーで、高精細かつ高機能な放送を求めないユーザーに対しては、買い替えの負担を強いることを避ける必要がある、と明記。一方で高精細かつ高機能な放送サービスや対応受信機を求める視聴者には積極的に対応し、新たな市場開拓に努める必要がある、とした。
報告会に参加したメンバーから出た意見では、第2回の会合と同様、今回の放送開始スケジュールについて肯定的な反応がほとんどだった。ソニー(株)業務執行役員 SVPの島田啓一郎氏は「4K/8Kの放送開始日程が明確になり、大変期待している」と述べ、パナソニック(株)常務取締役の宮部義幸氏は「進んでいく方向が明確になってきた」と歓迎。また宮部氏は「SHVについては、2020年にBSで放送するということが示されたが、これはかなり大きなマイルストーンと認識している。2020年にBSが次の時代に入るということになる。環境整備の拡充などを行っていきたい」とも述べた。
また通信事業者ではNTT 常務取締役の篠原弘道氏が「報告書に、衛星のみならずIPTVの記述を頂いたことは有り難い」と述べ、「IP放送を行うためにはリアルタイムのHEVCエンコーダーなど、様々な環境整備が必要だ。支援を頂きながら開発していきたい」とした。KDDIの高橋誠氏も「具体的なスケジュールが示されたことは今後にとって大きくプラスだ」と評価した。
衛星放送事業者では、(株)WOWOW 社長の和崎信哉氏が「第3回までのわずかな間でロードマップが出て、やるべきことが明確になった」とし、スカパーJSAT(株)社長の高田真治氏も「大変スピード感のあるロードマップが描かれた。ソフトとハードのオールジャパンで取り組むのは非常に良いこと。我々は早期に4K放送が行えるということで、しっかり汗をかいてやっていきたい」と気を引き締めていた。
一方で地上波放送事業者の意見は、若干雰囲気が異なった。日本テレビ 上席執行役員 社長室長の伊藤晋氏は「前回の会合で『奇跡のようなスケジュール』と口走ってしまった。だがNHK技研公開も見させて頂き、技術的には解決の道筋がはっきりしてきたのかな、という思いだ」としながらも、「4Kや8Kに対する需要がまだ不透明だ」と苦言を呈することも忘れなかった。フジテレビ 常務取締役の関祥行氏も「4K/8Kについては、かなりきついなあと実感はしているが、オールジャパンというのも一応出たので、やっていきたい」と淡泊な発言だった。一方でNHK 理事・技師長の久保田啓一氏は「目標と道筋が明示され、幅広い方々に共有されたのは大きな成果だ」と高く評価。「放送開始に向け、かなり詳細な技術的ロードマップを作って取り組んでおり、コンテンツ開発に関するロードマップも作っている。だが、まだたくさんやらなければいけないことがある。ロードマップを不断に確認する必要がある」とした。
■スマートテレビはアプリ普及に向けたスケジュールを明示
スマートテレビに関するワーキンググループは、主にIPTVフォーラムが3月29日に公開した放送・通信連携サービス「HybridCast」を中心にした報告を行った。
本サービスの概要は、先日NHK技研公開のニュースでお伝えした(関連ニュース)。NHKが今年中に、まず放送と連動しないサービスを開始し、今年度中には放送連動型サービスを始める予定だ。
当初は放送局側が制作したアプリのみを提供するが、よりスマートテレビの普及を加速させるためには、サードパーティーがアプリを開発できる環境整備を、視聴者の安全・安心を確保しながら行う必要があると説明。このためにアプリ開発のルールを公開し、ルールを守ると表明したアプリ開発者の登録を受け付け、登録された開発者を公表する必要があるとし、IPTVフォーラムで7月を目途に、これらを新規業務として開始すると発表した。
2014年以降には、放送連動型アプリを拡充させ、将来的にはスーパーハイビジョンに対応したスマートテレビとして販売を行うことを目指していく。
さらに年内を目途として、外出先から自宅のテレビにアクセスし、番組を視聴できる「リモートアクセス」視聴を実現するための技術や運用条件などを固め、実際のテレビに実装することを目指すとも明言した。
ロードマップが早急に出されたのは、第2回の会合時に柴山昌彦総務副大臣から「いつから、具体的に、何が見られるかを明確化してほしい」と要請があったことを受け、各ワーキンググループが検討してきた成果。今回の会合での検討結果は、今後ICT成長戦略会議において報告される。
■4K/8K放送にBSを活用
2月末に行われた第2回会合において、2020年の8K スーパーハイビジョン本放送を目標としたロードマップが示され、従来の目標が大きく前倒しされた。
前回までに、2014年に4Kの試験放送、2016年に8Kの試験放送、そして2020年に8Kの本放送開始という目標が提示され、より具体的な伝送路などの考え方が盛り込まれていたが、今回の第3回の報告には、4K放送や8K放送に対して、どの伝送路を使うかなど、よりくわしいロードマップや考え方が盛り込まれた。
まず4K/8Kの伝送路については、周波数の活用が総体定期に容易な124/128度CSや、CATV、IPTVを活用するという従来の方針に加え、新たに現在BSデジタルに使われている110度BS右旋も活用することと、110度CS左旋など、今後新たに用意される予定の伝送路を活用する考えが新たに加えられた。
110度BSは、現在はMPEG-2の24スロットで運用されているが、最新技術を用いれば使用スロット数にさらなる一定の圧縮を行っても、現状程度の画質・機能の確保は可能と判断し、活用することを決めたという。ただし、現在の2K放送を引きつづき見られるようにする必要があることから、4K/8K放送開始から一定期間は、4K/8Kと2K放送を混在させるか、テレビ側で2Kコンテンツも受信し、表示する機能を提供するなどの工夫が必要とした。さらに110度BSについては、現在進めている新たな周波数利用に関する研究開発を引きつづき進め、新たな周波数が確保できた場合は、この帯域も使って4K/8Kの利用を送信するとした。
さらに110度CS左旋については、2016年を目処に打ち上げが検討されている衛星に12トラポンが搭載されたらその帯域が活用できることを報告。なお現行の110度CSで使われている右旋については、4K/8K放送が始まっても2K放送を中心にし、多様なチャンネルを提供することを役割として想定している。
■2014年早々に4K VOD開始 − 2020年にはBS/CSで8K本放送
今回の会合で示された具体的なロードマップと伝送路、放送イメージを紹介。大規模なスポーツイベントにあわせて試験放送や本放送を開始するという基本的な考え方は前回紹介したとおりだ。
まずブラジル・ワールドカップの開催年にあたる2014年の4Kについては、124/128度CSを活用し、STBなどを通じて視聴を可能にする環境整備を目指す。またケーブル網も活用し、衛星と同時期に開始できるよう準備を進める、とした。さらにIPTVについても、VODサービスを2014年早々に、試行的に開始することを報告に盛り込んだ。
2016年はリオデジャネイロ・オリンピックの開催年で、この年に8Kの試験放送開始を想定している。伝送路には124/128度CSに加え、110度CSの左旋などの活用を想定。8KについてはSTBなどを通じて視聴を行える環境整備を目指すほか、4KについてはSTBなどを通じて、より多様な番組を視聴できる環境作りを行う。
2020年もオリンピックの開催年で、8K本放送の開始を想定している、伝送路は124/128度CS、110度CS左旋のほか、110度BSの活用も想定する。8K/4K双方の視聴が行えるテレビを通じ、より多くの視聴者が多彩な4K/8K放送を視聴できる環境整備を目指していく。
■2014年6月までに技術仕様を整備
技術仕様についても、検討・決定のロードマップが示された。放送を行うためには、映像符号化、フレーム周波数、音声符号化、音声チャンネル数、所用ビットレート、変調方式、帯域幅、回線稼働率、多重化方式、データ放送、CAS、フレームフォーマット、クロマフォーマット、ビット長、色域などを決める必要があるが、これらの技術については、衛星放送における電波利用に関するものを中心に、2014年3月までに技術的条件を具体化。さらに同年6月前に、具体化された事項を前提として、必要な技術基準の整備を行っていく。さらにその際、衛星、ケーブル、IPTVなど異なる伝送路間で、可能なかぎり共通化を図っていくことが重要、とも指摘した。
なお報告会では4K/8Kの円滑な普及のための課題として、既存ユーザーの保護について言及。地デジ対応などですでに2K対応テレビを購入したユーザーで、高精細かつ高機能な放送を求めないユーザーに対しては、買い替えの負担を強いることを避ける必要がある、と明記。一方で高精細かつ高機能な放送サービスや対応受信機を求める視聴者には積極的に対応し、新たな市場開拓に努める必要がある、とした。
報告会に参加したメンバーから出た意見では、第2回の会合と同様、今回の放送開始スケジュールについて肯定的な反応がほとんどだった。ソニー(株)業務執行役員 SVPの島田啓一郎氏は「4K/8Kの放送開始日程が明確になり、大変期待している」と述べ、パナソニック(株)常務取締役の宮部義幸氏は「進んでいく方向が明確になってきた」と歓迎。また宮部氏は「SHVについては、2020年にBSで放送するということが示されたが、これはかなり大きなマイルストーンと認識している。2020年にBSが次の時代に入るということになる。環境整備の拡充などを行っていきたい」とも述べた。
また通信事業者ではNTT 常務取締役の篠原弘道氏が「報告書に、衛星のみならずIPTVの記述を頂いたことは有り難い」と述べ、「IP放送を行うためにはリアルタイムのHEVCエンコーダーなど、様々な環境整備が必要だ。支援を頂きながら開発していきたい」とした。KDDIの高橋誠氏も「具体的なスケジュールが示されたことは今後にとって大きくプラスだ」と評価した。
衛星放送事業者では、(株)WOWOW 社長の和崎信哉氏が「第3回までのわずかな間でロードマップが出て、やるべきことが明確になった」とし、スカパーJSAT(株)社長の高田真治氏も「大変スピード感のあるロードマップが描かれた。ソフトとハードのオールジャパンで取り組むのは非常に良いこと。我々は早期に4K放送が行えるということで、しっかり汗をかいてやっていきたい」と気を引き締めていた。
一方で地上波放送事業者の意見は、若干雰囲気が異なった。日本テレビ 上席執行役員 社長室長の伊藤晋氏は「前回の会合で『奇跡のようなスケジュール』と口走ってしまった。だがNHK技研公開も見させて頂き、技術的には解決の道筋がはっきりしてきたのかな、という思いだ」としながらも、「4Kや8Kに対する需要がまだ不透明だ」と苦言を呈することも忘れなかった。フジテレビ 常務取締役の関祥行氏も「4K/8Kについては、かなりきついなあと実感はしているが、オールジャパンというのも一応出たので、やっていきたい」と淡泊な発言だった。一方でNHK 理事・技師長の久保田啓一氏は「目標と道筋が明示され、幅広い方々に共有されたのは大きな成果だ」と高く評価。「放送開始に向け、かなり詳細な技術的ロードマップを作って取り組んでおり、コンテンツ開発に関するロードマップも作っている。だが、まだたくさんやらなければいけないことがある。ロードマップを不断に確認する必要がある」とした。
■スマートテレビはアプリ普及に向けたスケジュールを明示
スマートテレビに関するワーキンググループは、主にIPTVフォーラムが3月29日に公開した放送・通信連携サービス「HybridCast」を中心にした報告を行った。
本サービスの概要は、先日NHK技研公開のニュースでお伝えした(関連ニュース)。NHKが今年中に、まず放送と連動しないサービスを開始し、今年度中には放送連動型サービスを始める予定だ。
当初は放送局側が制作したアプリのみを提供するが、よりスマートテレビの普及を加速させるためには、サードパーティーがアプリを開発できる環境整備を、視聴者の安全・安心を確保しながら行う必要があると説明。このためにアプリ開発のルールを公開し、ルールを守ると表明したアプリ開発者の登録を受け付け、登録された開発者を公表する必要があるとし、IPTVフォーラムで7月を目途に、これらを新規業務として開始すると発表した。
2014年以降には、放送連動型アプリを拡充させ、将来的にはスーパーハイビジョンに対応したスマートテレビとして販売を行うことを目指していく。
さらに年内を目途として、外出先から自宅のテレビにアクセスし、番組を視聴できる「リモートアクセス」視聴を実現するための技術や運用条件などを固め、実際のテレビに実装することを目指すとも明言した。