将来的なアイディアも披露
ハイブリッドキャストとデータ放送の違いは?今後の予定は? − NHKが説明会を開催
NHKは、9月2日からサービスインすると発表した「ハイブリッドキャスト(HybridCast)」(関連ニュース)に関するメディア説明会を開催。実機デモを交えながらサービスの特徴や狙いを説明した。
■データ放送と何が違う?
ハイブリッドキャストは、放送波と通信(インターネット)を融合させたサービス。放送波に「インターネットからこのデータをダウンロードしなさい」というデータが埋め込まれており、その信号を受け取った対応テレビで各種情報を表示できる。「いわゆる普通のインターネットコンテンツであればスマートテレビで見られる。スマホでもネットを観ながらテレビを見られる。そういうサービスは既に多くあるが、今回のサービスは放送波のなかに、そういう情報を取得するための信号が埋め込まれているのがミソ」(NHK編成局編成センター 桑原知久氏)。
例えば、視聴している番組の関連情報を、視聴中の画面にオーバーレイ表示させるといった使い方が可能。データ放送では完全に画面が切り替わってしまうが、ハイブリッドキャストではオーバーレイ表示される点もポイントだ。なお、緊急地震速報などが入った場合にはそちらを優先させるため、ハイブリッドキャストのコンテンツは自動でオフになる。
サービスインは9月2日(月)の11時から。対応テレビ(東芝“REGZA”Z8X/Z7/J7シリーズ)のユーザーであれば、リモコンの「dボタン」を押すとハイブリッドキャストのトップメニューが番組画面にオーバーレイで表示される。なお、現在のところ対応テレビは東芝製の3シリーズのみだが、「今後も各社から順次対応モデルが出てくるのではないかと期待している」とのことで、「名前は明かせないが、東芝以外にももう一社から対応モデルが近いうちに登場してくるのではないか」という。
なお、サービス対応テレビの普及台数については「詳しい台数は東芝さんに取材してもらいたいが、9月2日の時点で数十万くらいになるのではないか」とコメント。「その後、各社から対応モデルが出るなど、2〜3年後には数百万の方に利用いただけるという期待値をもっている」と語った。
サービスはまず、天気予報やニュースの表示などからスタート。今後については「今秋以降、番組関連の情報を配信したり、オンデマンドサービス、スマホ/タブレットとの連携サービスを順次出していきたい」としており、「視聴者参加型のサービス、テレビ内だけでは不足する情報をスマホ/タブレットに提供したりなどといった色々な形を想定している」とした。今後、サービス数は順次増やしていく予定だという。
例えばニュースの表示では、画面の下側に1行だけ文字がスクロールする画面が表示され、ドラマなどを見ながらニュースをチェックするなどといった利用が可能。もちろん、ニュースの内容をもっと詳しく知りたい場合には詳細画面に遷移することもできる。また、文字のスクロールスピードも調整可能になる予定だ。
データ放送との違いでは、HTML5をベースにしているため、UIやデザインをリッチに作り込める点も大きい。「色や精細感もデータ放送より非常に高い。アイコンの制作を担当したスタッフも非常に可能性が高いと語っていた」。また、データ放送は電波帯域という制限があるが、そういった制限のないハイブリッドキャストではよりリッチなコンテンツを表示できるメリットもある。
こうした利点を活かすコンテンツとしてNHKでは「旬美暦」というコーナーを用意。歳時記の言葉を日替わりで美麗な写真と音とともに紹介するというもので、「データ放送ではありえない美しいコンテンツ」だとしている。
また、前述のニュース表示では、表示させるニュースのジャンルや対象地域を設定しておくことも可能。地域設定では、例えば東京でテレビ視聴する場合、データ放送では関東圏の情報しか見られないが、ハイブリッドキャストでは東北など他地域を設定しておくこともできる。
EPGは通常のものと異なり、過去に遡って情報の番組を閲覧することも可能。NHK技研公開でもデモが行われていたように(関連ニュース)、将来的に色々な課題がクリアできれば、EPGからNHKオンデマンドへ遷移しての番組視聴なども行えるようにしたり、過去の番組情報から何らかの情報にリンクしていくことで、「より幅広く番組を楽しんでもらう入口にしていきたい」という。
なお、ハイブリッドキャストはIPTVフォーラムが規格を策定している。NHKだけでなく民放など他事業者も参入を検討している。民放が参入すれば、例えばテレビCMで気になった商品が会った場合にハイブリッドキャストを使ってそのままショッピングサイトに誘導して買い物させる、などといった使い方も可能だ。
■対応機器の広がりは?テレビ以外も対応する?
前述の通り、現在のところハイブリッドキャストに対応しているテレビは“REGZA”Z8X/Z7/J7シリーズのみ。Z7/J7シリーズがソフトウェアアップデートで対応したように(関連ニュース)、他社製の既存テレビもアップデート対応が可能かどうかという点については「他のメーカーがどうなるのかは把握しきれていない。今回の拡張仕様に(ハードウェア的に)対応可能かどうかという部分と各社の考えもあるので我々からはコメントしにくい」という。
また、レコーダーなどテレビ以外のデバイスでの対応についても「我々として期待はしているが、メーカー次第」とコメント。NHK技研公開などでSTBの試作機を披露したことなども、あわせて紹介した。
スマートフォン/タブレット連携の場合はアプリを利用することになるが、そのアプリについてはテレビメーカーなど各社が用意する形になる予定。「規格は決まっているが、物理的にタブレットとテレビをつなげる部分は各メーカーが公開していないため」とのことで、「例えば各社がテレビリモコンアプリにウェブブラウジング機能を追加するなどすれば、技術的には対応させられる。検討はしていただいているが、各社の戦略、我々のアプリとの兼ね合いになる。我々としてはなるべく早くやりたいということでお願いしている」という。
なお番組を録画し、後から視聴する場合の対応については現時点では未定。DRモード録画などであればハイブリッドキャスト用の信号もそのまま保持されるが、「ネット側のコンテンツをサーバー側でいつまで残しておくかなどの問題もあるので、現状は、録画に対しては保証できないとしか申し上げられない」とした。「番組の制作サイドとしては、まずリアルタイムで番組を視聴していただきたいという点がある。リアルタイムでこそ楽しんでいただけるということをまずはやっていきたい」ともコメントを添えた。
■質疑応答
以下、質疑応答の模様をお届けする。
Q.HTML5をテレビの規格として世界に提案するという動きがあったが、現在はどのようなポジションにあるのか。
A.HTML5は元々PCベースの新しい技術。W3Cでもカーナビやテレビなど新しいことに使っていこうということで、W3Cの技術を参照しながらIPTVフォーラムで進めてきた。テレビのことは独自に拡張して国内でまとめている。タブレットの連携も国内で作ったもの。W3Cのなかではまだネット系の人の話が中心で、ようやく放送事業者の要件などを提案して促進を図っている段階だ。各国とも放送の規格も違うので、そのまま受け入れられるかは分からないが、どこかで採用されるのではないかと期待している。いずれせよ欧米でも通信連携サービスがあるが、まだHTML5の検討は日本ほど進んでいない。欧米の放送事業者とも連携しながらHTML5の拡張をやっていければと思っている。
Q.開始日が9月2日になった理由は。
A.とにかく今年中にという話があった。開発を進めていって、メーカーの受像器の性能や、実際の仕様を落とし込んでいき、やっとなんとか形になってきたというスケジュール感がひとつある。年内で皆さんのお目にかけられるのはこれくらいの時期になったということだ。もう2〜3個、水面下で動いているものがある。ハイブリッドキャストという言葉自体はだいぶ色々なところで目にするようになったし、対応テレビも出てくるのであれば、まずはここでスタートさせようと思った。
また、オールジャパンで次世代スマートテレビということでやっているし、技術仕様も固まったので、なるべく早く始めることがこの後の民放さんやメーカーさんの動きにつながってくると考えている。スモールスタートだがまずは初めてみようと、9月1日は日曜日なので何かあったらということで2日になった。
Q.オーバーレイ表示するのは画期的だと思うが、場所が下すぎるのでないか。表示位置や大きさの考え方について聞きたい。
A.色々な議論があった。全面取り切りでトップ画面をという話もあったし、技研公開でご覧いただいたときのように、もうすこしかぶせるような形もあった。我々は放送屋なので、何かあったら放送にすぐ戻れる、境界線の低い、心理的には境界線が実践でなく点線でありたいということで半透明にした。
また、メイン画面はメニュー画面。本来は選んだらすぐ消えてしまうイメージで設計したが、やってみたら、なんとなく置いておくほうがよいのではないかという意見もあった。ここは視聴者の方のご意見もいただきたいところだが、放っておいても負担感のない大きさということで選んだ。HTML5なので簡単に表示も変えられる。誤解いただきたくないのは、「ハイブリッドキャストのメイン画面がこう」ということではなく、「NHKの画面はこうですがいかがでしょう」ということ。ぜひ民放さんにも参入してもらいたいが、その局ごとにやってもらいたい。そのあたりは探りながら変えていきたい。
Q.データ放送はどうなるのか。将来的に統合されるのか。
A.中長期的にデータ放送がどうなるかというのはまた別の議論だと思うが、データ放送は今後もしばらく続くと思っている。全てのテレビがネットにつながるとは当面の間は思っていないので、データ放送は必要だと考えている。今回、データ放送とハイブリッドキャストの相互行き来する経路も用意している。
Q.ホーム画面と番組関連画面の関係性はどうなるのか。
A.最後の設計は詰めの段階だが、連動番組の際にdボタンを押すとホームボタンの目立つところに連動ボタンが配置されるようなイメージ。画面上にオーバーレイ表示する場合とスマホに表示させる方法がある。連動しているときはホーム画面は消える。細かい部分は考えなければいけないが、基本的にはホーム画面に連動ボタンが出てくるイメージで考えている。
Q.半透明というが、結構見えない部分もある。見えない部分もあるというのを、番組制作側は納得しているのか。
A.いわゆるスマートテレビで、通信側からかぶせてくるのであれば、放送側としては容認できないだろう。ただ、今回のはメニュー画面。出しっぱなしにしておくわけではない。dボタンで簡単に消える。思ったよりオーバーレイの時間が長いイメージになっているので負担感の少ないデザインにしている。そういう意味で視聴者にも、制作者にもご理解いただけると考えている。
Q.コンテンツを作っていく上での負荷はどれくらいなのか。民放や地方局にとってポイントとなるところだと思うのだが?
A.今年度の場合は試行なので、その範囲内で、コンテンツはデータ放送から持ってきているものも多い。来年度以降も含めて、連動型の番組の場合でも、データ放送で連動している場合に、それと少し違った形で連動するような形になってくると思う。普及段階でハイブリッドキャストのみでのサービスというのは考えにくい。そのため、しばらくは2倍の労力ということでなく、「1.何倍」という形になるだろう。データ放送よりちょっと多い情報をハイブリッドキャストで出すといった具合だ。当面は、現行の制度の範囲内、放送の保管の範囲内でやっていきたい。
Q.放送と通信の融合サービスは今までも色々あったが根付かなかった。今回はどこが違うと思っているのか。
A.スマートテレビ、VOD対応テレビがたくさん登場してきている。今までのそういったテレビは、放送かネットどちらかを選んで切り替えるものが多かった。しかしハイブリッドキャストは、放送を見ながらネットを利用する。本格的な融合、連携がようやくできたと思っている。今まではテレビ各社各様のやり方だった。今回は統一の仕様に基づいてやっている。どこのメーカーのテレビでも、どこの事業者でも共通して使えるのが大きく違っている。今後の成長は大きく期待できると思っている。
Q.コンテンツは放送局が自前で作ることが前提なのか。別のところと連携するのか。
A.現状は自前でやっている。サードパーティの参加については、検討が始まっている。当面、NHKとしては我々自身が責任を持つということで自らが設計する。コンテンツに対する責任を持つという意味で、当面はサードパーティの方のアイディアをいただくことがあったとしてもNHK自身がやることになるだろう。
Q.放送業者が通信をやらなければいけない理由はどこにあるのか。また、ネットが日常に溶け込んだ時代に、テレビとネットがつながるメリットはどこにあるのか。
A.例えばサッカーでも、昔であれば純粋にサッカーを観ているだけで十分だった。しかし今は、例えば手元で検索して選手の情報を得たり、関係する動画を探すなど多面的な目線で視聴している。視聴者が変わってきている。そういう時代にあって、放送はどうしても単線的にひとつの画面とひとつの音で構成していく。ここで通信をうまく活用して、多用な目線で観る方の声に応えられれば、役に立てるのではないかと思っている。ニーズが多用化しているなかで、テレビの側もそれに応えられるようになりたい。そこで放送だけにこだわっていても仕方ないので、新しい楽しみ方を一緒に作って行ければいいのではないかと思っている。
また、放送局側が、取材に基づいてちゃんと放送局自身でネットで情報を出していける。例えば今であればWikipediaを確認するが、これは放送を前提にしたコンテンツではない。放送局側としては新しい演出の形を開拓していき、60年間培ってきた技術からもうひとつのブレークスルーとできればいいかなと思っている。
PCやスマホで情報にアクセスするときは、やっぱり何か複雑な部分もある。データ放送の利用率は高まっている。必要な情報が昔以上に増えているのであれば、テレビで簡単にアクセスしやすい形で提供できればという考えもある。
■データ放送と何が違う?
ハイブリッドキャストは、放送波と通信(インターネット)を融合させたサービス。放送波に「インターネットからこのデータをダウンロードしなさい」というデータが埋め込まれており、その信号を受け取った対応テレビで各種情報を表示できる。「いわゆる普通のインターネットコンテンツであればスマートテレビで見られる。スマホでもネットを観ながらテレビを見られる。そういうサービスは既に多くあるが、今回のサービスは放送波のなかに、そういう情報を取得するための信号が埋め込まれているのがミソ」(NHK編成局編成センター 桑原知久氏)。
例えば、視聴している番組の関連情報を、視聴中の画面にオーバーレイ表示させるといった使い方が可能。データ放送では完全に画面が切り替わってしまうが、ハイブリッドキャストではオーバーレイ表示される点もポイントだ。なお、緊急地震速報などが入った場合にはそちらを優先させるため、ハイブリッドキャストのコンテンツは自動でオフになる。
サービスインは9月2日(月)の11時から。対応テレビ(東芝“REGZA”Z8X/Z7/J7シリーズ)のユーザーであれば、リモコンの「dボタン」を押すとハイブリッドキャストのトップメニューが番組画面にオーバーレイで表示される。なお、現在のところ対応テレビは東芝製の3シリーズのみだが、「今後も各社から順次対応モデルが出てくるのではないかと期待している」とのことで、「名前は明かせないが、東芝以外にももう一社から対応モデルが近いうちに登場してくるのではないか」という。
なお、サービス対応テレビの普及台数については「詳しい台数は東芝さんに取材してもらいたいが、9月2日の時点で数十万くらいになるのではないか」とコメント。「その後、各社から対応モデルが出るなど、2〜3年後には数百万の方に利用いただけるという期待値をもっている」と語った。
サービスはまず、天気予報やニュースの表示などからスタート。今後については「今秋以降、番組関連の情報を配信したり、オンデマンドサービス、スマホ/タブレットとの連携サービスを順次出していきたい」としており、「視聴者参加型のサービス、テレビ内だけでは不足する情報をスマホ/タブレットに提供したりなどといった色々な形を想定している」とした。今後、サービス数は順次増やしていく予定だという。
例えばニュースの表示では、画面の下側に1行だけ文字がスクロールする画面が表示され、ドラマなどを見ながらニュースをチェックするなどといった利用が可能。もちろん、ニュースの内容をもっと詳しく知りたい場合には詳細画面に遷移することもできる。また、文字のスクロールスピードも調整可能になる予定だ。
データ放送との違いでは、HTML5をベースにしているため、UIやデザインをリッチに作り込める点も大きい。「色や精細感もデータ放送より非常に高い。アイコンの制作を担当したスタッフも非常に可能性が高いと語っていた」。また、データ放送は電波帯域という制限があるが、そういった制限のないハイブリッドキャストではよりリッチなコンテンツを表示できるメリットもある。
こうした利点を活かすコンテンツとしてNHKでは「旬美暦」というコーナーを用意。歳時記の言葉を日替わりで美麗な写真と音とともに紹介するというもので、「データ放送ではありえない美しいコンテンツ」だとしている。
また、前述のニュース表示では、表示させるニュースのジャンルや対象地域を設定しておくことも可能。地域設定では、例えば東京でテレビ視聴する場合、データ放送では関東圏の情報しか見られないが、ハイブリッドキャストでは東北など他地域を設定しておくこともできる。
EPGは通常のものと異なり、過去に遡って情報の番組を閲覧することも可能。NHK技研公開でもデモが行われていたように(関連ニュース)、将来的に色々な課題がクリアできれば、EPGからNHKオンデマンドへ遷移しての番組視聴なども行えるようにしたり、過去の番組情報から何らかの情報にリンクしていくことで、「より幅広く番組を楽しんでもらう入口にしていきたい」という。
なお、ハイブリッドキャストはIPTVフォーラムが規格を策定している。NHKだけでなく民放など他事業者も参入を検討している。民放が参入すれば、例えばテレビCMで気になった商品が会った場合にハイブリッドキャストを使ってそのままショッピングサイトに誘導して買い物させる、などといった使い方も可能だ。
■対応機器の広がりは?テレビ以外も対応する?
前述の通り、現在のところハイブリッドキャストに対応しているテレビは“REGZA”Z8X/Z7/J7シリーズのみ。Z7/J7シリーズがソフトウェアアップデートで対応したように(関連ニュース)、他社製の既存テレビもアップデート対応が可能かどうかという点については「他のメーカーがどうなるのかは把握しきれていない。今回の拡張仕様に(ハードウェア的に)対応可能かどうかという部分と各社の考えもあるので我々からはコメントしにくい」という。
また、レコーダーなどテレビ以外のデバイスでの対応についても「我々として期待はしているが、メーカー次第」とコメント。NHK技研公開などでSTBの試作機を披露したことなども、あわせて紹介した。
スマートフォン/タブレット連携の場合はアプリを利用することになるが、そのアプリについてはテレビメーカーなど各社が用意する形になる予定。「規格は決まっているが、物理的にタブレットとテレビをつなげる部分は各メーカーが公開していないため」とのことで、「例えば各社がテレビリモコンアプリにウェブブラウジング機能を追加するなどすれば、技術的には対応させられる。検討はしていただいているが、各社の戦略、我々のアプリとの兼ね合いになる。我々としてはなるべく早くやりたいということでお願いしている」という。
なお番組を録画し、後から視聴する場合の対応については現時点では未定。DRモード録画などであればハイブリッドキャスト用の信号もそのまま保持されるが、「ネット側のコンテンツをサーバー側でいつまで残しておくかなどの問題もあるので、現状は、録画に対しては保証できないとしか申し上げられない」とした。「番組の制作サイドとしては、まずリアルタイムで番組を視聴していただきたいという点がある。リアルタイムでこそ楽しんでいただけるということをまずはやっていきたい」ともコメントを添えた。
■質疑応答
以下、質疑応答の模様をお届けする。
Q.HTML5をテレビの規格として世界に提案するという動きがあったが、現在はどのようなポジションにあるのか。
A.HTML5は元々PCベースの新しい技術。W3Cでもカーナビやテレビなど新しいことに使っていこうということで、W3Cの技術を参照しながらIPTVフォーラムで進めてきた。テレビのことは独自に拡張して国内でまとめている。タブレットの連携も国内で作ったもの。W3Cのなかではまだネット系の人の話が中心で、ようやく放送事業者の要件などを提案して促進を図っている段階だ。各国とも放送の規格も違うので、そのまま受け入れられるかは分からないが、どこかで採用されるのではないかと期待している。いずれせよ欧米でも通信連携サービスがあるが、まだHTML5の検討は日本ほど進んでいない。欧米の放送事業者とも連携しながらHTML5の拡張をやっていければと思っている。
Q.開始日が9月2日になった理由は。
A.とにかく今年中にという話があった。開発を進めていって、メーカーの受像器の性能や、実際の仕様を落とし込んでいき、やっとなんとか形になってきたというスケジュール感がひとつある。年内で皆さんのお目にかけられるのはこれくらいの時期になったということだ。もう2〜3個、水面下で動いているものがある。ハイブリッドキャストという言葉自体はだいぶ色々なところで目にするようになったし、対応テレビも出てくるのであれば、まずはここでスタートさせようと思った。
また、オールジャパンで次世代スマートテレビということでやっているし、技術仕様も固まったので、なるべく早く始めることがこの後の民放さんやメーカーさんの動きにつながってくると考えている。スモールスタートだがまずは初めてみようと、9月1日は日曜日なので何かあったらということで2日になった。
Q.オーバーレイ表示するのは画期的だと思うが、場所が下すぎるのでないか。表示位置や大きさの考え方について聞きたい。
A.色々な議論があった。全面取り切りでトップ画面をという話もあったし、技研公開でご覧いただいたときのように、もうすこしかぶせるような形もあった。我々は放送屋なので、何かあったら放送にすぐ戻れる、境界線の低い、心理的には境界線が実践でなく点線でありたいということで半透明にした。
また、メイン画面はメニュー画面。本来は選んだらすぐ消えてしまうイメージで設計したが、やってみたら、なんとなく置いておくほうがよいのではないかという意見もあった。ここは視聴者の方のご意見もいただきたいところだが、放っておいても負担感のない大きさということで選んだ。HTML5なので簡単に表示も変えられる。誤解いただきたくないのは、「ハイブリッドキャストのメイン画面がこう」ということではなく、「NHKの画面はこうですがいかがでしょう」ということ。ぜひ民放さんにも参入してもらいたいが、その局ごとにやってもらいたい。そのあたりは探りながら変えていきたい。
Q.データ放送はどうなるのか。将来的に統合されるのか。
A.中長期的にデータ放送がどうなるかというのはまた別の議論だと思うが、データ放送は今後もしばらく続くと思っている。全てのテレビがネットにつながるとは当面の間は思っていないので、データ放送は必要だと考えている。今回、データ放送とハイブリッドキャストの相互行き来する経路も用意している。
Q.ホーム画面と番組関連画面の関係性はどうなるのか。
A.最後の設計は詰めの段階だが、連動番組の際にdボタンを押すとホームボタンの目立つところに連動ボタンが配置されるようなイメージ。画面上にオーバーレイ表示する場合とスマホに表示させる方法がある。連動しているときはホーム画面は消える。細かい部分は考えなければいけないが、基本的にはホーム画面に連動ボタンが出てくるイメージで考えている。
Q.半透明というが、結構見えない部分もある。見えない部分もあるというのを、番組制作側は納得しているのか。
A.いわゆるスマートテレビで、通信側からかぶせてくるのであれば、放送側としては容認できないだろう。ただ、今回のはメニュー画面。出しっぱなしにしておくわけではない。dボタンで簡単に消える。思ったよりオーバーレイの時間が長いイメージになっているので負担感の少ないデザインにしている。そういう意味で視聴者にも、制作者にもご理解いただけると考えている。
Q.コンテンツを作っていく上での負荷はどれくらいなのか。民放や地方局にとってポイントとなるところだと思うのだが?
A.今年度の場合は試行なので、その範囲内で、コンテンツはデータ放送から持ってきているものも多い。来年度以降も含めて、連動型の番組の場合でも、データ放送で連動している場合に、それと少し違った形で連動するような形になってくると思う。普及段階でハイブリッドキャストのみでのサービスというのは考えにくい。そのため、しばらくは2倍の労力ということでなく、「1.何倍」という形になるだろう。データ放送よりちょっと多い情報をハイブリッドキャストで出すといった具合だ。当面は、現行の制度の範囲内、放送の保管の範囲内でやっていきたい。
Q.放送と通信の融合サービスは今までも色々あったが根付かなかった。今回はどこが違うと思っているのか。
A.スマートテレビ、VOD対応テレビがたくさん登場してきている。今までのそういったテレビは、放送かネットどちらかを選んで切り替えるものが多かった。しかしハイブリッドキャストは、放送を見ながらネットを利用する。本格的な融合、連携がようやくできたと思っている。今まではテレビ各社各様のやり方だった。今回は統一の仕様に基づいてやっている。どこのメーカーのテレビでも、どこの事業者でも共通して使えるのが大きく違っている。今後の成長は大きく期待できると思っている。
Q.コンテンツは放送局が自前で作ることが前提なのか。別のところと連携するのか。
A.現状は自前でやっている。サードパーティの参加については、検討が始まっている。当面、NHKとしては我々自身が責任を持つということで自らが設計する。コンテンツに対する責任を持つという意味で、当面はサードパーティの方のアイディアをいただくことがあったとしてもNHK自身がやることになるだろう。
Q.放送業者が通信をやらなければいけない理由はどこにあるのか。また、ネットが日常に溶け込んだ時代に、テレビとネットがつながるメリットはどこにあるのか。
A.例えばサッカーでも、昔であれば純粋にサッカーを観ているだけで十分だった。しかし今は、例えば手元で検索して選手の情報を得たり、関係する動画を探すなど多面的な目線で視聴している。視聴者が変わってきている。そういう時代にあって、放送はどうしても単線的にひとつの画面とひとつの音で構成していく。ここで通信をうまく活用して、多用な目線で観る方の声に応えられれば、役に立てるのではないかと思っている。ニーズが多用化しているなかで、テレビの側もそれに応えられるようになりたい。そこで放送だけにこだわっていても仕方ないので、新しい楽しみ方を一緒に作って行ければいいのではないかと思っている。
また、放送局側が、取材に基づいてちゃんと放送局自身でネットで情報を出していける。例えば今であればWikipediaを確認するが、これは放送を前提にしたコンテンツではない。放送局側としては新しい演出の形を開拓していき、60年間培ってきた技術からもうひとつのブレークスルーとできればいいかなと思っている。
PCやスマホで情報にアクセスするときは、やっぱり何か複雑な部分もある。データ放送の利用率は高まっている。必要な情報が昔以上に増えているのであれば、テレビで簡単にアクセスしやすい形で提供できればという考えもある。