中期経営計画「比較的順調な滑り出しができた」
シャープ、'13年度は黒字化達成 − テレビは欧米で低迷も国内や中国/新興国で堅調
シャープは、2013年度の連結決算を発表した。売上高は前年度比18.1%増の2兆9,271億円、営業利益が前年度比2,548億円増の1,085億円、経常利益が2,597億円増の432億円、純利益が5,569億円増の115億円となり、黒字化を達成した。
■液晶テレビは欧米で低迷も国内や中国/新興国で堅調
液晶テレビや携帯電話端末事業が含まれるデジタル情報家電部門は、売上高が前年度比0.2%増の7,333億円。液晶テレビの販売が欧米で低迷したものの、国内で堅調に推移したことに加え、中国や新興国では伸張し、売上は前年度を上回った。今後は消費増税の影響や中国の春節における販促費用精算などにより2014年度の前半は丁重な推移となると予想。液晶テレビや形態電話の新製品の投入によって挽回を図るとした。
また、液晶テレビについては、2013年度は米国市場における競争激化などから販売台数が前年度をわずかに割り込むも、平均単価は増加。今後は4K対応AQUOSやクワトロンプロなど高精細モデルの拡大と、70型/80型/90型といった大型モデルのラインナップ拡充、新興国など重点地域へのローカルフィットモデルの販売強化を行っていくとし、「モスアイ、IGZO、タッチパネルなど有力デバイスを有している強みを活かして収益改善に取り組んでいく」(代表取締役 兼 副社長執行役員 大西徹夫氏)と述べた。
そのほかエアコンなどが含まれる健康環境部門は売上高3,268億円、太陽電池は売上高が前年比68.9%増の4,390億円。ビジネスソリューションの売上高3,188億円で、これらの結果、プロダクトビジネス部門の売上高は前年度比13.8%増の1兆8,180億円となった。
デバイスビジネスでは、液晶事業において、スマートフォンやタブレット端末向けなどの中小型液晶パネルに加え、大型液晶パネルが好調に推移。売上高は前年度比25.2%増の8,147億円となった。また電子デバイスもスマートフォン向けカメラモジュールや近接センサーなどの各種センサーの販売が好調で、前年度比28.3%増の2,943億円を売り上げ、この結果、デバイスビジネス部門の売上高は1兆1,090億円となった。
こうした数値を実現した背景について同社では、4K対応AQUOSや「クワトロンプロ」、IGZO液晶ディスプレイ搭載スマートフォン、国内市場向け太陽電池、モバイル端末向け中小型液晶パネルなど、「特長デバイスと独自商品の創出および販売強化に取り組んだ」と説明。加えて、在庫の低減や設備投資の抑制、経費の徹底削減など全社をあげた経営改善の諸施策を推進した結果であるとした。
■2014年度は通期で300億円の純利益を見込む
2014年度の通期見通しについては、売上高3兆円、営業利益1,000億円、経常利益500億円、純利益300億円を見込む。円安進行に伴って為替前提見直し行い、2013年5月に発表した中期経営計画から売上高を1,800億円増額した一方、円安、新興国通貨安等の外部環境変化を織り込み、営業利益、当期純利益を100億円減額するなどした。なお、液晶事業は2013年度に当初目標の営業利益300億円を達成し、2014年度は550億円の営業利益を目指すという。
国内市場は消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動から、一時的に個人消費の落ち込みが見られるものの、各種経済対策の下支えによる企業収益の改善や家計所得の増加、雇用情勢の改善など景気の回復が期待されると説明。海外については、総じて緩やかな回復が見込まれるものの、米国の金融緩和縮小による影響や、中国・新興国の先行き不透明感、ウクライナにおける地政学的リスクなどから、余談を許さない状況が続くものと思われるとした。
こうした状況に対処すべく、プロダクトビジネスにおいては4K対応AQUOSや「クワトロンプロ」など大型液晶テレビ、狭額縁デザイン「EDGEST」採用のスマートフォンやタブレットを始め、「ココロエンジン」搭載家電や「ヘルシオお茶プレッソ」など、特長商品の拡大を図ると説明。
デバイスビジネスにおいては、液晶と電子デバイスのソリューション提案力を強化するとともに、急拡大が進む中国スマートフォン市場への戦略展開を進める。なお、中国市場では「我々が想定していたよりはるかに早く高精細化に動いている」(代表取締役社長 高橋興三氏)という。
また、IGZO液晶ディスプレイを核とした中小型液晶パネルの顧客拡大や、パネル・実装工場の生産革新、提携先との協業関係強化による液晶工場の安定操業に努めていくとし、亀山第2工場の中小型比率を2014年度上期中に50%へ高めるなどとともに、大型液晶パネルのインチサイズを引き上げていくと説明した。
■中期経営計画「比較的順調な滑り出しができた」
2013年度の業績について、高橋氏は、「中期計画の初年度は、様々な支援をいただき比較的順調な滑り出しができたと感じている」とコメント。「重要テーマとしたブルーレイ事業の収益性改善は一定の成果が得られた。一方、欧州テレビ事業で収益性改善が遅れており、引き続き構造改革を進めていく」などと述べた。
その一方で、「中期計画の初年度はなんとか数字は達成できたが、2014年度は新たにリセットしてゼロからスタートだと思っている」とコメント。「例えばソーラー事業は計画から上ブレしたが、まだ課題が残っている」など個々の部分に課題があるとし、「単年度で見て良い悪いは言い切れない。市場の変化、環境の変化にもっと即応していける体質にしていけない」と続けた。
なお、2014年度は800億円程度の設備投資を予定しており、うち350億円が液晶関係になる見込みだと説明。「大きな工場を新設するなどではなく、新たな設備の投資などを考えている」とした。
また、昨年発表した新規事業創出への取り組みについては、「着実に芽が出始めている」と説明。「弊社の水嶋が当時発表した、2015年度に800億円、初年度は数十億という数字からは若干遅れているが、BtoBは時間がかかるビジネスであるため、私自身のなかでは遅れている認識はない」とし、「あらゆるシーンのお客様にグッドライフを提供する企業を目指し、顧客視点で技術を磨き込んでいく」と語った。
■「けったいな社内文化」はなくなったか?
以下、質疑応答の模様をお届けする。
Q.社長就任から1年がたった。「けったいな社内文化をなくす」と言っていたが、現状はどうなっているか。
A.会社として目指しているのは、外部要因や社会環境が変わったときに、いかに社員が迅速に対応していけるか。そのために情報の流通をよくしていけるが最終的な目標だと思う。そこはまだまだ。そのためにはまだまだ道のりは長いとみている。
Q.競争激化のなかで、中小型液晶の競争力をどう保っていくのか。また、事業の経営リスクをどう捉えているのか。
A.フルHDクラスをIGZOで展開できるようにすることで、IPSとIGZOそれぞれで展開していく強みを我々は持っている。事業のリスクについては、我々はある意味それを一番経験した会社。中小型液晶の顧客について、全体の半分くらいを9社でという説明を1年前にしたが、今はさらに多くのユーザーにしていくということにしている。さらにはアプリケーション自体を車載などにも広げていって、リスクをさけていく。
Q.今期の構造改革の考え方についてもっと具体的に聞きたい。
A.構造改革本部を4月1日付けで解散している。弊社として構造改革は、これからもずっとやっていく普通の事業サイクルのなかでの仕事だと考えている。緊急的な構造改革の必要はないが、構造改革は永遠に終わらないと考えている。
我々のもっている技術を最大限に活かして、商品やサービスにつなげて顧客に提供していく。インフラ事業などができるわけではなく、我々の技術は限られている種類しかない。それをどこかを手放したりやめたりということは不可能だと思う。こうした考えの中で、協業しているところの技術やサプライチェーンを使わせてもらい事業を広げていくのも構造改革のひとつだろう。
Q.亀山工場の稼働率が上がっているとのことだが、現地での雇用増につながっているのか。
A.基本的に堺も亀山も前半工程になるので、従業員はほぼ固定。稼働率が高くても低くても一定だ。
Q.自己資本比率。水準をどう考えているのか。社債の償還。新たな借り入れは必要ないのか。
A.中期計画のなかで初年度としては予想していたレンジ。これ以降、内部留保で自力で自己資本率をあげていく計画で、基本的にはシナリオは変わっていない。社債については、資産圧縮も進んでいるので現金状況はシナリオより良くなっている。手元資金での返済を予定している。
Q.為替想定。1円の動きでの収益増減要因をどうみているのか。
A.ドルでは売上に対して1円で約100億円、利益については影響ない。ユーロは1円で売上で10億円、利益で3億円の影響を見ている。
■液晶テレビは欧米で低迷も国内や中国/新興国で堅調
液晶テレビや携帯電話端末事業が含まれるデジタル情報家電部門は、売上高が前年度比0.2%増の7,333億円。液晶テレビの販売が欧米で低迷したものの、国内で堅調に推移したことに加え、中国や新興国では伸張し、売上は前年度を上回った。今後は消費増税の影響や中国の春節における販促費用精算などにより2014年度の前半は丁重な推移となると予想。液晶テレビや形態電話の新製品の投入によって挽回を図るとした。
また、液晶テレビについては、2013年度は米国市場における競争激化などから販売台数が前年度をわずかに割り込むも、平均単価は増加。今後は4K対応AQUOSやクワトロンプロなど高精細モデルの拡大と、70型/80型/90型といった大型モデルのラインナップ拡充、新興国など重点地域へのローカルフィットモデルの販売強化を行っていくとし、「モスアイ、IGZO、タッチパネルなど有力デバイスを有している強みを活かして収益改善に取り組んでいく」(代表取締役 兼 副社長執行役員 大西徹夫氏)と述べた。
そのほかエアコンなどが含まれる健康環境部門は売上高3,268億円、太陽電池は売上高が前年比68.9%増の4,390億円。ビジネスソリューションの売上高3,188億円で、これらの結果、プロダクトビジネス部門の売上高は前年度比13.8%増の1兆8,180億円となった。
デバイスビジネスでは、液晶事業において、スマートフォンやタブレット端末向けなどの中小型液晶パネルに加え、大型液晶パネルが好調に推移。売上高は前年度比25.2%増の8,147億円となった。また電子デバイスもスマートフォン向けカメラモジュールや近接センサーなどの各種センサーの販売が好調で、前年度比28.3%増の2,943億円を売り上げ、この結果、デバイスビジネス部門の売上高は1兆1,090億円となった。
こうした数値を実現した背景について同社では、4K対応AQUOSや「クワトロンプロ」、IGZO液晶ディスプレイ搭載スマートフォン、国内市場向け太陽電池、モバイル端末向け中小型液晶パネルなど、「特長デバイスと独自商品の創出および販売強化に取り組んだ」と説明。加えて、在庫の低減や設備投資の抑制、経費の徹底削減など全社をあげた経営改善の諸施策を推進した結果であるとした。
■2014年度は通期で300億円の純利益を見込む
2014年度の通期見通しについては、売上高3兆円、営業利益1,000億円、経常利益500億円、純利益300億円を見込む。円安進行に伴って為替前提見直し行い、2013年5月に発表した中期経営計画から売上高を1,800億円増額した一方、円安、新興国通貨安等の外部環境変化を織り込み、営業利益、当期純利益を100億円減額するなどした。なお、液晶事業は2013年度に当初目標の営業利益300億円を達成し、2014年度は550億円の営業利益を目指すという。
国内市場は消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動から、一時的に個人消費の落ち込みが見られるものの、各種経済対策の下支えによる企業収益の改善や家計所得の増加、雇用情勢の改善など景気の回復が期待されると説明。海外については、総じて緩やかな回復が見込まれるものの、米国の金融緩和縮小による影響や、中国・新興国の先行き不透明感、ウクライナにおける地政学的リスクなどから、余談を許さない状況が続くものと思われるとした。
こうした状況に対処すべく、プロダクトビジネスにおいては4K対応AQUOSや「クワトロンプロ」など大型液晶テレビ、狭額縁デザイン「EDGEST」採用のスマートフォンやタブレットを始め、「ココロエンジン」搭載家電や「ヘルシオお茶プレッソ」など、特長商品の拡大を図ると説明。
デバイスビジネスにおいては、液晶と電子デバイスのソリューション提案力を強化するとともに、急拡大が進む中国スマートフォン市場への戦略展開を進める。なお、中国市場では「我々が想定していたよりはるかに早く高精細化に動いている」(代表取締役社長 高橋興三氏)という。
また、IGZO液晶ディスプレイを核とした中小型液晶パネルの顧客拡大や、パネル・実装工場の生産革新、提携先との協業関係強化による液晶工場の安定操業に努めていくとし、亀山第2工場の中小型比率を2014年度上期中に50%へ高めるなどとともに、大型液晶パネルのインチサイズを引き上げていくと説明した。
■中期経営計画「比較的順調な滑り出しができた」
2013年度の業績について、高橋氏は、「中期計画の初年度は、様々な支援をいただき比較的順調な滑り出しができたと感じている」とコメント。「重要テーマとしたブルーレイ事業の収益性改善は一定の成果が得られた。一方、欧州テレビ事業で収益性改善が遅れており、引き続き構造改革を進めていく」などと述べた。
その一方で、「中期計画の初年度はなんとか数字は達成できたが、2014年度は新たにリセットしてゼロからスタートだと思っている」とコメント。「例えばソーラー事業は計画から上ブレしたが、まだ課題が残っている」など個々の部分に課題があるとし、「単年度で見て良い悪いは言い切れない。市場の変化、環境の変化にもっと即応していける体質にしていけない」と続けた。
なお、2014年度は800億円程度の設備投資を予定しており、うち350億円が液晶関係になる見込みだと説明。「大きな工場を新設するなどではなく、新たな設備の投資などを考えている」とした。
また、昨年発表した新規事業創出への取り組みについては、「着実に芽が出始めている」と説明。「弊社の水嶋が当時発表した、2015年度に800億円、初年度は数十億という数字からは若干遅れているが、BtoBは時間がかかるビジネスであるため、私自身のなかでは遅れている認識はない」とし、「あらゆるシーンのお客様にグッドライフを提供する企業を目指し、顧客視点で技術を磨き込んでいく」と語った。
■「けったいな社内文化」はなくなったか?
以下、質疑応答の模様をお届けする。
Q.社長就任から1年がたった。「けったいな社内文化をなくす」と言っていたが、現状はどうなっているか。
A.会社として目指しているのは、外部要因や社会環境が変わったときに、いかに社員が迅速に対応していけるか。そのために情報の流通をよくしていけるが最終的な目標だと思う。そこはまだまだ。そのためにはまだまだ道のりは長いとみている。
Q.競争激化のなかで、中小型液晶の競争力をどう保っていくのか。また、事業の経営リスクをどう捉えているのか。
A.フルHDクラスをIGZOで展開できるようにすることで、IPSとIGZOそれぞれで展開していく強みを我々は持っている。事業のリスクについては、我々はある意味それを一番経験した会社。中小型液晶の顧客について、全体の半分くらいを9社でという説明を1年前にしたが、今はさらに多くのユーザーにしていくということにしている。さらにはアプリケーション自体を車載などにも広げていって、リスクをさけていく。
Q.今期の構造改革の考え方についてもっと具体的に聞きたい。
A.構造改革本部を4月1日付けで解散している。弊社として構造改革は、これからもずっとやっていく普通の事業サイクルのなかでの仕事だと考えている。緊急的な構造改革の必要はないが、構造改革は永遠に終わらないと考えている。
我々のもっている技術を最大限に活かして、商品やサービスにつなげて顧客に提供していく。インフラ事業などができるわけではなく、我々の技術は限られている種類しかない。それをどこかを手放したりやめたりということは不可能だと思う。こうした考えの中で、協業しているところの技術やサプライチェーンを使わせてもらい事業を広げていくのも構造改革のひとつだろう。
Q.亀山工場の稼働率が上がっているとのことだが、現地での雇用増につながっているのか。
A.基本的に堺も亀山も前半工程になるので、従業員はほぼ固定。稼働率が高くても低くても一定だ。
Q.自己資本比率。水準をどう考えているのか。社債の償還。新たな借り入れは必要ないのか。
A.中期計画のなかで初年度としては予想していたレンジ。これ以降、内部留保で自力で自己資本率をあげていく計画で、基本的にはシナリオは変わっていない。社債については、資産圧縮も進んでいるので現金状況はシナリオより良くなっている。手元資金での返済を予定している。
Q.為替想定。1円の動きでの収益増減要因をどうみているのか。
A.ドルでは売上に対して1円で約100億円、利益については影響ない。ユーロは1円で売上で10億円、利益で3億円の影響を見ている。