世界最小4KデバイスとJVC初のレーザー光源
【レビュー】JVC初のネイティブ4K D-ILAプロジェクター「DLA-Z1」。その画質を大橋伸太郎がチェック
■ファン待望のネイティブ4K対応プロジェクター、JVC「DLA-Z1」
映像の2016年を締めくくる大きな出来事がJVC「DLA-Z1」の発売だ。最新の情報ではIFA2016での発表以来、海外では当初計画を上回る受注が寄せられているという。日本ではこれから大阪を始め、国内での展示会も予定されている。各地のユーザーの反響が大きいことは間違いなく、あまりの人気ぶりに、もしかすると実際に納品が始まるまで時間を要するかもしれない。
つまり、それほど待ちに待った製品だったのだ。JVCは8Kを含む多様な解像度のDLAデバイスを生産し、業務用プロジェクターに搭載してきた。4K解像度(4,096×2,400)については10年前の2007年に最初の1.7インチを開発、現在は1.27インチの4K/2Kデバイス搭載のD-ILAプロジェクターDLA-SH7NL(最大輝度5,000lm)がパブリックビューイングの定番機種だ。
一方、ホームシアタープロジェクターについては、家庭用の標準サイズである0.7インチのデバイス(プロジェクターはデバイスのサイズでシステム全体の筐体規模が決まってしまう)を新規に起こすのでなく、2Kデバイスを独自のe-shiftエンハンスメントテクノロジーを使った画素ずらしとMPC(MultiplePixelControl)で倍密化して4K解像度を得る手法を採ってきた。
4K e-shiftは優れた技術で他社からも追随を生んだが、安定して高精細を得られる点でネイティブデバイスに適わない。JVCが0.7インチ(今回DLA-Z1に搭載されるデバイスは0.69インチ)の実用化に時間を要したのは生産上のスケールメリットの問題で、4K UHD BDと4K放送が本格化し、投入時期がついに到来したという判断で、DLA-Z1の開発に至ったわけだ。
■世界最小の4KデバイスとJVC初のレーザー光源採用機
本機についてはIFAレポートのほか、当サイトでも何度か紹介済みだが、プロフィールをもう一度おさらいしておこう。0.69インチ、アスペクト比17:9の4K D-ILAデバイス(4,096×2,160)を新規開発。家庭用LCOSデバイスの標準0.7インチより僅かに小型で、もちろん4K解像度デバイスでは世界最少だ。
DLA-Z1はJVCとして初めてレーザー光源採用に踏み切った。今後ネイティブ4Kデバイス+レーザー光源が家庭用高級機の標準スペックになると考えていい。同社業務用4K/2KモデルであるDLA-SH7NLの場合、UHPランプ灯式採用で5,000lmだが、Z1は青色レーザーダイオードを8個搭載し3000lmの明るさを確保した。
青色レーザーから白色光を得るために波長転換をしなければならないが、このプロセスに関してJVCが開発した技術がBLU-Escentだ。従来の青色レーザー+黄色蛍光体+ホイール型レーザーフォスファー(変換器)に代え、レーザー光を固定式の無機蛍光体に反射させてB+Y、その後段のフィルターでG,Rを得る新方式。機械式ホイールのように回転しないので騒音が発生せず、経年劣化も少ない。
レーザー光源は光出力の制御が瞬時に行なえ、従来の機械式絞り(アパーチャー)を廃止、遅延のないダイナミックな明るさ調整が可能だ。他に光学エンジン部F値をF3.2→2.6とし明るさ3000lmに貢献、ワイヤーグリッドの精度を従来比2倍とし、ほぼ無限大のダイナミックコントラストを実現した。
プロジェクターの画質の半分はレンズシステムの解像力で決まるといっていい。DLA-Z1には専用新設計の100mm大口径を含むオールガラスオールアルミ鏡筒16群18枚の国産品が搭載された。RGBの屈折率の違いを考慮した異常分散ガラス(5枚)を採用してシフト時の色収差と滲みを抑え、4K解像度を忠実に再現する。ロングスロー、ショートスロー用のオプションレンズは用意されない。「ビス一本まで新しい」Z1の重量は40kgとX750Rの15.6kgの2.5倍だが、ボルト位置が共通で既存の天吊り金具が流用可能なのはDLAを使い続けるユーザーへの朗報。
スペック面ではレーザー光源と新シネマフィルターの採用でDCI P3を100%、 BT.2020を80%以上カバーする。4K UHD BDのHDRと放送用Hybrid Log Gammaに対応する。4K/60p 4:4:4、4K/60p 4:2:2/36bit、4K/24p 4:4:4/36bitなど18Gbps伝送帯域に対応し4K映像入力はフルスペック対応だ。
ピクチャーモードは、Film/Cinema/Natural(SDR)/HDR/THX/USER1〜6の11種。ガンマ設定は2.2/2.4/2.6/Cinema1/Cinema2/HDR(ST.2080)/HDR(Hybrid log)/カスタム1〜3の10種。プロジェクターとして世界で初めてTHX 4K Display認証を取得した。
■画質傾向は「明るく自然体な雄大な画」
DLA-Z1をすでに二度視聴したが、現在量産を前に、4KソースのみならずBDなどの2Kソースも精細感が出るようにMPCが効く帯域などを調整中で、なおかつ各モードでの初期値設定を現在煮詰めていると聞く。
ここまで本機を視聴した範囲で画質の印象を表現すれば、明るく自然体な雄大な画。従来のe-shiftを利用した4Kも精細感は十分だったが、ソフトとの相性によって電気的エンハンスに起因する細部の歪みが現れていた。
今回のZ1も、4Kネイティブソースを入力した場合でもMPC(超解像の機能を持つ)を通るが、強力な光源とあいまってノイズ、強調感というものがほぼ一掃され、胸の空くような映像。強力な光源の威力あらたかで、 4Kビデオカメラで撮影した同社お膝元、三浦・湘南ロケ映像の晴天デイライトシーンは、実景を前にしているような錯覚にとらわれる。
また明るいだけでなく、高輝度部分(青空)に淡い雲や大気の水分粒子がうっすらと現れニュアンスが豊富で、吸い込まれるような立体感は陶酔的だ。
これまでHDRの表現に関してプロジェクターはUHP光源の利用効率を改善したり、ガンマカーブの設定で「HDRらしさ」を演出してきたが、本機はこの映像の革新を投写された大画面でまざまざと実感させる。
プロシューマー機DLA-Z1の全長は720mmに達し(DLA-X750Rは472mm)筐体の後部1/3をレーザー光源ユニットとヒートシンクが占有する。反面、巨大さ、いかつさを感じさせないデザインとパッケージの工夫がされており、ホームシアターへの親和性は高い。近いうちにMPC等のパラメーターが確定したプリプロを視聴することが出来そうなので、機会があれば最新の画質についても報告したい。
映像の2016年を締めくくる大きな出来事がJVC「DLA-Z1」の発売だ。最新の情報ではIFA2016での発表以来、海外では当初計画を上回る受注が寄せられているという。日本ではこれから大阪を始め、国内での展示会も予定されている。各地のユーザーの反響が大きいことは間違いなく、あまりの人気ぶりに、もしかすると実際に納品が始まるまで時間を要するかもしれない。
つまり、それほど待ちに待った製品だったのだ。JVCは8Kを含む多様な解像度のDLAデバイスを生産し、業務用プロジェクターに搭載してきた。4K解像度(4,096×2,400)については10年前の2007年に最初の1.7インチを開発、現在は1.27インチの4K/2Kデバイス搭載のD-ILAプロジェクターDLA-SH7NL(最大輝度5,000lm)がパブリックビューイングの定番機種だ。
一方、ホームシアタープロジェクターについては、家庭用の標準サイズである0.7インチのデバイス(プロジェクターはデバイスのサイズでシステム全体の筐体規模が決まってしまう)を新規に起こすのでなく、2Kデバイスを独自のe-shiftエンハンスメントテクノロジーを使った画素ずらしとMPC(MultiplePixelControl)で倍密化して4K解像度を得る手法を採ってきた。
4K e-shiftは優れた技術で他社からも追随を生んだが、安定して高精細を得られる点でネイティブデバイスに適わない。JVCが0.7インチ(今回DLA-Z1に搭載されるデバイスは0.69インチ)の実用化に時間を要したのは生産上のスケールメリットの問題で、4K UHD BDと4K放送が本格化し、投入時期がついに到来したという判断で、DLA-Z1の開発に至ったわけだ。
■世界最小の4KデバイスとJVC初のレーザー光源採用機
本機についてはIFAレポートのほか、当サイトでも何度か紹介済みだが、プロフィールをもう一度おさらいしておこう。0.69インチ、アスペクト比17:9の4K D-ILAデバイス(4,096×2,160)を新規開発。家庭用LCOSデバイスの標準0.7インチより僅かに小型で、もちろん4K解像度デバイスでは世界最少だ。
DLA-Z1はJVCとして初めてレーザー光源採用に踏み切った。今後ネイティブ4Kデバイス+レーザー光源が家庭用高級機の標準スペックになると考えていい。同社業務用4K/2KモデルであるDLA-SH7NLの場合、UHPランプ灯式採用で5,000lmだが、Z1は青色レーザーダイオードを8個搭載し3000lmの明るさを確保した。
青色レーザーから白色光を得るために波長転換をしなければならないが、このプロセスに関してJVCが開発した技術がBLU-Escentだ。従来の青色レーザー+黄色蛍光体+ホイール型レーザーフォスファー(変換器)に代え、レーザー光を固定式の無機蛍光体に反射させてB+Y、その後段のフィルターでG,Rを得る新方式。機械式ホイールのように回転しないので騒音が発生せず、経年劣化も少ない。
レーザー光源は光出力の制御が瞬時に行なえ、従来の機械式絞り(アパーチャー)を廃止、遅延のないダイナミックな明るさ調整が可能だ。他に光学エンジン部F値をF3.2→2.6とし明るさ3000lmに貢献、ワイヤーグリッドの精度を従来比2倍とし、ほぼ無限大のダイナミックコントラストを実現した。
プロジェクターの画質の半分はレンズシステムの解像力で決まるといっていい。DLA-Z1には専用新設計の100mm大口径を含むオールガラスオールアルミ鏡筒16群18枚の国産品が搭載された。RGBの屈折率の違いを考慮した異常分散ガラス(5枚)を採用してシフト時の色収差と滲みを抑え、4K解像度を忠実に再現する。ロングスロー、ショートスロー用のオプションレンズは用意されない。「ビス一本まで新しい」Z1の重量は40kgとX750Rの15.6kgの2.5倍だが、ボルト位置が共通で既存の天吊り金具が流用可能なのはDLAを使い続けるユーザーへの朗報。
スペック面ではレーザー光源と新シネマフィルターの採用でDCI P3を100%、 BT.2020を80%以上カバーする。4K UHD BDのHDRと放送用Hybrid Log Gammaに対応する。4K/60p 4:4:4、4K/60p 4:2:2/36bit、4K/24p 4:4:4/36bitなど18Gbps伝送帯域に対応し4K映像入力はフルスペック対応だ。
ピクチャーモードは、Film/Cinema/Natural(SDR)/HDR/THX/USER1〜6の11種。ガンマ設定は2.2/2.4/2.6/Cinema1/Cinema2/HDR(ST.2080)/HDR(Hybrid log)/カスタム1〜3の10種。プロジェクターとして世界で初めてTHX 4K Display認証を取得した。
■画質傾向は「明るく自然体な雄大な画」
DLA-Z1をすでに二度視聴したが、現在量産を前に、4KソースのみならずBDなどの2Kソースも精細感が出るようにMPCが効く帯域などを調整中で、なおかつ各モードでの初期値設定を現在煮詰めていると聞く。
ここまで本機を視聴した範囲で画質の印象を表現すれば、明るく自然体な雄大な画。従来のe-shiftを利用した4Kも精細感は十分だったが、ソフトとの相性によって電気的エンハンスに起因する細部の歪みが現れていた。
今回のZ1も、4Kネイティブソースを入力した場合でもMPC(超解像の機能を持つ)を通るが、強力な光源とあいまってノイズ、強調感というものがほぼ一掃され、胸の空くような映像。強力な光源の威力あらたかで、 4Kビデオカメラで撮影した同社お膝元、三浦・湘南ロケ映像の晴天デイライトシーンは、実景を前にしているような錯覚にとらわれる。
また明るいだけでなく、高輝度部分(青空)に淡い雲や大気の水分粒子がうっすらと現れニュアンスが豊富で、吸い込まれるような立体感は陶酔的だ。
これまでHDRの表現に関してプロジェクターはUHP光源の利用効率を改善したり、ガンマカーブの設定で「HDRらしさ」を演出してきたが、本機はこの映像の革新を投写された大画面でまざまざと実感させる。
プロシューマー機DLA-Z1の全長は720mmに達し(DLA-X750Rは472mm)筐体の後部1/3をレーザー光源ユニットとヒートシンクが占有する。反面、巨大さ、いかつさを感じさせないデザインとパッケージの工夫がされており、ホームシアターへの親和性は高い。近いうちにMPC等のパラメーターが確定したプリプロを視聴することが出来そうなので、機会があれば最新の画質についても報告したい。