注目のフラグシップ液晶テレビをレビュー
山之内正氏が見た“CELL REGZA”「55X2」の映像再現力 − 2D&3Dの画質を徹底視聴
東芝の液晶テレビのラインナップに新たなフラグシップモデル“CELL REGZA”「55X2」が登場した。最新の「CELL REGZA ENGINE」を搭載し、高画質3D映像の再生も実現した本機の画質を、評論家の山之内正氏がレポートする。
東芝の液晶テレビ“REGZA”の頂点に位置する“CELL REGZA”が登場から1年を経て、第2世代機「55X2」が誕生した。4倍速駆動に対応したパネルに更新して待望の3D対応を果たすとともに、2D画質もさらに向上したという。「55X1」がすでに特別な存在だっただけに、今回のリニューアルでどこまで進化を果たしているのか、大いに楽しみである。
「4倍速メガLEDパネル」「CELL REGZA ENGINE」により、2D/3Dともに圧倒的な高画質を実現
4倍速駆動に対応した新世代パネルとエリア駆動方式の直下型LEDバックライトの組み合わせは、ピーク輝度1000cd/m2、ダイナミックコントラスト比900万対1という驚異的なスペックを実現しているが、たとえこの数字を知らなくても、55X2の映像を一目見れば、その力強いコントラスト感に誰もが圧倒されるに違いない。
新しい「4倍速メガLEDパネル」のバックライトは計3,072個の白色LEDで構成され、512分割されたエリアごとにきめ細かく明暗をコントロールする仕組みを採用している。実際には、分割されたエリア数の4倍強に相当する2,096ポイントで明るさを検出しているので、緻密でなめらかなコントロールができる。明るいピークと深い黒が同じ画面のなかで複雑に共存するような場面でも、白はより明るく、黒はさらに引き締めるダイナミックな表現ができるのだ。明るさとコントラストの改善は3D映像のリアリティ向上に大きな役割を果たすと同時に、2D映像の説得力を高める効果も期待できる。力強いコントラスト感に圧倒されると書いたのは、けっして大げさな表現ではないのだ。
前モデル同様、55X2においてもCELLの演算パワーが画質と機能の両面で威力を発揮している。今回新たに導入された画質改善技術としては、3D映像の鮮鋭感を高める超解像処理、精度の高い2D/3D変換など、「CELLレグザエンジン」ならではの技術が注目すべきポイントだ。
3Dの超解像処理は放送のコンテンツにも多く採用されている「サイド・バイ・サイド方式」に適用して鮮鋭感を復元するもので、映像の内容に合わせて効き具合を調整することができる。3種類のアルゴリズムで自然な立体感を引き出す2D/3D変換機能もそうだが、良質な3Dコンテンツの絶対量が不足している現状ではとても有用な機能だと思う。
きめ細かに使い勝手も進化を遂げた「タイムシフトマシン2」、「Regza Apps Connect」への対応も実現
究極のタイムシフトマシンとしても着実に進化している。全チャンネル録画に加え、チャンネルと時間帯を詳細に指定する機能を追加するなど、きめ細かい使いこなしができるようになった点をまずは歓迎したい。
スマートフォンなどのWi-Fi端末を高機能なリモコンや情報共有ツールとして利用できる「Regza Apps Connect」も、当面はCELL REGZAと「ネットdeナビ」の機能を搭載するREGZAブルーレイなど同社のレコーダー製品に限定されたプレミアムな機能だ。特に、録画番組の注目シーン情報を共有する「タグリスト」を作成できる「RZタグラー」の発想は非常にユニークで、テレビやレコーダーの利用スタイルに新たな可能性を開く機能として注目したい。
2D映像も3D映像も、作品の舞台に引き込まれるようなリアリティを体感
すでに紹介したように、本機の目を見張るようなコントラスト感は、他の液晶テレビとは一線を画す表現力を獲得している。階調重視の「映画プロ」モードでも白のピークが力を失うことがないので、作り手のこだわりや撮影の意図がぼやけることなく、見る側に確実に伝わってくる。
たとえば『バグダッド・カフェ』では、モハヴェ砂漠の抜けるような青空、ディレクターズカット版で鮮やかさを増した原色の深みなどに、既存のテレビとの違いをはっきり見出すことができる。この作品では解像感と鮮鋭感の高さも際立っていて、砂の粒子が風に舞う独特の空気感が非常にリアルだ。粒子といえばフィルムグレインの描写にも不自然さがなく、意図的に粒子を見せる処理と通常の場面の対比が一目瞭然、フィルムならではのテクニックが鮮やかに浮かび上がってきた。
モノトーンに近い構成の絵柄で明暗の対比を際立たせた『シャネル&ストラヴィンスキー』も、55X2の映像が強い印象を作り出す作品の好例だ。特に室内の描写は、構図はもちろんのこと、美術や衣装の選択にも隙がなく、つねに緊張をはらんだ空気が漂っているのだが、その特別な空気感が、やや硬調のタッチで描かれた映像から見事に伝わってくる。硬質な感触とはいっても人物は別で、スキントーンはあくまでニュートラルでしっとりとした質感をたたえ、色合いにも偏りはない。
2D視聴に続いて、専用メガネをかけてBlu-ray 3Dの『アイス・エイジ3』を見る。この作品は3Dテレビの視聴で何度も見ているが、55X2はクロストークの少なさが際立っていて、ストレスの少ない自然な立体映像を体験することができた。特に奥行き方向の遠近感に不自然さがなく、遠景までなめらかな距離感を実感できる。
2D/3D変換には効果を5段階に切り替える機能があり、映像の内容に応じて最適な設定を選ぶことができる。今回視聴した3D収録の音楽ライブ映像では、楽器やミュージシャンが立体的に浮かび上がり、思いがけず大きな効果が得られた。あまり強めの設定を選ばないことが使いこなしのコツで、今回見たソースでは「2」が最適であった。
オーディオシステムもフラグシップモデルにふさわしい妥協のない高音質
55X2は音質についても妥協のない設計を前モデルから受け継いでおり、独立した筐体設計や計100Wの大出力アンプなど、充実した装備を誇る。ジャズのライブ映像(パット・メセニー)ではギターやキーボードの抜けが良く、パーカッションのリズムも粒立ちがクリアで実体感がある。オペラや映画では声の歪みの少なさが際立ち、テレビとしてはかなり水準の高いクオリティを達成していることがわかる。最大音量の75%以上まで上げても歪み感が気にならず、刺激的な音にならない点にも好感を持った。
タイムシフトマシンとしては、新たに登場した姉妹機“CELLレグザ・スリム”モデル「XE2」シリーズ以外にライバルが存在せず、圧倒的な優位は揺るがない。さらに、画質では液晶テレビの常識を覆す深い黒再現と驚異的な高コントラスト性能に加え、クロストークが少なく明るい3D映像が新たな魅力を生んでいる。今回の視聴では、CELL REGZAがフラグシップにふさわしい着実な進化を遂げていることを強く実感した。
◆執筆者プロフィール
山之内 正 Tadashi Yamanouchi
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。
◆CELL REGZA「55X2」のスペック
●サイズ:55V型 ●パネル:広色域VA方式 4倍速フルHDクリアパネル、白色直下型LEDバックライト ●解像度:1920×1080 ●ダイナミックコントラスト:900万対1 ●コントラスト:5,000対1 ●ピーク輝度:1,000カンデラ ●チューナー:地上デジタル×11、BS・110度CSデジタル×2 ●内蔵HDD:3TB ●入出力端子(ディスプレイ):HDMI入力×1、D5入力×1、ビデオ入力×1、USB×1(サービス用)、ヘッドホン×1 ●入出力端子(ボックスユニット):HDMI入力×5、D5入力×1、S映像×1、ビデオ入力×3、光音声出力×1、音声出力×1、USB×3(汎用1/ 録画専用2)、LAN×1 ●外形寸法:1292W×916H×355Dmm(ディスプレイ)、436W×109H×399Dmm(ボックスユニット)●問い合わせ先:東芝 テレビご相談センター TEL/0120-97-9674
東芝の液晶テレビ“REGZA”の頂点に位置する“CELL REGZA”が登場から1年を経て、第2世代機「55X2」が誕生した。4倍速駆動に対応したパネルに更新して待望の3D対応を果たすとともに、2D画質もさらに向上したという。「55X1」がすでに特別な存在だっただけに、今回のリニューアルでどこまで進化を果たしているのか、大いに楽しみである。
「4倍速メガLEDパネル」「CELL REGZA ENGINE」により、2D/3Dともに圧倒的な高画質を実現
4倍速駆動に対応した新世代パネルとエリア駆動方式の直下型LEDバックライトの組み合わせは、ピーク輝度1000cd/m2、ダイナミックコントラスト比900万対1という驚異的なスペックを実現しているが、たとえこの数字を知らなくても、55X2の映像を一目見れば、その力強いコントラスト感に誰もが圧倒されるに違いない。
新しい「4倍速メガLEDパネル」のバックライトは計3,072個の白色LEDで構成され、512分割されたエリアごとにきめ細かく明暗をコントロールする仕組みを採用している。実際には、分割されたエリア数の4倍強に相当する2,096ポイントで明るさを検出しているので、緻密でなめらかなコントロールができる。明るいピークと深い黒が同じ画面のなかで複雑に共存するような場面でも、白はより明るく、黒はさらに引き締めるダイナミックな表現ができるのだ。明るさとコントラストの改善は3D映像のリアリティ向上に大きな役割を果たすと同時に、2D映像の説得力を高める効果も期待できる。力強いコントラスト感に圧倒されると書いたのは、けっして大げさな表現ではないのだ。
前モデル同様、55X2においてもCELLの演算パワーが画質と機能の両面で威力を発揮している。今回新たに導入された画質改善技術としては、3D映像の鮮鋭感を高める超解像処理、精度の高い2D/3D変換など、「CELLレグザエンジン」ならではの技術が注目すべきポイントだ。
3Dの超解像処理は放送のコンテンツにも多く採用されている「サイド・バイ・サイド方式」に適用して鮮鋭感を復元するもので、映像の内容に合わせて効き具合を調整することができる。3種類のアルゴリズムで自然な立体感を引き出す2D/3D変換機能もそうだが、良質な3Dコンテンツの絶対量が不足している現状ではとても有用な機能だと思う。
きめ細かに使い勝手も進化を遂げた「タイムシフトマシン2」、「Regza Apps Connect」への対応も実現
究極のタイムシフトマシンとしても着実に進化している。全チャンネル録画に加え、チャンネルと時間帯を詳細に指定する機能を追加するなど、きめ細かい使いこなしができるようになった点をまずは歓迎したい。
スマートフォンなどのWi-Fi端末を高機能なリモコンや情報共有ツールとして利用できる「Regza Apps Connect」も、当面はCELL REGZAと「ネットdeナビ」の機能を搭載するREGZAブルーレイなど同社のレコーダー製品に限定されたプレミアムな機能だ。特に、録画番組の注目シーン情報を共有する「タグリスト」を作成できる「RZタグラー」の発想は非常にユニークで、テレビやレコーダーの利用スタイルに新たな可能性を開く機能として注目したい。
2D映像も3D映像も、作品の舞台に引き込まれるようなリアリティを体感
すでに紹介したように、本機の目を見張るようなコントラスト感は、他の液晶テレビとは一線を画す表現力を獲得している。階調重視の「映画プロ」モードでも白のピークが力を失うことがないので、作り手のこだわりや撮影の意図がぼやけることなく、見る側に確実に伝わってくる。
たとえば『バグダッド・カフェ』では、モハヴェ砂漠の抜けるような青空、ディレクターズカット版で鮮やかさを増した原色の深みなどに、既存のテレビとの違いをはっきり見出すことができる。この作品では解像感と鮮鋭感の高さも際立っていて、砂の粒子が風に舞う独特の空気感が非常にリアルだ。粒子といえばフィルムグレインの描写にも不自然さがなく、意図的に粒子を見せる処理と通常の場面の対比が一目瞭然、フィルムならではのテクニックが鮮やかに浮かび上がってきた。
モノトーンに近い構成の絵柄で明暗の対比を際立たせた『シャネル&ストラヴィンスキー』も、55X2の映像が強い印象を作り出す作品の好例だ。特に室内の描写は、構図はもちろんのこと、美術や衣装の選択にも隙がなく、つねに緊張をはらんだ空気が漂っているのだが、その特別な空気感が、やや硬調のタッチで描かれた映像から見事に伝わってくる。硬質な感触とはいっても人物は別で、スキントーンはあくまでニュートラルでしっとりとした質感をたたえ、色合いにも偏りはない。
2D視聴に続いて、専用メガネをかけてBlu-ray 3Dの『アイス・エイジ3』を見る。この作品は3Dテレビの視聴で何度も見ているが、55X2はクロストークの少なさが際立っていて、ストレスの少ない自然な立体映像を体験することができた。特に奥行き方向の遠近感に不自然さがなく、遠景までなめらかな距離感を実感できる。
2D/3D変換には効果を5段階に切り替える機能があり、映像の内容に応じて最適な設定を選ぶことができる。今回視聴した3D収録の音楽ライブ映像では、楽器やミュージシャンが立体的に浮かび上がり、思いがけず大きな効果が得られた。あまり強めの設定を選ばないことが使いこなしのコツで、今回見たソースでは「2」が最適であった。
オーディオシステムもフラグシップモデルにふさわしい妥協のない高音質
55X2は音質についても妥協のない設計を前モデルから受け継いでおり、独立した筐体設計や計100Wの大出力アンプなど、充実した装備を誇る。ジャズのライブ映像(パット・メセニー)ではギターやキーボードの抜けが良く、パーカッションのリズムも粒立ちがクリアで実体感がある。オペラや映画では声の歪みの少なさが際立ち、テレビとしてはかなり水準の高いクオリティを達成していることがわかる。最大音量の75%以上まで上げても歪み感が気にならず、刺激的な音にならない点にも好感を持った。
タイムシフトマシンとしては、新たに登場した姉妹機“CELLレグザ・スリム”モデル「XE2」シリーズ以外にライバルが存在せず、圧倒的な優位は揺るがない。さらに、画質では液晶テレビの常識を覆す深い黒再現と驚異的な高コントラスト性能に加え、クロストークが少なく明るい3D映像が新たな魅力を生んでいる。今回の視聴では、CELL REGZAがフラグシップにふさわしい着実な進化を遂げていることを強く実感した。
◆執筆者プロフィール
山之内 正 Tadashi Yamanouchi
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。
◆CELL REGZA「55X2」のスペック
●サイズ:55V型 ●パネル:広色域VA方式 4倍速フルHDクリアパネル、白色直下型LEDバックライト ●解像度:1920×1080 ●ダイナミックコントラスト:900万対1 ●コントラスト:5,000対1 ●ピーク輝度:1,000カンデラ ●チューナー:地上デジタル×11、BS・110度CSデジタル×2 ●内蔵HDD:3TB ●入出力端子(ディスプレイ):HDMI入力×1、D5入力×1、ビデオ入力×1、USB×1(サービス用)、ヘッドホン×1 ●入出力端子(ボックスユニット):HDMI入力×5、D5入力×1、S映像×1、ビデオ入力×3、光音声出力×1、音声出力×1、USB×3(汎用1/ 録画専用2)、LAN×1 ●外形寸法:1292W×916H×355Dmm(ディスプレイ)、436W×109H×399Dmm(ボックスユニット)●問い合わせ先:東芝 テレビご相談センター TEL/0120-97-9674