Victor TECH-PARK最新レビュー
iPodドック搭載ウッドコーンオーディオシステム「EX-S1」を聴く − 木製振動板の特徴を活かした音づくりを実現
ビクターが誇るウッドコーン振動板を搭載した。iPhone/iPod対応のコンパクトな一体型オーディオシステム。CDとUSBメモリー内の音源再生にも対応するなど機能性も十分だが、もちろんウッドコーンならではのサウンドが最大の魅力だ。
木目によって振動の伝わり方が異なり、適度な内部損失を持つ木材は、音響的に実に優秀で自然な特性を持つ。その木材を振動板として加工・量産することに成功したのが、ビクターのウッドコーン振動板だ。本機にも専用に新規開発された最新のウッドコーンユニットが搭載されている。
ユニットを搭載するキャビネットにも特徴がある。内部に補強桟と響棒が組み込まれており、キャビネット自体の響きを整えている。インテリアとのマッチングも考慮して、キャビネットは横に寝かせるようなロースタイルでの設置が基本。コンポ本体と背の高さを揃えてあり、デザインの一体感も強い。操作ボタンとiPodドックが天板に配置されていることからも、ラックに押し込むような設置スタイルは想定していないのだろう。本棚の上など、生活空間にぽんと気軽に設置して使うのがよさそうだ。
iPodをドックに装着すると、リモコンのメニュー・カーソル・決定キーでiPodを操作できる。ドッキングしたままiPod側で操作も行えるので、適時使い分ければよい。再生中の楽曲の情報は、iPodの画面と本機の画面の両方に表示される。本機側の表示は英数字・ひらがなに対応し、漢字・カタカナには非対応だが、その際にはiPod側で確認すればよいだろう。他には、フロントにヘッドホン端子とミニプラグ入力端子、USB端子を備えたところもポイント。最小限ながら拡張性も備えている。
音調は実にしなやか。シンバルなど当たりが柔らかいが、ふにゃっと鈍るわけではない。潤いのある、ふわっとした手触りだ。ドラムスの他のパーツも、バシバシと激しい押し出し方はしてこない。一発ごとのニュアンスや音色の質感描写で存在感を高めているという印象だ。
ウッドベースの沈み具合や量感は、コンパクトなシステムとしての限界はある。しかし、しなやかながらもアタックを鈍らせず、明瞭なタッチ。いかにもウッドベースらしいとうなずける音色だ。
女性ボーカルとの相性は当然のように良好。歌声の質感、湿度感、ダイナミクスへの追従など、さすがの描写である。自然な音調を謳うスピーカーにとって、人の歌声こそが最難関の試金石と言えるだろうが、本機はもちろん合格だ。バッハのヴァイオリン協奏曲では、全体の一体感と個々のパートの明瞭度のバランスが絶妙。弦の音色でもしなやかさが際立つ。
お手軽なコンパクトコンポの世界に投入された、ウッドコーン振動板という切り札は、確かに他と一線を画す魅力を生み出している。
筆者プロフィール:高橋 敦
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。
木目によって振動の伝わり方が異なり、適度な内部損失を持つ木材は、音響的に実に優秀で自然な特性を持つ。その木材を振動板として加工・量産することに成功したのが、ビクターのウッドコーン振動板だ。本機にも専用に新規開発された最新のウッドコーンユニットが搭載されている。
ユニットを搭載するキャビネットにも特徴がある。内部に補強桟と響棒が組み込まれており、キャビネット自体の響きを整えている。インテリアとのマッチングも考慮して、キャビネットは横に寝かせるようなロースタイルでの設置が基本。コンポ本体と背の高さを揃えてあり、デザインの一体感も強い。操作ボタンとiPodドックが天板に配置されていることからも、ラックに押し込むような設置スタイルは想定していないのだろう。本棚の上など、生活空間にぽんと気軽に設置して使うのがよさそうだ。
iPodをドックに装着すると、リモコンのメニュー・カーソル・決定キーでiPodを操作できる。ドッキングしたままiPod側で操作も行えるので、適時使い分ければよい。再生中の楽曲の情報は、iPodの画面と本機の画面の両方に表示される。本機側の表示は英数字・ひらがなに対応し、漢字・カタカナには非対応だが、その際にはiPod側で確認すればよいだろう。他には、フロントにヘッドホン端子とミニプラグ入力端子、USB端子を備えたところもポイント。最小限ながら拡張性も備えている。
音調は実にしなやか。シンバルなど当たりが柔らかいが、ふにゃっと鈍るわけではない。潤いのある、ふわっとした手触りだ。ドラムスの他のパーツも、バシバシと激しい押し出し方はしてこない。一発ごとのニュアンスや音色の質感描写で存在感を高めているという印象だ。
ウッドベースの沈み具合や量感は、コンパクトなシステムとしての限界はある。しかし、しなやかながらもアタックを鈍らせず、明瞭なタッチ。いかにもウッドベースらしいとうなずける音色だ。
女性ボーカルとの相性は当然のように良好。歌声の質感、湿度感、ダイナミクスへの追従など、さすがの描写である。自然な音調を謳うスピーカーにとって、人の歌声こそが最難関の試金石と言えるだろうが、本機はもちろん合格だ。バッハのヴァイオリン協奏曲では、全体の一体感と個々のパートの明瞭度のバランスが絶妙。弦の音色でもしなやかさが際立つ。
お手軽なコンパクトコンポの世界に投入された、ウッドコーン振動板という切り札は、確かに他と一線を画す魅力を生み出している。
筆者プロフィール:高橋 敦
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。