騒音環境での難聴リスクも調査
地下鉄で音楽を聴くなら、難聴予防に「ノイズキャンセリング機能」が有用。順天堂大研究グループが発表
順天堂大学の研究グループは、各種イヤホン装着時の音楽聴取の実験を通じて、地下鉄の騒音環境下での音楽聴取は難聴リスクを高めること、またイヤホンの「ノイズキャンセリング機能」が難聴予防に有効とする研究結果を発表した。
本研究は、近年若者を中心に増加しているという“娯楽性難聴”に関して、特に地下鉄など騒音環境下でイヤホンで音楽を聴く場合について調査したもの。順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター耳鼻咽喉科の池田勝久特任教授、電気通信大学大学院情報理工学研究科の小池卓二教授、順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座・リハビリテーション室の保科卓成言語聴覚士らによる研究グループによって行われた。
娯楽性難聴とは騒音性難聴のひとつで、クラブやディスコ、コンサートやスポーツ観戦など娯楽施設での騒音暴露や、音楽プレーヤーなど娯楽機器での過大音聴取によって引き起こされるもの。
耳の感覚細胞は、定期的または長期に及んで大きな音に晒されることにより徐々に傷つき、永久的な聴力損失につながるとされている。しかし近年、音楽プレーヤーやスマートフォンの普及で音楽を手軽に聴けるようになった一方、音量を過剰に大きくするケースも増加。その結果、特に若者世代で娯楽性難聴のリスクが高まり、世界保健機構(WHO)も警鐘を鳴らす状況となっている。
今回の研究では、聴力が正常な成人23名を対象に、静寂な環境条件下/地下鉄内で録音した環境騒音(80dB)のある条件下という2つのシーンで実験が行われた。
参加者は4種類の機器(インナーイヤー型イヤホン/ヘッドホン/カナル型イヤホン/ノイズキャンセリング機能付カナル型イヤホン)でポップスとクラシック音楽を再生し、一番聞き心地の良い音量である「最適リスニングレベル」を任意で調整。静寂な環境/騒音環境それぞれにおける最適リスニングレベルを計測した。
結果、ノイズキャンセリング機能付カナル型イヤホン以外の3種類では、騒音環境での音楽聴取時に最適リスニングレベルが上昇。特にインナーイヤー型イヤホン/ヘッドホンでは、危険な音量とされる85dB以上になる場合があったのに対し、ノイズキャンセリング機能付カナル型イヤホンは安全音量とされる75dB以下を保っていたという。
これにより研究グループは、地下鉄などの騒音環境下では、通常のイヤホンでの音楽聴取は危険な音量に達する可能性があることが明らかになったとし、難聴予防の面からノイズキャンセリング機能の使用を推奨。「社会生活に重要な “聴こえ” の健康維持につながるもの」だと述べている。
また今後の課題として、「一番聞き心地の良い音量」は個々人によって異なるため、機器側で音量レベルを検知して警告を発するなどといった仕組みの開発をあげたほか、難聴の早期発見/進行予防のために定期的な聴力検査の重要性も強調した。
なお、本研究に関する論文は、Journal of Audiology & Otology誌のオンライン版にて3月24日付で先行公開されている。
本研究は、近年若者を中心に増加しているという“娯楽性難聴”に関して、特に地下鉄など騒音環境下でイヤホンで音楽を聴く場合について調査したもの。順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター耳鼻咽喉科の池田勝久特任教授、電気通信大学大学院情報理工学研究科の小池卓二教授、順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座・リハビリテーション室の保科卓成言語聴覚士らによる研究グループによって行われた。
娯楽性難聴とは騒音性難聴のひとつで、クラブやディスコ、コンサートやスポーツ観戦など娯楽施設での騒音暴露や、音楽プレーヤーなど娯楽機器での過大音聴取によって引き起こされるもの。
耳の感覚細胞は、定期的または長期に及んで大きな音に晒されることにより徐々に傷つき、永久的な聴力損失につながるとされている。しかし近年、音楽プレーヤーやスマートフォンの普及で音楽を手軽に聴けるようになった一方、音量を過剰に大きくするケースも増加。その結果、特に若者世代で娯楽性難聴のリスクが高まり、世界保健機構(WHO)も警鐘を鳴らす状況となっている。
今回の研究では、聴力が正常な成人23名を対象に、静寂な環境条件下/地下鉄内で録音した環境騒音(80dB)のある条件下という2つのシーンで実験が行われた。
参加者は4種類の機器(インナーイヤー型イヤホン/ヘッドホン/カナル型イヤホン/ノイズキャンセリング機能付カナル型イヤホン)でポップスとクラシック音楽を再生し、一番聞き心地の良い音量である「最適リスニングレベル」を任意で調整。静寂な環境/騒音環境それぞれにおける最適リスニングレベルを計測した。
結果、ノイズキャンセリング機能付カナル型イヤホン以外の3種類では、騒音環境での音楽聴取時に最適リスニングレベルが上昇。特にインナーイヤー型イヤホン/ヘッドホンでは、危険な音量とされる85dB以上になる場合があったのに対し、ノイズキャンセリング機能付カナル型イヤホンは安全音量とされる75dB以下を保っていたという。
これにより研究グループは、地下鉄などの騒音環境下では、通常のイヤホンでの音楽聴取は危険な音量に達する可能性があることが明らかになったとし、難聴予防の面からノイズキャンセリング機能の使用を推奨。「社会生活に重要な “聴こえ” の健康維持につながるもの」だと述べている。
また今後の課題として、「一番聞き心地の良い音量」は個々人によって異なるため、機器側で音量レベルを検知して警告を発するなどといった仕組みの開発をあげたほか、難聴の早期発見/進行予防のために定期的な聴力検査の重要性も強調した。
なお、本研究に関する論文は、Journal of Audiology & Otology誌のオンライン版にて3月24日付で先行公開されている。