「このジャンルに現れたベンチマーク」
ラックスマンのUSB-DAC「DA-200」を大橋伸太郎が聴く
サードパーティや海外の中小オーディオメーカーの製品が多かったUSB-DACに、日本の老舗ブランド、ラックスマンより本格的な製品が現れた。「DA-200」(関連ニュース)である。製品の顔付と佇まいを見ただけで、日和見的製品企画でないことを感じ取ることが出来る。同社フォノイコライザーアンプE-200、ヘッドホンアンプP-200と同一のコンパクトサイズだが、プリアンプC-600fをダウンサイジングしたようなラックスマンらしさを発散する精密感あるデザインである。
実際にDA-200を試聴してみると、直感通り、日本を代表するハイエンドの雄、ラックスマンがイメージを描いて作り上げたPCオーディオ(ネットオーディオ)の世界がそこにあった。
まずは試聴結果の報告の前に、DA-200の構成と「何が出来るか」についてざっと紹介しておこう。単体DAコンバーターの本機は、PC、サーバーのデジタル音楽ファイルをアナログ音楽信号に変換し出力する。デジタル入力は同軸・光が192kHz/24bitまで、USB入力は96kHz/24bitまでの入力に対応している。
DACデバイスには、同社Dシリーズで実績のあるTI社バーブラウン製PCM1792Aを使用。DA変換だけでなく、USB入力を光/同軸出力してアンプやCDプレーヤーにデジタル入力(DD変換)が出来る。デジタル入力を本機のバランス構成回路を通してXLRバランス出力することが出来るのは魅力的だ。
内蔵のサンプルレート・コンバーターでデジタル入力のアップサンプリングやクロックの低ジッター化も行う。アナログ出力はRCA、XLR、ヘッドホンを各1系統装備。アナログ入力(RCA×2)も備えているが、スルー出力のみに対応しAD変換は出来ない。
今回の試聴にあたっては、KRIPTON HQM STOREやe-onkyo music、LINN RECORDSのハイレゾ音源をノートPCからUSB入力した。ノイズがないことに加えて、音質は音に色付きがなく透明、濁りや雑味がないニュートラルサウンド。かといって精製水のような味気ないようなものでもなく、音に爽やかな生命感がある点は特筆モノだ。
高橋和歌のバルトーク・無伴奏バイオリンソナタ(e-onkyo 96kHz/24bit)は、ソロ演奏の描写が散漫にならず音像に凝集力があり、しかも演奏が立体的で細かな音をないがしろにせず緻密。試聴室の床が消えたような、録音現場に立ち会っている臨場感がある。
バイオリンの音色も自然。響きが膨張せず克明さと音に芯がある。音色の作為や味付けを排したドキュメンタルなリアルサウンドである。それでいて、くっきりした実在感がありラックスマンらしい透明感、しなやかさ、品を備えている。
最近は、USB入力を備えてUSB DACとしても使えるCDプレーヤーも現れているが、どうしてもCDプレーヤーとしての音作りの支配下にある。DA-200はそうしたものから自由でいて音に高級オーディオらしい密度感がある。「サイドビジネス」でない「専業」のよさである。
「ヴォーカリーズ」(e-onkyo 96kHz/24bit)のバンドネオンの音色のふくらみは初めて聴いた。チェロの暖色とバンドネオン、ピアノの硬質で寒色の美を対比的な色彩感として出せるのだ。この音の色彩感、ずっしりした手応えは今までのPCオーディオに不足していた部分だ。こうでないとタンゴの翳りと憂愁が出ない。ただ、饒舌でなくあくまで演奏に忠実かつニュートラルな点も紹介しておきたい。
「原信夫とシャープ&フラッツ」(e-onkyo 96kHz24bit)はブラスの音色の艶のバラエティを描き分ける。「春の祭典」(e-onkyo 96kHz24bit)はアナログ時代から現在まで多彩な楽器群の定位がポイントだが、音像に滲みがなく、音色のニュアンスを競い合う。グランカッサやティンパニも打撃レスポンスと収束が早く、響きが整ってキレがいい。無用な作為を排した爽やかな音質の一方、ラックスマンらしいしなやかさと品格を備えた本機はこのジャンルに現れたベンチマークといえるだろう。
PCの音楽ファイルを受ける止めるDACは単体コンポーネントにすることで、プレーヤー内蔵のDAC部を使うより明らかな音質上の利がある。もしかすると、システム構築におけるさらなる出費などを気にして躊躇しているようなユーザーもいるかもしれないが、XLR出力やサンプリングレートコンバーターの利用価値を考えると本機の価格はリーズナブルだと言えよう。食わず嫌いをやめて、何を措いても聴くべきコンポーネントの一つである。
大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数。2006年に評論家に転身。
実際にDA-200を試聴してみると、直感通り、日本を代表するハイエンドの雄、ラックスマンがイメージを描いて作り上げたPCオーディオ(ネットオーディオ)の世界がそこにあった。
まずは試聴結果の報告の前に、DA-200の構成と「何が出来るか」についてざっと紹介しておこう。単体DAコンバーターの本機は、PC、サーバーのデジタル音楽ファイルをアナログ音楽信号に変換し出力する。デジタル入力は同軸・光が192kHz/24bitまで、USB入力は96kHz/24bitまでの入力に対応している。
DACデバイスには、同社Dシリーズで実績のあるTI社バーブラウン製PCM1792Aを使用。DA変換だけでなく、USB入力を光/同軸出力してアンプやCDプレーヤーにデジタル入力(DD変換)が出来る。デジタル入力を本機のバランス構成回路を通してXLRバランス出力することが出来るのは魅力的だ。
内蔵のサンプルレート・コンバーターでデジタル入力のアップサンプリングやクロックの低ジッター化も行う。アナログ出力はRCA、XLR、ヘッドホンを各1系統装備。アナログ入力(RCA×2)も備えているが、スルー出力のみに対応しAD変換は出来ない。
今回の試聴にあたっては、KRIPTON HQM STOREやe-onkyo music、LINN RECORDSのハイレゾ音源をノートPCからUSB入力した。ノイズがないことに加えて、音質は音に色付きがなく透明、濁りや雑味がないニュートラルサウンド。かといって精製水のような味気ないようなものでもなく、音に爽やかな生命感がある点は特筆モノだ。
高橋和歌のバルトーク・無伴奏バイオリンソナタ(e-onkyo 96kHz/24bit)は、ソロ演奏の描写が散漫にならず音像に凝集力があり、しかも演奏が立体的で細かな音をないがしろにせず緻密。試聴室の床が消えたような、録音現場に立ち会っている臨場感がある。
バイオリンの音色も自然。響きが膨張せず克明さと音に芯がある。音色の作為や味付けを排したドキュメンタルなリアルサウンドである。それでいて、くっきりした実在感がありラックスマンらしい透明感、しなやかさ、品を備えている。
最近は、USB入力を備えてUSB DACとしても使えるCDプレーヤーも現れているが、どうしてもCDプレーヤーとしての音作りの支配下にある。DA-200はそうしたものから自由でいて音に高級オーディオらしい密度感がある。「サイドビジネス」でない「専業」のよさである。
「ヴォーカリーズ」(e-onkyo 96kHz/24bit)のバンドネオンの音色のふくらみは初めて聴いた。チェロの暖色とバンドネオン、ピアノの硬質で寒色の美を対比的な色彩感として出せるのだ。この音の色彩感、ずっしりした手応えは今までのPCオーディオに不足していた部分だ。こうでないとタンゴの翳りと憂愁が出ない。ただ、饒舌でなくあくまで演奏に忠実かつニュートラルな点も紹介しておきたい。
「原信夫とシャープ&フラッツ」(e-onkyo 96kHz24bit)はブラスの音色の艶のバラエティを描き分ける。「春の祭典」(e-onkyo 96kHz24bit)はアナログ時代から現在まで多彩な楽器群の定位がポイントだが、音像に滲みがなく、音色のニュアンスを競い合う。グランカッサやティンパニも打撃レスポンスと収束が早く、響きが整ってキレがいい。無用な作為を排した爽やかな音質の一方、ラックスマンらしいしなやかさと品格を備えた本機はこのジャンルに現れたベンチマークといえるだろう。
PCの音楽ファイルを受ける止めるDACは単体コンポーネントにすることで、プレーヤー内蔵のDAC部を使うより明らかな音質上の利がある。もしかすると、システム構築におけるさらなる出費などを気にして躊躇しているようなユーザーもいるかもしれないが、XLR出力やサンプリングレートコンバーターの利用価値を考えると本機の価格はリーズナブルだと言えよう。食わず嫌いをやめて、何を措いても聴くべきコンポーネントの一つである。
大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数。2006年に評論家に転身。