'14年度は通期500億円の赤字見込み
ソニー、テレビ事業損失縮小も'13年度は1,284億円の赤字
ソニーは、2013年度通期(2013年4月1日〜2014年3月31日)の連結業績を発表した。売上高および営業収入は7兆7,673億円で前年比14.3%増となったものの、営業損益は265億円で前年度から2,000億円減少。当期純損益は前年度415億円の利益に対し、今期は1,284億円の赤字を計上した。
営業損益の大幅な減少については、資産売却にともなう売却益や再評価益が前年度に比べて減少したことと、構造改革費用も含めたPC事業に関連する損失が前年度の386億円から917億円に拡大したこと、ならびに電池事業やディスク製造事業において減損を計上したことなどによるという。
PC事業に関連する損失917億円には、PC事業の収束を決定したことにともなう費用583億円が含まれており、分野別では、455億円がモバイル・プロダクツ&コミュニケーション(以下「MP&C」)分野に、128億円が全社(共通)およびセグメント間取引消去に計上されている。この128億円は、PC事業の収束にともなって発生した販売会社の規模縮小にともなう構造改革費用となる。また583億円のうち、409億円が構造改革費用として認識され、残りの174億円は、余剰となった手元部品在庫に対する評価減などの費用としている。
'13年度の構造改革費用(純額)は、前年度比で31億円増加し806億円で、主にPC事業及び本社や販売会社の構造改革によるもの。PC事業収束にともなう構造改革費用409億円には、PC事業の長期性資産の減損128億円、販売会社の規模縮小にともなう構造改革費用128億円、将来の生産終了にともなって発生した仕入先の発注済部品に対する補償費用80億円、早期退職費用など73億円が含まれる。
また'13年度の営業利益には、2011年度に発生したタイの洪水による損害や損失に対する保険収益(純額)119億円が含まれる。なお前年度には、前述の保険収益(純額)400億円が計上されていた。営業利益に含まれる持分法による投資損失は、前年度に比べ4億円拡大し、74億円となった。
その他の収益(費用・純額)は、前年度の156億円の収益に対し、当年度は8億円の費用に。これは支払利息が減少し、主に投資有価証券売却益が減少したことによるもの。税引前利益は、前年度に比べ2,163億円減少し、257億円となった。
なお、2014年度通期の業績予想値は、売上高がほぼ前年並みの7兆8,000億円、営業利益が1,400億円、税引前利益が1,300億円と予想しているが、PC事業終息に伴う費用と構造改革費用をあわせて1,340億円見込んでおり、通期では500億円の赤字と予想している。
■吉田CFO「期待に応えられず申し訳ない」
本日行われた会見には、代表執行役 EVP CFOの吉田憲一郎氏、業務執行役員 SVPの十時裕樹氏らが出席。冒頭、吉田CFOは「度重なる下方修正などでご迷惑をおかけしたことを、株主様をはじめとした皆様にお詫びしたい。期待に応えられず申し訳ない」と陳謝。業績についても「赤字が1,284億円と、大変厳しい結果となった」と述べた。
吉田CFOは、'14年度に1,340億円の構造改革費用を見込むことについて、PC事業終息に伴う費用が引きつづき360億円程度必要となるほか、販売会社や本社の構造改革費用も想定していると説明。また、新たに減損処理を行う必要が出てくる理由も加味し、1,340億円という費用を見通しとして提示したという。
さらに吉田CFOは、2004年度から2013年度にかけての、エレクトロニクス事業の売上げ・営業利益率の推移を表したグラフを見せ、2007年度はSCEを除くエレクトロニクス事業の売上げが約6兆円だったのに対して、2013年度は3.2兆円程度と、ほぼ半減していることを指摘。「この6年間、ほぼ構造的な赤字となっている」とした。
その上で吉田CFOは、「構造赤字の要因は、外部環境に応じて『事業を変える』『コスト構造を変える』といったアクションが遅れたためと認識している」と分析。
事業の変革についてはPC事業の撤退、コア事業の集中を進めていると説明した。さらにコスト構造については、「規模の変化に応じてコスト構造を変えることも必要」と述べ、20%の固定費削減プランの実行が始まったところだと紹介した。
ただし吉田CFOによると、直近の1,400億円という本社コストは、エレクトロニクス事業が好調だった2007年度に比べて増えているのだという。「強化すべきは本社より事業」と吉田氏は強調するが、本社コストについて「2015年度までに30%削減するという目標を以前から掲げているが、実行はこれからだ」と、進捗に遅れが出ていることも認めた。
■テレビ事業の過去の累積赤字は7,900億円
セグメント別に'13年度の業績を見ていこう。テレビ事業を含むホームエンタテインメント&サウンド分野では、為替の好影響および高付加価値モデルの導入による液晶テレビの製品ミックスの改善などにより、売上高が前年度比17.5%増の1兆1,686億円となった。さらに、液晶テレビの製品ミックスの改善や費用削減効果によって、前年度588億円の営業損失から今期は255億円の損失に縮小した。
このうちテレビ事業単体で見ると、売上げは7,543億円、営業損失は257億円となった。「公約としていた黒字化を達成できなかった」と吉田氏は詫び、その上で「テレビ事業の過去10年の累積赤字は7,900億円に達する。この数字は重く受け止めなければならない」とした。また吉田氏は「過去10年、マネージメント担当者が次々に代わった。私見だが、経営の軸が不安定だったことも、ここまでの赤字が続いた一因であると考えている」と述べた。
■'14年度のテレビ事業は「引きつづきモニタリングを」
'14年度のテレビ事業については「7月に分社化を予定しており、コストの最適化、変化への迅速な対応、経営の自律性などの効果がある。黒字化できるものと考えている」とした。’14年度のテレビ事業の売上げは8,800億円と16.6%増を見込む。台数は昨年の1,350万台から、今期は1,600万台に引き上げる計画だ。ただし吉田氏は「ソニーがテレビ市場をコントロールしているわけではないので、引きつづきモニタリングを続けていきたい」と述べ、楽観視しない姿勢を示した。
モバイル・プロダクツ&コミュニケーション(MP&C)分野は、売上高が前年度比29.6%増の1兆6,301億円、営業損益は前年度比221億円減の750億円となった。スマートフォンの販売台数の大幅な増加と平均販売価格の上昇、ならびに為替の好影響などにより、分野全体で大幅な売上高増となったが、構造改革費用の増加やPC事業の損失拡大によって営業損益は前年度から減少した。
ゲーム分野では、PS4の発売および為替の好影響によって売上高が前年度比38.5%の9,792億円となった。ただしPS4発売に伴う費用の増加、ならびに、Sony Online Entertainment LLCが提供する一部のPC向けゲームソフトウェアタイトルの評価減62億円を計上したことなどにより、営業損益は前年度17億円の利益に対し、今期は81億円の損失となった。
そのほか、カメラ事業を含むイメージング・プロダクツ&ソリューションでは売上高が7,142億円で営業損益が263億円と、ともに前年比増。映画分野では売上高8,296億円、営業損益516億円で、音楽分野も売上高5,033億円、営業損益502億円と、いずれも前年比増となった。
同社では2014年4月1日付けの組織変更に伴い、1Qより主に主にゲーム分野及びMP&C分野を従来構成していた事業を再編し、業績報告におけるビジネスセグメント区分の変更を実施。この再編に関連して、従来のその他分野に含まれていたネットワーク事業をゲーム分野に統合し、ゲーム&ネットワークサービス分野に名称変更する。また、従来のMP&C分野に含まれていたモバイル・コミュニケーションカテゴリーをモバイル・コミュニケーション分野とし、それ以外をその他分野に移管する。
■質疑応答
以下、会見で行われた質疑応答について、主なものを紹介していこう。
Q:構造改革について。エレクトロニクスの赤字が止まらないのは構造改革が進まなかったためとのことだが、それはなぜか。特に本社費用がなぜ増えたのか?
A:真摯に反省しなければならない。大きな現状認識、マクロでエレクトニクス事業を取り巻く環境がどう変化するかという認識が甘かった。金融、エンタメ事業が安定収益を上げていたことも背景にあるかもしれない。いずれにしても真摯に反省し、取り組んでいく。
'14年度の1340億円という構造改革費用の内訳についてだが、PC事業終息費用が360億円だ。ほかには販売会社の構造改革費用、本社の構造改革費用も含まれる。また、これはあまり考えたくないことだが、事業リスクに伴い、減損が出る可能性があるのでこれを盛り込んだ。
Q:税引き前で1300億円の黒字見通し出あることに対して、最終損益は500億円赤字となるのはなぜか。
A:赤字事業と黒字事業が混在していることが一つの理由だ。少数株主持分がある。利益が出ている部門が税金をかなり払っている。
Q:想定よりも構造改革費用が膨らんだのはなぜか。
A:たしかに積み増した。これはリスクもしっかり見ていこうということ。事業の資産性をしっかりチェックしている。たとえば昨年はバッテリーなどで減損を行ったが、これは投資家のみなさんにとってはサプライズだった。こういうことが起きないようにということだ。
Q:PC事業の撤退費用がかさんでいる印象だが、これは想定と比べてどうか。今後の見通しは?
A:想定の範囲内だ。
Q:テレビ事業が'14年度に黒字化すると予想する根拠は?
A:売上げ増とコスト改革、2つのミックスによって黒字化する。率直に言って、事業側の改革はかなり進めた。それに対して販売側は仕掛かり状態だったので、これを進める。もちろん販売コストを下げると、他社の状況もあるので売上げに対するリスクは出るが、コストダウンによって収益の良化につながるのではと考えている。
Q:日立やパナソニックは事業構造の変革を行っている。ソニーでは中長期の成長ストーリーをどう描いているか。
A:物事をすすめる順序が大事だと考えている。まずはコストをしっかりと抑える。次にコア事業への集中を行う。3つ目が新規事業へのチャレンジだ。来週に平井CEOが出席する経営方針説明会があるので、成長戦略について、くわしくはそこで話が出ると思う。
Q:新規事業をどのように育てていこうと考えているか。
A:成長の目があるカテゴリーは、ゲームやネットワークを中心にまだまだある。正しいタイミングで十分な投資ができるかというと難しいので、その力を蓄えるべきだと考えている。いまは大きな案件よりも、小さな案件を行って、そのうちに大きな案件に取り組むというのが良いと思う。
Q:本社や販社の人員削減は行うのか?
A:人員削減を行う事はすでに公表している。2014年度中に、ワールドワイドで5000人を削減する予定だ。できるだけ前倒しでやっていこうと感会えている。
Q:他社に比べ、ソニーだけ経営判断が遅れているのはなぜか?
A:遅れているというご指摘はその通りだ。私の記憶が正しければ、期初に赤字予想というのは2009年度以来。そのときはリーマンショックが原因としてあった。いまはリーマンショックもなく、災害もない。こういった状況下での赤字予想ということに対して真摯に反省し、将来に向けて取り組まなければならない。特にAV事業のボラティリティーを下げていかなければならない。そして、投資ができる会社に一刻も早くならなければならないと考えている。
Q:スマホの採算性をどう確保するか。
A:一つは通信キャリアとの協業関係をしっかり確立することだ。グローバルに事業展開をしていると、サプライチェーンが複雑になる。国ごとに周波数帯、通信方式が違うことがある。これに対応していきたい。
Q:やめるべき事業はほかにもあると考えているか?
A:最近では、欧米のReader Store事業は、Koboに継承した。そういったものは一部にある。将来のことについては今後も検討するが、事業競争の観点などから、現時点ではコメントを差し控えさせて頂きたい。
Q:今回のCFO就任にあたって、平井CEOからはどのようなコメントをもらったか。意気込みは?
A:とにかく、エレクトロニクス事業のターンアラウンドをやって欲しいと言われた。
Q:ソニーショックの頃からずっと構造改革と仰っている。今回で構造改革は終わるか?
A:今回で構造改革を打ち止めにしたい。今期、1350億円という費用を計上したのは、これで打ち止めにしたいということだ。やめる事業を定義したし、販売会社の事業構造改革も行う。組織変革にも手を付けた。
Q:吉田CFOと十時SVPは、久しぶりに本社にもどってきたわけだが、いま何を感じているか。
A:一番感じるのは、人材の優秀さ。ここにいる人たちをしっかり活かしていきたい。また個人的には、ソニーグループでずいぶんチャレンジの場を与えていただいた。良い形で将来にソニーを残していくのが責務だと考えている(吉田氏)。
とにかく責任を感じている。まずはそこに集中していく(十時氏)。
営業損益の大幅な減少については、資産売却にともなう売却益や再評価益が前年度に比べて減少したことと、構造改革費用も含めたPC事業に関連する損失が前年度の386億円から917億円に拡大したこと、ならびに電池事業やディスク製造事業において減損を計上したことなどによるという。
PC事業に関連する損失917億円には、PC事業の収束を決定したことにともなう費用583億円が含まれており、分野別では、455億円がモバイル・プロダクツ&コミュニケーション(以下「MP&C」)分野に、128億円が全社(共通)およびセグメント間取引消去に計上されている。この128億円は、PC事業の収束にともなって発生した販売会社の規模縮小にともなう構造改革費用となる。また583億円のうち、409億円が構造改革費用として認識され、残りの174億円は、余剰となった手元部品在庫に対する評価減などの費用としている。
'13年度の構造改革費用(純額)は、前年度比で31億円増加し806億円で、主にPC事業及び本社や販売会社の構造改革によるもの。PC事業収束にともなう構造改革費用409億円には、PC事業の長期性資産の減損128億円、販売会社の規模縮小にともなう構造改革費用128億円、将来の生産終了にともなって発生した仕入先の発注済部品に対する補償費用80億円、早期退職費用など73億円が含まれる。
また'13年度の営業利益には、2011年度に発生したタイの洪水による損害や損失に対する保険収益(純額)119億円が含まれる。なお前年度には、前述の保険収益(純額)400億円が計上されていた。営業利益に含まれる持分法による投資損失は、前年度に比べ4億円拡大し、74億円となった。
その他の収益(費用・純額)は、前年度の156億円の収益に対し、当年度は8億円の費用に。これは支払利息が減少し、主に投資有価証券売却益が減少したことによるもの。税引前利益は、前年度に比べ2,163億円減少し、257億円となった。
なお、2014年度通期の業績予想値は、売上高がほぼ前年並みの7兆8,000億円、営業利益が1,400億円、税引前利益が1,300億円と予想しているが、PC事業終息に伴う費用と構造改革費用をあわせて1,340億円見込んでおり、通期では500億円の赤字と予想している。
■吉田CFO「期待に応えられず申し訳ない」
本日行われた会見には、代表執行役 EVP CFOの吉田憲一郎氏、業務執行役員 SVPの十時裕樹氏らが出席。冒頭、吉田CFOは「度重なる下方修正などでご迷惑をおかけしたことを、株主様をはじめとした皆様にお詫びしたい。期待に応えられず申し訳ない」と陳謝。業績についても「赤字が1,284億円と、大変厳しい結果となった」と述べた。
吉田CFOは、'14年度に1,340億円の構造改革費用を見込むことについて、PC事業終息に伴う費用が引きつづき360億円程度必要となるほか、販売会社や本社の構造改革費用も想定していると説明。また、新たに減損処理を行う必要が出てくる理由も加味し、1,340億円という費用を見通しとして提示したという。
さらに吉田CFOは、2004年度から2013年度にかけての、エレクトロニクス事業の売上げ・営業利益率の推移を表したグラフを見せ、2007年度はSCEを除くエレクトロニクス事業の売上げが約6兆円だったのに対して、2013年度は3.2兆円程度と、ほぼ半減していることを指摘。「この6年間、ほぼ構造的な赤字となっている」とした。
その上で吉田CFOは、「構造赤字の要因は、外部環境に応じて『事業を変える』『コスト構造を変える』といったアクションが遅れたためと認識している」と分析。
事業の変革についてはPC事業の撤退、コア事業の集中を進めていると説明した。さらにコスト構造については、「規模の変化に応じてコスト構造を変えることも必要」と述べ、20%の固定費削減プランの実行が始まったところだと紹介した。
ただし吉田CFOによると、直近の1,400億円という本社コストは、エレクトロニクス事業が好調だった2007年度に比べて増えているのだという。「強化すべきは本社より事業」と吉田氏は強調するが、本社コストについて「2015年度までに30%削減するという目標を以前から掲げているが、実行はこれからだ」と、進捗に遅れが出ていることも認めた。
■テレビ事業の過去の累積赤字は7,900億円
セグメント別に'13年度の業績を見ていこう。テレビ事業を含むホームエンタテインメント&サウンド分野では、為替の好影響および高付加価値モデルの導入による液晶テレビの製品ミックスの改善などにより、売上高が前年度比17.5%増の1兆1,686億円となった。さらに、液晶テレビの製品ミックスの改善や費用削減効果によって、前年度588億円の営業損失から今期は255億円の損失に縮小した。
このうちテレビ事業単体で見ると、売上げは7,543億円、営業損失は257億円となった。「公約としていた黒字化を達成できなかった」と吉田氏は詫び、その上で「テレビ事業の過去10年の累積赤字は7,900億円に達する。この数字は重く受け止めなければならない」とした。また吉田氏は「過去10年、マネージメント担当者が次々に代わった。私見だが、経営の軸が不安定だったことも、ここまでの赤字が続いた一因であると考えている」と述べた。
■'14年度のテレビ事業は「引きつづきモニタリングを」
'14年度のテレビ事業については「7月に分社化を予定しており、コストの最適化、変化への迅速な対応、経営の自律性などの効果がある。黒字化できるものと考えている」とした。’14年度のテレビ事業の売上げは8,800億円と16.6%増を見込む。台数は昨年の1,350万台から、今期は1,600万台に引き上げる計画だ。ただし吉田氏は「ソニーがテレビ市場をコントロールしているわけではないので、引きつづきモニタリングを続けていきたい」と述べ、楽観視しない姿勢を示した。
モバイル・プロダクツ&コミュニケーション(MP&C)分野は、売上高が前年度比29.6%増の1兆6,301億円、営業損益は前年度比221億円減の750億円となった。スマートフォンの販売台数の大幅な増加と平均販売価格の上昇、ならびに為替の好影響などにより、分野全体で大幅な売上高増となったが、構造改革費用の増加やPC事業の損失拡大によって営業損益は前年度から減少した。
ゲーム分野では、PS4の発売および為替の好影響によって売上高が前年度比38.5%の9,792億円となった。ただしPS4発売に伴う費用の増加、ならびに、Sony Online Entertainment LLCが提供する一部のPC向けゲームソフトウェアタイトルの評価減62億円を計上したことなどにより、営業損益は前年度17億円の利益に対し、今期は81億円の損失となった。
そのほか、カメラ事業を含むイメージング・プロダクツ&ソリューションでは売上高が7,142億円で営業損益が263億円と、ともに前年比増。映画分野では売上高8,296億円、営業損益516億円で、音楽分野も売上高5,033億円、営業損益502億円と、いずれも前年比増となった。
同社では2014年4月1日付けの組織変更に伴い、1Qより主に主にゲーム分野及びMP&C分野を従来構成していた事業を再編し、業績報告におけるビジネスセグメント区分の変更を実施。この再編に関連して、従来のその他分野に含まれていたネットワーク事業をゲーム分野に統合し、ゲーム&ネットワークサービス分野に名称変更する。また、従来のMP&C分野に含まれていたモバイル・コミュニケーションカテゴリーをモバイル・コミュニケーション分野とし、それ以外をその他分野に移管する。
■質疑応答
以下、会見で行われた質疑応答について、主なものを紹介していこう。
Q:構造改革について。エレクトロニクスの赤字が止まらないのは構造改革が進まなかったためとのことだが、それはなぜか。特に本社費用がなぜ増えたのか?
A:真摯に反省しなければならない。大きな現状認識、マクロでエレクトニクス事業を取り巻く環境がどう変化するかという認識が甘かった。金融、エンタメ事業が安定収益を上げていたことも背景にあるかもしれない。いずれにしても真摯に反省し、取り組んでいく。
'14年度の1340億円という構造改革費用の内訳についてだが、PC事業終息費用が360億円だ。ほかには販売会社の構造改革費用、本社の構造改革費用も含まれる。また、これはあまり考えたくないことだが、事業リスクに伴い、減損が出る可能性があるのでこれを盛り込んだ。
Q:税引き前で1300億円の黒字見通し出あることに対して、最終損益は500億円赤字となるのはなぜか。
A:赤字事業と黒字事業が混在していることが一つの理由だ。少数株主持分がある。利益が出ている部門が税金をかなり払っている。
Q:想定よりも構造改革費用が膨らんだのはなぜか。
A:たしかに積み増した。これはリスクもしっかり見ていこうということ。事業の資産性をしっかりチェックしている。たとえば昨年はバッテリーなどで減損を行ったが、これは投資家のみなさんにとってはサプライズだった。こういうことが起きないようにということだ。
Q:PC事業の撤退費用がかさんでいる印象だが、これは想定と比べてどうか。今後の見通しは?
A:想定の範囲内だ。
Q:テレビ事業が'14年度に黒字化すると予想する根拠は?
A:売上げ増とコスト改革、2つのミックスによって黒字化する。率直に言って、事業側の改革はかなり進めた。それに対して販売側は仕掛かり状態だったので、これを進める。もちろん販売コストを下げると、他社の状況もあるので売上げに対するリスクは出るが、コストダウンによって収益の良化につながるのではと考えている。
Q:日立やパナソニックは事業構造の変革を行っている。ソニーでは中長期の成長ストーリーをどう描いているか。
A:物事をすすめる順序が大事だと考えている。まずはコストをしっかりと抑える。次にコア事業への集中を行う。3つ目が新規事業へのチャレンジだ。来週に平井CEOが出席する経営方針説明会があるので、成長戦略について、くわしくはそこで話が出ると思う。
Q:新規事業をどのように育てていこうと考えているか。
A:成長の目があるカテゴリーは、ゲームやネットワークを中心にまだまだある。正しいタイミングで十分な投資ができるかというと難しいので、その力を蓄えるべきだと考えている。いまは大きな案件よりも、小さな案件を行って、そのうちに大きな案件に取り組むというのが良いと思う。
Q:本社や販社の人員削減は行うのか?
A:人員削減を行う事はすでに公表している。2014年度中に、ワールドワイドで5000人を削減する予定だ。できるだけ前倒しでやっていこうと感会えている。
Q:他社に比べ、ソニーだけ経営判断が遅れているのはなぜか?
A:遅れているというご指摘はその通りだ。私の記憶が正しければ、期初に赤字予想というのは2009年度以来。そのときはリーマンショックが原因としてあった。いまはリーマンショックもなく、災害もない。こういった状況下での赤字予想ということに対して真摯に反省し、将来に向けて取り組まなければならない。特にAV事業のボラティリティーを下げていかなければならない。そして、投資ができる会社に一刻も早くならなければならないと考えている。
Q:スマホの採算性をどう確保するか。
A:一つは通信キャリアとの協業関係をしっかり確立することだ。グローバルに事業展開をしていると、サプライチェーンが複雑になる。国ごとに周波数帯、通信方式が違うことがある。これに対応していきたい。
Q:やめるべき事業はほかにもあると考えているか?
A:最近では、欧米のReader Store事業は、Koboに継承した。そういったものは一部にある。将来のことについては今後も検討するが、事業競争の観点などから、現時点ではコメントを差し控えさせて頂きたい。
Q:今回のCFO就任にあたって、平井CEOからはどのようなコメントをもらったか。意気込みは?
A:とにかく、エレクトロニクス事業のターンアラウンドをやって欲しいと言われた。
Q:ソニーショックの頃からずっと構造改革と仰っている。今回で構造改革は終わるか?
A:今回で構造改革を打ち止めにしたい。今期、1350億円という費用を計上したのは、これで打ち止めにしたいということだ。やめる事業を定義したし、販売会社の事業構造改革も行う。組織変革にも手を付けた。
Q:吉田CFOと十時SVPは、久しぶりに本社にもどってきたわけだが、いま何を感じているか。
A:一番感じるのは、人材の優秀さ。ここにいる人たちをしっかり活かしていきたい。また個人的には、ソニーグループでずいぶんチャレンジの場を与えていただいた。良い形で将来にソニーを残していくのが責務だと考えている(吉田氏)。
とにかく責任を感じている。まずはそこに集中していく(十時氏)。