「イラスト的リアリズムサウンドがリバイバル」
ラックスマンの「ロの字」型プリメイン「LX-32u」を聴く
■「ロの字」型でソリッドステート/真空管ハイブリッド型のプリメインアンプ
ラックスマンがソリッドステート/真空管ハイブリッド型のプリメインアンプ「LX-32u」(関連ニュース)をリリースした。
いまうっかりハイブリッドという言葉を使ってしまったが、本機は1980〜90年代に流行った「真空管とソリッドステート素子をごちゃまぜに組んだもの」ではなく、ソリッドステート型のプリアンプ部と真空管式パワーアンプ部を一筐体にまとめた、至って健全な構成を有している。
プリアンプ部はリバイバル色の強いソリッドステート機の「L-305」(関連レビュー)の回路を踏襲しているようで、非常に使いやすいターンオーバー周波数切替式トーンコントロールと、良質なMM/MC対応のフォノイコライザーを内蔵している。音量調整回路は昔ながらのアナログ式だが、ボリュームノブのトルク感が絶妙なので、慣れれば的確な音量が瞬時に得られる。
一方、パワーアンプ部は入力段がECC83×1、ドライバー段がECC82×2、終段がEL84×8という構成だ。EL84のパラレル・プッシュプルは比較的低コストで良い音が得られるので、1960〜70年代の自作界ではポピュラーだったが、高級管を見せびらかすような設計が主流の現代にあっては珍しい。この方式はもっとパワーが出るのだが、真空管に負担をかけたくなかったのだろう、本機の出力は控えめな16W×2だ。
終段回路はセルフバランス型である。セルフバランス型機は設計こそ困難ではあるものの、メンテナンス性は極めて良く、定期的な調整はもとより、真空管交換時でもバイアスを調整する必要がない。
なお、本機の筐体は一連のリバイバル的モデルと共通したウッドの「ロの字」型で、この種のモデルとしては通気性が極めて良く、発熱が小さい。
■「LX-32u」の音に触れる
真空管を使用したモデルらしいカラフルな音である。ただし、真空管そのもののキャラクターは希薄である(たとえばKT88のようなワイドレンジ感やEL34のような切れ味感はない)。そもそも本機のプリ部はソリッドステート式なのだ。
では、ソリッドステート機に近いのかというと、そんなことは全然ない。ソリッドステート機の表現には写真のようなリアリズム感がある。それに対して真空管式機のリアリティは油絵的だ。そして本機はどちらにも属さないのである。あえて言えば、本機の表現は精密なイラストに近い。正真正銘のリアリズムではないのかもしれないが、本物よりも本物感がある。
かつてのハイブリッド機には純真空管機にも純ソリッドステート機にもない、イラスト的なリアリズムがあった。しかしながらその種のモデルは安定度が低く、メンテナンス性も良好ではないことから、オーディオ史の彼方に消え去って行ってしまった。ところがラックスマンは安定度と信頼性の極めて高い本機で、イラスト的リアリズムサウンドをリバイバルさせてしまったのである。
ジャズは真空管式機的なカラフルさやノリの良さを基調としているのだが、音が出る瞬間のSN比が良く、音場が広大なので、いわゆる真空管ジャズとは全く異なる印象を受ける。
ヴォーカルは本機の最も得意とするジャンルであろう。音像定位の正確さと色っぽさの共存がすばらしい。クラシックは骨太の表現でありながら、ディテールを聴きに行くと緻密で情報量が多いことに気づく。この音が、この価格で手に入るのは驚天動地といっても過言ではない。
ラックスマンがソリッドステート/真空管ハイブリッド型のプリメインアンプ「LX-32u」(関連ニュース)をリリースした。
いまうっかりハイブリッドという言葉を使ってしまったが、本機は1980〜90年代に流行った「真空管とソリッドステート素子をごちゃまぜに組んだもの」ではなく、ソリッドステート型のプリアンプ部と真空管式パワーアンプ部を一筐体にまとめた、至って健全な構成を有している。
プリアンプ部はリバイバル色の強いソリッドステート機の「L-305」(関連レビュー)の回路を踏襲しているようで、非常に使いやすいターンオーバー周波数切替式トーンコントロールと、良質なMM/MC対応のフォノイコライザーを内蔵している。音量調整回路は昔ながらのアナログ式だが、ボリュームノブのトルク感が絶妙なので、慣れれば的確な音量が瞬時に得られる。
一方、パワーアンプ部は入力段がECC83×1、ドライバー段がECC82×2、終段がEL84×8という構成だ。EL84のパラレル・プッシュプルは比較的低コストで良い音が得られるので、1960〜70年代の自作界ではポピュラーだったが、高級管を見せびらかすような設計が主流の現代にあっては珍しい。この方式はもっとパワーが出るのだが、真空管に負担をかけたくなかったのだろう、本機の出力は控えめな16W×2だ。
終段回路はセルフバランス型である。セルフバランス型機は設計こそ困難ではあるものの、メンテナンス性は極めて良く、定期的な調整はもとより、真空管交換時でもバイアスを調整する必要がない。
なお、本機の筐体は一連のリバイバル的モデルと共通したウッドの「ロの字」型で、この種のモデルとしては通気性が極めて良く、発熱が小さい。
■「LX-32u」の音に触れる
真空管を使用したモデルらしいカラフルな音である。ただし、真空管そのもののキャラクターは希薄である(たとえばKT88のようなワイドレンジ感やEL34のような切れ味感はない)。そもそも本機のプリ部はソリッドステート式なのだ。
では、ソリッドステート機に近いのかというと、そんなことは全然ない。ソリッドステート機の表現には写真のようなリアリズム感がある。それに対して真空管式機のリアリティは油絵的だ。そして本機はどちらにも属さないのである。あえて言えば、本機の表現は精密なイラストに近い。正真正銘のリアリズムではないのかもしれないが、本物よりも本物感がある。
かつてのハイブリッド機には純真空管機にも純ソリッドステート機にもない、イラスト的なリアリズムがあった。しかしながらその種のモデルは安定度が低く、メンテナンス性も良好ではないことから、オーディオ史の彼方に消え去って行ってしまった。ところがラックスマンは安定度と信頼性の極めて高い本機で、イラスト的リアリズムサウンドをリバイバルさせてしまったのである。
ジャズは真空管式機的なカラフルさやノリの良さを基調としているのだが、音が出る瞬間のSN比が良く、音場が広大なので、いわゆる真空管ジャズとは全く異なる印象を受ける。
ヴォーカルは本機の最も得意とするジャンルであろう。音像定位の正確さと色っぽさの共存がすばらしい。クラシックは骨太の表現でありながら、ディテールを聴きに行くと緻密で情報量が多いことに気づく。この音が、この価格で手に入るのは驚天動地といっても過言ではない。