ミックスの価値観が変わるサウンドのヘッドホン
ミュージシャン/エンジニアが本音で語る、オーディオテクニカ「ATH-R70x」を選んだ理由:MEG(ex.ARTEMA)の場合
ATH-R70xを選んだ理由とそのサウンドの魅力
私はもともと密閉型のオーディオテクニカATH-M50xを使用していました。密閉型は音がハッキリしていて音像も近いため分かりやすいのですが、構造上しっかり耳に密着しなくてはならないので、10時間を超える長時間の作業だとどうしても耳が痛くなり疲れてしまうという理由から、オープン型のヘッドホンを探していました。
一般的にオープン型は、音場は分かりやすい反面、密閉型に慣れていると音の輪郭などが分かりにくい傾向となることに加え、低音がどうしても薄くなってしまう側面があります。オープン型と密閉型、どちらを取っても良し悪しがあり、そのどちらも兼ね備えてるヘッドホンはないのかと探しまわり、その末に出会ったのがATH-R70x(以下:R70x)でした。
R70xを一聴してまず驚いたのが、いままで試して来たオープン型では感じることができなかった低音の再現性でした。正直、上の価格帯を見たらキリがない世界ですが、同価格帯のオープン型の弱点は低音が出ないというところで、R70xはその弱点を見事クリアしています。低音の面ではさすがオーディテクニカと言うべきものです。
ボトムがしっかりしているので定位も良く、オープン型特有の音場感はありつつも音像は遠すぎず各々のパートがくっきり聴こえてきます。これなら密閉型に慣れている方でも違和感無く使用できるオープン型ヘッドホンだと思います。
それに加えて帯域のバランス、解像度、どれを取っても絶妙で、ある意味では特筆すべき点がないのではないかと思うくらいにニュートラルな特性です。しかも、モニタリングに偏りすぎずリスニングでも気持ち良く使えるという、どんな場面でも使えるのも特徴です。本製品でうたっている通り、まさにリファレンスヘッドホンというにふさわしいヘッドホンです。
そして、もうひとつの特筆すべき点。それはなんと言っても装着感でしょう。
大体のヘッドホンはアジャスターを調節して装着しますが、アジャスターの長さが左右で違ったりすると微妙に左右で音が違ったりしてしまい調整するのが面倒だったりします。
しかしR70xの場合、アジャスターが存在しないバネ式のウイングサポートを採用しています。イヤーパッドを耳に被せるというよりも、ウイングサポートを頭の上に乗せるような感覚です。耳にイヤーパッドが引っかかったりせず、圧迫感も無く、そして長時間装着していても耳が痛くならず疲れにくい。楽に着脱できることも特徴です。
音楽制作などをする場合、「長時間ヘッドホンを装着していても疲れない」「装着時の違和感がない」「着脱が楽」というのは非常に重要なポイントです。
強いて弱点を言えば、カタログスペックを見れば分かる通り、インピーダンスが470Ωと非常に高い設定になっており、リスニング用途として組み合わせる機材を選ぶ側面があります。iPhoneと組み合わせると音量をフル手前くらいでちょうど良いレベルになりますが、使う方によってはヘッドホンアンプを使用する必要があると思います。
とはいえこの価格帯のヘッドホンは、密閉型、オープン型共に実に沢山のラインナップがあり、競合がひしめき合う価格帯だと思います。
その中でもR70xはどこを取ってもひと際輝く存在であると確信させる完成度でした。