岩井喬が聴くBOSE「QuietComfort 15」− 現行最高水準のNC効果&明快で聴き疲れしないサウンドを両立
飛躍的に進歩したノイズキャンセリング効果と高い再生力を実現するBOSEの「QuietComfort 15」を岩井 喬氏が試聴! そのNC効果と音質を検証&レビューする。
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■「QuietComfort 15」と「QuietComfort 2」の相違点
「BOSE」のノイズキャンセル(以下、NC)機能を搭載したヘッドホンは、これまで「QuietComfort」シリーズとして2001年に「QuietComfort 1」、2003年にはその後継機である「QuietComfort 2」(2005年にバージョンアップを実施)、続いて画期的なオンイヤータイプとして2006年に発表された「QuietComfort 3」と、市場をリードする製品の数々を送り出してきた。そしてこの秋、「QuietComfort 2」の後継機として、「QuietComfort 15」が発売された。シリーズ発売以降、順々にモデルナンバーを重ねてきたが、従来よりも大幅なNC効果が得られるようになったということで、本機では一気に“15”まで飛躍している。
「QuietComfort 15」と「QuietComfort 2」の外観上の違いとしては、LEDインジケーターが赤から緑に変わった点、モデル表記がハウジングに記載されている点、そして外部騒音を検知するマイク用に設けられていると思われる、わずかな気孔がある点くらいで、意匠そのものはほぼ同様である。イヤーパッドの装着感はよりしっとりとしており、低反発の素材自体がさらにソフトなものへ変更されているようだ。ハウジングの内側を見ると、イヤーパッドの裏側にはいくつもの小さな穴が認められる。公表されてはいないが、後述するNC効果促進や音のこもりを解消する要素の一つになっているように思われる。今回のモデルチェンジにおいて、NC機能のさらなる強化が図られたわけだが、アクティブな面ではイヤーカップの内側と外側に騒音検知用マイクを設け、独自の分析回路がそれぞれのマイクからの検知信号を精密に処理。このダブルマイクによるNC技術のほかには、パッシブな面としてクッション材の変更など、従来からのアコースティックな筐体要素を見直し、イヤーカップ内へ進入する騒音を減らしているという。
■両機のNC効果を比較
各社しのぎを削るNCモデルの中にあって、高いレベルにあった「QuietComfort 2」のNC効果も、他社製品との比較においては徐々にその差が縮められている印象を受けていた。しかし「QuietComfort 15」は装着した瞬間に実感できるほど、強力なNC効果が得られる。「QuietComfort 2」と比較してもその差は歴然としており、より広い周波数帯域での騒音低減を実現しているという。ホワイトノイズ成分も小さくなっているが、地下鉄や電車の中での試聴でも、走行音やエアコンノイズが一気に消え去り、音楽や語学ソースに一層集中できる。自宅環境でもPCやエアコン、換気扇などの音がほぼ聞こえない状況となり、静寂な空間に包まれているかのよう。日常騒音から切り離されることで、リラックス効果も生まれるが、何より意識を集中しやすくなるので、音楽を楽しむだけでなく、勉強や読書の際にも便利なツールとなりえるだろう。
■「QuietComfort 15」のサウンドをチェック
「QuietComfort 15」のサウンド面についても掘り下げてみよう。まず基本テクノロジーとして、電気的に音質を補正し、広い帯域を伸び良く再生させ、楽器やボーカルを引き立たせるという独自の『アクティブ・イコライぜーション』が搭載されている。また、同社独自の低音再生技術である『トライポート・テクノロジー』も採用されており、深みある低域再生を可能としている。電源を入れているときのみ、音が出るアクティブ方式で、パッシブなスルー再生には対応していない。
「QuietComfort 2」とのサウンド比較では、倍音成分が豊かになり、全帯域でハリのあるサウンドとなっている。ボーカルもヌケ良く、音像ははっきりと際立ち、広がりも豊かに感じられるようになった。「カラヤン」においては、線が細いストリングスやホーンが華やかに広がる。ローエンドはすっきりとまとまり、ほのかなふくよかさを感じる。全体的に明るい快活なサウンドだ。「オスカー」では、音場の見通し良く、ウッドベースの弾力感はハリがあり、ゆったりとした伸びやかさが得られた。ロックソースの「メニケ」においては、ジャキジャキとしたディストーションギターのエッジと、むっちりとしたベースの質感のバランスが気持ち良い。ボーカルのハスキーさを際立たせ、スネアの音ヌケもすっきりしている。ただしキックのアタックは丸みを帯びており、どちらかといえばマイルドな味付けだ。「AP」の女性ボーカルでは倍音成分のハリが強めで、音像は細めに描かれる。ドライな質感だが口元にニュアンスはわずかに潤いが伴う。
NCヘッドホンはNC機能を重視するあまり、音質が犠牲になっていると思われる製品も少なくない。「QuietComfort 15」では現行最高水準のNC効果とともに、明快で聴き疲れしないサウンドを両立したハイバランスモデルといえそうだ。
■試聴ソフト
●カラヤン/ベルリン・フィル『ホルスト:組曲<惑星>』(ユニバーサル: POCG- 9355、略称:カラヤン)
●オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(ユニバーサル:UCCU-9407、略称:オスカー)
●『Pure〜AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS』(F.I.X.:KIGA2、略称:AP)
●デイヴ・メニケッティ『MENIKETTI』(DREAM CATCHER:CRIDE35、略称:メニケ)
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【執筆者プロフィール】
岩井喬 Takashi Iwai
1977 年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。
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■「QuietComfort 15」と「QuietComfort 2」の相違点
「BOSE」のノイズキャンセル(以下、NC)機能を搭載したヘッドホンは、これまで「QuietComfort」シリーズとして2001年に「QuietComfort 1」、2003年にはその後継機である「QuietComfort 2」(2005年にバージョンアップを実施)、続いて画期的なオンイヤータイプとして2006年に発表された「QuietComfort 3」と、市場をリードする製品の数々を送り出してきた。そしてこの秋、「QuietComfort 2」の後継機として、「QuietComfort 15」が発売された。シリーズ発売以降、順々にモデルナンバーを重ねてきたが、従来よりも大幅なNC効果が得られるようになったということで、本機では一気に“15”まで飛躍している。
「QuietComfort 15」と「QuietComfort 2」の外観上の違いとしては、LEDインジケーターが赤から緑に変わった点、モデル表記がハウジングに記載されている点、そして外部騒音を検知するマイク用に設けられていると思われる、わずかな気孔がある点くらいで、意匠そのものはほぼ同様である。イヤーパッドの装着感はよりしっとりとしており、低反発の素材自体がさらにソフトなものへ変更されているようだ。ハウジングの内側を見ると、イヤーパッドの裏側にはいくつもの小さな穴が認められる。公表されてはいないが、後述するNC効果促進や音のこもりを解消する要素の一つになっているように思われる。今回のモデルチェンジにおいて、NC機能のさらなる強化が図られたわけだが、アクティブな面ではイヤーカップの内側と外側に騒音検知用マイクを設け、独自の分析回路がそれぞれのマイクからの検知信号を精密に処理。このダブルマイクによるNC技術のほかには、パッシブな面としてクッション材の変更など、従来からのアコースティックな筐体要素を見直し、イヤーカップ内へ進入する騒音を減らしているという。
■両機のNC効果を比較
各社しのぎを削るNCモデルの中にあって、高いレベルにあった「QuietComfort 2」のNC効果も、他社製品との比較においては徐々にその差が縮められている印象を受けていた。しかし「QuietComfort 15」は装着した瞬間に実感できるほど、強力なNC効果が得られる。「QuietComfort 2」と比較してもその差は歴然としており、より広い周波数帯域での騒音低減を実現しているという。ホワイトノイズ成分も小さくなっているが、地下鉄や電車の中での試聴でも、走行音やエアコンノイズが一気に消え去り、音楽や語学ソースに一層集中できる。自宅環境でもPCやエアコン、換気扇などの音がほぼ聞こえない状況となり、静寂な空間に包まれているかのよう。日常騒音から切り離されることで、リラックス効果も生まれるが、何より意識を集中しやすくなるので、音楽を楽しむだけでなく、勉強や読書の際にも便利なツールとなりえるだろう。
■「QuietComfort 15」のサウンドをチェック
「QuietComfort 15」のサウンド面についても掘り下げてみよう。まず基本テクノロジーとして、電気的に音質を補正し、広い帯域を伸び良く再生させ、楽器やボーカルを引き立たせるという独自の『アクティブ・イコライぜーション』が搭載されている。また、同社独自の低音再生技術である『トライポート・テクノロジー』も採用されており、深みある低域再生を可能としている。電源を入れているときのみ、音が出るアクティブ方式で、パッシブなスルー再生には対応していない。
「QuietComfort 2」とのサウンド比較では、倍音成分が豊かになり、全帯域でハリのあるサウンドとなっている。ボーカルもヌケ良く、音像ははっきりと際立ち、広がりも豊かに感じられるようになった。「カラヤン」においては、線が細いストリングスやホーンが華やかに広がる。ローエンドはすっきりとまとまり、ほのかなふくよかさを感じる。全体的に明るい快活なサウンドだ。「オスカー」では、音場の見通し良く、ウッドベースの弾力感はハリがあり、ゆったりとした伸びやかさが得られた。ロックソースの「メニケ」においては、ジャキジャキとしたディストーションギターのエッジと、むっちりとしたベースの質感のバランスが気持ち良い。ボーカルのハスキーさを際立たせ、スネアの音ヌケもすっきりしている。ただしキックのアタックは丸みを帯びており、どちらかといえばマイルドな味付けだ。「AP」の女性ボーカルでは倍音成分のハリが強めで、音像は細めに描かれる。ドライな質感だが口元にニュアンスはわずかに潤いが伴う。
NCヘッドホンはNC機能を重視するあまり、音質が犠牲になっていると思われる製品も少なくない。「QuietComfort 15」では現行最高水準のNC効果とともに、明快で聴き疲れしないサウンドを両立したハイバランスモデルといえそうだ。
■試聴ソフト
●カラヤン/ベルリン・フィル『ホルスト:組曲<惑星>』(ユニバーサル: POCG- 9355、略称:カラヤン)
●オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(ユニバーサル:UCCU-9407、略称:オスカー)
●『Pure〜AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS』(F.I.X.:KIGA2、略称:AP)
●デイヴ・メニケッティ『MENIKETTI』(DREAM CATCHER:CRIDE35、略称:メニケ)
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【執筆者プロフィール】
岩井喬 Takashi Iwai
1977 年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。