ソニー製LEDパネル「Crystal LED VERONA」を300枚設置
角川大映スタジオ、バーチャルプロダクションスタジオ「シー・インフィニティ」始動。2.5D撮影でデモ実施
株式会社角川大映スタジオは、大型LEDディスプレイを活用したインカメラVFXを中心とするバーチャルプロダクションスタジオ「シー・インフィニティ」を、2024年4月から始動させている。本稿では、メディア向けに開催されたシー・インフィニティの説明会の模様をお届けする。
シー・インフィニティ(C∞)は、旧No.Cスタジオをリニューアルして設立された。「C」は、Cstudio(Cスタジオ)/Creative(創造的)/Connect(接続する)/CHOHU(調布)といった意味を備えている。角川大映スタジオが誇る歴史ある美術製作技術と、最先端のテクノロジーを用いたバーチャル空間を融合させ、リアルとバーチャルをコネクトさせたボーダレスな世界観を実現しているとしており、「新テクノロジーが映像表現に、“インフィニティ”の可能性を与える」というコンセプトを備え、唯一無二のハイクオリティな空間を提供するとアピールした。
また同社 執行役員 小林壯右氏は、「調布には我社の撮影所だけでなく、日活撮影所があり、現在も数多くの映画や映像関連企業が存在している。映画・映像は調布の代表的な産業のひとつ。映画の街として広く知られる、この調布の地から世界に羽ばたくコンテンツの創出を目指して、調布の『C』も名前の意味に含めさせてもらっている」と込められた思いを語った。
スタジオの面積は550m2(167坪/20.0×27.5m)、高さは8m、電気容量は180kw。スタジオ内には最大の特徴であるソニーのLEDパネル「Crystal LED VERONA」が設置されている。その数は実に300枚、15.0W×5.0Hmのサイズとなり、解像度は6K(6.480×2,160)を誇る。LEDパネルは曲面になっており、2.5度ラウンドしている。
吊り上げ昇降式を採用していることも特徴で、約2.2mの範囲で昇降させられるため、アングルやセットの高さの制限が解消され、自由な画作りを可能にしているという。また、電源と映像信号はキャットウォーク経由で配線し、ケーブルレスで安全なフロア環境を整えているという。
バーチャルプロダクションでは、LEDディスプレイの映像が環境光や撮影用照明機材の影響によって黒浮きしてしまい、ポストプロダクションで修正する必要が発生し、時間とコストが掛かってしまうことがある。しかし、シー・インフィニティに導入されたCrystal LED VERONAは低反射かつ圧倒的な黒レベルを両立。「ディープブラックコーティング」と「低反射コーティング」が採用されたパネルであるため、バーチャルプロダクションとしての大きな課題を解決していることもメリットとして挙げる。
送出システムは「IC-VFX:Unreal Engine」(4.27/5.1/5.2/5.3対応)、映像サーバーにはソニーPCL「ZOET 4」、プロセッサーはBrompton Technology「4K Tessera SX40」、トラッキングシステムは「Mo-Sys “Star Tracker” Max」、カメラにはソニー「VENICE 2」(8Kモデル)が常設されている。
バーチャルプロダクションは、バーチャル空間を活用したリアルタイム映像制作を行うプロダクションワークフローの総称であり、セットの背景に映像を出力し、被写体を組み合わせてリアルタイムで映像制作を行うのが特徴だ。また、3DCG背景ともリアルタイム合成が可能で、LEDスクリーンに映し出す3DCGにカメラトラッカーシステムが送るさまざまなカメラ情報を加え、リアルタイムレンダリングを行うことで、違和感のない自然映像が投影できることも利点としている。
バーチャルプロダクションでの撮影では、あらかじめ撮影した実写や画像などをLEDディスプレイに映写し、その前景にいる被写体などを1画面に撮影する「Screen Process」、撮影カメラの位置やレンズ情報をLEDディスプレイに映る仮想空間内とリアルタイムで連動させて、前景の被写体と一緒にリアルのカメラで撮影することができる「In-Camera VFX」といった撮影手法を取り入れることができる。
バーチャルプロダクションを利用するメリットは多く、ひとつはロケーション撮影では移動や暖房器具などで膨大な燃料を使用するが、そういった部分から発生するCO2の削減に繋がる。また、シー・インフィニティでは再生可能エネルギーを使用していることもアピールした。他にも、日照時間や天候、季節などの撮影環境に左右されない、撮影時間・撮影日数の削減、カーアクションなど撮影の許可を得なければいけない法的規制に縛られない、実際に背景があることによる演者の没入感の保持、そして完成形に限りなく近い映像を全スタッフが確認しながら撮影できるためクオリティの向上に繋げられるなど多くのメリットを有している。
また、グリーンバックでの合成と比べてエッジの処理、反射物への映り込みの少なさ、合成の照り返しが軽減できることも優位性に挙げれていた。しかし、ワークフローの変化に課題があり、LEDディスプレイに送出する素材を作成しなければいけないため、プリプロダクションの期間が延びてしまうことがデメリットだと明らかにした。
今回の説明会では、新たな撮影手法として「2.5D」と称した撮影のデモを実施した。実写ベースの2.5D空間を使用することで、フォトリアルな世界でIn-Camera VFXを組み込むことができるという。製作期間を比較的に短期間にすることができ、カメラワークを連動させられるため、3DCGよりもリアリティの高い映像制作が可能なことがメリットだとしている。
デモでは、LEDディスプレイに奥多摩で撮影した実写映像と、その実写映像をもとにしたカメラワークと連動できるCG映像を映し出し、手前にグランピングのセットを組んだ環境で撮影を行った。LEDディスプレイとCGの境界線には砂利と岩場を組むことで、違和感のない繋がりを演出している。
Screen Processでは行えなかったカメラワークが自然にでき、実写の映像も組み合わさっていることからCGだけでは難しい高いリアリティを確保でき、さらに完成度の高いリアルのセットが入ることで、撮影環境だけでなく演者のナチュラルな演技にも繋がっていることが実感できるデモとなっていた。
2.5Dなら必要なスタッフも最小限に抑えることができ、機材もスチールカメラによって手軽で、撮影も短時間に行えるとのこと。スタジオでの準備や撮影期間はもちろん、スタジオ機材や美術セットの製作などは発生するが、アセットの制作期間は10日程度で済むなど、株式会社スタジオブロスの田村耕一郎氏が2.5D撮影のメリットを説明した。
そして、角川大映スタジオによるバーチャルプロダクションスタジオでは、やはり歴史ある美術製作技術力を用いることができるため、バーチャル空間での撮影においても、圧倒的にリアリティの高い美術セットを組み合わせることで、作品のクオリティを飛躍的に高められることが、角川大映スタジオならではのメリット。
美術デザイナーの鈴木一弘氏を「VAD(Virtual Art Department)」として招聘していることも強みであり、さらに細部にこだわった唯一無二のハイクオリティな美術空間を提供できるという。
今回の説明会のデモでは、株式会社スタジオブロス、アークベル株式会社、株式会社アーク・システム、Stuff to GOか制作に携わっていると紹介した。
シー・インフィニティ(C∞)は、旧No.Cスタジオをリニューアルして設立された。「C」は、Cstudio(Cスタジオ)/Creative(創造的)/Connect(接続する)/CHOHU(調布)といった意味を備えている。角川大映スタジオが誇る歴史ある美術製作技術と、最先端のテクノロジーを用いたバーチャル空間を融合させ、リアルとバーチャルをコネクトさせたボーダレスな世界観を実現しているとしており、「新テクノロジーが映像表現に、“インフィニティ”の可能性を与える」というコンセプトを備え、唯一無二のハイクオリティな空間を提供するとアピールした。
また同社 執行役員 小林壯右氏は、「調布には我社の撮影所だけでなく、日活撮影所があり、現在も数多くの映画や映像関連企業が存在している。映画・映像は調布の代表的な産業のひとつ。映画の街として広く知られる、この調布の地から世界に羽ばたくコンテンツの創出を目指して、調布の『C』も名前の意味に含めさせてもらっている」と込められた思いを語った。
スタジオの面積は550m2(167坪/20.0×27.5m)、高さは8m、電気容量は180kw。スタジオ内には最大の特徴であるソニーのLEDパネル「Crystal LED VERONA」が設置されている。その数は実に300枚、15.0W×5.0Hmのサイズとなり、解像度は6K(6.480×2,160)を誇る。LEDパネルは曲面になっており、2.5度ラウンドしている。
吊り上げ昇降式を採用していることも特徴で、約2.2mの範囲で昇降させられるため、アングルやセットの高さの制限が解消され、自由な画作りを可能にしているという。また、電源と映像信号はキャットウォーク経由で配線し、ケーブルレスで安全なフロア環境を整えているという。
バーチャルプロダクションでは、LEDディスプレイの映像が環境光や撮影用照明機材の影響によって黒浮きしてしまい、ポストプロダクションで修正する必要が発生し、時間とコストが掛かってしまうことがある。しかし、シー・インフィニティに導入されたCrystal LED VERONAは低反射かつ圧倒的な黒レベルを両立。「ディープブラックコーティング」と「低反射コーティング」が採用されたパネルであるため、バーチャルプロダクションとしての大きな課題を解決していることもメリットとして挙げる。
送出システムは「IC-VFX:Unreal Engine」(4.27/5.1/5.2/5.3対応)、映像サーバーにはソニーPCL「ZOET 4」、プロセッサーはBrompton Technology「4K Tessera SX40」、トラッキングシステムは「Mo-Sys “Star Tracker” Max」、カメラにはソニー「VENICE 2」(8Kモデル)が常設されている。
バーチャルプロダクションは、バーチャル空間を活用したリアルタイム映像制作を行うプロダクションワークフローの総称であり、セットの背景に映像を出力し、被写体を組み合わせてリアルタイムで映像制作を行うのが特徴だ。また、3DCG背景ともリアルタイム合成が可能で、LEDスクリーンに映し出す3DCGにカメラトラッカーシステムが送るさまざまなカメラ情報を加え、リアルタイムレンダリングを行うことで、違和感のない自然映像が投影できることも利点としている。
バーチャルプロダクションでの撮影では、あらかじめ撮影した実写や画像などをLEDディスプレイに映写し、その前景にいる被写体などを1画面に撮影する「Screen Process」、撮影カメラの位置やレンズ情報をLEDディスプレイに映る仮想空間内とリアルタイムで連動させて、前景の被写体と一緒にリアルのカメラで撮影することができる「In-Camera VFX」といった撮影手法を取り入れることができる。
バーチャルプロダクションを利用するメリットは多く、ひとつはロケーション撮影では移動や暖房器具などで膨大な燃料を使用するが、そういった部分から発生するCO2の削減に繋がる。また、シー・インフィニティでは再生可能エネルギーを使用していることもアピールした。他にも、日照時間や天候、季節などの撮影環境に左右されない、撮影時間・撮影日数の削減、カーアクションなど撮影の許可を得なければいけない法的規制に縛られない、実際に背景があることによる演者の没入感の保持、そして完成形に限りなく近い映像を全スタッフが確認しながら撮影できるためクオリティの向上に繋げられるなど多くのメリットを有している。
また、グリーンバックでの合成と比べてエッジの処理、反射物への映り込みの少なさ、合成の照り返しが軽減できることも優位性に挙げれていた。しかし、ワークフローの変化に課題があり、LEDディスプレイに送出する素材を作成しなければいけないため、プリプロダクションの期間が延びてしまうことがデメリットだと明らかにした。
今回の説明会では、新たな撮影手法として「2.5D」と称した撮影のデモを実施した。実写ベースの2.5D空間を使用することで、フォトリアルな世界でIn-Camera VFXを組み込むことができるという。製作期間を比較的に短期間にすることができ、カメラワークを連動させられるため、3DCGよりもリアリティの高い映像制作が可能なことがメリットだとしている。
デモでは、LEDディスプレイに奥多摩で撮影した実写映像と、その実写映像をもとにしたカメラワークと連動できるCG映像を映し出し、手前にグランピングのセットを組んだ環境で撮影を行った。LEDディスプレイとCGの境界線には砂利と岩場を組むことで、違和感のない繋がりを演出している。
Screen Processでは行えなかったカメラワークが自然にでき、実写の映像も組み合わさっていることからCGだけでは難しい高いリアリティを確保でき、さらに完成度の高いリアルのセットが入ることで、撮影環境だけでなく演者のナチュラルな演技にも繋がっていることが実感できるデモとなっていた。
2.5Dなら必要なスタッフも最小限に抑えることができ、機材もスチールカメラによって手軽で、撮影も短時間に行えるとのこと。スタジオでの準備や撮影期間はもちろん、スタジオ機材や美術セットの製作などは発生するが、アセットの制作期間は10日程度で済むなど、株式会社スタジオブロスの田村耕一郎氏が2.5D撮影のメリットを説明した。
そして、角川大映スタジオによるバーチャルプロダクションスタジオでは、やはり歴史ある美術製作技術力を用いることができるため、バーチャル空間での撮影においても、圧倒的にリアリティの高い美術セットを組み合わせることで、作品のクオリティを飛躍的に高められることが、角川大映スタジオならではのメリット。
美術デザイナーの鈴木一弘氏を「VAD(Virtual Art Department)」として招聘していることも強みであり、さらに細部にこだわった唯一無二のハイクオリティな美術空間を提供できるという。
今回の説明会のデモでは、株式会社スタジオブロス、アークベル株式会社、株式会社アーク・システム、Stuff to GOか制作に携わっていると紹介した。