アップルの動きにも注目
<CES>今年が正念場? Amazon VS Google、音声アシスタント戦争のゆくえ
今年のCESは音声アシスタント関連の発表や対応機器が多いだろうと事前に予想はしていたが、それ以上の勢いだったので驚いた。
それらのほとんどが、「Amazon Alexa」と「Googleアシスタント」のどちらか、あるいは両方に対応していた。特にGoogleは、ラスベガスのモノレールをラッピングしたり、会場に巨大なブースを作ったり、街中で広告展開を仕掛けるなど、先行するAlexaにキャッチアップしようと躍起になっている様子がうかがえた。
少し前までは、スマートスピーカーが両社のバトルの主戦場だった。特に昨年のホリデーシーズンは、Googleが「Google Home」で価格競争を仕掛け、Amazon Echoも一部で追随するなど、激しい戦いが繰り広げられた。
今年はその戦線が、スマートスピーカー以外の機器へも拡大する。というより、AmazonとGoogleがフロントラインを広げる意志を明確にし、それに賛同するメーカーの発表が相次いだという言い方が正しい。
昨年のCESでもAlexaを搭載したスマート冷蔵庫をサムスンとLGが発表し話題を集めたが、今年は対応機器群が一気に拡大した。
スマートスピーカーの売上げではEchoが圧倒しているとはいえ、音声アシスタントが搭載されたら便利になる家電製品は、まだまだ多い。オセロで言えば、まだ空いているマスが多く残っている状態。だから「ここが勝負時」とばかりに、AmazonとGoogleの陣取り合戦が過熱しているわけだ。
■今年はヘッドホン/イヤホンも音声アシスタントが当たり前に
当然ながらオーディオビジュアル機器にも、この陣取りゲームは広がっている。
Amazonは自社が手がけていないヘッドホンやイヤホン、スマートウォッチなどのポータブル機器にもAlexaを広げるべく、開発キットを提供しはじめた。
これまでも独BRAGIなど、自社で努力してAlexaを実装するメーカーはあったが、もっとかんたんに開発できるようお膳立てしたということだ。これを受け、さっそくボーズやB&W、beyerdynamicなどが開発に着手しているという。さらにソリューションプロバイダーにもこのキットが提供されるため、これらの会社からデバイスを購入すれば、すぐAlexa対応ヘッドホンができあがることになる。
Googleもこの分野に力を入れはじめている。昨年、ボーズがいち早くGoogleアシスタント搭載ヘッドホン「QC35II」を発売したが、今回のCESではJBLもGoogleアシスタント搭載ヘッドホンを発表。さらにソニーも新イヤホンでGoogleアシスタントに対応するほか、「1000X」シリーズもアップデートで対応する予定だ。
そのほか、JabraはAmazon AlexaとGoogleアシスタント、そしてSiriにすべて対応したイヤホンを発表。音声アシスタントに全方位対応するという積極的な姿勢をアピールした。
■テレビやプレーヤーにもAlexaやGoogle
ソニーは、テレビにもGoogleアシスタントを搭載する。リモコンにもGoogleアシスタントボタンを備えて、一押しで機能を呼び出せるようにする。ソニーはテレビにAndroid TVを採用しており、Googleと仲が良いことも背景にあるかもしれない。
ソニーだけではない。パナソニックもUHD BDプレーヤーで、Amazon AlexaとGoogleアシスタントに対応する予定だ。極端に単純化して説明すると、マイクから拾った音声データをクラウドに受け渡すだけだから、実装は難しくない。今後も対応機器はますます増えるだろう。
そのほか、オートモーティブの分野にも音声アシスタントが進出する。パナソニックはカー用インフォテイメントシステムにAmazon AlexaとGoogleアシスタントを採用することを、プレスカンファレンスで発表した。カンファレンスにはAmazonの担当者も登壇し、空調設定などの基本機能はオフラインでも動作するなど、自動車への採用にあたって最適化していることをアピールしていた。
またJVCケンウッドも、カーエレクトロニクス製品の展示でGoogleアシスタント対応を大きく謳った。体験ブースでは音声で音楽再生でを行ったりガソリンスタンドを探すといった基本的な操作に加え、自宅の照明をつけたりカギを開閉したりするなど、家と車内をつなぐスマート連携についてもデモが行われた。
■スマートスピーカーからスマートディスプレイへ
さらにGoogleは、スマートスピーカーにディスプレイを搭載した「スマートディスプレイ」を発表した。スピーカーの音声だけでは頭に入らない情報は多い。ディスプレイがあれば、テレビ電話ができたり、レシピを検索してから作り方を動画で見たりなど、音だけでは伝わりづらい情報を目で見て理解できるようになる。
これがAmazonの「Echo Show」に対抗したものであることは明らかだが、Amazonが自社デバイスを展開しているのに対して、Googleは複数のサードパーティーを巻き込み、一気に製品数を増やす作戦に出てきたのが興味深い。GoogleはEcho ShowのアプリからYouTubeへのアクセスを遮断する措置も講じており、次はこのスマートディスプレイ分野の競争が激しくなりそうだ。
■独自のAIを模索するオンキヨー
このように今回のCESでは、様々なカテゴリーでGoogle VS Amazonの対立構図が鮮明に表れていた。本項では紹介しなかったが、それぞれの音声アシスタントからの指示を受け、動作する機器も大量に発表・展示されていた。2018年は引き続き、この両社の音声アシスタントの綱引きに、業界全体が牽引される年になりそうだ。
一方で少し心配なのは、機器の便利さを決定する中核技術が、事実上この2社に握られてしまうということだ。音質やデザイン、フォームファクター、音声アシスタント以外の機能など、差別化要素はほかにたくさんあるとはいえ、両社への依存度が高まるのは間違いない。
この流れにあらがうかのように、オンキヨーは自社と連携しているメーカーやベンダーの技術を集約し、独自の「Onkyo AI」としてまとめ上げた試作機を展示していた。
オンキヨーはAlexaやGoogleアシスタント対応のスマートスピーカーをいち早く発売した。だがスピーディーに対応したからこそ、単にこれらの技術を搭載しただけではすぐキャッチアップされ、差別化しづらくなるという危機感を覚えたであろうことは想像に難くない。
AmazonやGoogleの技術的な成果もうまく採り入れながら、それに完全に取り込まれてしまわぬよう、独自の道も同時に研究するというのは賢いやり方だ。万が一製品として結実しなくても、ノウハウは無駄にならないはず。ほかのメーカーにも、オンキヨーのようなしたたかさを求めたい。
■アップルの動きにも注目したい
アップルの動向にも依然として注目が集まる。アップルのこれまでの戦略からして、Siriをサードパーティー製テレビなどに開放する可能性は低いが、一方でGoogleとAmazonが陣地を拡大するのを指をくわえて見ているだけ、というわけにもいくまい。
独立してネットワークに接続し、音声で操作できる機器が増え、便利になればなるほど、アップルの儲け頭であるiPhoneの重要性が相対的に下がる。「スマホを直接触らなくても大抵のことができる世界」は、アップルにとって最も想定したくない未来だろう。
アップルがこれまでのように自社製ハードとOS、サービスで完結する戦略を採り続けたら、当然ながらネットワーク対応家電をすべてカバーすることはできない。他社に対して積極的に自社サービスの採用を呼びかけるGoogleとAmazonとの距離は広がるばかりだ。
もちろん、このように単純な事実、そして現在の状況に、アップルは当然気づいているだろう。次にどういう手を打ってくるのか。依然として発売されていないHomePodの出来映えも含め、楽しみに待ちたい。
それらのほとんどが、「Amazon Alexa」と「Googleアシスタント」のどちらか、あるいは両方に対応していた。特にGoogleは、ラスベガスのモノレールをラッピングしたり、会場に巨大なブースを作ったり、街中で広告展開を仕掛けるなど、先行するAlexaにキャッチアップしようと躍起になっている様子がうかがえた。
少し前までは、スマートスピーカーが両社のバトルの主戦場だった。特に昨年のホリデーシーズンは、Googleが「Google Home」で価格競争を仕掛け、Amazon Echoも一部で追随するなど、激しい戦いが繰り広げられた。
今年はその戦線が、スマートスピーカー以外の機器へも拡大する。というより、AmazonとGoogleがフロントラインを広げる意志を明確にし、それに賛同するメーカーの発表が相次いだという言い方が正しい。
昨年のCESでもAlexaを搭載したスマート冷蔵庫をサムスンとLGが発表し話題を集めたが、今年は対応機器群が一気に拡大した。
スマートスピーカーの売上げではEchoが圧倒しているとはいえ、音声アシスタントが搭載されたら便利になる家電製品は、まだまだ多い。オセロで言えば、まだ空いているマスが多く残っている状態。だから「ここが勝負時」とばかりに、AmazonとGoogleの陣取り合戦が過熱しているわけだ。
■今年はヘッドホン/イヤホンも音声アシスタントが当たり前に
当然ながらオーディオビジュアル機器にも、この陣取りゲームは広がっている。
Amazonは自社が手がけていないヘッドホンやイヤホン、スマートウォッチなどのポータブル機器にもAlexaを広げるべく、開発キットを提供しはじめた。
これまでも独BRAGIなど、自社で努力してAlexaを実装するメーカーはあったが、もっとかんたんに開発できるようお膳立てしたということだ。これを受け、さっそくボーズやB&W、beyerdynamicなどが開発に着手しているという。さらにソリューションプロバイダーにもこのキットが提供されるため、これらの会社からデバイスを購入すれば、すぐAlexa対応ヘッドホンができあがることになる。
Googleもこの分野に力を入れはじめている。昨年、ボーズがいち早くGoogleアシスタント搭載ヘッドホン「QC35II」を発売したが、今回のCESではJBLもGoogleアシスタント搭載ヘッドホンを発表。さらにソニーも新イヤホンでGoogleアシスタントに対応するほか、「1000X」シリーズもアップデートで対応する予定だ。
そのほか、JabraはAmazon AlexaとGoogleアシスタント、そしてSiriにすべて対応したイヤホンを発表。音声アシスタントに全方位対応するという積極的な姿勢をアピールした。
■テレビやプレーヤーにもAlexaやGoogle
ソニーは、テレビにもGoogleアシスタントを搭載する。リモコンにもGoogleアシスタントボタンを備えて、一押しで機能を呼び出せるようにする。ソニーはテレビにAndroid TVを採用しており、Googleと仲が良いことも背景にあるかもしれない。
ソニーだけではない。パナソニックもUHD BDプレーヤーで、Amazon AlexaとGoogleアシスタントに対応する予定だ。極端に単純化して説明すると、マイクから拾った音声データをクラウドに受け渡すだけだから、実装は難しくない。今後も対応機器はますます増えるだろう。
そのほか、オートモーティブの分野にも音声アシスタントが進出する。パナソニックはカー用インフォテイメントシステムにAmazon AlexaとGoogleアシスタントを採用することを、プレスカンファレンスで発表した。カンファレンスにはAmazonの担当者も登壇し、空調設定などの基本機能はオフラインでも動作するなど、自動車への採用にあたって最適化していることをアピールしていた。
またJVCケンウッドも、カーエレクトロニクス製品の展示でGoogleアシスタント対応を大きく謳った。体験ブースでは音声で音楽再生でを行ったりガソリンスタンドを探すといった基本的な操作に加え、自宅の照明をつけたりカギを開閉したりするなど、家と車内をつなぐスマート連携についてもデモが行われた。
■スマートスピーカーからスマートディスプレイへ
さらにGoogleは、スマートスピーカーにディスプレイを搭載した「スマートディスプレイ」を発表した。スピーカーの音声だけでは頭に入らない情報は多い。ディスプレイがあれば、テレビ電話ができたり、レシピを検索してから作り方を動画で見たりなど、音だけでは伝わりづらい情報を目で見て理解できるようになる。
これがAmazonの「Echo Show」に対抗したものであることは明らかだが、Amazonが自社デバイスを展開しているのに対して、Googleは複数のサードパーティーを巻き込み、一気に製品数を増やす作戦に出てきたのが興味深い。GoogleはEcho ShowのアプリからYouTubeへのアクセスを遮断する措置も講じており、次はこのスマートディスプレイ分野の競争が激しくなりそうだ。
■独自のAIを模索するオンキヨー
このように今回のCESでは、様々なカテゴリーでGoogle VS Amazonの対立構図が鮮明に表れていた。本項では紹介しなかったが、それぞれの音声アシスタントからの指示を受け、動作する機器も大量に発表・展示されていた。2018年は引き続き、この両社の音声アシスタントの綱引きに、業界全体が牽引される年になりそうだ。
一方で少し心配なのは、機器の便利さを決定する中核技術が、事実上この2社に握られてしまうということだ。音質やデザイン、フォームファクター、音声アシスタント以外の機能など、差別化要素はほかにたくさんあるとはいえ、両社への依存度が高まるのは間違いない。
この流れにあらがうかのように、オンキヨーは自社と連携しているメーカーやベンダーの技術を集約し、独自の「Onkyo AI」としてまとめ上げた試作機を展示していた。
オンキヨーはAlexaやGoogleアシスタント対応のスマートスピーカーをいち早く発売した。だがスピーディーに対応したからこそ、単にこれらの技術を搭載しただけではすぐキャッチアップされ、差別化しづらくなるという危機感を覚えたであろうことは想像に難くない。
AmazonやGoogleの技術的な成果もうまく採り入れながら、それに完全に取り込まれてしまわぬよう、独自の道も同時に研究するというのは賢いやり方だ。万が一製品として結実しなくても、ノウハウは無駄にならないはず。ほかのメーカーにも、オンキヨーのようなしたたかさを求めたい。
■アップルの動きにも注目したい
アップルの動向にも依然として注目が集まる。アップルのこれまでの戦略からして、Siriをサードパーティー製テレビなどに開放する可能性は低いが、一方でGoogleとAmazonが陣地を拡大するのを指をくわえて見ているだけ、というわけにもいくまい。
独立してネットワークに接続し、音声で操作できる機器が増え、便利になればなるほど、アップルの儲け頭であるiPhoneの重要性が相対的に下がる。「スマホを直接触らなくても大抵のことができる世界」は、アップルにとって最も想定したくない未来だろう。
アップルがこれまでのように自社製ハードとOS、サービスで完結する戦略を採り続けたら、当然ながらネットワーク対応家電をすべてカバーすることはできない。他社に対して積極的に自社サービスの採用を呼びかけるGoogleとAmazonとの距離は広がるばかりだ。
もちろん、このように単純な事実、そして現在の状況に、アップルは当然気づいているだろう。次にどういう手を打ってくるのか。依然として発売されていないHomePodの出来映えも含め、楽しみに待ちたい。