「フルサイズは8年前から考えていた」
<パナソニック100周年>フルサイズミラーレス「LUMIX S」「Lマウントアライアンス」誕生秘話を関係者が明かす
パナソニックは、同社創業100周年を記念したイベント「クロスバリューイノベーションフォーラム」を、本日10月30日〜11月3日に行っている。当サイトでも、総合展示の内容や各種セッションの内容を連日紹介していく。
本日は、「イメージング事業の成長戦略とLUMIXフルサイズミラーレス一眼カメラ開発について」をテーマに、プレゼンとパネルディスカッションが開催。特にパネルディスカッションでは、「フルサイズミラーレス“Sシリーズ”の生まれた経緯」「Lマウントアライアンス」(関連ニュース)についてライカ・シグマ・パナソニックの担当者が登壇し、話し合いが行われた。
■フルサイズミラーレスは8年前から考えていた
今年は、パナソニックが世界初のミラーレス一眼「DMC-G1」を生み出して10年という節目を迎える。その生まれた経緯について「当時はコンパクトデジタルカメラが非常に売れていた時代。そのユーザーが、(一眼レフのように大きいものではなく)コンパクトで気軽にレンズを交換して使えるカメラシステムをめざして開発した」と同社の山根洋介氏は話す。
DMC-G1に搭載され、現在の“LUMIX Gシリーズ”使われているマイクロフォーサーズセンサーは、フルサイズセンサーの1/4の面積という大きさの撮像素子。しかし4倍の面積をもつフルサイズと比較した場合、プロやハイアマチュアの使用を想定すると、マイクロフォーサーズは解像度や豊かなボケが不足しており、また8K動画などを見据えて「いつかはフルサイズを作りたい」と考えていたという。
フルサイズを考え始めたのは、DMC-G1を発売してから2年後くらいとのことで、「今から8年前くらいからフルサイズミラーレスを考えていた」と山根氏。その後の8年間で撮像素子の進化や技術の積み重ねにより、今回の “Sシリーズ” が実現に至ったのことだ。
そして今回のSシリーズの計画が立ち上がったのが、およそ2-3年前。新しくフルサイズでミラーレスを作る場合に一番重要な要素が “マウント” であるとし、光学性能、動画/静止画の両方への適性、レンズとボディの通信速度といった部分をポイントに検討した結果、実績のあるライカ社のLマウントを使用することになったと説明した。
■Lマウントアライアンス発足の経緯
しかしライカ側は1度はこの話を断ったと、ライカドイツ本社の杢中 薫氏は話す。最初にパナソニック側から、一緒にシステムを行いたいと話を持ちかけたのは2013年。この頃はデジタルカメラ市場が好調であり、ライカは独自でやっていくことを考えていたという。しかし2015年に同社は、Lマウントを採用するフルサイズミラーレス「SL」を発売した後、縮小するカメラ市場の中で、1社でレンズラインナップを開発・拡大を行っていくことに限界を感じていたとのこと。ちょうどそのタイミングで、パナソニック側から、Lマウントを使いたいと話が昨年1月にあり、パナソニック側への採用が実現したという。
Lマウントアライアンスは、ライカの「Lマウントシステム」を使用し、ライカ・シグマ・パナソニックの3社がボディ・レンズをそれぞれ相互で使用可能な製品を作っていくというもの。Lマウントは51.6mmの口径、20mmのフランジバックを持つマウントで、杢中氏はその優位性について、「フルサイズとAPS-Cの双方で使用できるシステム」と説明する。またボディとレンズが通信を行う電子接点は10つ用意されており、今後の技術革新の可能性を考えた設計だという。
シグマがこのLマウントアライアンスに参加したきっかけは、パナソニック側から声をかけたことがきっかけだと山根氏は話した。昨年の2月のことで、ライカ側に話を持ちかけてから約1ヶ月後とのことだ。これについてシグマの大曽根 康裕氏は、「かつてマニュアルフォーカスからオートフォーカスに移行したように、ミラーをもつ一眼レフからミラーレスに移行するという、30年に1度といえる変革期が来たと感じる」と述べた。
さらに大曽根氏は、「シグマは1社でレンズもボディも揃えることができるが、1からマウントを作り育てるのは大変。ミラーレスに重要なのは電子・ソフトの技術で、それに強いパナソニックや、カメラで歴史のあるライカとの協業は魅力的だった」とアライアンス参加の理由を説明した。またLマウント対応のマウントアダプターを作る計画もあるとのこと。同社製EFマウント-Eマウントのアダプター「MC-11」をベースにするとのことで、これが実現したら他メーカーのカメラでもLマウントレンズが使用できるようになるかもしれない。
今後Lマウントアライアンスが3社のみで行われていくのかということにも言及。杢中氏は、「将来的にユーザーの利益に繋がるなら他の会社も参加する可能性はある。しかしまだ新しい協業関係なので、まずはポジションの確立に注力したい」と説明した。
■写真家からみたLUMIX Sシリーズ
パネルディスカッションでは、第二部として写真家の相原正明氏と河野英喜氏が登壇。Sシリーズへの機体や、実際に触った感想を話した。
実機を触った感想は、「ミラーレス=小さくコンパクトという流れの中で、持つ喜びを感じるような堅牢でずっしりとした本体。ファインダーも見やすい」と相原氏。また河野氏も同様に「しっかりとしたカメラだと感じた。グリップも握りやすく、ファインダーはヌケが良い」と話した。
後述するが、パナソニックは機動性をメリットとしたマイクロフォーサーズ “Gシリーズ”と、今回発売する画質を追求したフルサイズ “Sシリーズ” の2つのフォーマットサイズで今後はラインナップを行っていく。
その使い分けについて、相原氏は「タスマニア砂漠など、20-24mmといった広角のレンズでしっかりと撮りたい。一方で動物など超望遠を使いたい場合は、レンズの大きさなど機動性のメリットがあるGシリーズを使いたい」と説明。また河野氏は「写真集など、表紙はアップでボケを生かした写真を使いたいのでSシリーズ、中身は人物の全身にピントをしっかり合わせたいのでGシリーズを使いたい」と、それぞれの得意分野を例えに、写真家らしい説明を行った。
■LUMIX初のフルサイズミラーレス「S1R」「S1」
なお序盤に行われたプレゼンでは、LUMIX Sシリーズについて再度説明が行われた。(関連ニュース)
今年9月発表された「S1R」「S1」は、LUMIXとして初めてフルサイズセンサーを使用したモデルで、“LUMIX Sシリーズ”という名称が付けられている。レンズは「50mm/f1.4」「24-105mm」「70-200mm」がまず予定されており、本体・レンズともに2019年春の発売が予定されている。
S1Rは、究極の表現力を求めるプロ向けモデルといった位置づけで、4,700万画素の撮像素子をもつ。またS1は、次世代のハイブリッドフォトクリエーター向けの高感度モデルで、こちらは2,400万画素の撮像素子を採用する。
両モデルとも新しいイメージセンサー、新しい画像処理エンジンを搭載するほか、ボディ内とレンズの両方の手ぶれ補正を連動させる『Dual I.S』、AI・ディープラーニングを活用した空間認識オートフォーカスそして4K/60pに対応した動画撮影性能を持つという。またXQD/SDダブルスロット、3軸のチルトに対応した液晶画面といった仕様となる。マウントには先述したライカのLマウントを採用する。
そのほかプロ仕様の耐久性や操作性が追求されており、グリップホールド性、ボタンレイアウトにも配慮され、シャッターには高耐久性のものを搭載。ボディは100%のシーリングによる防塵防塵仕様で、南極無補給横断を達成した冒険家、荻田泰永氏とタッグを組み開発した、マイナス40度にも耐え抜く耐低温設計も施したとのこと。
レンズはLマウントアライアンスにより、パナソニックだけではなくライカ、シグマのレンズも使用できる。2020年末に、パナソニックは10本超、ライカは11本、シグマは11本といったラインナップになる予定。
また今後の方針として、従来のマイクロフォーサーズ機を機動性・高速性を活かした「Gシリーズ」とし、Sシリーズはフルサイズセンサーで究極の高画質と表現力を追求するモデルといった、各フォーマットの強みを活かした2つのシリーズで展開していくことも説明。さらに2020年の東京オリンピックに向けて、8K撮影について開発中であることを明かした。現在、新センサー・新エンジン・新レンズを開発中だという。
本日は、「イメージング事業の成長戦略とLUMIXフルサイズミラーレス一眼カメラ開発について」をテーマに、プレゼンとパネルディスカッションが開催。特にパネルディスカッションでは、「フルサイズミラーレス“Sシリーズ”の生まれた経緯」「Lマウントアライアンス」(関連ニュース)についてライカ・シグマ・パナソニックの担当者が登壇し、話し合いが行われた。
■フルサイズミラーレスは8年前から考えていた
今年は、パナソニックが世界初のミラーレス一眼「DMC-G1」を生み出して10年という節目を迎える。その生まれた経緯について「当時はコンパクトデジタルカメラが非常に売れていた時代。そのユーザーが、(一眼レフのように大きいものではなく)コンパクトで気軽にレンズを交換して使えるカメラシステムをめざして開発した」と同社の山根洋介氏は話す。
DMC-G1に搭載され、現在の“LUMIX Gシリーズ”使われているマイクロフォーサーズセンサーは、フルサイズセンサーの1/4の面積という大きさの撮像素子。しかし4倍の面積をもつフルサイズと比較した場合、プロやハイアマチュアの使用を想定すると、マイクロフォーサーズは解像度や豊かなボケが不足しており、また8K動画などを見据えて「いつかはフルサイズを作りたい」と考えていたという。
フルサイズを考え始めたのは、DMC-G1を発売してから2年後くらいとのことで、「今から8年前くらいからフルサイズミラーレスを考えていた」と山根氏。その後の8年間で撮像素子の進化や技術の積み重ねにより、今回の “Sシリーズ” が実現に至ったのことだ。
そして今回のSシリーズの計画が立ち上がったのが、およそ2-3年前。新しくフルサイズでミラーレスを作る場合に一番重要な要素が “マウント” であるとし、光学性能、動画/静止画の両方への適性、レンズとボディの通信速度といった部分をポイントに検討した結果、実績のあるライカ社のLマウントを使用することになったと説明した。
■Lマウントアライアンス発足の経緯
しかしライカ側は1度はこの話を断ったと、ライカドイツ本社の杢中 薫氏は話す。最初にパナソニック側から、一緒にシステムを行いたいと話を持ちかけたのは2013年。この頃はデジタルカメラ市場が好調であり、ライカは独自でやっていくことを考えていたという。しかし2015年に同社は、Lマウントを採用するフルサイズミラーレス「SL」を発売した後、縮小するカメラ市場の中で、1社でレンズラインナップを開発・拡大を行っていくことに限界を感じていたとのこと。ちょうどそのタイミングで、パナソニック側から、Lマウントを使いたいと話が昨年1月にあり、パナソニック側への採用が実現したという。
Lマウントアライアンスは、ライカの「Lマウントシステム」を使用し、ライカ・シグマ・パナソニックの3社がボディ・レンズをそれぞれ相互で使用可能な製品を作っていくというもの。Lマウントは51.6mmの口径、20mmのフランジバックを持つマウントで、杢中氏はその優位性について、「フルサイズとAPS-Cの双方で使用できるシステム」と説明する。またボディとレンズが通信を行う電子接点は10つ用意されており、今後の技術革新の可能性を考えた設計だという。
シグマがこのLマウントアライアンスに参加したきっかけは、パナソニック側から声をかけたことがきっかけだと山根氏は話した。昨年の2月のことで、ライカ側に話を持ちかけてから約1ヶ月後とのことだ。これについてシグマの大曽根 康裕氏は、「かつてマニュアルフォーカスからオートフォーカスに移行したように、ミラーをもつ一眼レフからミラーレスに移行するという、30年に1度といえる変革期が来たと感じる」と述べた。
さらに大曽根氏は、「シグマは1社でレンズもボディも揃えることができるが、1からマウントを作り育てるのは大変。ミラーレスに重要なのは電子・ソフトの技術で、それに強いパナソニックや、カメラで歴史のあるライカとの協業は魅力的だった」とアライアンス参加の理由を説明した。またLマウント対応のマウントアダプターを作る計画もあるとのこと。同社製EFマウント-Eマウントのアダプター「MC-11」をベースにするとのことで、これが実現したら他メーカーのカメラでもLマウントレンズが使用できるようになるかもしれない。
今後Lマウントアライアンスが3社のみで行われていくのかということにも言及。杢中氏は、「将来的にユーザーの利益に繋がるなら他の会社も参加する可能性はある。しかしまだ新しい協業関係なので、まずはポジションの確立に注力したい」と説明した。
■写真家からみたLUMIX Sシリーズ
パネルディスカッションでは、第二部として写真家の相原正明氏と河野英喜氏が登壇。Sシリーズへの機体や、実際に触った感想を話した。
実機を触った感想は、「ミラーレス=小さくコンパクトという流れの中で、持つ喜びを感じるような堅牢でずっしりとした本体。ファインダーも見やすい」と相原氏。また河野氏も同様に「しっかりとしたカメラだと感じた。グリップも握りやすく、ファインダーはヌケが良い」と話した。
後述するが、パナソニックは機動性をメリットとしたマイクロフォーサーズ “Gシリーズ”と、今回発売する画質を追求したフルサイズ “Sシリーズ” の2つのフォーマットサイズで今後はラインナップを行っていく。
その使い分けについて、相原氏は「タスマニア砂漠など、20-24mmといった広角のレンズでしっかりと撮りたい。一方で動物など超望遠を使いたい場合は、レンズの大きさなど機動性のメリットがあるGシリーズを使いたい」と説明。また河野氏は「写真集など、表紙はアップでボケを生かした写真を使いたいのでSシリーズ、中身は人物の全身にピントをしっかり合わせたいのでGシリーズを使いたい」と、それぞれの得意分野を例えに、写真家らしい説明を行った。
■LUMIX初のフルサイズミラーレス「S1R」「S1」
なお序盤に行われたプレゼンでは、LUMIX Sシリーズについて再度説明が行われた。(関連ニュース)
今年9月発表された「S1R」「S1」は、LUMIXとして初めてフルサイズセンサーを使用したモデルで、“LUMIX Sシリーズ”という名称が付けられている。レンズは「50mm/f1.4」「24-105mm」「70-200mm」がまず予定されており、本体・レンズともに2019年春の発売が予定されている。
S1Rは、究極の表現力を求めるプロ向けモデルといった位置づけで、4,700万画素の撮像素子をもつ。またS1は、次世代のハイブリッドフォトクリエーター向けの高感度モデルで、こちらは2,400万画素の撮像素子を採用する。
両モデルとも新しいイメージセンサー、新しい画像処理エンジンを搭載するほか、ボディ内とレンズの両方の手ぶれ補正を連動させる『Dual I.S』、AI・ディープラーニングを活用した空間認識オートフォーカスそして4K/60pに対応した動画撮影性能を持つという。またXQD/SDダブルスロット、3軸のチルトに対応した液晶画面といった仕様となる。マウントには先述したライカのLマウントを採用する。
そのほかプロ仕様の耐久性や操作性が追求されており、グリップホールド性、ボタンレイアウトにも配慮され、シャッターには高耐久性のものを搭載。ボディは100%のシーリングによる防塵防塵仕様で、南極無補給横断を達成した冒険家、荻田泰永氏とタッグを組み開発した、マイナス40度にも耐え抜く耐低温設計も施したとのこと。
レンズはLマウントアライアンスにより、パナソニックだけではなくライカ、シグマのレンズも使用できる。2020年末に、パナソニックは10本超、ライカは11本、シグマは11本といったラインナップになる予定。
また今後の方針として、従来のマイクロフォーサーズ機を機動性・高速性を活かした「Gシリーズ」とし、Sシリーズはフルサイズセンサーで究極の高画質と表現力を追求するモデルといった、各フォーマットの強みを活かした2つのシリーズで展開していくことも説明。さらに2020年の東京オリンピックに向けて、8K撮影について開発中であることを明かした。現在、新センサー・新エンジン・新レンズを開発中だという。