“音の良い試聴室”でその実力を確認
Astell&Kernのバッテリー駆動ネットワークプレーヤー「AK500N」試聴会レポート
Astell&Kernは“ハイレゾポータブルプレーヤー”というジャンルを切り開いたブランドと言える。2012年に登場した「AK100」から始まり、現時点でフラグシップ「AK240」や「AK100II」「AK120II」などをラインナップ。そのサウンドはポータブルオーディオの最高峰として、多くのユーザーの支持を集めてきた。
そして2015年、Astell&Kernはポータブルオーディオで培った技術を結集した据え置き型のネットワークオーディオプレーヤー「AK500N」を日本に投入した。バッテリー駆動によるノイズの完全遮断、CDリッピングからストレージ、再生までを1台で完結できるオール・イン・ワン仕様、アルミブロックから削り出した独特の筐体など、音質・ユーザビリティー・デザインと様々な角度から注目を集めた。
4月4日、この「AK500N」のサウンドを体験できる試聴会が開催された。会場となったのは「音の良い部屋」を手がけることで知られるアコースティックデザインシステムの試聴室。AK500Nが達成したサウンドを足し引きなく体験するにはもってこいの場所と言える。当日はあいにくの雨模様ながら、AK500Nのサウンドを確認するべく、多くのオーディオファンが会場に詰めかけた。
試聴会では、Astell&Kernの総輸入代理店である(株)アユートの堀良一氏がプレゼンテーションを行った。堀氏はまず、Astell&Kernのブランドの成り立ちについて説明。2012年にiriver社はプレミアム・ブランドとしてAstell&Kernを設立し、高い性能や音質をポータブルオーディオでいかに実現するかを考えて製品開発を行ってきたことを紹介した。堀氏は「Astell&Kernのポータブルプレーヤーは、国内外で据え置きモデルと遜色ない、あるいはそれを超えるファイル再生プレーヤーとして評価されてきました」と説明。それを実現するだけの技術力をiriver社が強みとして持っていることをアピールしていた。
AK500Nは今年2月に日本国内でも受注生産にて販売を開始した。開発テーマは、上記のようなポータブルオーディオで実現したクオリティーをいかにピュアオーディオ/ホームオーディオに活かしていくかだったという。「“小さくする”というポータブルの制約から開放されたからこそ、AK500はAstell&Kernの理想のサウンドを思う存分追求できたのです」と堀氏。
そんなAK500Nの最大のポイントとして堀氏が挙げたのが、内蔵バッテリー駆動とすることでAC電源からの外来ノイズを物理的に遮断した点だ。オーディオにおいて、電源周りは最も音質に影響を与える要素のひとつ。ポータブル分野でバッテリーのマネージメントのノウハウを蓄積してきたAstell&Kernは、据え置きモデルにおいても究極の音質を求めるためにバッテリー駆動という選択を行ったのだ。「バッテリー駆動による高音質化は、ポータブル分野を手がけてきたからこそ気づき、実現できたことではないでしょうか」(堀氏)。
ハイレゾからCDリッピング音源まで、ジャンルもクラシックからポップスまで幅広く再生したデモンストレーションにおいて、そのサウンドを体感して来場者が口々に印象に残ったとコメントしていたのは、圧倒的なS/Nの高さだった。これもバッテリー駆動による“パーフェクトノイズアイソレーション”が為せる技なのだろう。クラシックにおいては弦楽器の最初の一音が、まったくの静寂から立ち上がる。S/Nが高いからこそ、例えば女性ボーカルが無地の背景に浮かび上がり、その実在感にも圧倒される。
バッテリー駆動によるノイズ混入の根絶に加えて、このS/Nの高さを支えているのがSSDの採用だろう。受注生産モデルのAK500Nは、内蔵SSDの容量を1TB/2TBから選ぶことができる(4TBも今後ラインナップに追加予定)。堀氏は「SSDを採用したことで、AK500Nは再生する際に一切回転系を持ちません。よって余計な共振を限りなく排除できます。この点も音質、特にS/Nの高さに当然寄与しています」と説明してくれた。なお、SSDの容量は購入後に追加することも可能。RAIDを組むこともできるという。
AK500Nのサウンドを語る上で忘れてはならないのはその筐体だ。1枚のアルミブロックから切削加工され、正面部の厚みは約4cmにおよぶ。この頑強な筐体がさらに共振を遮断する。これだけの振動対策を施しながら、内部には共振抑制パッドも備えている。こうした慎重に慎重を重ねた音質対策の効果が、“音の響き”に徹底的にこだわったアコースティックエンジニアリングの試聴室においては、より明確に聴き取れた。
徹底したノイズ除去、共振対策に加えて、AK500Nの音質のポイントとして堀氏が挙げたのは、“パーフェクトエクストラクター(完璧な抽出)”と名付けられたCD。リッピングシステムだ。本機はスロットイン方式のドライブを内蔵しているが、これはリッピング専用だ。リッピングエンジンは、読み取り精度の高さで定評のある「CDparanoia」を本機専用に最適化して搭載。楽曲情報なども自動取得してくれる。
イベントにおいては、DSDを含むハイレゾ音源もちろん、CDリッピング音源も多数再生された。堀氏はその意図について「AK500Nの大きな魅力のひとつは、CDが持っている情報量を余すことなく再生できることです。本機でCDをリッピングして再生すると、今まで聴こえなかった音が聴こえてきます。その感覚をぜひ味わってほしいのです」と話していた。
AK500Nで再生されたリッキー・リー・ジョーンズ「My One And Only Love」(『Pop Pop』収録)は、記者もこれまでオーディオ関連の取材でよく耳にしていた定番の1枚。しかし、そのボーカル再現には驚かされた。ボーカルは、最もキーが高く声も張るパートでも歪み感が皆無で、気持ち良いまでに伸びやかだ。
堀氏はAK500Nの使い勝手の面についても紹介。AK500Nはリッピング用のドライブ、ストレージを内蔵し、操作用のタッチディスプレイを搭載する。基本的にはPCを用いる必要もなく、快適・簡便な操作性を実現している。また、豊富な入出力端子をディスプレイで直感的に切り替えて使うことができる。
記者が特に便利と感じたのはリッピング機能だ。ネットワークプレーヤーやUSB-DACを用いたオーディオにおいて、リッピングは最も煩雑な作業ではないだろうか。ソフト選びや設定にこだわりだすとさらに難しい。AK500Nはその点、スロットイン方式のドライブにCDを入れるだけで、自動的にメタデータも習得。情報の修正も本体から行える。最適化されたリッピングエンジンによる精度の高い読み込みが担保されていることの安心感は大きい。最も精度の高い「通常モード」の読み取り時間が、60分のCDで約40分というのはちょっと長く感じるが、安心感とトレードオフとも言える。ちなみに「高速モード」ならば20分程度で読み取ることができるという。
イベントではアコースティックデザインシステムの鈴木社長も挨拶。「試聴会が始まるまえにじっくりと聴かせていただきましたが、さすがだと感じました。S/Nが抜群です。CDリッピングも試してみましたが、これは違うなと。この試聴室ならば、そのポテンシャルを存分に味わっていただけるでしょうし、部屋自体がそのサウンドを引き出すのに重要な役割をしていることも理解していただけるでしょう」とコメントした。
ハイエンドオーディオというジャンルにおいて、Astell&Kernは新興ブランドかもしれない。しかし、ポータブルオーディオで蓄積されたノウハウ、研鑽された技術力は膨大なもの。そしてこうした技術やノウハウは、ポータブルという制限を取り払ったAK500Nでさらにその真価を発揮する。特にそのS/Nの高さは一聴するだけで“違い”を体感できるはず。機会があればぜひ一度、AK500Nのサウンドを実際にその耳で確かめてほしい。
そして2015年、Astell&Kernはポータブルオーディオで培った技術を結集した据え置き型のネットワークオーディオプレーヤー「AK500N」を日本に投入した。バッテリー駆動によるノイズの完全遮断、CDリッピングからストレージ、再生までを1台で完結できるオール・イン・ワン仕様、アルミブロックから削り出した独特の筐体など、音質・ユーザビリティー・デザインと様々な角度から注目を集めた。
4月4日、この「AK500N」のサウンドを体験できる試聴会が開催された。会場となったのは「音の良い部屋」を手がけることで知られるアコースティックデザインシステムの試聴室。AK500Nが達成したサウンドを足し引きなく体験するにはもってこいの場所と言える。当日はあいにくの雨模様ながら、AK500Nのサウンドを確認するべく、多くのオーディオファンが会場に詰めかけた。
試聴会では、Astell&Kernの総輸入代理店である(株)アユートの堀良一氏がプレゼンテーションを行った。堀氏はまず、Astell&Kernのブランドの成り立ちについて説明。2012年にiriver社はプレミアム・ブランドとしてAstell&Kernを設立し、高い性能や音質をポータブルオーディオでいかに実現するかを考えて製品開発を行ってきたことを紹介した。堀氏は「Astell&Kernのポータブルプレーヤーは、国内外で据え置きモデルと遜色ない、あるいはそれを超えるファイル再生プレーヤーとして評価されてきました」と説明。それを実現するだけの技術力をiriver社が強みとして持っていることをアピールしていた。
AK500Nは今年2月に日本国内でも受注生産にて販売を開始した。開発テーマは、上記のようなポータブルオーディオで実現したクオリティーをいかにピュアオーディオ/ホームオーディオに活かしていくかだったという。「“小さくする”というポータブルの制約から開放されたからこそ、AK500はAstell&Kernの理想のサウンドを思う存分追求できたのです」と堀氏。
そんなAK500Nの最大のポイントとして堀氏が挙げたのが、内蔵バッテリー駆動とすることでAC電源からの外来ノイズを物理的に遮断した点だ。オーディオにおいて、電源周りは最も音質に影響を与える要素のひとつ。ポータブル分野でバッテリーのマネージメントのノウハウを蓄積してきたAstell&Kernは、据え置きモデルにおいても究極の音質を求めるためにバッテリー駆動という選択を行ったのだ。「バッテリー駆動による高音質化は、ポータブル分野を手がけてきたからこそ気づき、実現できたことではないでしょうか」(堀氏)。
ハイレゾからCDリッピング音源まで、ジャンルもクラシックからポップスまで幅広く再生したデモンストレーションにおいて、そのサウンドを体感して来場者が口々に印象に残ったとコメントしていたのは、圧倒的なS/Nの高さだった。これもバッテリー駆動による“パーフェクトノイズアイソレーション”が為せる技なのだろう。クラシックにおいては弦楽器の最初の一音が、まったくの静寂から立ち上がる。S/Nが高いからこそ、例えば女性ボーカルが無地の背景に浮かび上がり、その実在感にも圧倒される。
バッテリー駆動によるノイズ混入の根絶に加えて、このS/Nの高さを支えているのがSSDの採用だろう。受注生産モデルのAK500Nは、内蔵SSDの容量を1TB/2TBから選ぶことができる(4TBも今後ラインナップに追加予定)。堀氏は「SSDを採用したことで、AK500Nは再生する際に一切回転系を持ちません。よって余計な共振を限りなく排除できます。この点も音質、特にS/Nの高さに当然寄与しています」と説明してくれた。なお、SSDの容量は購入後に追加することも可能。RAIDを組むこともできるという。
AK500Nのサウンドを語る上で忘れてはならないのはその筐体だ。1枚のアルミブロックから切削加工され、正面部の厚みは約4cmにおよぶ。この頑強な筐体がさらに共振を遮断する。これだけの振動対策を施しながら、内部には共振抑制パッドも備えている。こうした慎重に慎重を重ねた音質対策の効果が、“音の響き”に徹底的にこだわったアコースティックエンジニアリングの試聴室においては、より明確に聴き取れた。
徹底したノイズ除去、共振対策に加えて、AK500Nの音質のポイントとして堀氏が挙げたのは、“パーフェクトエクストラクター(完璧な抽出)”と名付けられたCD。リッピングシステムだ。本機はスロットイン方式のドライブを内蔵しているが、これはリッピング専用だ。リッピングエンジンは、読み取り精度の高さで定評のある「CDparanoia」を本機専用に最適化して搭載。楽曲情報なども自動取得してくれる。
イベントにおいては、DSDを含むハイレゾ音源もちろん、CDリッピング音源も多数再生された。堀氏はその意図について「AK500Nの大きな魅力のひとつは、CDが持っている情報量を余すことなく再生できることです。本機でCDをリッピングして再生すると、今まで聴こえなかった音が聴こえてきます。その感覚をぜひ味わってほしいのです」と話していた。
AK500Nで再生されたリッキー・リー・ジョーンズ「My One And Only Love」(『Pop Pop』収録)は、記者もこれまでオーディオ関連の取材でよく耳にしていた定番の1枚。しかし、そのボーカル再現には驚かされた。ボーカルは、最もキーが高く声も張るパートでも歪み感が皆無で、気持ち良いまでに伸びやかだ。
堀氏はAK500Nの使い勝手の面についても紹介。AK500Nはリッピング用のドライブ、ストレージを内蔵し、操作用のタッチディスプレイを搭載する。基本的にはPCを用いる必要もなく、快適・簡便な操作性を実現している。また、豊富な入出力端子をディスプレイで直感的に切り替えて使うことができる。
記者が特に便利と感じたのはリッピング機能だ。ネットワークプレーヤーやUSB-DACを用いたオーディオにおいて、リッピングは最も煩雑な作業ではないだろうか。ソフト選びや設定にこだわりだすとさらに難しい。AK500Nはその点、スロットイン方式のドライブにCDを入れるだけで、自動的にメタデータも習得。情報の修正も本体から行える。最適化されたリッピングエンジンによる精度の高い読み込みが担保されていることの安心感は大きい。最も精度の高い「通常モード」の読み取り時間が、60分のCDで約40分というのはちょっと長く感じるが、安心感とトレードオフとも言える。ちなみに「高速モード」ならば20分程度で読み取ることができるという。
イベントではアコースティックデザインシステムの鈴木社長も挨拶。「試聴会が始まるまえにじっくりと聴かせていただきましたが、さすがだと感じました。S/Nが抜群です。CDリッピングも試してみましたが、これは違うなと。この試聴室ならば、そのポテンシャルを存分に味わっていただけるでしょうし、部屋自体がそのサウンドを引き出すのに重要な役割をしていることも理解していただけるでしょう」とコメントした。
ハイエンドオーディオというジャンルにおいて、Astell&Kernは新興ブランドかもしれない。しかし、ポータブルオーディオで蓄積されたノウハウ、研鑽された技術力は膨大なもの。そしてこうした技術やノウハウは、ポータブルという制限を取り払ったAK500Nでさらにその真価を発揮する。特にそのS/Nの高さは一聴するだけで“違い”を体感できるはず。機会があればぜひ一度、AK500Nのサウンドを実際にその耳で確かめてほしい。