海上忍のラズパイ・オーディオ通信(2)
Raspberry Pi で自作する「ラズパイオーディオ」。音質をあのメーカーに聴いてもらった!
■効果てきめん、底知れぬ「伸び代」に驚愕
これが、驚くほど印象は変わる。音場の見通しがすうっと広がり、ピアノにしても、ドラムの細かいスティックワークにしても、音の輪郭がくっきりと見えるかのよう。
「Opening」という曲本来のECM的音空間が眼前に広がる様は、じゅうぶんハイエンドの領域に達している。一同からは「おっ……」という声が漏れるとともに、姿勢を正す者、腕組みする者、それぞれが音に集中し始めた。
続くJiLL-Decoy associationの「Lining」(DSD 2.6MHz)も、KORG ClarityによるDSD録音らしい空気感を漂わせつつ、繊細なドラムブラシなど解像感の高さと粒立ちの細かさで魅了した。試聴に立ち会った一同が「ラズパイ・オーディオ」の実力を感じたのは、この曲を聴き終えた瞬間ではなかっただろうか。
しかし、試聴はこれで終わらない。「KSシリーズで聴いてみましょうよ」という渡邉氏の提案のもと、今度はクリプトンが誇るアクティブ・スピーカーでの試聴が開始された。
まずは、最新型のKS-7HQM。「ラズパイ・オーディオ」の電源は入れたまま、USBケーブルをTEAC UD301から差し替えただけで準備は完了した。USBデバイスならではの活線挿抜(ホットスワップ)であり、Linuxのシステム設定を変更しないことにはこのような使い方はできないが、実はテキストファイルを数行編集するだけのこと。興味があれば、拙著「Raspberry Pi 2対応「Raspi Audio」導入編 [Kindle版]」を参照していただきたい。
▼「Raspberry Pi 2対応 Raspi Audio 導入編」海上忍著
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"ハイレゾ7"ことKS-7HQMでは、Daft Punkの「Get Lucky」(WAV 88.2kHz/24bit)を再生。グリーンのLEDが2つ点灯、88.2kHz/24bitの音源が入力されていることがわかる。続くKS-3HQMではSteely Danの「Two Against Nature」(FLAC 96kHz/24bit)、KS-1HQMではキース・ジャレット&チャーリー・ヘイデンの「Last Dance」(FLAC 96kHz/24bit)を。USBケーブルの挿し替えを失念するというヒューマン・エラーを除けば、音飛び等トラブルは一切なく、機器の認識もスムーズで、流れるように各種ハイレゾ音源の試聴は終了した。
もうひとつ、出し物として近ごろ話題のストリーミングサービスをデモしてみた。そう、「Apple Music」。iPhoneにテザリングしているということは、「ラズパイ・オーディオ」とiPhoneが同じサブネットのLANに接続しているということであり、iPhoneからAirPlayでApple Musicの音を出力できるのだ。大橋純子やオフコースの名曲を次々と再生するデモ終盤、前島氏の「これ、どこで買えるの?」という質問には、ラズパイ・オーディオの可能性を改めて確認できたような気がした。
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