【特別企画】“イヤホンの神様”の最新モデル
<編集長対談>JH Audio「Roxanne」:JH初ユニバーサルイヤホンの衝撃を語り尽くす
■JH Audioは、ジェリー・ハービーが「やりたいことをやる」ブランド?
風間: これまでの流れを振り返ってみると、ハービー氏の中ではJH Audioの設立にも色々な思いがあったのだろうなと感じるけど、そのあたりについて、浅田編集長の見解はどうですか?
浅田: 「JH Audioでは、UEでできなかったことを全部やっちゃおう」という感じじゃないかと、僕は思っていますね。
風間: ブランド名からして「JH(=Jerry Harvey)」だし。ブランドが設立して5年になるけど、これまでの製品で「まさにハービー氏がやりたいことをやっている」と感じられたのはどういう製品?
浅田: 個人的に記憶に残っているのは、ヘッドホンアンプ搭載USB-DAC「JH-3A」とカスタムIEM「JH16PRO」をセットにして販売した「JH-3A with JH16PRO」ですね(関連ニュース)。このセットモデルに付属するJH16PROは、単体モデルにわざわざカスタマイズを加えていて、イヤホン内部に組み込まれているネットワークの一部を取り出して「JH-3A」側のDSPでクロスオーバー調整を行う仕様なんですよ。
風間: すごいこだわり(笑)。先ほどのカスタムIEM開発の話やリケーブルの件を聞いても思うけど、ハービー氏は相当なアイデアマンなんだな、と。
浅田: 本当にそうだと思います。
■「普通の音」だけど「すごい音」− Roxanneの音質を語る
風間: で、今回のRoxanne Universal FitがJH Audio初・待望のユニバーサルモデル。まず12ドライバー搭載というスペックが強烈ですが、実際に音を聴いてみて、本当にびっくりした。
浅田: すごいですよね。本来、ユニットの数を増やせば増やすだけそれぞれの周波数帯域を精密にコントロールすることが求めれるわけで、位相なんかの面でも開発はすごく難しいはずなんですよ。でもRoxanneは、BAドライバーを12基も搭載しているのに、位相の乱れや歪みがない。BA型/マルチウェイの理想を実現できるのがジェリー・ハービーということなんでしょうね。多分、そこにはハービー氏ならではの技術やノウハウがたくさんあるんでしょうけど。
あとちょっとマニアックですが、モノラル録音を聴くとRoxanneの定位のすごさがわかります。ドライバーが多いとその分センターの定位がぶれることも多いんです。でもRoxanneはブレずにしっかりセンターにある。ジェリー・ハービーが手がけると、こうなるのかと思いました。
風間: その一方で、通常のステレオ再生での音の広がり感もすごいよね。ハイレゾ音源を再生したときの、細かい音の移動感なんかは、普通のイヤホンでは再現性が乏しくて「やっぱりスピーカーで聴かないと厳しいな」って思うこともあるんだけど、Roxanneはそういう部分もしっかり描けている。
浅田: ハイレゾはダイナミックレンジが優れていると言われていますが、Roxanneで聴いたときに感じたのは、やはりS/Nの高さがずば抜けているので、音楽の再現性が本当に豊かということでした。あとは低域のグリップ力もそうですし、立ち上がり・立ち上がりの音が全然違うんですよね。全体的に音の傾向としてはどう思いました?
風間: カスタムIEMを作っているブランドの製品なのに、音がウェットで情緒を感じさせるのが印象的。潤いがあって「オーディオらしい音」というか。当然、ユニバーサルモデルであることを意識して作っているとは思うんだけど、聴きやすくて情感もあるのに解像度も高くて、それを全部両立しているのが素晴らしいと思った。
浅田: 元々、ハービー氏が開発していたUEイヤホンは解像度が高いといわれていたんですよね。ただ最新モデルであるRoxanneは、いまの話のように解像度が高いのに疲れない、長く聴いていられる音になっていることに驚きました。
風間: そうだよね。これはプロが聴いても一般の音楽ファンが聴いてもすごいと感じる音だと思う。これみよがしなところがなく、自然に聴こえる。語弊があるかもしれないけれど、「普通の音」なんだけど「すごい音」。
浅田: そうそう。「普通の音」で「すごい音」なんですよね。でもそれが一番難しいと思うんです。これこそセンスですよね。単なるイヤホンのエンジニアとしてだけではなく、優れたレコーディングやマスタリングのエンジニア的なセンスも感じます。小さいIEMでどうやってバランスよく演奏音を聴かせるか、それに加えてミュージシャンの演奏パフォーマンスを引き出すか、こういうことに長年取り組んできたハービー氏だからこそのセンスが出ているんでしょうね。