写実性と音楽性を高次元で両立
“幻の導体”採用のティグロン『Mg-DFシリーズ』、新登場の電源/SPケーブルをレビュー
ティグロンは、米・GE社が開発した“ディップフォーミング無酸素銅(DF-OFC)”を導体に使用し、シールド層に最新の第三世代マグネシウムシールドを採用した画期的なケーブル『Mg-DFシリーズ』を登場させた。第1弾に昨年2016年インターコネクトケーブルを発売し、その音質とコストパフォーマンスの高さで支持を得た。そして今回、第2弾として待望のスピーカーケーブル「MS-DF12SP」と電源ケーブル「MS-DF12A」が登場。同シリーズのケーブルの実力を高く評価する柴崎 功氏が徹底レポートする。
■“Mg-DF”シリーズについて
WE由来の画期的な製法とマグネシウムが見事に融合
ティグロンの新ケーブル『Mg-DFシリーズ』に、スピーカーケーブル「MS-DF12SP」と電源ケーブル「MS-DF12A」が加わって4モデルになった。第1弾は162号で紹介したRCAケーブル「MS-DF12R」とXLRケーブル「MS-DF12X」である。
マグネシウムの元素記号『Mg』とディップフォーミングの『DF』を合体した『Mg-DFシリーズ』は、ディップフォーミング無酸素銅(DF-OFC)を芯線導体に使用し、第3世代マグネシウムシールドを併用した、音質的に非常に魅力あるケーブルである。
DF-OFCは、米国GE社が開発したディップフォーミング製法の無酸素銅で、ウエスタンエレクトリック製アンプの内部配線に採用されている。日本では、1969年に昭和電線がGEからディップフォーミングシステムを購入してDF-OFCを製造している。
ディップフォーミングは、銅被覆鉄線のように異種金属同士を合体した線材を作る製法。これを“銅被覆銅線”の発想で、還元雰囲気中に銅の種線に溶けた銅を付着させたのがディップフォーミング無酸素銅である。つまり、ピーリングで表面酸化層を剥ぎ取った銅の種線を溶銅炉に通し、種線に銅を付着させて太い鋳造ロッドにする。これを圧延機に通して荒引き線と種線を同時に作り、新しい種線を溶銅炉に戻して新たな鋳造ロッドを作るという工程を繰り返して、品質が安定した不純物の少ない無酸素銅を製造する。
ティグロンは、ウエスタンサウンドの魅力を分析している過程でDF-OFCの存在に気づき、この素材と制振効果やシールド効果の高い第3世代マグネシウムシールド技術を合体させたところ、期待以上に魅力的な音が得られたという。そこで信号ケーブルや電源ケーブルに相次いで採用しているのだ。
■スピーカーケーブル「MS-DF12SP」
熟練マニア向け音質に大進化、量感や抑揚を克明に表現する
「MS-DF12SP」は、MS-12SP IIの後継となる外径11.5mmの2芯シールドスピーカーケーブル。2つの芯線(絶縁被覆が白と赤)は、φ0.18mm極細銅素線の12本撚りを7束ロープ撚りにしたDF-OFC極細撚り線に耐熱PVCを被せた構造で、その周囲を綿糸で覆って振動の吸収と吸湿による微弱導電性で絶縁被覆の帯電除去を行い、紙テープを巻いてケーブル断面を円形に整える。その上に第3世代マグネシウムシールド(0.1mm厚で10mm幅のAZ31マグネシウム合金箔の非オーバーラップ巻き)を施し、外被にラメ入りシルバーの耐熱PVCを採用する。
MS-12SPIIは低域がややスリムでスピード感のある若者向きの音調であるが、「MS-DF12SP」はそれとは異次元の、本物志向の熟練マニア向け音質に大進化した。低域の量感が増してウッドベースの胴鳴りが豊かになり、ヴォーカルの抑揚や微妙なビブラート、ピアノやギターの過渡的な音色変化などが克明に分かるようになる。非常にナチュラルで伸び伸びした音質に大感動した。
■電源ケーブル「MS-DF12A」
表現力や空間表現も卓越し、透明感や音の伸びが異次元
「MS-DF12A」はMS-12Aの後継となる外径11.5mmの3芯シールド電源ケーブルである。3つの芯線(絶縁被覆が白/黒/緑)は、φ0.18mm極細銅素線の84本撚りで2スケアのDF-OFC極細撚り線に耐熱PVCを被せた構造だ。それを耐熱PVCの中間シースで覆い、その上に錫メッキ軟銅線の編組シールド、第2の耐熱PVC中間シース、マグネシウムシールド(0.1mm厚で10mm幅マグネシウム合金箔の非オーバーラップ巻き)を施し、こちらも外被にラメ入りシルバー耐熱PVCを用いている。
コネクタ部には、無メッキ黄銅電極を用いたオヤイデ『029シリーズ』のカスタム品を投入。プラグの電極は出荷時に研磨布(ポリマールブルー)でピカピカに磨かれている。音質は旧モデルMS-12Aとは異次元とも言える大進化で、非常に透明感があって音が伸び伸びとして、抑揚やビブラートの表現力が豊かだ。しかも楽器や声の質感がナチュラルで、音場空間が生々しい。アース処理が改良されたので聴感的ノイズレベルも若干下がっている。
■XLRインターコネクト「MS-DF12X」
十数万の製品にも対抗できる、迫真の伸び伸びサウンドを
「MS-DF12X」は2芯シールドケーブル MS-12Xの後継となる、3芯マグネシウムシールドケーブルである。3つの芯線(絶縁被覆が赤/白/黒)は、φ0.18mm極細銅素線の6本撚りを7束ロープ撚りにしたDF-OFC極細撚り線に耐熱PVCを被せた構造。それを耐熱PVCの中間シースで覆い、その上に横巻き銅シールド、第2の耐熱PVC中間シース、マグネシウムシールド(0.1mm厚で6mm幅マグネシウム合金箔の非オーバーラップ巻き)を設け、外被にラメ入りシルバー耐熱PVCを使用。外径は8.5mmとなる。XLRコネクターにはノイトリック『XXシリーズ』を採用。音質は上級モデル「MGL-X10」を凌ぐどころか、十数万円の他社ケーブルにも対抗できる高S/Nの迫真伸び伸びサウンドである。
■RCAインタコネクト「MS-DF12R」
高精度RCAプラグを搭載し上級モデルを完全に凌駕した
「MS-DF12R」はMS-12Rの後継となる2芯シールドケーブルで、MS-DF12Xの3芯マグネシウムシールドケーブルから黒被覆芯線を省いて赤/白被覆の2芯シールドにした構造。外径は8.5o。RCAプラグには、アース電極から渦電流や迷走電流を追放したオーストラリアKLEI社のカッパーハーモニーRCAプラグが用いられている。音質はMS-DF12Xと同様で、上級モデルMGL-R10を完全に超えている。。
◇
Mg-DFシリーズ製品すべてに共通しているのは、写実性と音楽性を高次元で両立させ、しかも高い癒やし効果を備えている点だ。サウンドクォリティに対してあまりにも値付けが安すぎるので、この記事を読んでも信じがたいだろうが、信じる読者は救われる。
本記事はオーディオアクセサリー164号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。
■“Mg-DF”シリーズについて
WE由来の画期的な製法とマグネシウムが見事に融合
ティグロンの新ケーブル『Mg-DFシリーズ』に、スピーカーケーブル「MS-DF12SP」と電源ケーブル「MS-DF12A」が加わって4モデルになった。第1弾は162号で紹介したRCAケーブル「MS-DF12R」とXLRケーブル「MS-DF12X」である。
マグネシウムの元素記号『Mg』とディップフォーミングの『DF』を合体した『Mg-DFシリーズ』は、ディップフォーミング無酸素銅(DF-OFC)を芯線導体に使用し、第3世代マグネシウムシールドを併用した、音質的に非常に魅力あるケーブルである。
DF-OFCは、米国GE社が開発したディップフォーミング製法の無酸素銅で、ウエスタンエレクトリック製アンプの内部配線に採用されている。日本では、1969年に昭和電線がGEからディップフォーミングシステムを購入してDF-OFCを製造している。
ディップフォーミングは、銅被覆鉄線のように異種金属同士を合体した線材を作る製法。これを“銅被覆銅線”の発想で、還元雰囲気中に銅の種線に溶けた銅を付着させたのがディップフォーミング無酸素銅である。つまり、ピーリングで表面酸化層を剥ぎ取った銅の種線を溶銅炉に通し、種線に銅を付着させて太い鋳造ロッドにする。これを圧延機に通して荒引き線と種線を同時に作り、新しい種線を溶銅炉に戻して新たな鋳造ロッドを作るという工程を繰り返して、品質が安定した不純物の少ない無酸素銅を製造する。
ティグロンは、ウエスタンサウンドの魅力を分析している過程でDF-OFCの存在に気づき、この素材と制振効果やシールド効果の高い第3世代マグネシウムシールド技術を合体させたところ、期待以上に魅力的な音が得られたという。そこで信号ケーブルや電源ケーブルに相次いで採用しているのだ。
■スピーカーケーブル「MS-DF12SP」
熟練マニア向け音質に大進化、量感や抑揚を克明に表現する
「MS-DF12SP」は、MS-12SP IIの後継となる外径11.5mmの2芯シールドスピーカーケーブル。2つの芯線(絶縁被覆が白と赤)は、φ0.18mm極細銅素線の12本撚りを7束ロープ撚りにしたDF-OFC極細撚り線に耐熱PVCを被せた構造で、その周囲を綿糸で覆って振動の吸収と吸湿による微弱導電性で絶縁被覆の帯電除去を行い、紙テープを巻いてケーブル断面を円形に整える。その上に第3世代マグネシウムシールド(0.1mm厚で10mm幅のAZ31マグネシウム合金箔の非オーバーラップ巻き)を施し、外被にラメ入りシルバーの耐熱PVCを採用する。
MS-12SPIIは低域がややスリムでスピード感のある若者向きの音調であるが、「MS-DF12SP」はそれとは異次元の、本物志向の熟練マニア向け音質に大進化した。低域の量感が増してウッドベースの胴鳴りが豊かになり、ヴォーカルの抑揚や微妙なビブラート、ピアノやギターの過渡的な音色変化などが克明に分かるようになる。非常にナチュラルで伸び伸びした音質に大感動した。
■電源ケーブル「MS-DF12A」
表現力や空間表現も卓越し、透明感や音の伸びが異次元
「MS-DF12A」はMS-12Aの後継となる外径11.5mmの3芯シールド電源ケーブルである。3つの芯線(絶縁被覆が白/黒/緑)は、φ0.18mm極細銅素線の84本撚りで2スケアのDF-OFC極細撚り線に耐熱PVCを被せた構造だ。それを耐熱PVCの中間シースで覆い、その上に錫メッキ軟銅線の編組シールド、第2の耐熱PVC中間シース、マグネシウムシールド(0.1mm厚で10mm幅マグネシウム合金箔の非オーバーラップ巻き)を施し、こちらも外被にラメ入りシルバー耐熱PVCを用いている。
コネクタ部には、無メッキ黄銅電極を用いたオヤイデ『029シリーズ』のカスタム品を投入。プラグの電極は出荷時に研磨布(ポリマールブルー)でピカピカに磨かれている。音質は旧モデルMS-12Aとは異次元とも言える大進化で、非常に透明感があって音が伸び伸びとして、抑揚やビブラートの表現力が豊かだ。しかも楽器や声の質感がナチュラルで、音場空間が生々しい。アース処理が改良されたので聴感的ノイズレベルも若干下がっている。
■XLRインターコネクト「MS-DF12X」
十数万の製品にも対抗できる、迫真の伸び伸びサウンドを
「MS-DF12X」は2芯シールドケーブル MS-12Xの後継となる、3芯マグネシウムシールドケーブルである。3つの芯線(絶縁被覆が赤/白/黒)は、φ0.18mm極細銅素線の6本撚りを7束ロープ撚りにしたDF-OFC極細撚り線に耐熱PVCを被せた構造。それを耐熱PVCの中間シースで覆い、その上に横巻き銅シールド、第2の耐熱PVC中間シース、マグネシウムシールド(0.1mm厚で6mm幅マグネシウム合金箔の非オーバーラップ巻き)を設け、外被にラメ入りシルバー耐熱PVCを使用。外径は8.5mmとなる。XLRコネクターにはノイトリック『XXシリーズ』を採用。音質は上級モデル「MGL-X10」を凌ぐどころか、十数万円の他社ケーブルにも対抗できる高S/Nの迫真伸び伸びサウンドである。
■RCAインタコネクト「MS-DF12R」
高精度RCAプラグを搭載し上級モデルを完全に凌駕した
「MS-DF12R」はMS-12Rの後継となる2芯シールドケーブルで、MS-DF12Xの3芯マグネシウムシールドケーブルから黒被覆芯線を省いて赤/白被覆の2芯シールドにした構造。外径は8.5o。RCAプラグには、アース電極から渦電流や迷走電流を追放したオーストラリアKLEI社のカッパーハーモニーRCAプラグが用いられている。音質はMS-DF12Xと同様で、上級モデルMGL-R10を完全に超えている。。
Mg-DFシリーズ製品すべてに共通しているのは、写実性と音楽性を高次元で両立させ、しかも高い癒やし効果を備えている点だ。サウンドクォリティに対してあまりにも値付けが安すぎるので、この記事を読んでも信じがたいだろうが、信じる読者は救われる。
本記事はオーディオアクセサリー164号からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。