公共放送ワーキンググループが第2次取りまとめ案を公表
NHKのネット活用業務、「ラジオやBS放送も必須業務化すべき」。総務省WGが取りまとめ案公表
NHKのインターネット配信業務について検討する総務省の「公共放送ワーキンググループ」(以後「WG」)は、第2次取りまとめ案を公表。「ラジオ放送もNHKの必須業務化すべき」「衛星放送も必須業務化するべきだが当面の間は見送ることが適当」などといった考え方を示した。
同WGは、インターネット動画配信の普及や視聴デバイスの多様化、これに伴う視聴スタイルの変化を背景に、NHKのインターネット配信の在り方を検討するための場として設けられているもの。昨年2024年10月に第1次とりまとめを発表しており、その時点では継続して検討していくものとされていた点にについて、今回の第2次取りまとめで方向性を示した格好となる。
なお、第1次とりまとめでは「国民・視聴者の視聴スタイルの急速な変化に対応して、少なくとも地上波テレビ放送の放送番組について、インターネットにより国民・視聴者に同時・見逃し配信を行う役割が求められており、それに応じた重い責任をNHKに対し課すことについては認識の一致を見ている」とし、NHKのインターネット活用業務を従来の「任意業務」から「必須業務」へと移行すべきだと記載。
一方、地上波テレビ放送以外の放送、つまり、地上波ラジオ放送、衛星放送、国際放送のインターネット活用業務の在り方に関しては、「これらの同時・見逃し(聞き逃し)配信を必須業務化すべきかどうかについて、これまでの議論において、現時点では結論を導くに至る程度にまで議論が尽くされた状況とは必ずしもいえない」とし、継続して検討していくとしていた。
今回の第2次取りまとめ案では、まず、NHKのインターネット活用業務を必須業務化していくべきと提言。「国民・視聴者の多くがインターネットを主な情報入手手段として利用しつつあることを踏まえると、その実施の有無がNHKの判断に完全に委ねられている『任意業務』ではなく、その継続的・安定的な実施が義務付けられる『必須業務』として位置付けるよう、制度を変更していくべき」とした。
その上で、民放とNHKとの二元体制の下でお互いが活発に活動し、新聞社や通信社などの他のメディアとも共存・競争することで多元的なメディアが形成され、インターネットへと広がる情報空間全体のインフォメーション・ヘルス(情報的健康)が確保されていくと記載。NHKがインターネットを通じて情報を国民に提供することが「公共放送として、社会の構成員の相互理解・対話を促進し、安定的・持続的に公衆を形成する役割を果たすことを可能とすると考えられる」とした。
そして、「この考え方は、国民・視聴者の視聴スタイルの変化や情報空間の拡大という社会環境の変化をその背景とするものであり、地上波テレビ放送のみならず、地上波テレビ放送以外の放送についても当てはまるものである」と説明。このことから、「地上波テレビ放送以外の放送のインターネット活用業務についても、原則として必須業務化することが適当である」と記載している。
ラジオのインターネット配信において、NHKでは現在「らじる★らじる」でのライブ配信と聞き逃し配信、radikoでの同時配信、そして番組ホームページなどウェブサイトでの情報発信を任意業務として実施中。
取りまとめ案では「地上波ラジオ放送番組のインターネット配信は、災害に備えた情報伝達経路の二重化や放送波へ誘導する効果を有していることから、そのインターネット活用業務の意義は特に大きい」と評価。「原則のとおり、当該業務を必須業務化することが適当である」とした。
なお、テレビ番組のネット配信に関する受信料、いわゆるネット受信料について同WGでは、アプリのインストールや視聴申し込み手続きなどといった能動的な行動をとった場合には受信料徴収の対象になるという考え方を従来から示している。
しかし一方で、放送法では、ラジオ放送のみを受信している人(テレビを持っていない人)は受信契約締結義務の対象外となっている。これを踏まえ、ラジオ番組のインターネット配信においても、ラジオ聴取のみであれば受信料の支払いを求めないことが適当だとした。
衛星放送(BS放送)のインターネット活用業務についても、「原則としては必須業務化することが適当である」と提言。しかし、NHKでは権利処理やコスト面の課題があるとしており、WGでも「実施環境が整うまでの当面の間は、必須業務化を見送ることが適当」だと結論づけている。
一方、上述のとおりWGとしては衛星放送のネット配信も必須業務化していくべきとの考え方を持っており、「NHKが課題および解決方策について検討し、ロードマップを策定すべき」とした。
なお、将来的に衛星放送でもネット配信の実施環境が整った場合、配信する情報(番組等)の範囲、メディアの多元性を維持するための担保措置、財源と受信料といった各要素について、地上波テレビ放送と同等とすることが適当であるともしている。
また、国際放送についても「我が国の情報の国際発信においてフラッグシップの役割を担い、我が国に対する正しい認識・理解・関心の醸成、国際交流・親善の増進、経済交流の発展、在外邦人への情報提供といった重要な役割を担っている」と評価。「そのインターネット活用業務の意義は特に大きい」とし、こちらも必須業務化すべきだと記載している。
NHKのインターネット活用業務においては、テレビ/ラジオ番組の同時/見逃し配信に加えて、ウェブサイトでのテキスト情報(映像や画像含む)提供も行っており、前述のとおり、これらのテキスト情報も必須業務化の対象にするべきだという考え方を示唆。
一方で、災害や重大事件など国民の生命・安全に関わる緊急度の高い重要な情報であったり、番組表など放送番組に密接に関連する情報や番組を補完する情報などに範囲を限定し、その旨を放送法に定性的に規定することも提言。これによって、テキストによるNHKの情報提供範囲が拡大し過ぎないよう検討するべきだとした。おそらく、新聞などの民業圧迫に配慮したものだと思われる。
なお、現在の規定においてテキスト情報などは、放送番組を視聴者が理解しやすくするための「理解増進情報」という位置づけ。これに基づき、番組の内容をテキストで再編集したものや、番組の内容を解説するもの、番組を広報するものなどに限定して情報発信が行われている。
今回の取りまとめ案では、発信できる情報を放送法で規定するべきという上記の考え方を受けて、「現在の理解増進情報の制度は廃止され、必須業務として提供されるテキスト情報等として再整理されるべきである」と提言した。
また、前回の第1次取りまとめにおいては、インターネット活用業務必須化に向けて、メディアの多元性を維持するための措置として、まずNHKが原案を策定し、その評価・検証を、NHK 以外の第三者機関が実施するべきだと記載していた。国民・視聴者、民間放送事業者、新聞社・通信社等の関係者による評価・検証の上で、インターネット活用業務の具体的な範囲や提供条件を決定する競争評価の仕組みを導入すべきとしており、テキスト情報等の具体的な範囲も、この競争評価の仕組みを経て決定されるべきだとした。
■NHKのインターネット活用業務は「『任意業務』から『必須業務』に移行すべき」
同WGは、インターネット動画配信の普及や視聴デバイスの多様化、これに伴う視聴スタイルの変化を背景に、NHKのインターネット配信の在り方を検討するための場として設けられているもの。昨年2024年10月に第1次とりまとめを発表しており、その時点では継続して検討していくものとされていた点にについて、今回の第2次取りまとめで方向性を示した格好となる。
なお、第1次とりまとめでは「国民・視聴者の視聴スタイルの急速な変化に対応して、少なくとも地上波テレビ放送の放送番組について、インターネットにより国民・視聴者に同時・見逃し配信を行う役割が求められており、それに応じた重い責任をNHKに対し課すことについては認識の一致を見ている」とし、NHKのインターネット活用業務を従来の「任意業務」から「必須業務」へと移行すべきだと記載。
一方、地上波テレビ放送以外の放送、つまり、地上波ラジオ放送、衛星放送、国際放送のインターネット活用業務の在り方に関しては、「これらの同時・見逃し(聞き逃し)配信を必須業務化すべきかどうかについて、これまでの議論において、現時点では結論を導くに至る程度にまで議論が尽くされた状況とは必ずしもいえない」とし、継続して検討していくとしていた。
■「地上波テレビ以外もネット活用を必須業務化すべき」
今回の第2次取りまとめ案では、まず、NHKのインターネット活用業務を必須業務化していくべきと提言。「国民・視聴者の多くがインターネットを主な情報入手手段として利用しつつあることを踏まえると、その実施の有無がNHKの判断に完全に委ねられている『任意業務』ではなく、その継続的・安定的な実施が義務付けられる『必須業務』として位置付けるよう、制度を変更していくべき」とした。
その上で、民放とNHKとの二元体制の下でお互いが活発に活動し、新聞社や通信社などの他のメディアとも共存・競争することで多元的なメディアが形成され、インターネットへと広がる情報空間全体のインフォメーション・ヘルス(情報的健康)が確保されていくと記載。NHKがインターネットを通じて情報を国民に提供することが「公共放送として、社会の構成員の相互理解・対話を促進し、安定的・持続的に公衆を形成する役割を果たすことを可能とすると考えられる」とした。
そして、「この考え方は、国民・視聴者の視聴スタイルの変化や情報空間の拡大という社会環境の変化をその背景とするものであり、地上波テレビ放送のみならず、地上波テレビ放送以外の放送についても当てはまるものである」と説明。このことから、「地上波テレビ放送以外の放送のインターネット活用業務についても、原則として必須業務化することが適当である」と記載している。
■ラジオのネット配信も必須業務化を提言。ただし“ネット受信料”の対象外に
ラジオのインターネット配信において、NHKでは現在「らじる★らじる」でのライブ配信と聞き逃し配信、radikoでの同時配信、そして番組ホームページなどウェブサイトでの情報発信を任意業務として実施中。
取りまとめ案では「地上波ラジオ放送番組のインターネット配信は、災害に備えた情報伝達経路の二重化や放送波へ誘導する効果を有していることから、そのインターネット活用業務の意義は特に大きい」と評価。「原則のとおり、当該業務を必須業務化することが適当である」とした。
なお、テレビ番組のネット配信に関する受信料、いわゆるネット受信料について同WGでは、アプリのインストールや視聴申し込み手続きなどといった能動的な行動をとった場合には受信料徴収の対象になるという考え方を従来から示している。
しかし一方で、放送法では、ラジオ放送のみを受信している人(テレビを持っていない人)は受信契約締結義務の対象外となっている。これを踏まえ、ラジオ番組のインターネット配信においても、ラジオ聴取のみであれば受信料の支払いを求めないことが適当だとした。
■BS放送は「必須業務化すべきだが実施環境が整うまで見送ることが適当」
衛星放送(BS放送)のインターネット活用業務についても、「原則としては必須業務化することが適当である」と提言。しかし、NHKでは権利処理やコスト面の課題があるとしており、WGでも「実施環境が整うまでの当面の間は、必須業務化を見送ることが適当」だと結論づけている。
一方、上述のとおりWGとしては衛星放送のネット配信も必須業務化していくべきとの考え方を持っており、「NHKが課題および解決方策について検討し、ロードマップを策定すべき」とした。
なお、将来的に衛星放送でもネット配信の実施環境が整った場合、配信する情報(番組等)の範囲、メディアの多元性を維持するための担保措置、財源と受信料といった各要素について、地上波テレビ放送と同等とすることが適当であるともしている。
また、国際放送についても「我が国の情報の国際発信においてフラッグシップの役割を担い、我が国に対する正しい認識・理解・関心の醸成、国際交流・親善の増進、経済交流の発展、在外邦人への情報提供といった重要な役割を担っている」と評価。「そのインターネット活用業務の意義は特に大きい」とし、こちらも必須業務化すべきだと記載している。
■ウェブサイトなどテキストでの情報発信は「提供範囲を放送法に規定するべき」
NHKのインターネット活用業務においては、テレビ/ラジオ番組の同時/見逃し配信に加えて、ウェブサイトでのテキスト情報(映像や画像含む)提供も行っており、前述のとおり、これらのテキスト情報も必須業務化の対象にするべきだという考え方を示唆。
一方で、災害や重大事件など国民の生命・安全に関わる緊急度の高い重要な情報であったり、番組表など放送番組に密接に関連する情報や番組を補完する情報などに範囲を限定し、その旨を放送法に定性的に規定することも提言。これによって、テキストによるNHKの情報提供範囲が拡大し過ぎないよう検討するべきだとした。おそらく、新聞などの民業圧迫に配慮したものだと思われる。
なお、現在の規定においてテキスト情報などは、放送番組を視聴者が理解しやすくするための「理解増進情報」という位置づけ。これに基づき、番組の内容をテキストで再編集したものや、番組の内容を解説するもの、番組を広報するものなどに限定して情報発信が行われている。
今回の取りまとめ案では、発信できる情報を放送法で規定するべきという上記の考え方を受けて、「現在の理解増進情報の制度は廃止され、必須業務として提供されるテキスト情報等として再整理されるべきである」と提言した。
また、前回の第1次取りまとめにおいては、インターネット活用業務必須化に向けて、メディアの多元性を維持するための措置として、まずNHKが原案を策定し、その評価・検証を、NHK 以外の第三者機関が実施するべきだと記載していた。国民・視聴者、民間放送事業者、新聞社・通信社等の関係者による評価・検証の上で、インターネット活用業務の具体的な範囲や提供条件を決定する競争評価の仕組みを導入すべきとしており、テキスト情報等の具体的な範囲も、この競争評価の仕組みを経て決定されるべきだとした。