6/24-25のOTOTENでもdtsの最新技術を体験できる
DTSの30周年記念イベント開催。LDからUHDBD、IMAX Enhancedまでサラウンド技術の進化をデモ
dts Japanは、サラウンドのデジタル音声フォーマットであるDTSの誕生30周年を記念して、メディア向けイベントを開催。オーディオ・ビジュアル評論家の麻倉怜士氏とともに、DTSの誕生からハイレゾ/イマーシブオーディオへの発展まで、実際のコンテンツを体験しながら振り返る貴重なイベントとなった。
その歴史は、1990年にTerry Beard氏がDigital Theater Systemsという会社を立ち上げたことから始まる。当時、映画の音声についてはフィルムに直接デジタル音声信号を書き込む方式が提案されていたが、そのやり方では安定性に欠けるという欠点があった。Terry Beard氏はCD-ROMに音声を収録、フィルムに同期信号を記録するという新しいやり方を提案、これが『ジュラシック・パーク』を制作中だったスティーブン・スピルバーグ監督の目に止まり採用が決定した。1993年の映画公開後に「DTS Digital Surround」フォーマットを発表、そこから30年間、DTSはさまざまな形で映画と音楽の制作から再生までをサポートしてきた。現在のDTSは、「Dedicated To Sensational」を意味しているのだという。
デモンストレーションは、LD、DVD、Blu-ray、UHDBDというこの30年間進化してきた映像メディアを視聴しながら、それぞれに搭載されたDTSの技術の詳細について解説していく流れで行われた。再生システムのスピーカーにはKEF「Qシリーズ/Rシリーズ」、AVアンプにマランツ「AV8805」、パワーアンプがマランツ「MM8807」、テレビはソニー「XRJ-83A90J」が用意された。
トップバッターは、直径30cmのLD(レーザーディスク)。いまやほとんど見かけなくなったレガシーメディアである。LDでは、デジタル音声領域に5.1chのdts音声が記録されていた。パイオニアのLDプレーヤー「HLD-X0」で『アポロ13』の発射シーンを再生したが、とても30年近くも前の作品とは思えない骨格のしっかりしたサウンド、そして手に汗握る効果音のリアリティに驚かされる。
麻倉氏もDTSのサウンドについて、「足に地がついた、剛性感のしっかりした音が魅力です」と語り、当時のレビューを引用しながら「肉声の粘っこい質感が見事に再現されています」と賛辞を送る。
続いて1996年にはDVDが登場、12cmというコンパクトなディスクメディアとして大きく普及した。dts音声はオプションフォーマットだったが、迫力あるサラウンドが楽しめることが注目され、多くの映画・音楽作品で採用されたという。
DVDのデモでは、1998年に発売されたイーグルスのライブアルバム『hell freezes over』から「ホテル・カリフォルニア」を再生。プレーヤーはパナソニックの「DMR-ZR1」を使用したが、ギターの爪弾きの粒立ちの細やかさはもちろん、拍手や観客のざわめきも豊かに再現され、ライブ会場にいるかのような臨場感に胸が高鳴る。
2006年にはBlu-rayが登場、映像がハイビジョンになるとともにロスレスフォーマットの「DTS-HD Master Audio」として規格化される。ハイレゾデータが扱えるようになったことに加え、Blu-rayにおいてDTS音声はオプションではなく必須となった。
麻倉氏によると、Blu-rayの登場によって映画だけではなく音楽コンテンツにおいてもサラウンドによる新しい表現が生まれてきたという。2Lレーベルによるサラウンド音源「モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲」では、教会の響き感や空気感のディテールまで再現する。映画『ジュラシック・パーク』では、まさに音の力が恐怖感を否応なく高め、解像度が上がることによって生まれる細やかな表現の可能性がさらに模索されている。
2015年には「DTS:X」が登場。オブジェクトベースによるイマーシブオーディオのフォーマットで、UHDBDに採用される。『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』では、ジェットコースターのようなハイスピードな音の動きが映像と同期して素早く駆け巡るさまに圧倒される。
最後には、DTSがIMAXと提携した「IMAX Enhanced」を披露。劇場用フォーマットであるIMAXを家庭でも楽しめるように策定されたもので、IMAX用の6.0chあるいは12.0chの音声素材を変換して再生する。『バッドボーイズ』では、カーチェイスからの爆発シーンなど、映像/音声の双方でのダイナミックレンジを緻密に表現しており、視覚・聴覚の限界まで挑戦するような “映画表現の可能性” がさらに追求されていることが感じられた。
dtsの30年の歴史は、家庭内の映像体験の進化にそのまま直結していること、そして映画や音楽クリエイターをリスペクトしながらも、一貫して「濃密な表現」を追求してきたことがよく理解できた。
2023年以降の展開として、dts Japan社長の西村明高氏は、なにより「カタログの充実を図っていく」ことを強調。これまでDisney+とBRAVIA COREから配信されていたが、それぞれリニューアル。またソニー・ピクチャーズからは新作とカタログ作品でIMAX Enhanced作品が40タイトル程度登場する予定。
さらに、車の世界でのDTSの展開にも力を入れている。自動運転が進化していくことで車内での映像体験がますます重要視されていくこと、またEVの場合は充電時間が30分以上は必要となるので、その時間を過ごすリッチなインフォテイメントが必要になってくる。DTSは車内で運転者や同乗者をカメラで認識する「DTS AutoSense」という技術と、車内インフォテイメントのプラットフォーム「DTS AutoStage」を持っており、これらを活用し車内でのオーディオ/ビジュアル体験を豊かにしていく方策を探っていくという。
なお、dts Japanは6月24日、25日に東京国際フォーラムで開催される「OTOTEN 2023」に出展。カンファレンスルーム507にて、DTSとIMAX Enhancedのホームシアター体験と合わせて、サラウンド環境をバーチャルに再現する「Virtual:X」、ヘッドホンでの再生を可能にする「Headphone:X」などのデモストレーションも予定している。
その歴史は、1990年にTerry Beard氏がDigital Theater Systemsという会社を立ち上げたことから始まる。当時、映画の音声についてはフィルムに直接デジタル音声信号を書き込む方式が提案されていたが、そのやり方では安定性に欠けるという欠点があった。Terry Beard氏はCD-ROMに音声を収録、フィルムに同期信号を記録するという新しいやり方を提案、これが『ジュラシック・パーク』を制作中だったスティーブン・スピルバーグ監督の目に止まり採用が決定した。1993年の映画公開後に「DTS Digital Surround」フォーマットを発表、そこから30年間、DTSはさまざまな形で映画と音楽の制作から再生までをサポートしてきた。現在のDTSは、「Dedicated To Sensational」を意味しているのだという。
デモンストレーションは、LD、DVD、Blu-ray、UHDBDというこの30年間進化してきた映像メディアを視聴しながら、それぞれに搭載されたDTSの技術の詳細について解説していく流れで行われた。再生システムのスピーカーにはKEF「Qシリーズ/Rシリーズ」、AVアンプにマランツ「AV8805」、パワーアンプがマランツ「MM8807」、テレビはソニー「XRJ-83A90J」が用意された。
トップバッターは、直径30cmのLD(レーザーディスク)。いまやほとんど見かけなくなったレガシーメディアである。LDでは、デジタル音声領域に5.1chのdts音声が記録されていた。パイオニアのLDプレーヤー「HLD-X0」で『アポロ13』の発射シーンを再生したが、とても30年近くも前の作品とは思えない骨格のしっかりしたサウンド、そして手に汗握る効果音のリアリティに驚かされる。
麻倉氏もDTSのサウンドについて、「足に地がついた、剛性感のしっかりした音が魅力です」と語り、当時のレビューを引用しながら「肉声の粘っこい質感が見事に再現されています」と賛辞を送る。
続いて1996年にはDVDが登場、12cmというコンパクトなディスクメディアとして大きく普及した。dts音声はオプションフォーマットだったが、迫力あるサラウンドが楽しめることが注目され、多くの映画・音楽作品で採用されたという。
DVDのデモでは、1998年に発売されたイーグルスのライブアルバム『hell freezes over』から「ホテル・カリフォルニア」を再生。プレーヤーはパナソニックの「DMR-ZR1」を使用したが、ギターの爪弾きの粒立ちの細やかさはもちろん、拍手や観客のざわめきも豊かに再現され、ライブ会場にいるかのような臨場感に胸が高鳴る。
2006年にはBlu-rayが登場、映像がハイビジョンになるとともにロスレスフォーマットの「DTS-HD Master Audio」として規格化される。ハイレゾデータが扱えるようになったことに加え、Blu-rayにおいてDTS音声はオプションではなく必須となった。
麻倉氏によると、Blu-rayの登場によって映画だけではなく音楽コンテンツにおいてもサラウンドによる新しい表現が生まれてきたという。2Lレーベルによるサラウンド音源「モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲」では、教会の響き感や空気感のディテールまで再現する。映画『ジュラシック・パーク』では、まさに音の力が恐怖感を否応なく高め、解像度が上がることによって生まれる細やかな表現の可能性がさらに模索されている。
2015年には「DTS:X」が登場。オブジェクトベースによるイマーシブオーディオのフォーマットで、UHDBDに採用される。『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』では、ジェットコースターのようなハイスピードな音の動きが映像と同期して素早く駆け巡るさまに圧倒される。
最後には、DTSがIMAXと提携した「IMAX Enhanced」を披露。劇場用フォーマットであるIMAXを家庭でも楽しめるように策定されたもので、IMAX用の6.0chあるいは12.0chの音声素材を変換して再生する。『バッドボーイズ』では、カーチェイスからの爆発シーンなど、映像/音声の双方でのダイナミックレンジを緻密に表現しており、視覚・聴覚の限界まで挑戦するような “映画表現の可能性” がさらに追求されていることが感じられた。
dtsの30年の歴史は、家庭内の映像体験の進化にそのまま直結していること、そして映画や音楽クリエイターをリスペクトしながらも、一貫して「濃密な表現」を追求してきたことがよく理解できた。
2023年以降の展開として、dts Japan社長の西村明高氏は、なにより「カタログの充実を図っていく」ことを強調。これまでDisney+とBRAVIA COREから配信されていたが、それぞれリニューアル。またソニー・ピクチャーズからは新作とカタログ作品でIMAX Enhanced作品が40タイトル程度登場する予定。
さらに、車の世界でのDTSの展開にも力を入れている。自動運転が進化していくことで車内での映像体験がますます重要視されていくこと、またEVの場合は充電時間が30分以上は必要となるので、その時間を過ごすリッチなインフォテイメントが必要になってくる。DTSは車内で運転者や同乗者をカメラで認識する「DTS AutoSense」という技術と、車内インフォテイメントのプラットフォーム「DTS AutoStage」を持っており、これらを活用し車内でのオーディオ/ビジュアル体験を豊かにしていく方策を探っていくという。
なお、dts Japanは6月24日、25日に東京国際フォーラムで開催される「OTOTEN 2023」に出展。カンファレンスルーム507にて、DTSとIMAX Enhancedのホームシアター体験と合わせて、サラウンド環境をバーチャルに再現する「Virtual:X」、ヘッドホンでの再生を可能にする「Headphone:X」などのデモストレーションも予定している。