矢板の閉鎖・縮小は行わず
シャープ、'17年度に営業利益1,200億円へ ー テレビは国内に注力、米州は提携検討
既報の通り、シャープ(株)は、2014年度の通期連結業績を発表した。売上高は約2兆7,863億円で、営業損失は約481億円、純損失は約2,223億円と、いずれも今年2月に発表した予想値を大幅に下回った。
大幅な赤字となったことを受けて同社では、2015年度から2017年度の中期経営計画を策定し、発表した。記者向け説明会には高橋興三社長が出席し、自ら説明や質疑への応答を行った。
同社では2013年5月に中期経営計画を掲げて経営改革を行ってきたが、それでも今回大幅な赤字を計上したのは、変化への機敏な対応力の弱さ、成長事業の立ち上げ遅れ、コスト競争力の低下、ガバナンス・経営管理力の不足などにあったと同社では総括。この状況を克服するために新たな計画を策定した。
中期経営計画は、2017年度に売上げ3兆円、営業利益1,200億円をめざす意欲的な計画となっている。ただし純利益については、2015年度は構造改革が継続するため、2016年度に黒字化し、2017年度に黒字拡大することをロードマップとして掲げている。
■外部からの出資を受け入れ財務基盤を再構築
まず財務基盤の再構築では、みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行などの金融機関、また外部第三者としてジャパン・インダストリアル・ソリューションズなどから出資を受ける。金融機関からは、各行1,000億円、計2,000億円の優先株出資を受け入れ、借入金の返済に充てる。一方でジャパン・インダストリアル・ソリューションズ社からは250億円の優先株出資を受け、これは成長戦略を実行するための実行投融資資金として活用していく。
また組織改革も実施。現行の2ビジネスグループ・8事業本部を、「コンシューマーエレクトロニクスカンパニー」「エネルギーソリューションカンパニー」「ビジネスソリューションカンパニー」「電子デバイスカンパニー」「ディスプレイデバイスカンパニー」の、5つのカンパニーに再編する。
このカンパニー制導入のねらいは、コーポレートによる統制の強化と各カンパニーの自律性の確立を両立すること。各カンパニーは財務3表に基づく経営や生産から販売までの一貫体制構築、組織のフラット化による市場変化への迅速な対応などを行っていく。
一部で、将来的に液晶事業を分社化するのではないかという報道があるが、高橋氏は「カンパニー制は分社化につながる」と認めながら、「現時点で外部に分社化するという計画はロードマップにはない。当面は社内分社として行っていく」と観測を否定した。
また液晶ディスプレイデバイスについては、特に「B to B to Bを加速させるのがカギ」とコメント。車載など産業向けの比率を高める。「車載ではフリーフォームディスプレイなど他社にない技術を磨いていく」とした。
■テレビ事業は国内注力、米州は提携を模索
液晶テレビなどが含まれるコンシューマーエレクトロニクスカンパニーについては、既存カテゴリーにおける革新商品創出、ロボットや車載システムなど、新規事業の創出を加速する。
またテレビ事業については、すでに欧州やオーストラリア、ニュージーランド、カナダで事業を収束しているが、米州においてもテレビ事業のアライアンスを検討していく。一方で日本とアジアは戦略地域と位置づけ、矢板事業所も継続していく。
なお米州でのアライアンスについて高橋氏は、「具体的なことは決まっていない・方向性としてアライアンスを探っていくということ」と説明。また矢板事業所の今後については、「国内テレビ事業は戦略市場であり、矢板の閉鎖や縮小は全く考えていない」と明言した。
■希望退職や本社売却などリストラ加速
固定費削減も徹底する。固定費はこれまでも年々下がってきたが、さらなる抜本的な改革を断行することで基礎体力を高める。
具体的には、国内希望退職や海外拠点縮小による人員削減を行う。これはグローバル人員の10%程度で、このうち国内希望退職は3,500人程度を見込んでいる。
なお高橋氏は、2月3日の時点では、人員の余剰感はないと説明していた。その後3ヶ月で方針を大幅に変更した理由について同氏は、「2月3日時点では人員が余剰であるという認識はなかった。だが、その後いろいろと経営環境が悪化するなか、「なぜこうなったか」と考えていく中で、テレビの事業縮小などの話が出てきて、さらに出資も頂くこととなり、成長に舵を切るためにさらなる人員削減を決めた」と説明した。
そのほかのリストラ策では、本社のスリム化を行うほか、大阪・阿倍野にある本社の建物・土地の売却も実施。さらに事業構造・拠点改革の推進、'15年度の給与削減・賞与カットなどもあわせて行い、2015年度の収益改善効果として約285億円/年を見込む。
また、人事改革も実施。等級・報酬制度の見直しを行うほか、やくわりや職種、地域、成果などに応じた処遇の適正化も実施。また年齢や国籍、性別にこだわらない実力ベースの人材登用、組織のフラット化やシンプル化などをおこなっていく。
経営体制の刷新も行う。これまで代表取締役副社長だった水島繁光氏が取締役会長になり、高橋興三社長が今後も代表取締役社長として経営を行っていく。そのほか、長谷川祥典氏が新たに代表取締役に就任する。社外取締役の拡充もあわせて行い、経営監督の強化を行っていく。
■計画遂行が最大の経営責任
なお質疑応答においては、記者から高橋氏の経営責任を問う声が続出。これに対して高橋氏は「今回発表した計画を遂行するのが最大の経営責任だと考えている。現時点でやめることは考えていない」と強調。一方で、「ステークホルダーへの求心力の低下、とりわけ社員からの信頼の回復は、非常に重要と受け止めている」と緊張感を隠さなかった。
説明の最後に高橋社長は、シャープが目指す方向性を3つに分けて説明。「技術のシャープ」を伝統として継承するほか、「目の付けどころがシャープなシャープ」を再強化。そして今回新たに付加するのが「人にいちばん近いシャープ」だ。
高橋氏は「人に寄り添い、新しい価値を提供し続ける企業」として事業を行っていきたいとコメント。これらの施策を通して抜本的構造改革を断行し、安定的な収益基盤を構築すると説明を締めくくった。
大幅な赤字となったことを受けて同社では、2015年度から2017年度の中期経営計画を策定し、発表した。記者向け説明会には高橋興三社長が出席し、自ら説明や質疑への応答を行った。
同社では2013年5月に中期経営計画を掲げて経営改革を行ってきたが、それでも今回大幅な赤字を計上したのは、変化への機敏な対応力の弱さ、成長事業の立ち上げ遅れ、コスト競争力の低下、ガバナンス・経営管理力の不足などにあったと同社では総括。この状況を克服するために新たな計画を策定した。
中期経営計画は、2017年度に売上げ3兆円、営業利益1,200億円をめざす意欲的な計画となっている。ただし純利益については、2015年度は構造改革が継続するため、2016年度に黒字化し、2017年度に黒字拡大することをロードマップとして掲げている。
■外部からの出資を受け入れ財務基盤を再構築
まず財務基盤の再構築では、みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行などの金融機関、また外部第三者としてジャパン・インダストリアル・ソリューションズなどから出資を受ける。金融機関からは、各行1,000億円、計2,000億円の優先株出資を受け入れ、借入金の返済に充てる。一方でジャパン・インダストリアル・ソリューションズ社からは250億円の優先株出資を受け、これは成長戦略を実行するための実行投融資資金として活用していく。
また組織改革も実施。現行の2ビジネスグループ・8事業本部を、「コンシューマーエレクトロニクスカンパニー」「エネルギーソリューションカンパニー」「ビジネスソリューションカンパニー」「電子デバイスカンパニー」「ディスプレイデバイスカンパニー」の、5つのカンパニーに再編する。
このカンパニー制導入のねらいは、コーポレートによる統制の強化と各カンパニーの自律性の確立を両立すること。各カンパニーは財務3表に基づく経営や生産から販売までの一貫体制構築、組織のフラット化による市場変化への迅速な対応などを行っていく。
一部で、将来的に液晶事業を分社化するのではないかという報道があるが、高橋氏は「カンパニー制は分社化につながる」と認めながら、「現時点で外部に分社化するという計画はロードマップにはない。当面は社内分社として行っていく」と観測を否定した。
また液晶ディスプレイデバイスについては、特に「B to B to Bを加速させるのがカギ」とコメント。車載など産業向けの比率を高める。「車載ではフリーフォームディスプレイなど他社にない技術を磨いていく」とした。
■テレビ事業は国内注力、米州は提携を模索
液晶テレビなどが含まれるコンシューマーエレクトロニクスカンパニーについては、既存カテゴリーにおける革新商品創出、ロボットや車載システムなど、新規事業の創出を加速する。
またテレビ事業については、すでに欧州やオーストラリア、ニュージーランド、カナダで事業を収束しているが、米州においてもテレビ事業のアライアンスを検討していく。一方で日本とアジアは戦略地域と位置づけ、矢板事業所も継続していく。
なお米州でのアライアンスについて高橋氏は、「具体的なことは決まっていない・方向性としてアライアンスを探っていくということ」と説明。また矢板事業所の今後については、「国内テレビ事業は戦略市場であり、矢板の閉鎖や縮小は全く考えていない」と明言した。
■希望退職や本社売却などリストラ加速
固定費削減も徹底する。固定費はこれまでも年々下がってきたが、さらなる抜本的な改革を断行することで基礎体力を高める。
具体的には、国内希望退職や海外拠点縮小による人員削減を行う。これはグローバル人員の10%程度で、このうち国内希望退職は3,500人程度を見込んでいる。
なお高橋氏は、2月3日の時点では、人員の余剰感はないと説明していた。その後3ヶ月で方針を大幅に変更した理由について同氏は、「2月3日時点では人員が余剰であるという認識はなかった。だが、その後いろいろと経営環境が悪化するなか、「なぜこうなったか」と考えていく中で、テレビの事業縮小などの話が出てきて、さらに出資も頂くこととなり、成長に舵を切るためにさらなる人員削減を決めた」と説明した。
そのほかのリストラ策では、本社のスリム化を行うほか、大阪・阿倍野にある本社の建物・土地の売却も実施。さらに事業構造・拠点改革の推進、'15年度の給与削減・賞与カットなどもあわせて行い、2015年度の収益改善効果として約285億円/年を見込む。
また、人事改革も実施。等級・報酬制度の見直しを行うほか、やくわりや職種、地域、成果などに応じた処遇の適正化も実施。また年齢や国籍、性別にこだわらない実力ベースの人材登用、組織のフラット化やシンプル化などをおこなっていく。
経営体制の刷新も行う。これまで代表取締役副社長だった水島繁光氏が取締役会長になり、高橋興三社長が今後も代表取締役社長として経営を行っていく。そのほか、長谷川祥典氏が新たに代表取締役に就任する。社外取締役の拡充もあわせて行い、経営監督の強化を行っていく。
■計画遂行が最大の経営責任
なお質疑応答においては、記者から高橋氏の経営責任を問う声が続出。これに対して高橋氏は「今回発表した計画を遂行するのが最大の経営責任だと考えている。現時点でやめることは考えていない」と強調。一方で、「ステークホルダーへの求心力の低下、とりわけ社員からの信頼の回復は、非常に重要と受け止めている」と緊張感を隠さなかった。
説明の最後に高橋社長は、シャープが目指す方向性を3つに分けて説明。「技術のシャープ」を伝統として継承するほか、「目の付けどころがシャープなシャープ」を再強化。そして今回新たに付加するのが「人にいちばん近いシャープ」だ。
高橋氏は「人に寄り添い、新しい価値を提供し続ける企業」として事業を行っていきたいとコメント。これらの施策を通して抜本的構造改革を断行し、安定的な収益基盤を構築すると説明を締めくくった。