音を「カプセル化」
ボブ・スチュワート氏が語る「MQAのいま」。ハイレゾフェス イベントレポート
“ハイレゾのいまを体感する”をテーマに掲げたイベント「HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL」が、3月11日から13日まで東京・表参道のSPIRALにて開催された。
会場ではハイレゾ対応オーディオの試聴ブースに加え、トークセッションやライブレコーディングなど様々なイベントが行われ、カップルや友人連れなど幅広い年代の来場者が訪れ、ハイレゾを楽しんでいた。
13日には、英メリディアン・オーディオが開発した新ロスレス・オーディオコーデック「MQA」の詳細とそのサウンドを体験できるイベントが開催。ロバート(ボブ)・スチュワート氏が来日し、ライターの山本 敦氏の司会のもとプレゼンテーションを行った。会場には多くの来場者が足を運び、関心の高さをうかがうことができた。
「MQA」とは何か?
「MQA」とは「Master Quality Authenticated」の略。オリジナルの音を、リスナーにそのまま届けることをテーマに、神経工学と音響心理学の知見を生かして開発されたコーデックだ。詳細についてはPhile-webでもこれまで山本 敦氏によるこちらやこちらのようなレポートでお伝えしてきた。
「人間の聴覚は『周波数』よりも『時間』に対して鋭敏。自然界では身を守るため、何か音がしたら、それがどの方向の、どのくらいの距離からのものか、瞬時に判別する必要があるからです」とスチュワート氏は語る。
「サンプリングレートが2倍になったからと言って、音質が2倍良くなるというわけではありません。それなのに、データサイズはどんどん大きくなってしまう ― これでは外出先で扱ったりするのは難しいです。現在音楽を聴く方法はいくつかありますが、音質の良さと利便性を兼ね備えたものはなかなかありません。MQAは音質と利便性、互換性を兼ね備えたコーデックを目指して開発しました」
それを可能にしたのが「Music Origami」と呼ばれる独自のエンコードの概念だ。これは、超高域の周波数(図のC部)を「カプセル化」して図B部のノイズフロアの下に隠し、Bの部分をロスレスで圧縮。これをさらに図A部のノイズフロアの下に隠すというもの。「カプセル化」の方法の詳細については明らかにされていないが、ちょうど折り紙のように音楽情報を折りたたむことで大容量データをコンパクトにまとめることができ、MQAデコーダーでそれを展開するというしくみ。もしMQAデコーダーがない場合も、図A部を再生することはできるので、CDクオリティのサウンド再生は可能ということになる。
「25年ほど前からデジタル録音が登場しましたが、アナログのサウンドをデジタル信号に変換する際に、いろいろ問題がが発生するのです ― 時間分解能が悪化し、トランジェントの前後にリンギングが発生することで『音のボケ』が生まれてしまいます。MQAではこの時間の歪みを排除することができるのです」とスチュワート氏は語る。
会場ではボブ・ディランやシナトラなどの50年代の録音、デジタルレコーディング初期に録音されたキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」などをMQAエンコードしたものを試聴デモ。3階のブースでは、同一音源を通常のPCMとMQAエンコードのもので比較試聴することができた。実際に比較試聴してみたところ、特に古いモノラル録音であるシナトラの音源では、音の輪郭がハッキリして実在感が増した印象を受けた。詳細な比較試聴レビューはこちらからご覧いただける。
現在MQAデコーダーを搭載したハードはメリディアンやオンキヨー・パイオニアを筆頭に約10社からリリースされている。また現在、大手も含む約20レーベルでMQA音源の制作が進行中とのこと。エンコード中のアルバムは3,000枚ほどにのぼり、どんどん増加中だという。
オンキヨーの「DP-X1」やパイオニアの「XDP-100R」がMQA対応アップデートされ、国内から気軽に利用できる配信サイトにMQA音源が登場すれば、日本国内でのMQA普及に弾みがつくと考えられる。今後の展開にも注目していきたい。
会場ではハイレゾ対応オーディオの試聴ブースに加え、トークセッションやライブレコーディングなど様々なイベントが行われ、カップルや友人連れなど幅広い年代の来場者が訪れ、ハイレゾを楽しんでいた。
13日には、英メリディアン・オーディオが開発した新ロスレス・オーディオコーデック「MQA」の詳細とそのサウンドを体験できるイベントが開催。ロバート(ボブ)・スチュワート氏が来日し、ライターの山本 敦氏の司会のもとプレゼンテーションを行った。会場には多くの来場者が足を運び、関心の高さをうかがうことができた。
「MQA」とは何か?
「MQA」とは「Master Quality Authenticated」の略。オリジナルの音を、リスナーにそのまま届けることをテーマに、神経工学と音響心理学の知見を生かして開発されたコーデックだ。詳細についてはPhile-webでもこれまで山本 敦氏によるこちらやこちらのようなレポートでお伝えしてきた。
「人間の聴覚は『周波数』よりも『時間』に対して鋭敏。自然界では身を守るため、何か音がしたら、それがどの方向の、どのくらいの距離からのものか、瞬時に判別する必要があるからです」とスチュワート氏は語る。
「サンプリングレートが2倍になったからと言って、音質が2倍良くなるというわけではありません。それなのに、データサイズはどんどん大きくなってしまう ― これでは外出先で扱ったりするのは難しいです。現在音楽を聴く方法はいくつかありますが、音質の良さと利便性を兼ね備えたものはなかなかありません。MQAは音質と利便性、互換性を兼ね備えたコーデックを目指して開発しました」
それを可能にしたのが「Music Origami」と呼ばれる独自のエンコードの概念だ。これは、超高域の周波数(図のC部)を「カプセル化」して図B部のノイズフロアの下に隠し、Bの部分をロスレスで圧縮。これをさらに図A部のノイズフロアの下に隠すというもの。「カプセル化」の方法の詳細については明らかにされていないが、ちょうど折り紙のように音楽情報を折りたたむことで大容量データをコンパクトにまとめることができ、MQAデコーダーでそれを展開するというしくみ。もしMQAデコーダーがない場合も、図A部を再生することはできるので、CDクオリティのサウンド再生は可能ということになる。
「25年ほど前からデジタル録音が登場しましたが、アナログのサウンドをデジタル信号に変換する際に、いろいろ問題がが発生するのです ― 時間分解能が悪化し、トランジェントの前後にリンギングが発生することで『音のボケ』が生まれてしまいます。MQAではこの時間の歪みを排除することができるのです」とスチュワート氏は語る。
会場ではボブ・ディランやシナトラなどの50年代の録音、デジタルレコーディング初期に録音されたキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」などをMQAエンコードしたものを試聴デモ。3階のブースでは、同一音源を通常のPCMとMQAエンコードのもので比較試聴することができた。実際に比較試聴してみたところ、特に古いモノラル録音であるシナトラの音源では、音の輪郭がハッキリして実在感が増した印象を受けた。詳細な比較試聴レビューはこちらからご覧いただける。
現在MQAデコーダーを搭載したハードはメリディアンやオンキヨー・パイオニアを筆頭に約10社からリリースされている。また現在、大手も含む約20レーベルでMQA音源の制作が進行中とのこと。エンコード中のアルバムは3,000枚ほどにのぼり、どんどん増加中だという。
オンキヨーの「DP-X1」やパイオニアの「XDP-100R」がMQA対応アップデートされ、国内から気軽に利用できる配信サイトにMQA音源が登場すれば、日本国内でのMQA普及に弾みがつくと考えられる。今後の展開にも注目していきたい。