薄型AVアンプの新モデルが登場
スリムながら高いサウンドクオリティ − マランツ「NR1604」レビュー
■スリムさは音質向上にもメリットがある
NR1604は、マランツが以前から展開しているスリムなAVアンプの上位機種で、NR1603からのモデルチェンジだ。高さはわずか10.5センチ。ラックにスマートにおさまる収納性やデザイン面のメリットは当然だが、ひとつ肝心なことを先に強調しておこう。薄型化によってボディの強度が上がり、大型モデルよりも振動や筐体鳴きが少ないという利点があるのだ。これはもちろん、音質向上にもつながる。
確かにNR1604を手に持つと、ギッシリ感がある。内部を見ても、回路構成や筐体設計をはじめ、随所がブラッシュアップされている。
03系の世代からみてどこがどう変わったのか。第一がデジタルオーディオ回路に最新のオペアンプを投入したことだ。このクラスでは良質なオペアンプの搭載が決定的に重要だが、心臓部のD/Aコンバーターについても、旭化成からバーブラウンの新デバイスに変更している。192kHz/24bit仕様のものだが、その周辺回路も電源供給などを入念に見直し、パーツ面でもオーディオ用コンデンサーやハイグレードスピーカー端子の採用など、大幅にチューンアップされている。
もちろん7chフルディスクリートのパワーアンプを搭載。実用最大出力は80W(6Ω)だ。ヒートシンクに一列にマウントするインライン配置など、マランツ伝統の基本構成をしっかりと引き継いでいる。
■DLNA/AirPlayなどネットワーク機能も充実
機能で目立つのがネットワーク対応の充実ぶりだ。WAV、FLACとも192kHz/24bit対応で、かつギャップレス再生も可能。DLNA1.5対応で、AirPlayやインターネットラジオにも対応している。コントロールアプリ「Marantz Remote App」は小刻みにアップデートを重ねて進化しており、NAS内の音源選択やネットラジオのブラウジングも可能。特筆すべきはそのレスポンスの速さで、サクサクと動作できるのでストレスのない操作が行える。
また、新たに4K対応を果たしたことも嬉しいポイントだ。4Kビデオフォーマットにフル対応で、アップスケーリングととともにパススルーもOK。4K再生中にGUIが見られることや、さらにオーバーレイによって視聴を続けながら操作できるなど、使い勝手の面でも大幅に進化している。
■ソースの魅力をしなかやに引き出す実力派モデル
タッチのしなやかな、アナログらしい音の表情はマランツの伝統だろう。このNR1604では柔らかなトーンのオペアンプが採用されており、音の密度やスムーズさに磨きがかかる。と同時に、しっかりとした土台感や低音方向への力強い伸びやかさも特徴的だ。どのソースも雑味がなく、清涼かつ高S/Nで、スリムながら堅牢なボディの強さを実感させられた。
まずCDでは、艶やかできらめきのあるシャンティの歌唱が好印象だ。中〜高音域にかけてのビブラートの表情に溌剌感があり、声のヌケもよい感触だ。室内楽やトリオジャズの繊細なところの丁寧な表現や空気感も、このアンプの美点と感じる。オーディオ再生ではパワーがやや抑えめだが、音楽表現の上質さはクラス屈指。余裕を残した音の表情が好ましい。
BDではまず『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を視聴、セリフの細やかなニュンスや音楽のみずみずしさを再現し、ナイスマッチングだ。雑踏のノイズや鳥などの自然音がさりげなく映像に溶け込む上質なサラウンド描写で、映像の美しさを引き立てる。
アクション系では、一転してレスポンスのよさやドライブ力が発揮される。電源にも余裕があり、スケールと密度の両面でサラウンドの座標が拡大されたような印象だ、精密な質感のまま、音に弾力感がついて、力強さも増す。『スカイフォール』はバイクのジャンプやアクセルのふかしがスピーディだ。背中をぐっと押されるようで、列車上の格闘もテンポがよい。音のフォーカスが実に正確で、ロングでとらえたボンド落下の一瞬に思わず息をのむ。ボンドと女性の会話のシーンは響きを抑え緊張感を高めている。
フォーカス精度のよさは『ダークナイト』でも実感できた。マンハッタンの橋が次々に破壊される場面での、遠近の深さは聴きどころだ。はるかかなたから届く効果音の分離がよく、すばらしくリアル。さらにその奥に円形状のミュージックがかぶさってくる感じである。7.1ch作品の『アベンジャーズ』では、さらに音場のグラデーションが多重的で綿密だ。これは動体視力が追いつかないほどの、息の止まるスピーディーさ。アイアンマンが急上昇して光のビームになる場面では、超音速の気流が視聴者を包み込み、スリリングさの極致を体感させる。
久々に視聴したミュージックBD『レジェンド・オブ・ジャズ』では、音楽にノリと活きのよさがある。スタジオライブらしい熱気とリアルな空気の漂いもご機嫌で、ミュージシャンの立ち位置や演奏の動き、スイング感をここまでリアルに再現できたら満足だ。ソースの魅力をしなかやに引き出す実力派サラウンドレシーバーだ。
(林正儀)
NR1604は、マランツが以前から展開しているスリムなAVアンプの上位機種で、NR1603からのモデルチェンジだ。高さはわずか10.5センチ。ラックにスマートにおさまる収納性やデザイン面のメリットは当然だが、ひとつ肝心なことを先に強調しておこう。薄型化によってボディの強度が上がり、大型モデルよりも振動や筐体鳴きが少ないという利点があるのだ。これはもちろん、音質向上にもつながる。
確かにNR1604を手に持つと、ギッシリ感がある。内部を見ても、回路構成や筐体設計をはじめ、随所がブラッシュアップされている。
03系の世代からみてどこがどう変わったのか。第一がデジタルオーディオ回路に最新のオペアンプを投入したことだ。このクラスでは良質なオペアンプの搭載が決定的に重要だが、心臓部のD/Aコンバーターについても、旭化成からバーブラウンの新デバイスに変更している。192kHz/24bit仕様のものだが、その周辺回路も電源供給などを入念に見直し、パーツ面でもオーディオ用コンデンサーやハイグレードスピーカー端子の採用など、大幅にチューンアップされている。
もちろん7chフルディスクリートのパワーアンプを搭載。実用最大出力は80W(6Ω)だ。ヒートシンクに一列にマウントするインライン配置など、マランツ伝統の基本構成をしっかりと引き継いでいる。
■DLNA/AirPlayなどネットワーク機能も充実
機能で目立つのがネットワーク対応の充実ぶりだ。WAV、FLACとも192kHz/24bit対応で、かつギャップレス再生も可能。DLNA1.5対応で、AirPlayやインターネットラジオにも対応している。コントロールアプリ「Marantz Remote App」は小刻みにアップデートを重ねて進化しており、NAS内の音源選択やネットラジオのブラウジングも可能。特筆すべきはそのレスポンスの速さで、サクサクと動作できるのでストレスのない操作が行える。
また、新たに4K対応を果たしたことも嬉しいポイントだ。4Kビデオフォーマットにフル対応で、アップスケーリングととともにパススルーもOK。4K再生中にGUIが見られることや、さらにオーバーレイによって視聴を続けながら操作できるなど、使い勝手の面でも大幅に進化している。
■ソースの魅力をしなかやに引き出す実力派モデル
タッチのしなやかな、アナログらしい音の表情はマランツの伝統だろう。このNR1604では柔らかなトーンのオペアンプが採用されており、音の密度やスムーズさに磨きがかかる。と同時に、しっかりとした土台感や低音方向への力強い伸びやかさも特徴的だ。どのソースも雑味がなく、清涼かつ高S/Nで、スリムながら堅牢なボディの強さを実感させられた。
まずCDでは、艶やかできらめきのあるシャンティの歌唱が好印象だ。中〜高音域にかけてのビブラートの表情に溌剌感があり、声のヌケもよい感触だ。室内楽やトリオジャズの繊細なところの丁寧な表現や空気感も、このアンプの美点と感じる。オーディオ再生ではパワーがやや抑えめだが、音楽表現の上質さはクラス屈指。余裕を残した音の表情が好ましい。
BDではまず『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を視聴、セリフの細やかなニュンスや音楽のみずみずしさを再現し、ナイスマッチングだ。雑踏のノイズや鳥などの自然音がさりげなく映像に溶け込む上質なサラウンド描写で、映像の美しさを引き立てる。
アクション系では、一転してレスポンスのよさやドライブ力が発揮される。電源にも余裕があり、スケールと密度の両面でサラウンドの座標が拡大されたような印象だ、精密な質感のまま、音に弾力感がついて、力強さも増す。『スカイフォール』はバイクのジャンプやアクセルのふかしがスピーディだ。背中をぐっと押されるようで、列車上の格闘もテンポがよい。音のフォーカスが実に正確で、ロングでとらえたボンド落下の一瞬に思わず息をのむ。ボンドと女性の会話のシーンは響きを抑え緊張感を高めている。
フォーカス精度のよさは『ダークナイト』でも実感できた。マンハッタンの橋が次々に破壊される場面での、遠近の深さは聴きどころだ。はるかかなたから届く効果音の分離がよく、すばらしくリアル。さらにその奥に円形状のミュージックがかぶさってくる感じである。7.1ch作品の『アベンジャーズ』では、さらに音場のグラデーションが多重的で綿密だ。これは動体視力が追いつかないほどの、息の止まるスピーディーさ。アイアンマンが急上昇して光のビームになる場面では、超音速の気流が視聴者を包み込み、スリリングさの極致を体感させる。
久々に視聴したミュージックBD『レジェンド・オブ・ジャズ』では、音楽にノリと活きのよさがある。スタジオライブらしい熱気とリアルな空気の漂いもご機嫌で、ミュージシャンの立ち位置や演奏の動き、スイング感をここまでリアルに再現できたら満足だ。ソースの魅力をしなかやに引き出す実力派サラウンドレシーバーだ。
(林正儀)