大幅に刷新されたベーシックラインを集中試聴
DYNAUDIOの新"EXCITE”シリーズを井上千岳がレビュー
■DYNAUDIOのベーシックライン"EXCITE”が刷新
"EXCITE”は1997年に発売された、DYNAUDIOのベーシックなシリーズである。6年ぶりのモデルチェンジということになるが、DYNAUDIOとしてはむしろ早い方だ。この間にCONFIDENCE SEやテンプテーション・プラチナムなどの上級モデルがリファインされ、その技術的な成果が下位モデルにも反映できるようになったという事情もありそうだが、またベーシック・モデルであるため他よりも早い回転が必要なのかもしれない。
いずれにしても今回は、外観も含めての変更なので、マイナーチェンジというものではないようだ。製品数もこれまでの4機種から3機種(センター用「X24 Center」を除く)へと絞られた。
外観は別物といってもよく、フロントバッフルを突き板仕上げとし、さらにそのエッジを切り落としている。ちょうどすぐ上位の"FOCUS”シリーズと同様で、エッジ部での回折や反射を避けるための形状である。
底部にはアルミダイキャスト製の脚部が装着された。これは内部にスパイクを収め、また着脱式でもあるため、幾通りかの設置法が可能である。もちろん底部の安定や床面からの振動排除という効果が大きい。
ドライバーはDYNAUDIO伝統のファブリックドーム・トゥイーターとMSP(ケイ酸マグネシウム・ポリマー)コーン・ウーファーおよびミッドレンジ。いずれも外観上の変化はないが、ドームのコーティングやウーファーのフレームなど随所に改良が行われている。従って旧モデルと同じではない。
それ以上に大きな改良は、キャビネットとネットワークだ。キャビネットは内部にブレーシングを加えて、いっそうの強化を図った。脚部の付加やフロントバッフルの変更とも併せて、剛性化が進められている。
ネットワークにはCONFIDENCE SEなどでの技術が踏襲されている。DYNAUDIOとしても満足のゆく高精度なパーツが、新しく見つかったことが重要なポイントであるということである。これによって音の鮮度、特に低域での解像度と伸びが向上したように思われるが、それは後で触れる。
■低域再現が向上、音調全体が極めてナチュラルで純度が高い
シリーズ3機は、全てユニット構成が異なる。「X14」は2ウェイ・ブックシェルフ型、「X34」はダブルウーファーによる2ウェイ・フロア型、そして「X38」はミッドレンジを加えた3ウェイ・フロア型である。このうち「X14」と「X34」は、サイズの違いこそあれ音調はほとんど同一といっていい。あえて言えば部屋の広さによる適性が異なるだけである。
旧モデルとの差が最も明らかなのは低域の出方で、量感を持たせた膨らみが全くなく、底の方まで滑らかに伸びて濁りがない。高域にも楽々と伸びているため、音調全体が極めてナチュラルで純度が高い。彫りの深さやディテールの厳しい出方など、これがDYNAUDIO本来の音だと納得する鳴り方である。
ピアノの透明なタッチが大変瑞々しく、芯がしっかり締まって骨格が豊かだ。余韻がきれいに乗り、表情が緻密だ。バロックでも潤いに満ちた響きの瑞々しさが少しも人工的ではなく、ピントの合った空間の再現がいっそう実体感を高めている。ベーシック・モデルでこれだけの再現性を得てしまうと、上級機との差別化が難しくなるように思えるほどだ。
オーケストラは悠々としてどこにも引っかかりや誇張のない鳴り方をしている。ダイナミズムの幅が広く、トゥッティでは金管やティンパニーの強靭な瞬発力が遺憾なくはっきされるが、弱音部のデリカシーやホールの広がりも繊細に描き出されている。
ボーカルは表情に艶かしささえ感じるが、それが不自然ではなく生き生きとしている。ベースやドラムのくっきりと引き締まった輪郭と動きの軽さも見事である。
「X38」はこうした再現性に加えて、低域の表現力が一回り大きい。上記2機よりさらに深く沈んで表情が明瞭だ。ジャズのウッドベースやドラム、オーケストラの低音弦などが、これだけはっきりした表情の抑揚を見せることはめったにない。それだけウーファーの反応が速く、また精密だという徴である。
これを基礎として、全体の鳴り方にもさらに彫りの深い陰影が加わっている。オーケストラもそうだが、ピアノやバロックでもディテールの起伏が豊かだ。立ち上がりのエネルギーが大きいためで、どんな微小な信号でも一音々々に力が備わっている。それが実在感に富んだ音を実現するのである。
旧モデルからいきなり何段も飛躍してしまったような完成度の高さが、このシリーズではあまりにも印象的だ。DYNAUDIOの本領が発揮された注目の新シリーズである。
"EXCITE”は1997年に発売された、DYNAUDIOのベーシックなシリーズである。6年ぶりのモデルチェンジということになるが、DYNAUDIOとしてはむしろ早い方だ。この間にCONFIDENCE SEやテンプテーション・プラチナムなどの上級モデルがリファインされ、その技術的な成果が下位モデルにも反映できるようになったという事情もありそうだが、またベーシック・モデルであるため他よりも早い回転が必要なのかもしれない。
いずれにしても今回は、外観も含めての変更なので、マイナーチェンジというものではないようだ。製品数もこれまでの4機種から3機種(センター用「X24 Center」を除く)へと絞られた。
外観は別物といってもよく、フロントバッフルを突き板仕上げとし、さらにそのエッジを切り落としている。ちょうどすぐ上位の"FOCUS”シリーズと同様で、エッジ部での回折や反射を避けるための形状である。
底部にはアルミダイキャスト製の脚部が装着された。これは内部にスパイクを収め、また着脱式でもあるため、幾通りかの設置法が可能である。もちろん底部の安定や床面からの振動排除という効果が大きい。
ドライバーはDYNAUDIO伝統のファブリックドーム・トゥイーターとMSP(ケイ酸マグネシウム・ポリマー)コーン・ウーファーおよびミッドレンジ。いずれも外観上の変化はないが、ドームのコーティングやウーファーのフレームなど随所に改良が行われている。従って旧モデルと同じではない。
それ以上に大きな改良は、キャビネットとネットワークだ。キャビネットは内部にブレーシングを加えて、いっそうの強化を図った。脚部の付加やフロントバッフルの変更とも併せて、剛性化が進められている。
ネットワークにはCONFIDENCE SEなどでの技術が踏襲されている。DYNAUDIOとしても満足のゆく高精度なパーツが、新しく見つかったことが重要なポイントであるということである。これによって音の鮮度、特に低域での解像度と伸びが向上したように思われるが、それは後で触れる。
■低域再現が向上、音調全体が極めてナチュラルで純度が高い
シリーズ3機は、全てユニット構成が異なる。「X14」は2ウェイ・ブックシェルフ型、「X34」はダブルウーファーによる2ウェイ・フロア型、そして「X38」はミッドレンジを加えた3ウェイ・フロア型である。このうち「X14」と「X34」は、サイズの違いこそあれ音調はほとんど同一といっていい。あえて言えば部屋の広さによる適性が異なるだけである。
旧モデルとの差が最も明らかなのは低域の出方で、量感を持たせた膨らみが全くなく、底の方まで滑らかに伸びて濁りがない。高域にも楽々と伸びているため、音調全体が極めてナチュラルで純度が高い。彫りの深さやディテールの厳しい出方など、これがDYNAUDIO本来の音だと納得する鳴り方である。
ピアノの透明なタッチが大変瑞々しく、芯がしっかり締まって骨格が豊かだ。余韻がきれいに乗り、表情が緻密だ。バロックでも潤いに満ちた響きの瑞々しさが少しも人工的ではなく、ピントの合った空間の再現がいっそう実体感を高めている。ベーシック・モデルでこれだけの再現性を得てしまうと、上級機との差別化が難しくなるように思えるほどだ。
オーケストラは悠々としてどこにも引っかかりや誇張のない鳴り方をしている。ダイナミズムの幅が広く、トゥッティでは金管やティンパニーの強靭な瞬発力が遺憾なくはっきされるが、弱音部のデリカシーやホールの広がりも繊細に描き出されている。
ボーカルは表情に艶かしささえ感じるが、それが不自然ではなく生き生きとしている。ベースやドラムのくっきりと引き締まった輪郭と動きの軽さも見事である。
「X38」はこうした再現性に加えて、低域の表現力が一回り大きい。上記2機よりさらに深く沈んで表情が明瞭だ。ジャズのウッドベースやドラム、オーケストラの低音弦などが、これだけはっきりした表情の抑揚を見せることはめったにない。それだけウーファーの反応が速く、また精密だという徴である。
これを基礎として、全体の鳴り方にもさらに彫りの深い陰影が加わっている。オーケストラもそうだが、ピアノやバロックでもディテールの起伏が豊かだ。立ち上がりのエネルギーが大きいためで、どんな微小な信号でも一音々々に力が備わっている。それが実在感に富んだ音を実現するのである。
旧モデルからいきなり何段も飛躍してしまったような完成度の高さが、このシリーズではあまりにも印象的だ。DYNAUDIOの本領が発揮された注目の新シリーズである。