【特別企画】様々な映像ソースで実力を確認
HDR時代を見据えた東芝の新旗艦テレビ「レグザZ20X」の画質を山之内正が徹底チェック
まずはZ20Xの進化のポイントの一つとして挙げた色彩表現にフォーカスを合わせながら、『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を見ていこう。意欲的な映像表現に見るべきところが多く、撮影監督のエマニュエル・ルベツキはアカデミー賞の撮影賞を獲得している。
特に、長回しにこだわり、俳優たちと一緒に劇場内部を縦横に移動するカットは圧巻で、先が読めない緊張感が持続し、文字通り目が離せない展開に引き込まれる。カメラが移動する間に、楽屋の自然光、廊下の蛍光灯、舞台のスポットライトという具合に光源の種類は刻々と変化し、仄暗い舞台裏でもドラマが進行する。
Z20Xはそんな暗い場面でも色が抜けたり色相がまわることがないし、人物と背景の微妙な明暗も正確に描き分ける。光源が変化しても映像が破綻せず、立体感を失わないので、どの場面でもテンションが緩むことがない。
以上は映画プロモードのデフォルト設定で視聴した印象で、映画モードに切り替えると色の描写がさらに濃密になるが、この作品にはニュートラルなトーンを引き出す映画プロの方が適している。
■「アドバンスドHDR復元プロ」の効果は?
『ゴーン・ガール』ではアドバンスドHDR復元プロの効果を確認する。
この作品は窓を通して室内に光が入る場面がたくさん出てくるが、その屋外と室内の対比は同機能の設定によって見え方が微妙に変化する。オフでは白が飛んで屋外の緑や街並みなどはほとんど見えない状態。一方、オートにすると室内の明るさが増して人物の表情などが浮かび上がる。そして、オンに切り替えると木々の緑など窓越しの風景が浮かび上がり、室内にも自然に光が回り込む。
例えば、後半のある場面を例にとると、窓の手前でパソコンを操作するエイミーの横顔を立体的に描き出すという具合で、背景の窓と手前のエイミーの間の遠近感や壁面のテクスチャーを自然に引き出し、画面全体の立体感が向上する効果が著しい。SDRのコンテンツでも設定を適切に選ぶと、HDRで撮影された作品のような立体感豊かな映像に近付けることができる。『ゴーン・ガール』はその復元効果がプラスにはたらく好例と言えそうだ。
アドバンスドHDR復元プロは、輝度が高い部分の白飛びを抑えて明るい領域のなかでの明暗差を引き出す効果も狙うことができる。『ゴーン・ガール』では屋内と屋外の対比に注目したが、明るい場面での立体感を改善する例として、『チャッピー』を紹介しておこう。
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