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250円分の価値はあるか?/標準再生アプリの代わりになり得るか?

【レビュー】iOS向け音楽再生アプリ「T×DOLBY Music Player」を使ってみた

公開日 2012/12/20 11:56 取材・執筆/海上 忍
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ドルビージャパン(株)とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)が共同開発したiOS向け音楽再生アプリ「T×DOLBY Music Player」(関連ニュース)。「Dolby Mobile」をサポートしバーチャル5.1chサラウンド機能などを備える本アプリ、250円分の価値はあるのか? 標準再生アプリの代わりになり得るのか? 海上 忍が検証する。

「T×DOLBY Music Player」ってなにがスゴイの?

今回リリースされた「T×DOLBY Music Player」の特徴は、なんといっても「Dolby Mobile」をサポートしたこと。通常のステレオ音源でも、バーチャル5.1chサラウンド機能によってライブハウスやコンサートホールのような音場をソフトウェアで再現する。iOS標準装備の音楽再生アプリ「ミュージック」は、再生支援機能としてプリセットのイコライザなどごくシンプルなものしか持たないため、これを不満に感じていたiPhone/iPadユーザは多いはず。「T×DOLBY Music Player」には、その状況を変える機能がある。

Dolby Mobileは、ドルビーラボラトリーズが開発した携帯電話やスマートフォンなど小型機器向けの音響技術であり、ソフトウェアの形で提供される。携帯端末向けに提供されるのは初めてではなく、これまでもSHARP「SH-07D」や、富士通「ARROWS X LTE F-05D」など、ハイスペックなAndroid端末に採用されてきた。iOSデバイス向けにも「CineXPlayer」というアプリが存在するものの、ムービープレーヤーであり、音楽再生用ではない。

Dolby Mobileに対応したAndroid端末「SH-07D」

結論から言おう。「T×DOLBY Music Player」は、iOS標準装備の音楽再生アプリ「ミュージック」を置き換えうる機能を備える。オーディオコーデックはAAC/HE AACとMP3、Apple Lossless、WAVに対応、iTunesと同期して取り込んだ楽曲すべて(DRM付は除く)を再生できるうえ、プレイリストやアルバムアートワークなどの情報も参照できる。つまり、曲の管理や入手方法は従来どおりで変わらず、再生するときだけ本アプリを使用すればいい。

「T×DOLBY Music Player」で再生中の画面。Dolby Mobile有効時はDolbyロゴが青く点灯する

250円分の価値はあるか?
「T×DOLBY Music Player」の機能をがっつりチェック


Dolby Mobileを利用した音楽の再生は、ヘッドホン出力時のみとなる。Dock経由のライン出力や、AirPlayあるいはBluetooth出力には対応しないため、Dock/Lightningのデジタル出力に対応したヘッドホンアンプでは聴くことができない。

イコライザーは50/150/350/700Hz/1800/3500/7000Hzの計7バンド、中音域を下げ、低・高音域を上げる「BALANCED」や、低・中音域はフラットで高音域を上げる「WIDE」など、計7種類のプリセットが用意されている。「ROCK」や「POPS」といったプリセットはないが、スライダーを動かした場合には、「SAVE」ボタンをタップすれば「CUSTOM」に設定を保存することもできる。

バックグラウンド再生に対応するため、音楽を聴きながら他のアプリを使うこともできる

出力はステレオミニジャックのみ、DockのラインアウトやAirPlay経由で聴くことはできない

イコライザーは7バンド、「BALANCED」や「WIDE」などのプリセットが用意される

ミュージックプレーヤーとしての機能はシンプルで、アーティスト名やアルバム名を基準に再生曲を決定するだけ。シャッフルやリピート再生にも対応するが、基本的な再生機能は標準装備の「ミュージック」とほぼ同じと考えていい。iPhone 5を利用し、AACとMP3、Apple Losslessでエンコードされた音楽をそれぞれ数曲づつ再生してみたが、音飛びなどの問題は確認できなかった。Dolby Mobileの設定画面を表示したときのみ、パラメータが適用され直すのか、一瞬再生音が途絶えるが、通常使用する範囲においてはiPhone 5のスペックであれば余裕といえる。

ただし、バッテリーはそれなりに消費する。試しにApple Losslessの曲を再生したところ、5分ごとにバッテリーレベルが2%低下した。コーデックにより上下する可能性もあるが、ハードウェアデコードが基本の「ミュージック」に比べれば消費電力量が多いことは確かだ。

疑似5.1chサラウンドのインパクトは大! 既存の音が一変する

肝心の音響効果だが、やはり疑似5.1chサラウンドのインパクトは大きい。疑似サラウンド効果自体は、同機能対応のAndroid端末と大きく変わらないが、iPhone/iPadの特性にあわせたチューニングがなされているのか、より鮮烈な印象を受けた。iOSデバイスでは"素の状態"で聴くスタイルが常で、疑似サラウンド音声を聴くこと自体が希ということもあるだろうが。

「Mobile Surround」スイッチには、「STUDIO」と「LIVE HOUSE」、「HALL」という3種類のプリセットが用意されており、それぞれの場所を模したサラウンド音声を聴かせてくれる。スタジオ収録の楽曲もいいが、やはりDolby Mobileではライブ音源を再生したほうが臨場感を楽しめるはずだ。低域をブーストさせる「Natural Bass」は4段階、音にパワーを持たせたいときには強めに設定すればいい。

最初に聴いたのは、フリートウッドマックの「Songbird」。スタジオ収録の曲だが、これを「LIVE HOUSE」モードで再生すると雰囲気が一変。臨場感が加わり、Christine McVieの声にもリアルさが感じられる。楽器はピアノとアコースティックギターのみというシンプルな曲構成も手伝ってか、"小箱"のような空気感は古い曲にも新鮮な彩りを与えてくれる。

iTunes Storeから入手したYesのミュージックビデオ「And You And I」は、「HALL」モードで再生してみた。LIVE HOUSEモードと比較すると、明らかに音場の広がりが増し、Jon Andersonの立ち位置も離れた印象に変わる。映像はなくオーディオトラックの再生のみとなるが、標準装備の「ビデオ」より数段上のライブ感を楽しめる。

ミュージックビデオのオーディオトラックも再生できるが、プレビュー画面は正方形にされるためアスペクト比が変わってしまう

このように、既存の音を一変させる「T×DOLBY Music Player」。これだけ楽しませてくれるのだから、250円分の価値は大いにある。1日15分まで再生できるライト版も用意されているので、そちらで試してから購入するのもありだろう。

ライト版を利用すれば、1日15分を上限にDolby Mobileの音世界を試すことができる

(海上 忍)

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