【特別企画】「VGP 2013 SUMMER 批評家大賞」受賞製品の実力を徹底チェック
ソニーの4K対応TV「BRAVIA X9200A」 − 最も身近な4Kネイティブコンテンツ「デジカメ写真」を楽しむ
「VGP 2013 SUMMER 批評家大賞」を受賞したソニーの4K対応液晶テレビ「BRAVIA X9200Aシリーズ」を、VGP審査員でもある山之内正氏とプロカメラマンの川村容一氏がチェックする連載企画。技術的な背景などの製品特長を学んだ前々回(関連記事)に続き、前回(関連記事)は映像(動画)コンテンツの画質と音質をレビューした。そして今回は、一般ユーザーにとって最も身近な4Kネイティブコンテンツであるデジカメ写真の再生能力について、日本写真家協会会員でデジタルカメラグランプリの審査員でもある川村氏がレビューする。
【Part.3】新4K対応ブラビアの高精細写真を楽しむ |
写真の鑑賞方法と言えばプリントがまず挙げられる。プリントの歴史は200年弱と古く、今日までに様々な素材や手法が確立されている。美しいプリントを見るのは写真愛好家以外でも楽しいものである。
さて、デジタル写真が多くなった作品をプリント以外にプロジェクターや大型画面で楽しみたいと願うのは筆者だけではないだろう。私自身も写真教室などでプロジェクターを、写真展展示会場でも50インチクラスのフルHDテレビを使用してきた。ともにプリントより鮮やかでインパクトがあり、多数の人が同時に鑑賞できるので良かったのだが、画質に関しては物足りなかった。それは色域の狭さ、階調の不自然さが理由だ。なにより一番不満だったのは緻密さで、生々しさが失われていた。
今回、初めて自分の写真作品を4K対応テレビであるBRAVIA X9200Aシリーズで鑑賞することができたが、まず最初に印象的だったのが表現力の高さだ。写真がイキイキと映し出されている。特筆すべきは解像度の高さから感じられる立体感。被写体が目前に実際あるかのようだ。業界用語で言う所の「シズル感」がある。
画素数についてはフルHDテレビでは2Kの解像度を持つ207万画素だったが、本機は4K、829万画素と4倍になった。2Kでも見るに堪えないというわけではなかったが、やはり細部を見ていくと必ず“画素そのもの”が気になってしまった。現在多く使われているデジタルカメラの画素数が1,000万画素を超えていることを考えると、やっとその画素数が活かせるテレビが出現したのだ。
4KではフルHDテレビより約半分の視聴距離で鑑賞しても画素が目立たない。まるで映像の中にいるかのように感じることができた。また色空間はsRGBだけではなく色域の広いAdobeRGBにも対応しているのが嬉しい。
なお、本機で写真を4Kネイティブ再生するためには、USBメモリーや、USBカードリーダーを使用してのSDカード読み込みなど「USB端子を使用した接続でのJPEGファイル」であることが必要となる。
画素数は4Kで表示できる画素数を超えていれば十分。あまり大きな画素数では1枚ごとの表示に時間がかかるので、筆者の場合は画像データの天地の画素数を表示する機器の画素数に近付けて制作することにしている。たとえば同社製デジタル一眼レフカメラ「α99」で写したフルサイズの画像なら6,000×4,000のLサイズではなく、3,936×2,624のMサイズで十分であり、表示にかかる時間も素早くなる。
色彩が鮮やかなだけでなくモノクロ表現も美しい |
今回の視聴では風景、人物、花、町のスナップショット、鳥や動物、静物などの様々なジャンルの被写体を数種類のカメラで写した画像データを表示させてみた。
画素の数以外に画質として特徴的なのは、色彩の鮮やかなことである。トリルミナス(R)ディスプレイは色の純度が高いので深みのある色彩が味わえる。とくに赤は特徴的で彩度が高く赤、紅、朱、なども描き分けてくれる。
色域が広いということは緑や青の表現幅も広がり、海のエメラルドグリーンや青空の濃淡の微妙なニュアンス、日没後の空のパープル、アジサイやスミレの花も他の色に偏ることなく自然に表現されている。
またテレビやプロジェクターでは、なかなかニュートラルに表現できなかったモノクロームの写真が美しく表現できたのには嬉しくなってしまった。モノクロを写すとほとんどの場合、色が転んで純粋なグレーや黒の調子が出なかったのである。
筆者は仕事以外ではモノクロを楽しんでいるし、著名な作家の過去の名作も多く、現在でもモノクロ写真を制作する愛好家は多い。今回の視聴で最も個人的に感動したのはこの点であった。
カラー、モノクロとも共通して感じたのは階調のなめらかさである。白から黒までなだらかに変化することは解像度の高さと相まって、写真にリアリティを与えている。そして白はより白く、黒はより黒く。これは反射が少ないオプティコントラストパネルやバックライトの部分駆動などの技術の恩恵であろう。
現在4Kネイティブのコンテンツは少ない。しかし、デジカメの高画素化が進む現代ではほとんどの写真が4Kネイティブコンテンツであることに改めて注目したい。そう、実はほとんどの人が自分が撮影した写真で本機の実力を堪能することができるのだ。自分だけで写真の感動を味わうのも良いが大画面で仲間たちと楽しむのも良いものだ。その需要に応えるモデルだと感じた。
最後に、内蔵スピーカーの音質が良いことも紹介したい。
薄型テレビのスピーカーは本体下部に埋め込まれていることが多いが、本機では画面の左右に存在を主張している。この位置にしたメリットは何と言っても音の定位だ。音が画面の中央から周囲を包み込むように流れてくる。テレビのスピーカーとしては久しぶりに気持ちの良い音を聞いてしまった。気に入った音楽を使ってのスライドショーは素晴らしく雰囲気の良い空間を提供してくれた。見慣れた自分の写真を改めて楽しむことができた。
余談になるが、ちょうど先日私の所属する写真家の団体が主催する写真展が終了したのだが、会場では55インチのフルHDディスプレイで写真作品のスライドショーを行った。来場者には好評だったが、もし本機を使用していたなら、おそらく会場に展示してあるプリント作品に負けないよりクオリティの高いスライドショーになっていただろうと感じた。来年の展示には本機を是非採用して写真の持つパワーを充分アピールしたい。
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