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CHORD「Cordette Toucan」とオーディオテクニカ「AT-HA35i」

ひとつ上の音体験を約束してくれるヘッドホンアンプ2機種をレビュー

公開日 2010/07/29 11:13 ファイル・ウェブ編集部
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いまや多くの人が所有しているiPod/iPhone。こちらをソースに高品位な音を楽しめ、かつ外部機器などとつなげる拡張性もあるヘッドホンアンプ2機種をセレクト。編集部の山本と小澤が試聴したインプレッションをお届けします。

【試聴モデル】 *型番クリックでレビューへ
■AUDIO-TECHNICA AT-HA35i

■CHORD Chordette Toucan

【試聴ソース】

■山本
・The Bee Gees『How Deep Is Your Love』(サタデー・ナイト・フィーバー サウンドトラック)
・Lady Gaga『Porker Face』(The Fame)
・Michael Jackson『Wanna Be Startin' Sometin'』(This is it)
・Ann Sally『のびろのびろだいすきな木』(こころうた)

■小澤
・相対性理論『パラレルワールド』(シンクロニシティーン)
・相対性理論『LOVEずっきゅん』(シフォン主義)
・ツィメルマン(ピアノ)/ショパン『バラード第1番』
・ヨーロッパ室内管弦楽団 :シェーンベルク『室内交響曲第1番』

   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇   


■AUDIO-TECHNICA AT-HA35i ¥50,400(税込)
製品データベース

本体にiPodドックを内蔵し、iPodのデジタル信号をダイレクト伝送することが可能なヘッドホンアンプ。D/AコンバーターにはAKM製192kHz/24bit対応DACチップ「AK4396」を採用している。同軸デジタル出力端子やアナログRCA端子を備えているため、AVアンプなどへデジタルソースを原音のまま送り出すことも可能だ。ただしUSB出力には対応していない。S映像出力端子も設けており、iPodに保存した映像を本機経由でテレビに表示して楽しむことも可能だ。iPodの基本操作が行えるカードリモコンを付属している。

AT-HA35i

AT-HA35iの接続端子部

【SPEC】●入力端子:iPod専用ドックコネクター(デジタルリンク) ●対応サンプリング周波数:32kHz、44.1kHz、48kHz ●周波数特性:20〜20,000Hz(0dB、-3dB) ●定格出力:2Vms ●出力インピーダンス:330Ω ●全高調波歪率:0.01% ●S/N比:105dB ●最大出力:440mW(16Ω 10%歪時)、250mW+250mW(32Ω 10%歪時)、125mW+125mW(64Ω 10%歪時)、25mW+25mW(300Ω 10%歪時) ●外形寸法:105W×44H×135Dmm ●問い合わせ先:オーディオテクニカ相談窓口 TEL/0120-773-417


■山本
各帯域の音を素直にバランス良く再現する。高域にもう少しクリアさが欲しいところだが、全体としてマイルドな音調に整えられ、無理のないサウンドだと思う。中域を核に、しっかりと芯のあるサウンドに上手くまとめられている印象だ。

Ann Sallyは声にふくよかさが加わる。バンドは各楽器ともにバランスの良い再現だ。ピアノやホーンは、高域にもう少し解像感が欲しいようにも感じるが、独特な柔らかさが味わい深くもある。Michael Jacksonは中域から低域にかけてとても力強く、リズムに勢いがある。The Bee Geesはボーカルやコーラス、バンドの楽器一つ一つがしっかりと聴こえる。ベースはぶかぶかとせずに、タイトに音符のかたちを描く。エレキギターの弦の響きも粘り強く、リアリティのあるサウンドだ。特にロック・ポップス系のサウンドに対して、幅広い対応力を持っている製品と感じた。

■小澤
iPodにイヤホンを直挿しした場合と、本機を通した場合とを比べてみた。本機を通すと全体に音の明瞭度が上がり、空間に広がりが出る。相対性理論ではシンバルの刻みが小気味よくチャキッと聞こえてくるし、ベースの量感がたっぷりしてボリュームも上がったような印象を受ける。ボーカル(中音域)はふくよかになるが、やや膨らみ気味かもと感じた。ドック内蔵ヘッドホンアンプというのはユニークだし、iPodデジタル接続に対応しているのも大きなポイント。例えば本機とデスクトップスピーカーを組み合わせればコンパクトなのにグレードアップした音を楽しめるシステムが構築できる。ちなみにiPhoneには公式対応しておらず、音は聴けるがボリューム調節がAT-HA35i側ではできなくなるので注意。



■CHORD Chordette Toucan ¥115,500(税込)
製品データベース

同社のコンパクトなコンポーネント、“Chordetteシリーズ”の第二弾モデル。USB入力を搭載した、ペア・リスニング対応のヘッドホンアンプ。USB端子は48/44.1kHz対応、アナログはバランスとアンバランスを1系統ずつ備えるが、外部機器へのオーディオ出力は非搭載となる。本体外装は高品位のアルミニウム・ブロック切削筐体を採用し、高品位な装いと音質の両方を実現している。空間的サウンドイメージをエンハンスするフィルター機能「クロスフィード技術」も搭載。カラーバリエーションはシルバーの単色と、ブラック&シルバーのコンビネーションの2種類が揃う。

Cordette Toucan

Cordette Toucanの接続端子部

【SPEC】●周波数特性:20〜200kHz ●ダイナミックレンジ:112dB ●THD+N:0.06% ●外形寸法:160W×70H×40Dmm ●質量:400g ●問い合わせ先:タイムロード TEL/03-5758-6070


■山本
USB入力とアナログオーディオ(XLR/RCA)入力に対応したヘッドホンアンプ。本機は今回、ULTRASONEの「edition 8」と、Ultimate Earsのインナーイヤホン「UE700」で試聴した。UE700をつないで聴くと、無音時に僅かながらノイズが感じられたが、edition 8ではほぼ気になることはなかった。表現の幅は多彩で、様々な種類の音楽に懐の深い再現力を備えている。

The Bee Geesはメインボーカルとコーラスのハモりがとてもきめ細かく表現される。奥行き方向への広がり感もナチュラルだ。Lady Gagaは音の数が多い楽曲も、つぶれてしまうことなく立体感を上手に表現する。Michael Jacksonは低音がタイトに引き締まっていて、高域の伸びも滑らかだ。Ann Sallyは声に透明感がある。演奏全体は解像感が高く、どちらかと言えばクリアな寒色系の色合いが感じられる音。モダンジャズのアグレッシブな作品にも相性が良さそうだ。Perfumeは空間の立体感が豊か。リズムセクションは音の弾力とアタック感がしなやかに再現され、音楽のグルーブが気持ちよく再現される。

■小澤
静音部ではシャーシャーと聞こえるノイズがやや気になったが、全体的に気品と透明感を感じる音はとても好み。ショパンでは、ピアノの柔らかな響きを聴かせてくれつつも輪郭が広がりすぎない。音の芯をしっかり捉えつつ、響きも綺麗に表現してくれると感じた。シェーンベルクではバイオリンの激しいフレーズもキンキンせず、複雑なtutti部も精緻かつ広がり豊かに描き出す。総じてどの楽器もクリアで鮮度が高いと感じた。相対性理論ではシンバルの主張が激しく、「トーカンは高音再生に注力しているのかな?」と思ったが、低音がおざなりになるわけではなく、複雑なベースラインの音一個一個が聞こえ、音の変わり目もビシッと合う。ちなみに今回はULTRASONEの「edition8」で試聴したが、ヘッドホンにより相性があるようで、エティモティックリサーチの「hf5」での試聴時は音が硬くなりすぎてノイズの粒が立ってしまった。

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