CE Chinaはなぜ中国・シンセンで開催されるのか
<GPC>メッセ・ベルリン社ハイテッカー氏が語る、IFAの躍進を実現する「新たな仕掛け」とは?
世界最大のコンシューマーエレクトロニクスショー「IFA2016」は9月2日から7日まで、ドイツの首都・ベルリンで開催される。プレイベントである「IFAグローバル・プレスカンファレンス」では、世界各国からジャーナリストを集めて、今年のIFAの見どころなどが案内される。今年は初めてドイツ国外で姉妹イベントの「CE China」が開催されることもあり、直前に実施されているグローバル・プレスカンファレンスの熱気も徐々に高まりつつある。
今回、グローバル・プレスカンファレンスの会場にて、メッセ・ベルリン社 IFAグローバル統轄本部長のイエンズ・ハイテッカー氏が日本人記者によるグループインタビューに答えた。
−− まずは改めて「CE China」の開催場所に中国のシンセンを選んだ理由は。
ハイテッカー氏(以下敬称略): 毎年ベルリンで開催されるIFAは、コンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスの領域において、世界最大のリーディングショー。中国市場にも洗練された大規模な、コンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスのためのトレードショーが必要という声は前々から聞こえてきていた。今回、中国のリテールパートナーと組むことができ、IFAのよいコンセプトを盛り込んだショーを中国のため、そして将来はアジアのために開催するスタートを切ることができた。
−− なぜ開催地がシンセンなのか。
ハイテッカー: コンシューマーを集めるためなら北京や上海を選ぶ手もあるが、CE Chinaのスタートはまずトレードショーという形から入る。そのため、トレードビジターにとって交通やコミュニケーションの便が良い場所、香港にも近いということでシンセンを選んだ。上海には既にエレクトロニクスも含めたショーの開催実績があったので、「シンセンならCE China」というイメージ作りもしやすい。
−− 4月のこの時期を選んだ理由は。
ハイテッカー: リテールパートナにも、最も商談に有効な時期を聞いた。中国国内では4月・5月がベストという見解で一致したからだ。
−− SUNINGやアリババなど中国の大手リテーラーと組む意義は。彼らがCE Chinaに期待していることは何か。
ハイテッカー: IFAのノウハウを頼りにグローバルなトレードショーを一緒につくることだ。成功すれば中国国内のエレクトロニクスのマーケット構造をより効率の良いものにできる。またIFAの持つ強力なインターナショナルブランドとの接点をつくれることが、彼らにとっては魅力なのだと思う。
−− シンセンにはファーウェイなど大企業の拠点もあるが、なぜCE Chinaに参加していないのか。
ハイテッカー: 展示会、見本市を最初に開催する段階では、出展社の希望を丁寧にリサーチしてそれぞれが確実に成功できるイベントの形を整えることが大事。もちろん声かけはしたが、結果としてCE Chinaは質の高いリテールパートナーとともに綿密なディスカッションを重ねながらスタートを切れたことに満足している。
−− CE Chinaについて、IFAではおなじみのAV系ブランドの出展が少なめに感じられる。特に理由はあるのか。
ハイテッカー: まずはこの形からスタートするということ。よい開催実績を作って、来年の参加のための判断材料を提供したい。
−− 中国経済の景気動向をどうみているか。
ハイテッカー: 昨今の6%〜7%成長という成果をどう見るか、正しく判断しないと見誤る。ベースの器の大きさから、この数字を判断すれば巨大な成長市場だ。そして最も大事なことは、中国では中流階級が急速に育ちつつあるということ。彼らの消費意欲は非常に高く、新しい製品やテクノロジーへの関心も高い。スマートホーム、コネクテッドデバイスに対してもオープンなマインドを持っている。これか世界のブランドが成長する鍵を握っている市場だ。
−− 昨年5月に米CTAが開催した「CES Asia」をどう評価する。CE Chinaとはすみ分けられると思うか。
ハイテッカー: CTAはCES Asiaの開催のため、コンセプトを変えながら何年も下積みを重ねてきた。昨年開催されたイベントの内容はもちろんチェックしたが、やはりCESのように車やモバイルのフィールドを中心としたショーだ。IFAの中心はコンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスなので、差別化は容易だと楽観視している。
−− コンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスを含める「コネクテッドホーム」を実現するためには、車やモバイルの参加も不可欠なのでは。
ハイテッカー: そのためにはまた別の問題がある。例えば、車はエレクトロニクスのリテールショップで買えるものではない。それぞれの販路やビジネス構造が異なっているため、すぐにIFAに組み込むことは難しい。車やモバイルの先端技術を紹介することは大事だが、まずはコアフィールドであるコンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスをしっかりと成功に導くことが大切だ。
−− IFAの開催期間中に、新しく併催されることになった「IFA Global Markets」とはどんなイベントか。なぜ企画されたのか。
ハイテッカー: 近年、メッセ・ベルリンの中に仮設ホールも用意してIFAへの参加希望を吸収する努力を重ねてきたが、例年オーバーブッキングになってご迷惑をおかけしてきた。昨今は特にODM/OEMサイドの参加希望に対応しきれなくなってきたため、ベルリン市内に別途会場を用意してニーズに応えるため「IFA Global Markets」を初めて開催する。もう一つには、IFAの6日間という開催期間中、ずっと出展し続けるのは厳しいという声もあった。そこで会期後半の4日間だけオープンするという、新しい枠組みにIFA Global Marketsはチャレンジする。メッセ・ベルリンからタクシーや地下鉄で約20分とロケーションは悪くない。もちろん移動を伴うので面倒はかけてしまうが、反響次第でまたほかの手も考えたい。
−− 東芝やシャープなど、かつてIFAに参加していたメーカーが抜けたことがIFAのショーに与える影響はないのか。
ハイテッカー: 先ほど申し上げた通り、ホールは既にオーバーブッキングなので、展示スペースに穴が開くという問題はない。しかしながら、クオリティの面での影響はあると思っている。私にとっても、東芝やシャープはMade in Japanの高品質を代表する優秀なブランド。ぜひ帰ってきてほしいと願っている。ただ、一方でエレクトロニクスは非常に展開の速い産業。数年の間に違うブランドが台頭してきている。特に中国ブランドの成長が著しい。かつて日本のブランドが韓国のブランドに追われてきたように、こんどは韓国のブランドが中国のブランドに追いつかれないよう必死になっている。
薄型テレビは今も変わらずコンシューマーエレクトロニクスの主役。デジタル放送やVODなど様々なコンテンツの“トビラ”でもある。販売台数の面でもまだ伸びしろはあるのではないだろうか。テクノロジーの面でもこの数年を振り返れば、目覚ましく成長を遂げている。それぞれの市場で、成功を獲得するための道筋を正しく見つけて、最良の策を立てることが大事だ。だからヨーロッパのIFA、中国のCE Chinaをぜひ活用してほしい。
−− NetflixなどVOD系や、音楽配信系のコンテンツプロバイダーがIFAに参加することはありえないのか。
ハイテッカー: ブースを出展していなくても、これまでにキーノートやカンファレンスでの参加は実現してきた。IFAは放送を基盤としている展示会なので、NetflixなどVOD産業と根本的な構造が異なっているが、新たな構造がコンシューマーのテレビを土台に生まれてきている。今度IFAのあり方にどんな影響を与えるか注視していきたい。
−− 今年のIFAでは、ハードウェアのスタートアップに関する何か新鮮なトピックスはないのか。
ハイテッカー: お話したいことはたくさんあるが、残念ながらまだいまの時点で情報を解禁するわけにはいかない。IFA TechWatchエリアは昨年同様、毎日新しいスタートアップが入れ替わり登場する。ほかにも話題になりそうな、ある仕掛けを用意している。IFA本番を楽しみにしてほしい。
(インタビュー/執筆:山本 敦)
今回、グローバル・プレスカンファレンスの会場にて、メッセ・ベルリン社 IFAグローバル統轄本部長のイエンズ・ハイテッカー氏が日本人記者によるグループインタビューに答えた。
−− まずは改めて「CE China」の開催場所に中国のシンセンを選んだ理由は。
ハイテッカー氏(以下敬称略): 毎年ベルリンで開催されるIFAは、コンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスの領域において、世界最大のリーディングショー。中国市場にも洗練された大規模な、コンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスのためのトレードショーが必要という声は前々から聞こえてきていた。今回、中国のリテールパートナーと組むことができ、IFAのよいコンセプトを盛り込んだショーを中国のため、そして将来はアジアのために開催するスタートを切ることができた。
−− なぜ開催地がシンセンなのか。
ハイテッカー: コンシューマーを集めるためなら北京や上海を選ぶ手もあるが、CE Chinaのスタートはまずトレードショーという形から入る。そのため、トレードビジターにとって交通やコミュニケーションの便が良い場所、香港にも近いということでシンセンを選んだ。上海には既にエレクトロニクスも含めたショーの開催実績があったので、「シンセンならCE China」というイメージ作りもしやすい。
−− 4月のこの時期を選んだ理由は。
ハイテッカー: リテールパートナにも、最も商談に有効な時期を聞いた。中国国内では4月・5月がベストという見解で一致したからだ。
−− SUNINGやアリババなど中国の大手リテーラーと組む意義は。彼らがCE Chinaに期待していることは何か。
ハイテッカー: IFAのノウハウを頼りにグローバルなトレードショーを一緒につくることだ。成功すれば中国国内のエレクトロニクスのマーケット構造をより効率の良いものにできる。またIFAの持つ強力なインターナショナルブランドとの接点をつくれることが、彼らにとっては魅力なのだと思う。
−− シンセンにはファーウェイなど大企業の拠点もあるが、なぜCE Chinaに参加していないのか。
ハイテッカー: 展示会、見本市を最初に開催する段階では、出展社の希望を丁寧にリサーチしてそれぞれが確実に成功できるイベントの形を整えることが大事。もちろん声かけはしたが、結果としてCE Chinaは質の高いリテールパートナーとともに綿密なディスカッションを重ねながらスタートを切れたことに満足している。
−− CE Chinaについて、IFAではおなじみのAV系ブランドの出展が少なめに感じられる。特に理由はあるのか。
ハイテッカー: まずはこの形からスタートするということ。よい開催実績を作って、来年の参加のための判断材料を提供したい。
−− 中国経済の景気動向をどうみているか。
ハイテッカー: 昨今の6%〜7%成長という成果をどう見るか、正しく判断しないと見誤る。ベースの器の大きさから、この数字を判断すれば巨大な成長市場だ。そして最も大事なことは、中国では中流階級が急速に育ちつつあるということ。彼らの消費意欲は非常に高く、新しい製品やテクノロジーへの関心も高い。スマートホーム、コネクテッドデバイスに対してもオープンなマインドを持っている。これか世界のブランドが成長する鍵を握っている市場だ。
−− 昨年5月に米CTAが開催した「CES Asia」をどう評価する。CE Chinaとはすみ分けられると思うか。
ハイテッカー: CTAはCES Asiaの開催のため、コンセプトを変えながら何年も下積みを重ねてきた。昨年開催されたイベントの内容はもちろんチェックしたが、やはりCESのように車やモバイルのフィールドを中心としたショーだ。IFAの中心はコンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスなので、差別化は容易だと楽観視している。
−− コンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスを含める「コネクテッドホーム」を実現するためには、車やモバイルの参加も不可欠なのでは。
ハイテッカー: そのためにはまた別の問題がある。例えば、車はエレクトロニクスのリテールショップで買えるものではない。それぞれの販路やビジネス構造が異なっているため、すぐにIFAに組み込むことは難しい。車やモバイルの先端技術を紹介することは大事だが、まずはコアフィールドであるコンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスをしっかりと成功に導くことが大切だ。
−− IFAの開催期間中に、新しく併催されることになった「IFA Global Markets」とはどんなイベントか。なぜ企画されたのか。
ハイテッカー: 近年、メッセ・ベルリンの中に仮設ホールも用意してIFAへの参加希望を吸収する努力を重ねてきたが、例年オーバーブッキングになってご迷惑をおかけしてきた。昨今は特にODM/OEMサイドの参加希望に対応しきれなくなってきたため、ベルリン市内に別途会場を用意してニーズに応えるため「IFA Global Markets」を初めて開催する。もう一つには、IFAの6日間という開催期間中、ずっと出展し続けるのは厳しいという声もあった。そこで会期後半の4日間だけオープンするという、新しい枠組みにIFA Global Marketsはチャレンジする。メッセ・ベルリンからタクシーや地下鉄で約20分とロケーションは悪くない。もちろん移動を伴うので面倒はかけてしまうが、反響次第でまたほかの手も考えたい。
−− 東芝やシャープなど、かつてIFAに参加していたメーカーが抜けたことがIFAのショーに与える影響はないのか。
ハイテッカー: 先ほど申し上げた通り、ホールは既にオーバーブッキングなので、展示スペースに穴が開くという問題はない。しかしながら、クオリティの面での影響はあると思っている。私にとっても、東芝やシャープはMade in Japanの高品質を代表する優秀なブランド。ぜひ帰ってきてほしいと願っている。ただ、一方でエレクトロニクスは非常に展開の速い産業。数年の間に違うブランドが台頭してきている。特に中国ブランドの成長が著しい。かつて日本のブランドが韓国のブランドに追われてきたように、こんどは韓国のブランドが中国のブランドに追いつかれないよう必死になっている。
薄型テレビは今も変わらずコンシューマーエレクトロニクスの主役。デジタル放送やVODなど様々なコンテンツの“トビラ”でもある。販売台数の面でもまだ伸びしろはあるのではないだろうか。テクノロジーの面でもこの数年を振り返れば、目覚ましく成長を遂げている。それぞれの市場で、成功を獲得するための道筋を正しく見つけて、最良の策を立てることが大事だ。だからヨーロッパのIFA、中国のCE Chinaをぜひ活用してほしい。
−− NetflixなどVOD系や、音楽配信系のコンテンツプロバイダーがIFAに参加することはありえないのか。
ハイテッカー: ブースを出展していなくても、これまでにキーノートやカンファレンスでの参加は実現してきた。IFAは放送を基盤としている展示会なので、NetflixなどVOD産業と根本的な構造が異なっているが、新たな構造がコンシューマーのテレビを土台に生まれてきている。今度IFAのあり方にどんな影響を与えるか注視していきたい。
−− 今年のIFAでは、ハードウェアのスタートアップに関する何か新鮮なトピックスはないのか。
ハイテッカー: お話したいことはたくさんあるが、残念ながらまだいまの時点で情報を解禁するわけにはいかない。IFA TechWatchエリアは昨年同様、毎日新しいスタートアップが入れ替わり登場する。ほかにも話題になりそうな、ある仕掛けを用意している。IFA本番を楽しみにしてほしい。
(インタビュー/執筆:山本 敦)