テレビなどはAP社に一元化
パナソニックが事業方針を発表、 '18年に売上10兆円目指す
パナソニックは、代表取締役社長の津賀一宏氏が出席しての2014年度事業方針説明会を開催。2014年度の経営計画に加え、2018年度には10兆円規模の売上を目指すという方針を発表した。
会見では、2013年度は7.4兆円になる見通しの売上を、2018年度に10兆円規模に成長させることを目標にすると発表。「家電」「住宅」「車載機器」それぞれの事業領域で各2兆円ずつ、「BtoBソリューション」で2.5兆円、車載向け以外の「デバイス」領域で1.5兆円という構成での売上を目指す。
この目標に向け、家電事業では現在のアプライアンス社とAVCネットワークス社の事業を一元化。テレビやレコーダー、オーディオ等の事業も含め、新たなアプライアンス社で事業を行っていく。
この一元化について津賀氏は、「家電は当社のDNAであり、極めて重要な事業だが、ここ数年売上が落ちている。これはスペック優先、イノベーションの不足といった反省点が挙げられる。この反省から家電事業の一元化を行うことにした」とコメント。生活密着型で製品を開発してきたことによる現地適応力などといったアプライアンス社の強みと、グローバル市場で展開してきたことで世界を相手に戦える人材を持つなどというAVC社の強みを融合させることが狙いと説明した。
さらに、アプライアンス社とAVC社の家電部門から人員を集めてワーキンググループを作り、事業の見直しを進めていると紹介。「『融合したからできた』という製品開発を狙ってもらう。例えば現在、掃除機で当社は残念ながら出遅れているが、これは何がいけないのか。こうした点などについても、フォーカスを決めれば、パナソニックはチャレンジングな製品が出せない会社ではないと思っている」と語る。
そして「総花的にやるんだということではいけない。徹底的に見直している」と言葉を続け、2月に発表した新キャンペーンワード「Wonders!」マークの付いた家電がもう少しで次々に出てくるだろうとした。
また、グローバル市場を「日本」「欧米(中南米含む)」「海外戦略地域(アジア・中国・中東阿)」の3つに分け、そこに「家電」「住宅」「車載向け機器」「BtoBソリューション」「デバイス」という5つの事業領域を掛け合わせたマトリクスでの考え方も紹介。家電は海外戦略地域に注力するなど、経営リソースを大胆にシフトしていくとした。
この海外戦略に合わせ、同社は「戦略地域事業推進本部」を設置。全権委譲の上で山田副社長をデリーに駐在させ、脱・日本依存、新しい売上の創造を目指すとした。なお、同社の代表取締役が海外に常駐するのは初めてのことだという。
こうした目標に向け、まず今年度(2013年度)の状況としては、テレビ・パネルや携帯電話など主な赤字事業の止血にメドがたったことなどを説明。財務体質の改善、赤字事業の止血、脱・自前主義による成長・効率化という3点に一定のメドが立ち、連結業績も期初公表値を達成し、復配も実施する見通しであることなどを説明し、「中期計画の1年目の目標を上回る見込みであり、最低限の目標は達成できた」と述べた。
そして2014年度は、売上高7兆7,500億円、営業利益3,100億円、営業利益率4.0%を目標にすると発表。2013年度からスタートさせた中期計画の最終年度である2015年度には営業利益率5%以上、営業利益3,500億円以上を目指すとした。
また事業構造改革についても、中継計画の2,500億円から3,000億円規模へと費用を上積みすることなどで完遂を目指す。2013年度は49事業部で運営しているが、2014年度は統廃合によって43事業部に集約。競争力のある事業を伸ばし、将来が描けない事業は統廃合するとした。
質疑応答では、液晶事業での構造改革がどうなっていくのかという質問も出たが、非テレビ事業へのシフトが着実に成果を挙げていると説明。産業用など「テレビよりも粗利が取れる事業」(津賀社長)へのシフトを進めており、着実に粗利額は上昇していると述べた。
一方で津賀社長は「今はじっくりと関係を積み重ねている段階」とコメント。「2014年度の白字転換にはもう少しかかるが、着実な改善はできると見ている」と続けた。
なお、2014年度の位置付けについて津賀氏は「中期計画の基板を固める年」「2018年の新しいパナソニックに向けた成長戦略を仕込む時期」という2つの側面があると説明。「2014年度は将来に向けて強い企業になるための改革を行っていく」とした。
以下、質疑応答の模様をお届けする。
Q.過去にも10兆円を掲げて未達のことがあった。今回の戦略は過去とどう違うのか。
A.確かに過去、10兆円にトライして何度もはじき返されてきた。因縁の10兆円なのでなんとしても達成したい。以前は、伸びている事業と縮む事業を混在させながら10兆円を目指して失速していた。それに対し、ここ1年で手を打ち、売りを伸ばせば利益も伸びる形になってきた。そういう意味で、新しい形になっている。また、成長領域にどれだけフォーカスできるのか。成長に合わせたところにリソースをシフトしていく。この2点が大きく違うところだ。
Q.10兆円規模を目指すということだが、そこに向けてのリストラ、工場の拠点、人員の規模はどのように考えているのか。
A.2018年の工場や人員について、最初からマクロにイメージを持ってやるわけではない。3×5のマトリクスで、その交点を見たときにどのような形が本当にいいのかということだ。本体に多くの人数を抱えるのがいいのかなど、そういう視点で考え直す。マトリクスで言えば、ひとつひとつのマス目で増えるところ、減るところがある。一概に、「ここにいくら」ということは考えていない。10兆円の問題を3×5のマス目に分けて、より精度を上げて進めようという考えているフェーズだ。
Q.10兆円の売上達成に向けて、どのような投資を行っていくのか。
A.財務状況が改善したとはいえ、今後の資金調達に支障をきたさない形にしてからだと考えている。体質改善を急ぎ、投資をやれる体質になったときに迅速に行っていきたい。
Q.今後の目標達成に向けて2013年度下半期から仕込みを始めるという話を以前にしていたが、この下半期でどのようなことをやったのか。
A.2兆円を3つの分野でということで色々やってきたが、ここで発表できるほどの姿はない。ただ、車載での2兆円はかなりの部分まで見えてきている。住宅も、当初の予定より2割増しくらいで進んでいる。やるべきことは確実に見えてきており、仕込みは着実にできている。
Q.来期の設備投資額などを教えてほしい。
A.中期計画では減価償却の7割程度に抑えるというポリシーにしてやってきた。状況が改善してきたので上積みできるかとは思っているが、設備投資は原価減却より少し抑えてやっっていく。
Q.5つの事業領域と3つの地域を掛け合わせるということについて訊きたい。家電や住宅において、海外戦略地域に注力するというのは研究開発まで現地化するのか。
A.家電と住宅はかなり考え方が異なる。家電は中国やASEANにすでにかなりの開発拠点をもっている。もっと裁量を与えて権限委譲を進める。一方で、住宅はそこまで大きな事業にはなっていない。R&Dについてはやはり日本がどれだけサポートしていけるのかということになる。新しいチャレンジをどれだけできるかだろう。
Q.事業構造改革について、2014年度はどこの部分を対象にやっていくのか。
A.半導体やプラズマ事業などの構造改革に既に着手しているが、道筋はついているが実行しなければなならない部門が残る。利益の面で大きな効果を刈り取ることができるのが2014年度だと認識している。そのなかで費用を積み増すのは、やりきれなかったことを消化する部分と、小さな構造改革として必要な部分に最後の手を打ちきる。そのための費用だ。
Q.家電の国内流通について、かなり変化がありそうな印象を受ける。モデル数、製品の寿命などはどう変化させていくのか。また、流通へのリベートについてはどう考えるのか。
A.国内に限らず、家電事業はより多くのお客様、細かいレベルでわけて、本当に求められるものを提供するというのがある。まず商品軸で、国内で求められるモノは何かというのを明確にしていく必要があるだろう。高齢化が進んでいくし、モノも溢れている時代だ。よりひとりひとりの感性に訴える商品が求められている。性能だけで勝負していくのではいけない。
リベートについては、健全に事業を維持発展させていくことが大事だと思っているので、流通の方々とうまくやっていくのが重要。役割がうまくかみ合う形になっていければと思う。
Q.国内では流通の力が強いとも言われているが?
A.もちろん流通が強いということは認識している。しかし一方で、我々も十分に日本の市場を見据えていい商品を供給し続けてきたのかという反省もある。流通が強いということだけで我々の事業が低迷しているとは考えていない。パナソニックは変わったね、と言われるようにしたい。BtoCでも「Wonders!」と胸をを張って言える努力をしていきたい。そこが流通との関係を築いていく重要なファクターになると思っている。
Q.提携しているテスラモータースが、新たな電池工場へ5000億円を投じるという話もあり、そこでパナソニックとのパートナーシップの話もでているが、ここについてはどう考えているのか。
A.すでに発表している通りの目標についての契約に基づく投資は進めている。ただ、あくまでも車がどれだけ作れるのかというのを毎年情報交換しており、ステップバイステップで着実に進めている状態だ。我々もできるだけ先方と想いを共有して努力したいとは思っているが、投資リスクは今のものより大きくなるのは間違いないため、今ここでスタンスは申し上げられない。
会見では、2013年度は7.4兆円になる見通しの売上を、2018年度に10兆円規模に成長させることを目標にすると発表。「家電」「住宅」「車載機器」それぞれの事業領域で各2兆円ずつ、「BtoBソリューション」で2.5兆円、車載向け以外の「デバイス」領域で1.5兆円という構成での売上を目指す。
この目標に向け、家電事業では現在のアプライアンス社とAVCネットワークス社の事業を一元化。テレビやレコーダー、オーディオ等の事業も含め、新たなアプライアンス社で事業を行っていく。
この一元化について津賀氏は、「家電は当社のDNAであり、極めて重要な事業だが、ここ数年売上が落ちている。これはスペック優先、イノベーションの不足といった反省点が挙げられる。この反省から家電事業の一元化を行うことにした」とコメント。生活密着型で製品を開発してきたことによる現地適応力などといったアプライアンス社の強みと、グローバル市場で展開してきたことで世界を相手に戦える人材を持つなどというAVC社の強みを融合させることが狙いと説明した。
さらに、アプライアンス社とAVC社の家電部門から人員を集めてワーキンググループを作り、事業の見直しを進めていると紹介。「『融合したからできた』という製品開発を狙ってもらう。例えば現在、掃除機で当社は残念ながら出遅れているが、これは何がいけないのか。こうした点などについても、フォーカスを決めれば、パナソニックはチャレンジングな製品が出せない会社ではないと思っている」と語る。
そして「総花的にやるんだということではいけない。徹底的に見直している」と言葉を続け、2月に発表した新キャンペーンワード「Wonders!」マークの付いた家電がもう少しで次々に出てくるだろうとした。
また、グローバル市場を「日本」「欧米(中南米含む)」「海外戦略地域(アジア・中国・中東阿)」の3つに分け、そこに「家電」「住宅」「車載向け機器」「BtoBソリューション」「デバイス」という5つの事業領域を掛け合わせたマトリクスでの考え方も紹介。家電は海外戦略地域に注力するなど、経営リソースを大胆にシフトしていくとした。
この海外戦略に合わせ、同社は「戦略地域事業推進本部」を設置。全権委譲の上で山田副社長をデリーに駐在させ、脱・日本依存、新しい売上の創造を目指すとした。なお、同社の代表取締役が海外に常駐するのは初めてのことだという。
こうした目標に向け、まず今年度(2013年度)の状況としては、テレビ・パネルや携帯電話など主な赤字事業の止血にメドがたったことなどを説明。財務体質の改善、赤字事業の止血、脱・自前主義による成長・効率化という3点に一定のメドが立ち、連結業績も期初公表値を達成し、復配も実施する見通しであることなどを説明し、「中期計画の1年目の目標を上回る見込みであり、最低限の目標は達成できた」と述べた。
そして2014年度は、売上高7兆7,500億円、営業利益3,100億円、営業利益率4.0%を目標にすると発表。2013年度からスタートさせた中期計画の最終年度である2015年度には営業利益率5%以上、営業利益3,500億円以上を目指すとした。
また事業構造改革についても、中継計画の2,500億円から3,000億円規模へと費用を上積みすることなどで完遂を目指す。2013年度は49事業部で運営しているが、2014年度は統廃合によって43事業部に集約。競争力のある事業を伸ばし、将来が描けない事業は統廃合するとした。
質疑応答では、液晶事業での構造改革がどうなっていくのかという質問も出たが、非テレビ事業へのシフトが着実に成果を挙げていると説明。産業用など「テレビよりも粗利が取れる事業」(津賀社長)へのシフトを進めており、着実に粗利額は上昇していると述べた。
一方で津賀社長は「今はじっくりと関係を積み重ねている段階」とコメント。「2014年度の白字転換にはもう少しかかるが、着実な改善はできると見ている」と続けた。
なお、2014年度の位置付けについて津賀氏は「中期計画の基板を固める年」「2018年の新しいパナソニックに向けた成長戦略を仕込む時期」という2つの側面があると説明。「2014年度は将来に向けて強い企業になるための改革を行っていく」とした。
以下、質疑応答の模様をお届けする。
Q.過去にも10兆円を掲げて未達のことがあった。今回の戦略は過去とどう違うのか。
A.確かに過去、10兆円にトライして何度もはじき返されてきた。因縁の10兆円なのでなんとしても達成したい。以前は、伸びている事業と縮む事業を混在させながら10兆円を目指して失速していた。それに対し、ここ1年で手を打ち、売りを伸ばせば利益も伸びる形になってきた。そういう意味で、新しい形になっている。また、成長領域にどれだけフォーカスできるのか。成長に合わせたところにリソースをシフトしていく。この2点が大きく違うところだ。
Q.10兆円規模を目指すということだが、そこに向けてのリストラ、工場の拠点、人員の規模はどのように考えているのか。
A.2018年の工場や人員について、最初からマクロにイメージを持ってやるわけではない。3×5のマトリクスで、その交点を見たときにどのような形が本当にいいのかということだ。本体に多くの人数を抱えるのがいいのかなど、そういう視点で考え直す。マトリクスで言えば、ひとつひとつのマス目で増えるところ、減るところがある。一概に、「ここにいくら」ということは考えていない。10兆円の問題を3×5のマス目に分けて、より精度を上げて進めようという考えているフェーズだ。
Q.10兆円の売上達成に向けて、どのような投資を行っていくのか。
A.財務状況が改善したとはいえ、今後の資金調達に支障をきたさない形にしてからだと考えている。体質改善を急ぎ、投資をやれる体質になったときに迅速に行っていきたい。
Q.今後の目標達成に向けて2013年度下半期から仕込みを始めるという話を以前にしていたが、この下半期でどのようなことをやったのか。
A.2兆円を3つの分野でということで色々やってきたが、ここで発表できるほどの姿はない。ただ、車載での2兆円はかなりの部分まで見えてきている。住宅も、当初の予定より2割増しくらいで進んでいる。やるべきことは確実に見えてきており、仕込みは着実にできている。
Q.来期の設備投資額などを教えてほしい。
A.中期計画では減価償却の7割程度に抑えるというポリシーにしてやってきた。状況が改善してきたので上積みできるかとは思っているが、設備投資は原価減却より少し抑えてやっっていく。
Q.5つの事業領域と3つの地域を掛け合わせるということについて訊きたい。家電や住宅において、海外戦略地域に注力するというのは研究開発まで現地化するのか。
A.家電と住宅はかなり考え方が異なる。家電は中国やASEANにすでにかなりの開発拠点をもっている。もっと裁量を与えて権限委譲を進める。一方で、住宅はそこまで大きな事業にはなっていない。R&Dについてはやはり日本がどれだけサポートしていけるのかということになる。新しいチャレンジをどれだけできるかだろう。
Q.事業構造改革について、2014年度はどこの部分を対象にやっていくのか。
A.半導体やプラズマ事業などの構造改革に既に着手しているが、道筋はついているが実行しなければなならない部門が残る。利益の面で大きな効果を刈り取ることができるのが2014年度だと認識している。そのなかで費用を積み増すのは、やりきれなかったことを消化する部分と、小さな構造改革として必要な部分に最後の手を打ちきる。そのための費用だ。
Q.家電の国内流通について、かなり変化がありそうな印象を受ける。モデル数、製品の寿命などはどう変化させていくのか。また、流通へのリベートについてはどう考えるのか。
A.国内に限らず、家電事業はより多くのお客様、細かいレベルでわけて、本当に求められるものを提供するというのがある。まず商品軸で、国内で求められるモノは何かというのを明確にしていく必要があるだろう。高齢化が進んでいくし、モノも溢れている時代だ。よりひとりひとりの感性に訴える商品が求められている。性能だけで勝負していくのではいけない。
リベートについては、健全に事業を維持発展させていくことが大事だと思っているので、流通の方々とうまくやっていくのが重要。役割がうまくかみ合う形になっていければと思う。
Q.国内では流通の力が強いとも言われているが?
A.もちろん流通が強いということは認識している。しかし一方で、我々も十分に日本の市場を見据えていい商品を供給し続けてきたのかという反省もある。流通が強いということだけで我々の事業が低迷しているとは考えていない。パナソニックは変わったね、と言われるようにしたい。BtoCでも「Wonders!」と胸をを張って言える努力をしていきたい。そこが流通との関係を築いていく重要なファクターになると思っている。
Q.提携しているテスラモータースが、新たな電池工場へ5000億円を投じるという話もあり、そこでパナソニックとのパートナーシップの話もでているが、ここについてはどう考えているのか。
A.すでに発表している通りの目標についての契約に基づく投資は進めている。ただ、あくまでも車がどれだけ作れるのかというのを毎年情報交換しており、ステップバイステップで着実に進めている状態だ。我々もできるだけ先方と想いを共有して努力したいとは思っているが、投資リスクは今のものより大きくなるのは間違いないため、今ここでスタンスは申し上げられない。