「WEAR SPACE」。2.8万円から
パナソニック、装着すると視界が狭まりノイズ遮断、集中力が高まる新デバイス。クラウドファンディング開始
パナソニックは、装着するだけでどこでもパーソナルスペースを構築できるというウェアラブル端末「WEAR SPACE」を(株)Shiftallと合同プロジェクトとして立ち上げ、本日2日13時より、CCCグループが運営するGREEN FUNDINGでクラウドファンディングを開始した。Panasonicブランドではなく、WEAR SPACE Projectブランドの製品として展開される。
価格は28,000円(税込)から、製品が手元に届くのは2019年8月以降を予定している。プロジェクトの目標金額は1,500万円で、「All-or-Nothing」方式でクラウドファンディングが実施されるため、目標金額に到達しない場合はプロジェクトは実行されない。なお、本製品はパナソニックが開発したプロダクトとして初の、クラウドファンディング実施製品になる。企画・デザインはパナソニック、生産・販売はShiftallが行う。
WEAR SPACEは、視界を遮るパーティションと、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホンで構成。「装着すると集中力が高まるパーソナル空間を生み出す」ことをコンセプトとした端末となる。基本的にはパーテーションからの側圧でヘッドホンを頭部に固定させて装着する仕様となるが、頭の小さい女性など向けに装着を補助するアームも取り付けられている。重さは330g。
本日、このWEAR SPACEの発表会を、六本木・東京ミッドタウン内「ワークスタイリング」にて開催。会場ではWEAR SPACEの試作機も披露されたが、これらは試作品であり現時点では「デザインコンセプト」のレベルとのこと。今後、クラウドファンディングとして開発が進められていくという。
合同でプロジェクトを展開するShiftallは、パナソニックを経て、Cerevoを企業した岩佐琢磨氏が2018年4月に設立したパナソニックのグループ会社。主にIoT製品を扱い、設計・開発から販売サポートまでを行う。発表会では、岩佐琢磨氏も登場して本製品のコンセプトやShiftallの取り組みについて紹介した。
WEAR SPACEの企画・デザインは、パナソニックの家電デザイン部門で先行開発を担当する「FUTURE LIFE FACTORY(FLF)」が担当。本製品は、2017年には、国際的なプロダクトデザイン賞として知られる「Red Dot Design Award」のデザインコンセプト部門において「Best of the Best Award(ベスト・オブ・ザ・ベスト賞)」を受賞している。
WEAR SPACEの特徴については、FLFの姜 花瑛氏が説明を行った。WEAR SPACEはノイズキャンセリング機能搭載ヘッドホンとファブリックパーテーションで構成。主に5つの特徴を備えている。
1つめは視界を狭めることで目の前の作業に集中できるパーテーション。水平視野を6割カットして、目の前の集中したい作業に集中できる。このパーテーションはファブリック素材で覆われている。視界を限定するのが目的であり、防音性能は備えていない。
2つめは周囲の雑音を打ち消すアクティブノイズキャンセリング機能。専用アプリも登場予定で、ノイズキャンセリングの効き具合を3段階で調整可能になる予定だという。発表会で展示された試作機では、パナソニックのノイズキャンセリング対応Bluetoothヘッドホン「RP-HD600」のヘッドホン部が用いられていた。しかし最終モデルにおいてパナソニックのヘッドホン/ノイズキャンセリング技術を採用するかどうかは検討中だという。
3つめは、Bluetoothヘッドホンとして音楽再生にも対応。上述のようにヘッドホン部の使用は現在検討中とのこと。動画編集や楽曲編集に使うだけでなく、作業用BGMのリスニングにも用いることができるとしている。
4つめは快適さを追求した新しい装着スタイル。ヘッドホンとパーテーションを一体化して「空間を着る」というコンセプトを具現化したという。ノイズキャンセリング性能を維持するための側圧と快適な装着感の両立を、試作を繰り返して追求。質量約330gという軽量性も実現した。
5つめは一目で集中していることが周囲にわかるデザイン。今集中して作業していることを周囲に示すことができ、周りがそれを察して声をかけないようにする効果もあるとしている。
本製品の開発背景としては、オフィスのフリーアドレス化やオープンなレイアウトが取り入れられる中で、オープンな環境ならではのコミュニケーションの活性化の一方で、他人の会話や雑音、人の動きによって集中力が妨げられるという問題があったという。こうした環境において生産性を高めて仕事に集中できる環境を整えるべく、このWEAR SPACEが開発されたという。姜氏は「どんな空間でも、自分の心理的な空間を作って、作業に没頭することができる」と述べていた。
ユーザーはソフトエンジニア、WEBデザイナーなどのデスクワーカーを想定。それ以外にもスポーツの試合前での集中などにも活用できると考えているという。
実際の利用例も紹介。「YUMMY SAKE」は日本酒の味覚判定サービスだが、イベントでの利き酒の際にWEAR SPACEを味覚に集中するデバイスとして利用。ASDやADHDなどの発達障害の方を支援する「TENTONTO」は、同障害の生活支援ツールとしてWEAR SPACEを利用してる。
なお、WEAR SPACEを使って集中力が高まる効果は、現時点で感性評価に基づいたものであり、医学的な測定・検証は現時点で行われていないという。ただ、今後はこうした検証の実施を検討しているとのこと。
現時点でWEAR SPACEが体験できる場所は、発表会が行われたWORK STYLE東京ミッドタウン、蔦谷家電2階のRELIFE STUDIO FUTAKO、代官山ティーンズ・クリエイティブの3ヶ所。WORK STYLE東京ミッドタウンでは使用したユーザーに対してアンケートを行い、実際にそれを製品開発に参考にしたという。
パナソニックの家電デザインを担当する同 アプライアンス社 APデザインセンター所長の臼井重雄氏も登壇。パナソニックには現在3つのデザインセンターを擁するが、アプライアンスセンターは家電のデザインを担当する。
臼井氏は「家電に求められるものが“体験”へとシフトするなかで、狭義のデザインから広義のデザインへの転換が我々の大きなテーマになっている」とコメント。APデザインセンターが世界5ヶ所に拠点設ける中で、東京のLFLは「事業部にとらわれない新領域の先行開発」を行う部門に位置付けられ、こうしたテーマに答える製品開発やビジョン策定を担当しているとした。
発表会では今回のプロジェクトの目的についても紹介。最大の目的は、「新しい事業機会を素早く検証すること」だという。具体的には、パナソニックから新規商品を素早く世の中に送り出すスキームを開拓することが、Shiftallと合同で今回のプロジェクトを実施する目的となる。発表会では「パナソニックが既存事業に囚われない商品を出せる会社になることを目指す」とも紹介された。
この点について姜氏は「LFLでは新しい生活文化をつくることを目指してきたが、社内の提案だけでは生活文化を変えられない。生活文化をつくるためには、商品化にこだわって世に出していくことが重要。WEAR SPACEはパナソニック全体でいえば小さなプロダクトだが、それが新しい生活文化の創造に繋がればと考えている」とした。
発表会では、岩佐琢磨氏がパナソニックにおけるShiftallの役割について紹介。岩佐氏はShiftallの役割を「輸血係」と表現。スタートアップの血をパナソニックに輸血していくと述べた。
また、岩佐氏は大企業(あくまで大企業、パナソニックではないとのこと)が巨大になっていく過程で失った要素として「エッジの効いた製品」「短期間に小さなロットで製品を迅速に市場に投入していくノウハウ」「Non Serial inovation(連続的ではない、0から創造するイノベーション)」の3つを挙げ、Shiftallがパナソニックにこうした要素をもたらすことを目指すとした。
なお、Shiftallは今後、独自製品とパナソニック協業製品の両方を平行して手がけていくとのこと。独自製品については、「2019年1月のCES 2019で発表する予定」(岩佐氏)とのことだった。
WEAR SPACEのコンセプトについても言及。岩佐氏は「世の中のイノベーションは、実際は“フォーク”(連続性のある技術から、下図のようにはみ出したものがイノベーションになる、という意味)、でもイカれたフォークが新しい文化を作る」とし、例としてロボット掃除機を挙げた。WEAR SPACEについては「音楽を聴く機器」としてのヘッドホンを、「集中する機器」として“フォークさせた”ものだと述べた。
質疑応答では、岩佐氏に対して「在職時代と今で、パナソニックの変わったところとそうでないところを教えてほしい」という質問が向けられた。岩佐氏は「トップが危機感を持って何かアクションをしないといけないと考えているのが変わったところで、組織においてトップダウンが効き始めている。変わっていないのは、相変わらずブレーキ役が多いところ。若手がアクセルを踏むのを、中間層がブレーキをかけて引き戻すということが未だに多い」と答えていた。
価格は28,000円(税込)から、製品が手元に届くのは2019年8月以降を予定している。プロジェクトの目標金額は1,500万円で、「All-or-Nothing」方式でクラウドファンディングが実施されるため、目標金額に到達しない場合はプロジェクトは実行されない。なお、本製品はパナソニックが開発したプロダクトとして初の、クラウドファンディング実施製品になる。企画・デザインはパナソニック、生産・販売はShiftallが行う。
WEAR SPACEは、視界を遮るパーティションと、ノイズキャンセリング機能付きヘッドホンで構成。「装着すると集中力が高まるパーソナル空間を生み出す」ことをコンセプトとした端末となる。基本的にはパーテーションからの側圧でヘッドホンを頭部に固定させて装着する仕様となるが、頭の小さい女性など向けに装着を補助するアームも取り付けられている。重さは330g。
本日、このWEAR SPACEの発表会を、六本木・東京ミッドタウン内「ワークスタイリング」にて開催。会場ではWEAR SPACEの試作機も披露されたが、これらは試作品であり現時点では「デザインコンセプト」のレベルとのこと。今後、クラウドファンディングとして開発が進められていくという。
合同でプロジェクトを展開するShiftallは、パナソニックを経て、Cerevoを企業した岩佐琢磨氏が2018年4月に設立したパナソニックのグループ会社。主にIoT製品を扱い、設計・開発から販売サポートまでを行う。発表会では、岩佐琢磨氏も登場して本製品のコンセプトやShiftallの取り組みについて紹介した。
WEAR SPACEの企画・デザインは、パナソニックの家電デザイン部門で先行開発を担当する「FUTURE LIFE FACTORY(FLF)」が担当。本製品は、2017年には、国際的なプロダクトデザイン賞として知られる「Red Dot Design Award」のデザインコンセプト部門において「Best of the Best Award(ベスト・オブ・ザ・ベスト賞)」を受賞している。
WEAR SPACEの特徴については、FLFの姜 花瑛氏が説明を行った。WEAR SPACEはノイズキャンセリング機能搭載ヘッドホンとファブリックパーテーションで構成。主に5つの特徴を備えている。
1つめは視界を狭めることで目の前の作業に集中できるパーテーション。水平視野を6割カットして、目の前の集中したい作業に集中できる。このパーテーションはファブリック素材で覆われている。視界を限定するのが目的であり、防音性能は備えていない。
2つめは周囲の雑音を打ち消すアクティブノイズキャンセリング機能。専用アプリも登場予定で、ノイズキャンセリングの効き具合を3段階で調整可能になる予定だという。発表会で展示された試作機では、パナソニックのノイズキャンセリング対応Bluetoothヘッドホン「RP-HD600」のヘッドホン部が用いられていた。しかし最終モデルにおいてパナソニックのヘッドホン/ノイズキャンセリング技術を採用するかどうかは検討中だという。
3つめは、Bluetoothヘッドホンとして音楽再生にも対応。上述のようにヘッドホン部の使用は現在検討中とのこと。動画編集や楽曲編集に使うだけでなく、作業用BGMのリスニングにも用いることができるとしている。
4つめは快適さを追求した新しい装着スタイル。ヘッドホンとパーテーションを一体化して「空間を着る」というコンセプトを具現化したという。ノイズキャンセリング性能を維持するための側圧と快適な装着感の両立を、試作を繰り返して追求。質量約330gという軽量性も実現した。
5つめは一目で集中していることが周囲にわかるデザイン。今集中して作業していることを周囲に示すことができ、周りがそれを察して声をかけないようにする効果もあるとしている。
本製品の開発背景としては、オフィスのフリーアドレス化やオープンなレイアウトが取り入れられる中で、オープンな環境ならではのコミュニケーションの活性化の一方で、他人の会話や雑音、人の動きによって集中力が妨げられるという問題があったという。こうした環境において生産性を高めて仕事に集中できる環境を整えるべく、このWEAR SPACEが開発されたという。姜氏は「どんな空間でも、自分の心理的な空間を作って、作業に没頭することができる」と述べていた。
ユーザーはソフトエンジニア、WEBデザイナーなどのデスクワーカーを想定。それ以外にもスポーツの試合前での集中などにも活用できると考えているという。
実際の利用例も紹介。「YUMMY SAKE」は日本酒の味覚判定サービスだが、イベントでの利き酒の際にWEAR SPACEを味覚に集中するデバイスとして利用。ASDやADHDなどの発達障害の方を支援する「TENTONTO」は、同障害の生活支援ツールとしてWEAR SPACEを利用してる。
なお、WEAR SPACEを使って集中力が高まる効果は、現時点で感性評価に基づいたものであり、医学的な測定・検証は現時点で行われていないという。ただ、今後はこうした検証の実施を検討しているとのこと。
現時点でWEAR SPACEが体験できる場所は、発表会が行われたWORK STYLE東京ミッドタウン、蔦谷家電2階のRELIFE STUDIO FUTAKO、代官山ティーンズ・クリエイティブの3ヶ所。WORK STYLE東京ミッドタウンでは使用したユーザーに対してアンケートを行い、実際にそれを製品開発に参考にしたという。
パナソニックの家電デザインを担当する同 アプライアンス社 APデザインセンター所長の臼井重雄氏も登壇。パナソニックには現在3つのデザインセンターを擁するが、アプライアンスセンターは家電のデザインを担当する。
臼井氏は「家電に求められるものが“体験”へとシフトするなかで、狭義のデザインから広義のデザインへの転換が我々の大きなテーマになっている」とコメント。APデザインセンターが世界5ヶ所に拠点設ける中で、東京のLFLは「事業部にとらわれない新領域の先行開発」を行う部門に位置付けられ、こうしたテーマに答える製品開発やビジョン策定を担当しているとした。
発表会では今回のプロジェクトの目的についても紹介。最大の目的は、「新しい事業機会を素早く検証すること」だという。具体的には、パナソニックから新規商品を素早く世の中に送り出すスキームを開拓することが、Shiftallと合同で今回のプロジェクトを実施する目的となる。発表会では「パナソニックが既存事業に囚われない商品を出せる会社になることを目指す」とも紹介された。
この点について姜氏は「LFLでは新しい生活文化をつくることを目指してきたが、社内の提案だけでは生活文化を変えられない。生活文化をつくるためには、商品化にこだわって世に出していくことが重要。WEAR SPACEはパナソニック全体でいえば小さなプロダクトだが、それが新しい生活文化の創造に繋がればと考えている」とした。
発表会では、岩佐琢磨氏がパナソニックにおけるShiftallの役割について紹介。岩佐氏はShiftallの役割を「輸血係」と表現。スタートアップの血をパナソニックに輸血していくと述べた。
また、岩佐氏は大企業(あくまで大企業、パナソニックではないとのこと)が巨大になっていく過程で失った要素として「エッジの効いた製品」「短期間に小さなロットで製品を迅速に市場に投入していくノウハウ」「Non Serial inovation(連続的ではない、0から創造するイノベーション)」の3つを挙げ、Shiftallがパナソニックにこうした要素をもたらすことを目指すとした。
なお、Shiftallは今後、独自製品とパナソニック協業製品の両方を平行して手がけていくとのこと。独自製品については、「2019年1月のCES 2019で発表する予定」(岩佐氏)とのことだった。
WEAR SPACEのコンセプトについても言及。岩佐氏は「世の中のイノベーションは、実際は“フォーク”(連続性のある技術から、下図のようにはみ出したものがイノベーションになる、という意味)、でもイカれたフォークが新しい文化を作る」とし、例としてロボット掃除機を挙げた。WEAR SPACEについては「音楽を聴く機器」としてのヘッドホンを、「集中する機器」として“フォークさせた”ものだと述べた。
質疑応答では、岩佐氏に対して「在職時代と今で、パナソニックの変わったところとそうでないところを教えてほしい」という質問が向けられた。岩佐氏は「トップが危機感を持って何かアクションをしないといけないと考えているのが変わったところで、組織においてトップダウンが効き始めている。変わっていないのは、相変わらずブレーキ役が多いところ。若手がアクセルを踏むのを、中間層がブレーキをかけて引き戻すということが未だに多い」と答えていた。