ガジェット【連載】佐野正弘のITインサイト 第151回
実店舗「Xiaomi Store」で自社販路拡大のシャオミ、携帯大手からの独立を強めるのか
2024年に非常に高いカメラ性能を誇るフラッグシップモデルの最上位機種「Xiaomi 14 Ultra」を投入して話題となっただけでなく、ローエンドスマートフォンを中心に販売を拡大して国内での出荷台数を大きく伸ばした中国シャオミ。そのシャオミが3月13日に新製品発表イベントを実施し、多数の新製品を発表している。
そこで発表されたのは、Xiaomi 14 Ultraの後継となるフラッグシップモデル「Xiaomi 15 Ultra」や、日本では初となるスタンダードタイプのフラッグシップモデル「Xiaomi 15」、そして高いコストパフォーマンスを誇るミドルクラスの「Redmi Note 14 Pro 5G」など。他にもタブレットやワイヤレスイヤホン、スマートウォッチなど非常に多数のデバイスを投入することを発表し、大きな注目を集めたようだ。
各機種の詳細は既に本誌でも取り上げられていることから、詳細はそちらを確認いただきたいが、今回の発表ではそれら製品群だけでなく、同社の戦略面でも大きな変化が起きている様子を見て取ることができた。1つはスマートフォンの販売時期である。
シャオミの新製品は、まず中国で最初に発表がなされ、その後世界各国で販売するグローバル展開を発表。日本での新機種投入が発表されるのは、それからさらに数か月後というのが従来の傾向であった。
だが、今回国内発売が発表されたXiaomi 15シリーズなどは、中国で最初に発表されたことに変わりはないのだが、グローバル展開の発表からおよそ10日で国内市場への投入が発表されている。実際、筆者はスペイン・バルセロナで実施されたXiaomi 15シリーズのグローバル展開発表イベントを訪れているのだが、このイベントが実施されたのは現地時間で3月2日のことだ。
そして3月13日には、グローバル発表がなされた製品のうち電動キックスケーターを除くほぼすべての製品が、日本に投入されることを打ち出している。Xiaomi 14 Ultraの場合、グローバル発表から国内発売の発表まで約2ヵ月を要していたことを考えると、グローバル発表から日本での発売発表までの期間を大幅に短縮している様子を見て取ることができよう。
そしてもう1つ、大きな変化となるのが販路である。スマートフォンに限ると日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社経由での販路が最も規模が大きく、メーカー独自の販路は規模が小さい。
だが今回の発表に当たり、シャオミは「Xiaomi Store」を日本でオープンすることを発表し、メーカー自身の販路開拓により積極的に乗り出す姿勢を示している。Xiaomi Storeは3月22日にイオンモール浦和美園店に1号店をオープンするのを皮切りとして、4月5日にはイオンモール川口店に2号店をオープン。その後も全国展開を進めていく方針のようで、2025年にもこれら2店舗以外の展開を考えている様子だ。
シャオミは2024年に東京・渋谷にポップアップストアを展開するなど、以前から実店舗展開に前向きな姿勢を見せ、そのために製品ラインナップの拡充を図っていた。それゆえ今回の動きはある意味で順当なものといえるのだが、意外だったのはその店舗がポップアップストアを展開していた都心部ではなく、郊外のショッピングモールを中心に展開する方針が打ち出されたことだ。
その理由として、シャオミの日本法人であるシャオミ・ジャパンの副社長である鄭彦氏は、同社がスマートフォンだけではなく家電・非家電などさまざまなライフスタイル製品を扱っていることから、ファミリー層との親和性が高いことを挙げている。イオンモールをパートナーに選んだのも、国外ではアジア圏を中心に展開しているイオンモールでXiaomi Storeを出店し、成功を収めている実績があるからこそのようだ。
もちろんシャオミが出店する場所はイオンモールに限らず、今後都心部に店舗を展開する可能性もあるという。ただスマートフォンは頻繁に購入される商品ではないだけに、顧客が継続的に訪れるにはスマートフォン以外の販売が重要になってくる。そうした意味でも家電などの販売につながりやすい、郊外店舗での展開が重要となるようだ。
スマートフォンなどの最新機種をいち早く国内に投入し、それを自社のショップで販売拡大していくという取り組みは、国内ではあまり例がないもの。それだけシャオミが国内市場攻略に向け攻めの姿勢を見せたことは確かなのだが、その一方で製品ラインナップを見ると気になる点が1つあり、それは投入されるスマートフォン3機種が、いずれも携帯電話会社から販売されないことだ。
中でも驚きがあったのが、4~5万円台と比較的購入しやすい価格帯のRedmi Note 14 Pro 5Gが、携帯各社から販売されなかったこと。2024年に発売された前機種となる「Redmi Note 13 Pro 5G」は、KDDIの「au」「UQ mobile」ブランドで販売がなされていただけに、なおさら驚きがあった。
そして、携帯大手からの販売が見込めなければ販売数も多くは見込めないだけに、今回投入されるスマートフォン新機種はいずれも国内向けカスタマイズ、より具体的に言えばFeliCaの搭載がなされていない。スマートフォンの端末販売が減少する中にあって、携帯大手がメーカーからの調達を減らす傾向にあることから、シャオミもその影響を大きく受けたのではないかと考えられる。 そしてこのことは、シャオミの日本戦略にも影響を与えている様子がうかがえる。実際、シャオミ・ジャパンのプロダクトプランニング部本部長である安達晃彦氏は、「グローバルで要望が高く、鮮度高く(製品を)持ってくることが第一」と説明。自社販路のみの販売となることで、逆にローカライズにかかる手間と時間をカットできることを生かし、グローバルで発表された製品をいち早く国内投入することに重点を置いた様子を示している。
とはいえ、シャオミ側も完全に自社販路へシフトするわけではなく、販売数が見込める携帯各社からの販路は今後も重視していく方針のようだ。実際鄭氏も「日本はキャリアと量販店、弊社自身のチャンネルとバランスを取ってやっていく」と話しており、シャオミは今後もXiaomi 15 Ultraのようなモデルは自社販路で販売する一方、数量が見込めるモデルは引き続き携帯各社からの販売を目指すものと考えられる。
将来を見据えれば自社販路の開拓は非常に重要となってくるが、最近は中~低価格帯を巡ってメーカー同士の競争が非常に激化しており、結果として携帯各社の販路開拓の重要性が再び高まってきている印象を受ける。
それだけに今回のシャオミの動向からは、メーカー側が今後の生き残りに向けた自社販路の開拓と、携帯電話会社経由での販売とのバランスをいかに取るかが、非常に難しくなってきている様子を見て取ることができそうだ。
新フラッグシップスマホをはじめ多数の新製品群を投入
そこで発表されたのは、Xiaomi 14 Ultraの後継となるフラッグシップモデル「Xiaomi 15 Ultra」や、日本では初となるスタンダードタイプのフラッグシップモデル「Xiaomi 15」、そして高いコストパフォーマンスを誇るミドルクラスの「Redmi Note 14 Pro 5G」など。他にもタブレットやワイヤレスイヤホン、スマートウォッチなど非常に多数のデバイスを投入することを発表し、大きな注目を集めたようだ。
各機種の詳細は既に本誌でも取り上げられていることから、詳細はそちらを確認いただきたいが、今回の発表ではそれら製品群だけでなく、同社の戦略面でも大きな変化が起きている様子を見て取ることができた。1つはスマートフォンの販売時期である。
シャオミの新製品は、まず中国で最初に発表がなされ、その後世界各国で販売するグローバル展開を発表。日本での新機種投入が発表されるのは、それからさらに数か月後というのが従来の傾向であった。
だが、今回国内発売が発表されたXiaomi 15シリーズなどは、中国で最初に発表されたことに変わりはないのだが、グローバル展開の発表からおよそ10日で国内市場への投入が発表されている。実際、筆者はスペイン・バルセロナで実施されたXiaomi 15シリーズのグローバル展開発表イベントを訪れているのだが、このイベントが実施されたのは現地時間で3月2日のことだ。
そして3月13日には、グローバル発表がなされた製品のうち電動キックスケーターを除くほぼすべての製品が、日本に投入されることを打ち出している。Xiaomi 14 Ultraの場合、グローバル発表から国内発売の発表まで約2ヵ月を要していたことを考えると、グローバル発表から日本での発売発表までの期間を大幅に短縮している様子を見て取ることができよう。
そしてもう1つ、大きな変化となるのが販路である。スマートフォンに限ると日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社経由での販路が最も規模が大きく、メーカー独自の販路は規模が小さい。
だが今回の発表に当たり、シャオミは「Xiaomi Store」を日本でオープンすることを発表し、メーカー自身の販路開拓により積極的に乗り出す姿勢を示している。Xiaomi Storeは3月22日にイオンモール浦和美園店に1号店をオープンするのを皮切りとして、4月5日にはイオンモール川口店に2号店をオープン。その後も全国展開を進めていく方針のようで、2025年にもこれら2店舗以外の展開を考えている様子だ。
シャオミは2024年に東京・渋谷にポップアップストアを展開するなど、以前から実店舗展開に前向きな姿勢を見せ、そのために製品ラインナップの拡充を図っていた。それゆえ今回の動きはある意味で順当なものといえるのだが、意外だったのはその店舗がポップアップストアを展開していた都心部ではなく、郊外のショッピングモールを中心に展開する方針が打ち出されたことだ。
その理由として、シャオミの日本法人であるシャオミ・ジャパンの副社長である鄭彦氏は、同社がスマートフォンだけではなく家電・非家電などさまざまなライフスタイル製品を扱っていることから、ファミリー層との親和性が高いことを挙げている。イオンモールをパートナーに選んだのも、国外ではアジア圏を中心に展開しているイオンモールでXiaomi Storeを出店し、成功を収めている実績があるからこそのようだ。
もちろんシャオミが出店する場所はイオンモールに限らず、今後都心部に店舗を展開する可能性もあるという。ただスマートフォンは頻繁に購入される商品ではないだけに、顧客が継続的に訪れるにはスマートフォン以外の販売が重要になってくる。そうした意味でも家電などの販売につながりやすい、郊外店舗での展開が重要となるようだ。
スマートフォンなどの最新機種をいち早く国内に投入し、それを自社のショップで販売拡大していくという取り組みは、国内ではあまり例がないもの。それだけシャオミが国内市場攻略に向け攻めの姿勢を見せたことは確かなのだが、その一方で製品ラインナップを見ると気になる点が1つあり、それは投入されるスマートフォン3機種が、いずれも携帯電話会社から販売されないことだ。
中でも驚きがあったのが、4~5万円台と比較的購入しやすい価格帯のRedmi Note 14 Pro 5Gが、携帯各社から販売されなかったこと。2024年に発売された前機種となる「Redmi Note 13 Pro 5G」は、KDDIの「au」「UQ mobile」ブランドで販売がなされていただけに、なおさら驚きがあった。
そして、携帯大手からの販売が見込めなければ販売数も多くは見込めないだけに、今回投入されるスマートフォン新機種はいずれも国内向けカスタマイズ、より具体的に言えばFeliCaの搭載がなされていない。スマートフォンの端末販売が減少する中にあって、携帯大手がメーカーからの調達を減らす傾向にあることから、シャオミもその影響を大きく受けたのではないかと考えられる。 そしてこのことは、シャオミの日本戦略にも影響を与えている様子がうかがえる。実際、シャオミ・ジャパンのプロダクトプランニング部本部長である安達晃彦氏は、「グローバルで要望が高く、鮮度高く(製品を)持ってくることが第一」と説明。自社販路のみの販売となることで、逆にローカライズにかかる手間と時間をカットできることを生かし、グローバルで発表された製品をいち早く国内投入することに重点を置いた様子を示している。
とはいえ、シャオミ側も完全に自社販路へシフトするわけではなく、販売数が見込める携帯各社からの販路は今後も重視していく方針のようだ。実際鄭氏も「日本はキャリアと量販店、弊社自身のチャンネルとバランスを取ってやっていく」と話しており、シャオミは今後もXiaomi 15 Ultraのようなモデルは自社販路で販売する一方、数量が見込めるモデルは引き続き携帯各社からの販売を目指すものと考えられる。
将来を見据えれば自社販路の開拓は非常に重要となってくるが、最近は中~低価格帯を巡ってメーカー同士の競争が非常に激化しており、結果として携帯各社の販路開拓の重要性が再び高まってきている印象を受ける。
それだけに今回のシャオミの動向からは、メーカー側が今後の生き残りに向けた自社販路の開拓と、携帯電話会社経由での販売とのバランスをいかに取るかが、非常に難しくなってきている様子を見て取ることができそうだ。