高密度MOSLM採用のホログラフィックディスプレイも登場
<NHK技研公開>ゴム基板を導入した伸縮可能なディスプレイ。高色純度量子ドットELのデバイスも展示
NHK放送技術研究所の最新の研究開発成果を一般に公開するイベント「技研公開2023」が、6月1日〜4日の期間に開催される。今回、イベントに先立ってプレス向け公開が行われた。
NHK技研が目指す「Future Vision 2030-2040」の実現に向けた、「イマーシブメディア」「ユニバーサルサービス」「フロンティアサイエンス」の3つの重点分野の研究技術が披露された。本稿では、「フロンティアサイエンス」の分野から、映像表示デバイスに関連する研究技術の内容を紹介していく。
「イマーシブコンテンツ体験に向けたディスプレイ技術」として展示されていたのが、高臨場感・高没入感の映像コンテンツの表示、また体験コンテンツの出力において、より柔軟でさまざまな形状に変形することができるディスプレイデバイス。
ひとつが伸縮可能なゴム基板上にLED画素を形成した「伸縮可能なディスプレイ」。伸縮可能な基板にはアクリル系ゴム素材を用いており、同時に伸縮配線も採用している。伸縮配線を導入したデバイスは、今回が初展示。アクリル系ゴム素材によって、LED画素との密着性を改善し、伸張率40%を実現している。
展示ブースでは、画素数16×16(6mmピッチ)、約0.8mmのLEDを発光素子に使用したデバイスが設置されており、文字が表示されているディスプレイが膨らんだり縮んだりする模様を見ることができる。また、発光素子に約0.02mmという極小なマイクロLEDを使用した、画素数32×32(2mmピッチ)のディスプレイも展示されている。
この技術によって、視聴者を包むような半球型ディスプレイや、自動運転技術を搭載した車の内側張り込むディスプレイなどの開発にも繋げられるとのこと。また、従来でも曲がるフレキシブルディスプレイなど登場しているが、より複雑な形状に合ったディスプレイ開発が可能になるという。
粒子状の半導体結晶である量子ドットを使用した薄膜を、2つの電極で挟み込んだ発光素子である「高色純度量子ドットEL」は、自発光デバイスであり、電流を流すことで量子ドットの色鮮やかな発光を実現している。
NHK技研では、カドミウムなど有毒物質を含まない多元系半導体量子度とEL素子を採用している。緑色は硫化銀インジウムガリウム、赤色は硫化銀銅インジウムガリウム、青色はセレン化亜鉛化合物を投入しており、BT.709やDCI-P3の色域を超え、BT.2020で包含率88%をマークする。
ブースでは、基板サイズが100mm×100mm、表示サイズが40mm×40mm、画素数は64(RBG)×64で、インクジェット印刷/パッシブマトリクス駆動の量子ドットEL素子・ディスプレイパネルが展示されている。ディスプレイ自体の展示は、技研公開2023が初めてのようだ。
量子ドットは、インクのように塗ることができるため、塗布・印刷プロセスによって形成可能な点も特長で、大型なものや曲面のディスプレイを作りやすいメリットも持つという。
3Dグラスなどの特別なメガネを使用せず、裸眼で自然な3次元映像を再現する「ホログラフィックディスプレイ」。その視域拡大を目指し、MOSLM(磁気光学式空間光変調器)の研究が進められている。
技研公開2023では、世界最小画素サイズ・1μm×4μmの電流誘起磁界移動を活用した、10K×5K画素の高密度MOSLMが展示されている。従来の低密度なSLM(空間光変調器高密度)では狭い範囲でした3次元像を見ることができなかったが、MOSLMは画素ピッチが著しく狭いため、水平方向で30度という広い視域を叶えている。
従来までのホログラフィックディスプレイは、アナログと/デジタルの静止画ホログラムのタイプのどちらも画像の書き換えができないため、文字通り静止画の3次元映像しか再現できなかった。しかし、今回の高密度MOSLMは画像の書き換えもできるため、将来的に動画コンテンツでも3次元映像の再現が可能だという。
技研公開の会期は、前述のとおり6月1日〜4日まで。入場料は無料で、事前予約の必要もない。
NHK技研が目指す「Future Vision 2030-2040」の実現に向けた、「イマーシブメディア」「ユニバーサルサービス」「フロンティアサイエンス」の3つの重点分野の研究技術が披露された。本稿では、「フロンティアサイエンス」の分野から、映像表示デバイスに関連する研究技術の内容を紹介していく。
■ゴム素材を用いた伸縮可能なディスプレイ
「イマーシブコンテンツ体験に向けたディスプレイ技術」として展示されていたのが、高臨場感・高没入感の映像コンテンツの表示、また体験コンテンツの出力において、より柔軟でさまざまな形状に変形することができるディスプレイデバイス。
ひとつが伸縮可能なゴム基板上にLED画素を形成した「伸縮可能なディスプレイ」。伸縮可能な基板にはアクリル系ゴム素材を用いており、同時に伸縮配線も採用している。伸縮配線を導入したデバイスは、今回が初展示。アクリル系ゴム素材によって、LED画素との密着性を改善し、伸張率40%を実現している。
展示ブースでは、画素数16×16(6mmピッチ)、約0.8mmのLEDを発光素子に使用したデバイスが設置されており、文字が表示されているディスプレイが膨らんだり縮んだりする模様を見ることができる。また、発光素子に約0.02mmという極小なマイクロLEDを使用した、画素数32×32(2mmピッチ)のディスプレイも展示されている。
この技術によって、視聴者を包むような半球型ディスプレイや、自動運転技術を搭載した車の内側張り込むディスプレイなどの開発にも繋げられるとのこと。また、従来でも曲がるフレキシブルディスプレイなど登場しているが、より複雑な形状に合ったディスプレイ開発が可能になるという。
■デバイスに高色純度量子ドットELを採用
粒子状の半導体結晶である量子ドットを使用した薄膜を、2つの電極で挟み込んだ発光素子である「高色純度量子ドットEL」は、自発光デバイスであり、電流を流すことで量子ドットの色鮮やかな発光を実現している。
NHK技研では、カドミウムなど有毒物質を含まない多元系半導体量子度とEL素子を採用している。緑色は硫化銀インジウムガリウム、赤色は硫化銀銅インジウムガリウム、青色はセレン化亜鉛化合物を投入しており、BT.709やDCI-P3の色域を超え、BT.2020で包含率88%をマークする。
ブースでは、基板サイズが100mm×100mm、表示サイズが40mm×40mm、画素数は64(RBG)×64で、インクジェット印刷/パッシブマトリクス駆動の量子ドットEL素子・ディスプレイパネルが展示されている。ディスプレイ自体の展示は、技研公開2023が初めてのようだ。
量子ドットは、インクのように塗ることができるため、塗布・印刷プロセスによって形成可能な点も特長で、大型なものや曲面のディスプレイを作りやすいメリットも持つという。
■高密度MOSLM採用のホログラフィックディスプレイ
3Dグラスなどの特別なメガネを使用せず、裸眼で自然な3次元映像を再現する「ホログラフィックディスプレイ」。その視域拡大を目指し、MOSLM(磁気光学式空間光変調器)の研究が進められている。
技研公開2023では、世界最小画素サイズ・1μm×4μmの電流誘起磁界移動を活用した、10K×5K画素の高密度MOSLMが展示されている。従来の低密度なSLM(空間光変調器高密度)では狭い範囲でした3次元像を見ることができなかったが、MOSLMは画素ピッチが著しく狭いため、水平方向で30度という広い視域を叶えている。
従来までのホログラフィックディスプレイは、アナログと/デジタルの静止画ホログラムのタイプのどちらも画像の書き換えができないため、文字通り静止画の3次元映像しか再現できなかった。しかし、今回の高密度MOSLMは画像の書き換えもできるため、将来的に動画コンテンツでも3次元映像の再現が可能だという。
技研公開の会期は、前述のとおり6月1日〜4日まで。入場料は無料で、事前予約の必要もない。