2023年上半期の取り組みを語る
富士フイルムイメージングシステムズ松本社長「Xシリーズとチェキがけん引、『写真幸福論』に大きな反響」
■好調デジタルカメラ「Xシリーズ」と「チェキ」がけん引役
富士フイルムイメージングシステムズは、「2024年富士フイルムの年賀状概要発表会」を開催した。冒頭に登壇した代表取締役社長・松本考司氏が、2023年度上半期の同社の取り組みについて説明した。
2020年度第4四半期頃から回復基調にある売上高は、カテゴリーにより回復度合いは異なるものの、昨年度に引き続きコロナ前の2019年を大きく上回り推移する。けん引役を務めるのがデジタルカメラ「Xシリーズ」と「チェキ」だ。
デジタルカメラ「Xシリーズ」では昨年、第5世代となるセンサーとエンジンを搭載した「X-T5」を11月に、9月に「X-H2」、7月に「X-H2S」を発売。今年度も6月に「X-S20」、9月には新開発1億200万画素高速センサーを搭載した「GFX 100II」を発売する。
「X-Hシリーズ」「X-T5」は発売後1年が経過したが、お客様から高い評価をいただいていると語る松本社長。好調の背景として「Xシリーズの購買層の45%を20代・30代が占めています」と若年層を中心とした新しいユーザー層の拡大に注目する。
従来は記録や保存が主だった購入目的にも変化が認められ、「作品づくりや自己表現が半数近く(49%)を占めるまでになり、写真を撮る楽しみを追求できる趣味性の高いカメラという点が、Xシリーズの好調を支えるひとつの要因になっています」と分析する。
その象徴のひとつが「フィルムシミュレーションモード」の存在だ。「特に若いお客様に見受けられる傾向として、写真の色や雰囲気を変えて撮影できるモードや機能が搭載されているカメラとしてXシリーズが評価され、独自の撮影機能『フィルムシミュレーションモード』が愛用されていることがわかりました」。
東京カメラ部と共同で開催したフォトコンテスト「COLORS LIKE FILM」は、「こころときめくフイルム色」をテーマに、フィルムシミュレーションで撮影した作品をInstagramで募集した。1ヶ月半で約7,000件もの作品が寄せられ、「お客様のこだわりの作品表現に対し、フィルムシミュレーションがマッチする手ごたえを感じています」と語る。
フィルムシミュレーションを活用した撮影の楽しさにとどまらず、写真展において自己表現としてプリント・展示する喜びをひとりでも多くの人に実感してもらうために、富士フイルムが運営するプロラボサービス「クリエイト」のプロモーションを強化。Xシリーズユーザーの作品づくりに対するこだわりに応えていく。
「クリエイトには作品づくりを熟知した専門のプリントディレクターがおり、撮影者の意図をくみ取り、一緒に考え、作品づくりをサポートしています。クリエイトプリントをご活用いただくことで、Xシリーズで撮影した表現をさらに追求する楽しさを提供していきます。今後の展開にご期待ください」とアピールした。
9月28日には中判ミラーレスカメラ「GFX 100II」を発売。「圧倒的な画質、システムの機動性に加え、新たに高速性能と動画性能を手に入れ、可能性をさらに押し広げました。写真映像のあらゆるプロフェッショナルなクリエイティビティをサポートして参ります」と拡販へ意気込む。
もうひとつの柱となるinstaxチェキは新たなユーザー層を取り込むことで、チェキカメラ、チェキプリンターともに年々着実に出荷台数を伸長。2023年は対前年比1.3倍以上の出荷台数を見込んでいる。
今年も3月に発売したエントリーモデル「instax mini 12」ではZ世代、6月に発売したハイブリッドタイプ「instax mini EVO」の新色ブラウンでは男性のカメラ・写真好き層、スクエアタイプ「instax SQUARE SQ40」は音楽やファッションに敏感な層へとさらなるユーザー層拡大にチャレンジする。
9月21日には、これまでのチェキとは異なる“撮影”に特化した新たなコンセプトを打ち出した手のひらサイズの「INSTAX Pal(インスタックス パル)」を発表。10月5日に発売が開始されている。
■8月に発表した「写真幸福論」に想像を上回る大きな反響
8月25日に立ち上げたのは、「写真撮影」や「写真プリント」を通じて人生の幸福度を高める「写真幸福論」プロジェクト。「カメラ店様、スタジオ様などいろいろなところでお話しをさせていただいています。大変好評で『一緒にこの活動をやっていきたい』との声を多数いただいています」と松本社長は手ごたえを訴える。
プロジェクトの開始にあわせ、第1弾となる2つのサービスが発表された。身近なコミュニティーや企業向けの参加型写真展サービス「“PHOTO IS”想いをつなぐ。会話と絆が生まれる写真展パッケージ」には、発表以降様々な企業や自治体から数多くの相談が寄せられ、すでに具体的な話が進められている。
もうひとつの大切な人に“感性”や“想い”を込めた写真プリントが贈れるプリントサービス「FUJICOLOR+PANTONE フォトメッセージカード」は、同社直販サイトと表参道の直営店で受付を開始。想定していたギフト需要にとどまらず、推し活や旅行の記念写真、団体での利用も見受けられる。
「やはりPantone(パントン)社とコラボレーションしたオリジナル台紙全40色のバリエーションのインパクトとそこから選んでいただける楽しさ、さらには写真の作品としての質感が上がると大変好評です。利用状況を見極め、展開を拡大していきたい」と説明した。
専用サイトでは、著名人が写真の魅力について語る新たなコンテンツ「わたしの写真幸福論」をスタートした。第一弾として、実家が写真館を営んでいた俳優・佐野史郎さんが登場。「心打つエッセイになっています。いろいろな著名人の方に語っていただき、『写真っていいよね』ということを一般の方にもっと知っていただき、写真幸福論を広げていきたい」と訴えた。
年賀状施策にも写真幸福論を活かして展開していく構えだ。「“写真を贈る”ということは、誰かと幸せを分かち合うこと。これまでは早さ・キレイさ・デザインなど機能の向上を訴えてきましたが、幸せな時間や関係性をつくるサービスの拡充という観点から、新しい年賀状の広がりを創っていきたい」と新たなコンセプトで切り込んでいく。
子育てファミリーとシニア層がメインだったターゲット層も、「“作品・自己表現”に対して価値観を持つ若年層、様々な趣味層を新たなターゲットに、贈り手の想いをつなげる楽しさ、贈る・もらう楽しさをしっかりと捉えていきます。『写真でつくるたのしさ 贈ってつながるしあわせ』をキャッチコピーに、従来のあいさつや儀礼的に行っていた以外の、写真年賀状の新たな像を創っていきたい。今年はその第1弾です」と力を込めた。