UHD BD対応エコシステムも準備完了
<IFA>パナソニック、最新UHD BDプレーヤーで「HDR10+」をデモ。HDR10+対応の進捗状況も聞いた
■遂にテレビ対応がスタート!「HDR10+」の現在
20世紀FOX・パナソニック・サムスンらが推進する、HDR10にメタデータを付与する拡張規格「HDR10+」。IFA 2018に先立ち「HDR10+」対応のリリースが出された通り(関連ニュース)、IFA 2018の会場ではパナソニック、サムスンブースで「HDR10+」対応モデルが正式披露された。
AVファンにとって注目のデモを行っていたのが、パナソニックブースのUltraHD Blu-ray(UHD BD)プレーヤーのコーナーだ。欧州で発売されるUltraHD Blu-rayプレーヤーの最新モデル「UB-824」を用いて、実際にUltraHD Blu-rayのディスクからHDR10+を読み取り再生している。
デモが行われたタイトルは『メイズ・ランナー 最期の迷宮』『スリービルボード』『キングスマン ゴールデンサークル』『グレイテストショーマン』『レッド・スパロー』『デッドプール2』。いずれも20世紀FOXのビッグタイトルであり、HDR10+の離陸直前を印象付けるものだった(なお、あくまでも会場での視聴デモであり、これらのタイトルが発売時にHDR10+対応することをを確約するものではない)。
HDR10+について、本サイトでは昨年IFAでの規格発表時(関連ニュース)から、CESでの拡大(関連ニュース)をレポートしてきているが、今回その続報をパナソニックの柏木氏らから伺うことができた。
■HDR10+ライセンスに80社以上が申し込み、テレビ/プレーヤーも対応完了
2018年に入ってからの動きとしては、6月20日よりHDR10+の技術ライセンスの認証プログラムを開始(関連ニュース)、その成果は2018年8年末の時点で80社以上がライセンスに申し込むという大きな反響を受けているとのこと。
HDR10+のライセンスは、テレビ/Blu-ray(ソース機器)/ツール/SoC/コンテンツの5カテゴリーで受付が行われており、ライセンス費用は機器ごとのロイヤリティはなく管理団体であるLLCの運営やロゴの登録・管理に充てられる年会費のみ。現在、手続きが完了してライセンシーとなった会社は全26社にものぼり、順調に業界内で広まりつつある。
HDR10+のロゴについては、認証機関として東京のアリオンジャパン、韓国TTL社が外部認証機関として参加。パナソニック、サムスンのHDR10+モデルも認証を得るかたちでロゴを取得し、HDR10+対応機器に使用している。
パナソニックのHDR10+対応テレビは、2018年の欧州モデルの有機ELテレビ「FZ950(日本のFZ1000相当)」「FZ800(日本のFZ950相当)」、液晶テレビでは「FX780」「FX740」「FX700」の5機種。いずれもファームウェアアップデートでHDR10+対応とし、HDR10+ロゴを取得している。なお、プレーヤーについては欧州モデルの「DP-UB820」「DP-UB420」が6月28日付けで対応済みとなる。
■HDR10+のロゴプログラムも運用スタート
AVファンにとって気になるHDR10+のロゴを取得する際のテスト内容だが、大きく分けて2つある。
ひとつはパネル単体での性能で、パネルの輝度性能、色域のP3(DCI)に対するカバー率、RGBプライマリといった基本性能が測定される。ただし、パネルの輝度性能については250nitと、一般的なテレビでクリアできる基準に抑えられている。これは、元来のHDR10+の理念が、Ultra HD Premium(液晶テレビでは1000nits以上が基準)ほどの性能を出せないテレビの高画質化を目指したものであるためだ。
もう1つのテストが、メタデータを読み込み、適切にトーンマッピングが行われているかの実装確認だ。これらの基準を満たし、認証を通過することで、HDR10+ロゴを利用できる。なお、ロゴの使用料は無償だ。
注意して欲しいのは、HDR10+に対応した機器でも、HDR10+ロゴを取得できないケースがあることだ。
例えばHDR10+のロゴプログラムには“プロジェクター”というカテゴリは存在しないため、現時点でプロジェクターはHDR10+のロゴを取得することはできない。しかし、HDR10+のライセンシーとなれば、ロゴの有無にかかわらず、技術的にHDR10+の信号のメタデータを受け取り、映像表示の際のトーンマッピングに活用することは可能だ。
むしろホームシアターを想定して輝度性能が低く、また画面サイズによっても表示輝度の変わるプロジェクターは、メタデータを有効に活用したい表示機器とも呼べるだろう。こうした現状を踏まえて、HDR10+側としては「プロジェクターについては、団体側でも扱いを考えていきたい」としている。
HDR10+ロゴの対象カテゴリーについては、プロジェクターに限った話ではなく、例えばスマホやタブレット、ヘッドマウントディスプレイといったロゴプログラムから外れるデバイスでも、メタデータを読み取り活用することも可能だ。故に、ロゴを付けるかどうかは別としても、実質的なHDR10+のメタデータ読み取り対応という形で、業界内でHDR10+普及していくことも考えられるだろう。
■HDR10+のUltraHD Blu-ray対応エコシステムも準備完了
HDR10+のエコシステムも拡大中だ。既に完全に動き出しているのがAmazonによる「プライム・ビデオ」で、2017年12月よりHDR10+での配信をスタートしている。「プライム・ビデオではHDR10のみで配信対応している作品はない。一部Dolby Visionで配信している作品以外は、すべてHDR10+で配信中」というのだから、その本腰ぶりが分かることだろう。
Ultra HD Blu-rayの場合はどうか。こちらはディスクであり、プレーヤーで再生し、さらにHDMIを通して伝送してテレビへ入力と、途中に様々な過程が入るが、そのすべての過程でHDR10+の準備が整い始めている。
Ultra HD Blu-rayのオーサリングツールは業界標準の「Scenarist」とパナソニック製ツールが対応済みで、Ultra HD Blu-rayプレーヤーはパナソニックが発売している。プレーヤーに対するBDA公式認定のUltra HD Blu-rayのベリファイ(検証用)アディスクは、なんとHDR10+とDolby Visionの両方収録版が用意されている(ワーナーが両対応を発表しているため)。
HDMI機器向けにも、すでにテストツールが用意されているとのこと。HDMIの規格は2.0bなので、現行モデルでもすでにアップデートで対応が可能となっている。
◇
以上、HDR10+の進捗を取材すると、2018年はすでに「HDR10+レディ」の年と言って良いだろう。Amazonのプライム・ビデオは昨年からHDR10+で作品配信しているし、テレビは2018年のパナソニック、サムスン製テレビから対応が始まる。そして、Ultra HD Blu-rayの再生についても必要なツールが揃い、あとは作品のリリースと公式発表を待つだけだ。
2018年末、そして2019年は「HDR10+」がHDR対応の次なるキーワードとなっていく未来も見えてきたと言える。
(折原一也)
20世紀FOX・パナソニック・サムスンらが推進する、HDR10にメタデータを付与する拡張規格「HDR10+」。IFA 2018に先立ち「HDR10+」対応のリリースが出された通り(関連ニュース)、IFA 2018の会場ではパナソニック、サムスンブースで「HDR10+」対応モデルが正式披露された。
AVファンにとって注目のデモを行っていたのが、パナソニックブースのUltraHD Blu-ray(UHD BD)プレーヤーのコーナーだ。欧州で発売されるUltraHD Blu-rayプレーヤーの最新モデル「UB-824」を用いて、実際にUltraHD Blu-rayのディスクからHDR10+を読み取り再生している。
デモが行われたタイトルは『メイズ・ランナー 最期の迷宮』『スリービルボード』『キングスマン ゴールデンサークル』『グレイテストショーマン』『レッド・スパロー』『デッドプール2』。いずれも20世紀FOXのビッグタイトルであり、HDR10+の離陸直前を印象付けるものだった(なお、あくまでも会場での視聴デモであり、これらのタイトルが発売時にHDR10+対応することをを確約するものではない)。
HDR10+について、本サイトでは昨年IFAでの規格発表時(関連ニュース)から、CESでの拡大(関連ニュース)をレポートしてきているが、今回その続報をパナソニックの柏木氏らから伺うことができた。
■HDR10+ライセンスに80社以上が申し込み、テレビ/プレーヤーも対応完了
2018年に入ってからの動きとしては、6月20日よりHDR10+の技術ライセンスの認証プログラムを開始(関連ニュース)、その成果は2018年8年末の時点で80社以上がライセンスに申し込むという大きな反響を受けているとのこと。
HDR10+のライセンスは、テレビ/Blu-ray(ソース機器)/ツール/SoC/コンテンツの5カテゴリーで受付が行われており、ライセンス費用は機器ごとのロイヤリティはなく管理団体であるLLCの運営やロゴの登録・管理に充てられる年会費のみ。現在、手続きが完了してライセンシーとなった会社は全26社にものぼり、順調に業界内で広まりつつある。
HDR10+のロゴについては、認証機関として東京のアリオンジャパン、韓国TTL社が外部認証機関として参加。パナソニック、サムスンのHDR10+モデルも認証を得るかたちでロゴを取得し、HDR10+対応機器に使用している。
パナソニックのHDR10+対応テレビは、2018年の欧州モデルの有機ELテレビ「FZ950(日本のFZ1000相当)」「FZ800(日本のFZ950相当)」、液晶テレビでは「FX780」「FX740」「FX700」の5機種。いずれもファームウェアアップデートでHDR10+対応とし、HDR10+ロゴを取得している。なお、プレーヤーについては欧州モデルの「DP-UB820」「DP-UB420」が6月28日付けで対応済みとなる。
■HDR10+のロゴプログラムも運用スタート
AVファンにとって気になるHDR10+のロゴを取得する際のテスト内容だが、大きく分けて2つある。
ひとつはパネル単体での性能で、パネルの輝度性能、色域のP3(DCI)に対するカバー率、RGBプライマリといった基本性能が測定される。ただし、パネルの輝度性能については250nitと、一般的なテレビでクリアできる基準に抑えられている。これは、元来のHDR10+の理念が、Ultra HD Premium(液晶テレビでは1000nits以上が基準)ほどの性能を出せないテレビの高画質化を目指したものであるためだ。
もう1つのテストが、メタデータを読み込み、適切にトーンマッピングが行われているかの実装確認だ。これらの基準を満たし、認証を通過することで、HDR10+ロゴを利用できる。なお、ロゴの使用料は無償だ。
注意して欲しいのは、HDR10+に対応した機器でも、HDR10+ロゴを取得できないケースがあることだ。
例えばHDR10+のロゴプログラムには“プロジェクター”というカテゴリは存在しないため、現時点でプロジェクターはHDR10+のロゴを取得することはできない。しかし、HDR10+のライセンシーとなれば、ロゴの有無にかかわらず、技術的にHDR10+の信号のメタデータを受け取り、映像表示の際のトーンマッピングに活用することは可能だ。
むしろホームシアターを想定して輝度性能が低く、また画面サイズによっても表示輝度の変わるプロジェクターは、メタデータを有効に活用したい表示機器とも呼べるだろう。こうした現状を踏まえて、HDR10+側としては「プロジェクターについては、団体側でも扱いを考えていきたい」としている。
HDR10+ロゴの対象カテゴリーについては、プロジェクターに限った話ではなく、例えばスマホやタブレット、ヘッドマウントディスプレイといったロゴプログラムから外れるデバイスでも、メタデータを読み取り活用することも可能だ。故に、ロゴを付けるかどうかは別としても、実質的なHDR10+のメタデータ読み取り対応という形で、業界内でHDR10+普及していくことも考えられるだろう。
■HDR10+のUltraHD Blu-ray対応エコシステムも準備完了
HDR10+のエコシステムも拡大中だ。既に完全に動き出しているのがAmazonによる「プライム・ビデオ」で、2017年12月よりHDR10+での配信をスタートしている。「プライム・ビデオではHDR10のみで配信対応している作品はない。一部Dolby Visionで配信している作品以外は、すべてHDR10+で配信中」というのだから、その本腰ぶりが分かることだろう。
Ultra HD Blu-rayの場合はどうか。こちらはディスクであり、プレーヤーで再生し、さらにHDMIを通して伝送してテレビへ入力と、途中に様々な過程が入るが、そのすべての過程でHDR10+の準備が整い始めている。
Ultra HD Blu-rayのオーサリングツールは業界標準の「Scenarist」とパナソニック製ツールが対応済みで、Ultra HD Blu-rayプレーヤーはパナソニックが発売している。プレーヤーに対するBDA公式認定のUltra HD Blu-rayのベリファイ(検証用)アディスクは、なんとHDR10+とDolby Visionの両方収録版が用意されている(ワーナーが両対応を発表しているため)。
HDMI機器向けにも、すでにテストツールが用意されているとのこと。HDMIの規格は2.0bなので、現行モデルでもすでにアップデートで対応が可能となっている。
以上、HDR10+の進捗を取材すると、2018年はすでに「HDR10+レディ」の年と言って良いだろう。Amazonのプライム・ビデオは昨年からHDR10+で作品配信しているし、テレビは2018年のパナソニック、サムスン製テレビから対応が始まる。そして、Ultra HD Blu-rayの再生についても必要なツールが揃い、あとは作品のリリースと公式発表を待つだけだ。
2018年末、そして2019年は「HDR10+」がHDR対応の次なるキーワードとなっていく未来も見えてきたと言える。
(折原一也)