8K/4K対応、音声やゲーム向け新機能も
対応テレビの準備も完了? 「HDMI 2.1」最新動向をHDMI Licensing CTOに聞く
昨年11月に、米HDMI Forumが正式リリースしたHDMIの次世代規格「HDMI 2.1」(関連ニュース)。その後、デノンやマランツのAVアンプが将来的な対応を表明するなど、一般向け機器における具体的な話が徐々に出て来ている。
今回、HDMI Licensing Administrator,Inc CTO(最高技術責任者)のJeff Park(ジェフ・パーク)氏にHDMI 2.1の最新動向を聞いた。これまで発表された内容のおさらいも含まれるが、本記事を読めばHDMI 2.1の概略がつかめるはずだ。
まず読者が最も気になるのは、HDMI 2.1対応テレビなどのコンシューマー向け機器がいつ登場するのか、ということだろう。日本では4K/8K放送が今年12月にスタートするという背景もあり、早期の登場を望む声が高まっている。
パーク氏は「最終製品の登場スケジュールについては、各製造会社(メーカー)が決定すること」と断りつつ、「今年1月のCESでは、実際に動作するHDMI 2.1対応のトランシーバーチップ、レシーバーチップも出展されていました。また、48Gbpsケーブルについても展示が行われていました」と述べ、準備が着実に行われていることを強調した。
「たしかにHDMI 2.1の新機能では、eARCや自動低レイテンシーモード(Auto Low Latency Mode=ALLM)などが、先に市場へ導入されます。ただし、ちょうど4Kのときも、サッカーのワールドカップ前に製品の発表ラッシュがありました。まだ対応テレビの登場時期が発表されていないのは、技術的な問題というより、よりマーケティング的な側面が強いかもしれません」ともパーク氏は語る。言葉の裏を返せば、すでに技術的な問題はクリアできているということだろう。
さて、ここからはHDMI、およびHDMI 2.1についてパーク氏が行ったプレゼンテーションの模様を紹介していこう。
パーク氏によると、HDMIテクノロジーはますます受け入れられており、2017年には約9億のHDMI対応機器を出荷したという(ケーブル含まず)。またHDMIのライセンシーの数も年々増え、今では1,800社以上のメーカーがHDMIを導入している。最近ではヘルスケア、VR、AR機器などにHDMIが搭載される例が増えているとのことだ。
HDMI Licensingでは、今後もこの伸びは続くと予想。その理由として挙げているのが、4Kテレビの成長が今後も続くと考えられること、そして8Kテレビについても、2020年の東京オリンピックや2022年の北京冬季オリンピックに向け、特に中国で急速に伸張するとみていることだ。
このような背景のもと、HDMI LicensingではHDMI 2.1を導入し、テレビはもちろん、VRやAR、ドローンなど向けの技術を拡充。さらにゲームで必要とされるスムーズさやスピードの向上、ラグやレイテンシーの低減などにも注力していく。
また、スマホやデジカメなどの接続に適しているのが「USB Type-C向けHDMIオルトモード」だ。これは、USB Type-C端子でHDMI対応ソースを直接HDMIディスプレイに映し出せるというもの。今後採用が急速に増えると予想されるUSB Type-C端子をそのまま使え、アダプターやコンバーターなしでHDMI搭載テレビやモニター、プロジェクターなどへ直接つなげる。採用例が増えたら利便性が大きく高まりそうだ。
■HDMI 2.1の新機能、最重要ポイントは高解像度・HFR対応
さて、ここからはようやくHDMI 2.1の説明に移ろう。HDMIのスペックを決めているのはHDMI Forumだが、そこに参加している企業は本日時点で92社だ。参加しているのはメーカー、IT企業、半導体メーカーなど様々だが、Netflixのような配信会社も含まれている。また最近になってディズニーも加わったのだという。
HDMI 2.1に加わる新機能は数多いが、このうちオーディオビジュアルファンにとって最も重要なポイントは、より高解像度かつ高フレームレートな映像が伝送できることだ。
従来の「HDMI 2.0」の帯域が最大18Gbpsであるのに対し、HDMI 2.1では48Gbpsに拡張。これによって8K60p、4K120pといったハイリフレッシュレートの映像や、最大10Kまでの解像度が伝送可能になる。また、他の電子機器に対するEMI(電磁気妨害)に関しても、影響が少なくなるよう対策されている。
なお8K映像の場合、非圧縮で送れるデータは8K/60fps/4:2:0/12bitまでとなるが、HDMI 2.1はVESAの映像圧縮技術「DSC 1.2a」もサポートしている。ちなみにDSCはDisplay Stream Compressionの略称だ。
DSCを使うことで、同じ映像信号フォーマットを、おおむね3分の1のビットレートで送れるという。より高解像度・高フレームレートの映像が伝送できるだけでなく、既存の18Gbps対応ケーブルを使って8K/60fp映像が伝送可能になるという利点もあるという。また高フレームレートへの映像は、VRやARでは、いわゆる「VR酔い」を避けるためにも、特に重要になる。
なお、48Gbpsの信号を通常の銅線ケーブルで伝送するのは、ノイズが混入してしまうため、2〜3mが限界とのこと。だがこれについても、アクティブケーブルや光ケーブルを使うことで、最長50m程度まで伝送が行えることが確認できているという。
そのほか、HDMI 2.1では静的なHDRだけでなく、ダイナミックHDRにも正式に対応する。動的に変化するメタデータを使うことで、より高画質なHDR映像を実現する、としている。具体的にはドルビービジョン、HDR10+などの名前を挙げていた。
また、映像表示前の画面の暗転を解消しスムーズな映像切替が可能となる「クイックメディア切り替え(QMS)」も、地味ながらAVファンには嬉しい機能だ。たとえば60fpsの映像から24fpsの映像へ切り替わるとき、テレビによっては数秒間、画面がブラックアウトすることがある。このQMSでは、このブラックアウトなしに、コンテンツの解像度やフレームレートを瞬時に切り替えられる。
■音声では「eARC」への対応がポイント
音声では、前述した「eARC」への対応が大きなポイントだ。HDMIを使って、テレビからオーディオシステムへ音声信号を送り返す「ARC」(Audio Return Channel)はかなり前から採用されている機能だが、これをenhanced(拡張)したものがeARCとなる。
eARCは、より接続を簡素化しながら、ドルビーアトモスやDTS:Xなどのオブジェクトオーディオ、そして最大32chまでの非圧縮オーディオをサポートする。特にオブジェクトオーディオに対応したことがポイントで、これでテレビ向け映像配信のオブジェクトオーディオ対応も進むかもしれない。
■ゲームやVR向けの遅延対策機能が充実
そのほか、ゲーム向けのリフレッシュレート可変機能「VRR」にも対応している。これはたとえばゲームにおいて、あまり動きがないときは低フレームレートで解像度を上げ、ボタンを連打したらフレームレートを上げて、解像度より滑らかさを優先する…などの使い方が考えられる。リフレッシュレートが可変になることで、インタラクションラグやフレームのスタッター、スキップ、フリーズ、ティアリングなども低減するという。
また同じくリフレッシュレートを向上させる機能として、レイテンシーを低減し、ゲームやVRコンテンツのラグを解消する「クイックフレームトランスポート(QFT)」などに対応する。具体的には、映像ソース機器から動画を送り出す時間を短縮する。これによって結果的にレイテンシーが減少する。ゲームだけでなく、 VRでのタイムラグも低減。またカラオケでの映像と音声のズレを抑えるのにも有効だという。
最後に「自動レイテンシーモード(Auto Low Latency Mode=ALLM)」について紹介しよう。これは、楽しむコンテンツの種類に応じて、自動的にレイテンシー設定が行われるというものだ。たとえば映画の場合はレイテンシーよりも画質を優先する、ゲームやVRの場合はレイテンシーを優先する、といった設定を、自動的に切り替えてくれる。
◇
ユーザー体験を高める新機能が盛りだくさんのHDMI 2.1。対応機器が増えたらオーディオビジュアルライフがますます豊かなものになるはずだ。早期の対応製品登場を期待したい。
今回、HDMI Licensing Administrator,Inc CTO(最高技術責任者)のJeff Park(ジェフ・パーク)氏にHDMI 2.1の最新動向を聞いた。これまで発表された内容のおさらいも含まれるが、本記事を読めばHDMI 2.1の概略がつかめるはずだ。
まず読者が最も気になるのは、HDMI 2.1対応テレビなどのコンシューマー向け機器がいつ登場するのか、ということだろう。日本では4K/8K放送が今年12月にスタートするという背景もあり、早期の登場を望む声が高まっている。
パーク氏は「最終製品の登場スケジュールについては、各製造会社(メーカー)が決定すること」と断りつつ、「今年1月のCESでは、実際に動作するHDMI 2.1対応のトランシーバーチップ、レシーバーチップも出展されていました。また、48Gbpsケーブルについても展示が行われていました」と述べ、準備が着実に行われていることを強調した。
「たしかにHDMI 2.1の新機能では、eARCや自動低レイテンシーモード(Auto Low Latency Mode=ALLM)などが、先に市場へ導入されます。ただし、ちょうど4Kのときも、サッカーのワールドカップ前に製品の発表ラッシュがありました。まだ対応テレビの登場時期が発表されていないのは、技術的な問題というより、よりマーケティング的な側面が強いかもしれません」ともパーク氏は語る。言葉の裏を返せば、すでに技術的な問題はクリアできているということだろう。
さて、ここからはHDMI、およびHDMI 2.1についてパーク氏が行ったプレゼンテーションの模様を紹介していこう。
パーク氏によると、HDMIテクノロジーはますます受け入れられており、2017年には約9億のHDMI対応機器を出荷したという(ケーブル含まず)。またHDMIのライセンシーの数も年々増え、今では1,800社以上のメーカーがHDMIを導入している。最近ではヘルスケア、VR、AR機器などにHDMIが搭載される例が増えているとのことだ。
HDMI Licensingでは、今後もこの伸びは続くと予想。その理由として挙げているのが、4Kテレビの成長が今後も続くと考えられること、そして8Kテレビについても、2020年の東京オリンピックや2022年の北京冬季オリンピックに向け、特に中国で急速に伸張するとみていることだ。
このような背景のもと、HDMI LicensingではHDMI 2.1を導入し、テレビはもちろん、VRやAR、ドローンなど向けの技術を拡充。さらにゲームで必要とされるスムーズさやスピードの向上、ラグやレイテンシーの低減などにも注力していく。
また、スマホやデジカメなどの接続に適しているのが「USB Type-C向けHDMIオルトモード」だ。これは、USB Type-C端子でHDMI対応ソースを直接HDMIディスプレイに映し出せるというもの。今後採用が急速に増えると予想されるUSB Type-C端子をそのまま使え、アダプターやコンバーターなしでHDMI搭載テレビやモニター、プロジェクターなどへ直接つなげる。採用例が増えたら利便性が大きく高まりそうだ。
■HDMI 2.1の新機能、最重要ポイントは高解像度・HFR対応
さて、ここからはようやくHDMI 2.1の説明に移ろう。HDMIのスペックを決めているのはHDMI Forumだが、そこに参加している企業は本日時点で92社だ。参加しているのはメーカー、IT企業、半導体メーカーなど様々だが、Netflixのような配信会社も含まれている。また最近になってディズニーも加わったのだという。
HDMI 2.1に加わる新機能は数多いが、このうちオーディオビジュアルファンにとって最も重要なポイントは、より高解像度かつ高フレームレートな映像が伝送できることだ。
従来の「HDMI 2.0」の帯域が最大18Gbpsであるのに対し、HDMI 2.1では48Gbpsに拡張。これによって8K60p、4K120pといったハイリフレッシュレートの映像や、最大10Kまでの解像度が伝送可能になる。また、他の電子機器に対するEMI(電磁気妨害)に関しても、影響が少なくなるよう対策されている。
なお8K映像の場合、非圧縮で送れるデータは8K/60fps/4:2:0/12bitまでとなるが、HDMI 2.1はVESAの映像圧縮技術「DSC 1.2a」もサポートしている。ちなみにDSCはDisplay Stream Compressionの略称だ。
DSCを使うことで、同じ映像信号フォーマットを、おおむね3分の1のビットレートで送れるという。より高解像度・高フレームレートの映像が伝送できるだけでなく、既存の18Gbps対応ケーブルを使って8K/60fp映像が伝送可能になるという利点もあるという。また高フレームレートへの映像は、VRやARでは、いわゆる「VR酔い」を避けるためにも、特に重要になる。
なお、48Gbpsの信号を通常の銅線ケーブルで伝送するのは、ノイズが混入してしまうため、2〜3mが限界とのこと。だがこれについても、アクティブケーブルや光ケーブルを使うことで、最長50m程度まで伝送が行えることが確認できているという。
そのほか、HDMI 2.1では静的なHDRだけでなく、ダイナミックHDRにも正式に対応する。動的に変化するメタデータを使うことで、より高画質なHDR映像を実現する、としている。具体的にはドルビービジョン、HDR10+などの名前を挙げていた。
また、映像表示前の画面の暗転を解消しスムーズな映像切替が可能となる「クイックメディア切り替え(QMS)」も、地味ながらAVファンには嬉しい機能だ。たとえば60fpsの映像から24fpsの映像へ切り替わるとき、テレビによっては数秒間、画面がブラックアウトすることがある。このQMSでは、このブラックアウトなしに、コンテンツの解像度やフレームレートを瞬時に切り替えられる。
■音声では「eARC」への対応がポイント
音声では、前述した「eARC」への対応が大きなポイントだ。HDMIを使って、テレビからオーディオシステムへ音声信号を送り返す「ARC」(Audio Return Channel)はかなり前から採用されている機能だが、これをenhanced(拡張)したものがeARCとなる。
eARCは、より接続を簡素化しながら、ドルビーアトモスやDTS:Xなどのオブジェクトオーディオ、そして最大32chまでの非圧縮オーディオをサポートする。特にオブジェクトオーディオに対応したことがポイントで、これでテレビ向け映像配信のオブジェクトオーディオ対応も進むかもしれない。
■ゲームやVR向けの遅延対策機能が充実
そのほか、ゲーム向けのリフレッシュレート可変機能「VRR」にも対応している。これはたとえばゲームにおいて、あまり動きがないときは低フレームレートで解像度を上げ、ボタンを連打したらフレームレートを上げて、解像度より滑らかさを優先する…などの使い方が考えられる。リフレッシュレートが可変になることで、インタラクションラグやフレームのスタッター、スキップ、フリーズ、ティアリングなども低減するという。
また同じくリフレッシュレートを向上させる機能として、レイテンシーを低減し、ゲームやVRコンテンツのラグを解消する「クイックフレームトランスポート(QFT)」などに対応する。具体的には、映像ソース機器から動画を送り出す時間を短縮する。これによって結果的にレイテンシーが減少する。ゲームだけでなく、 VRでのタイムラグも低減。またカラオケでの映像と音声のズレを抑えるのにも有効だという。
最後に「自動レイテンシーモード(Auto Low Latency Mode=ALLM)」について紹介しよう。これは、楽しむコンテンツの種類に応じて、自動的にレイテンシー設定が行われるというものだ。たとえば映画の場合はレイテンシーよりも画質を優先する、ゲームやVRの場合はレイテンシーを優先する、といった設定を、自動的に切り替えてくれる。
ユーザー体験を高める新機能が盛りだくさんのHDMI 2.1。対応機器が増えたらオーディオビジュアルライフがますます豊かなものになるはずだ。早期の対応製品登場を期待したい。