人気モデルの実力再検証 − 折原一也がSHURE「SRH840」をレビュー
■iBasso Audio「D55」と組み合わせてハイレゾ再生を試す
続いて、USB-DAC機能を搭載したiBasso Audioのヘッドホンアンプ「D55」と組み合わせて、PC内のハイレゾ音源をソースに試聴を行ってみた。この環境ではそのワイドレンジな帯域特性と、楽曲情報をそのまま引き出すかのようなリアルなサウンドを存分に体感できる。
SHANTIの『Killing Me Softly With His Song』(96kHz/24bit)の試聴では、イントロにある低いアコースティックギターのサウンドが明瞭に描かれ、ボーカルは勢いよく鳴らされる。重低音はやや硬質なキレ味で、高域は滑らかに伸びる。全体的に奥行き方向の立体感がしっかり再現されており、楽器の音の描き分けも明瞭だ。
男性ボーカルの「Sing for Japan vol.2」よる『Don’t Give Up Your Mind』(96kHz/24bit)も、特に描写が難しい奥行き方向の表現が見事で、中域の厚みがリスニング中のワクワク感を盛り上げる。
続いてローリングストーンズの「GRRR! [Deluxe Version]」より『She's a Rainbow』(88.2kHz/24bit)を試聴すると、リマスタリングによって甦った音の鮮度をまざまざと体感させられた。この楽曲は空間の広がりに“遊び”があり、定位を明瞭に聴き分けられるSRH840で試聴すると曲の持つ世界観がより感じられる。
発売から3年以上が経過しているSRH840だが、極めてピュアな音質を志向した”プロフェッショナル・モニター・ヘッドホン”としての位置づけとその実力は揺るぎない。ソースの情報量をダイレクトに引き出すリファレンスとして、これからも長く活躍してほしい一台だ。
◆折原一也 プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。