ライン/スピーカー/デジタルケーブルを試聴
WireWorld新ケーブル“7シリーズ”徹底レビュー ー 進化した絶縁体で再現力向上
ワイヤーワールドのケーブルが、同社の創業20周年を区切りとして、全面的にモデルチェンジされる。いままではシリーズ6であったが、これがシリーズ7として全製品が変更されることになる。すでにHDMIとUSBの一部が紹介されているが、切り替えは順次行われるようなので、ここではラインケーブルとスピーカーケーブル、それにデジタルケーブルの3ジャンルだけを取り上げたい。
■シリーズ7が誕生
6シリーズのDNA構造を継承
大きな違いは革新的な絶縁材
シリーズ6はそれまでの同社のトレードマークともいえる二重同軸構造を廃止し、DNAヘリックスという平行タイプの導体に切り替えたことが衝撃的であった(実際は5-2シリーズからDNA構造)。あれだけ完成された形を捨てて、全く別の構造に切り替えるのは容易なことではない。もちろんそれは理由のあることだが、以前にも述べたのでここでは触れない。ただ設計者デビッド・ザルツに言わせれば、DNAヘリックスは二重同軸の延長だという。それはともかく新しいシリーズ7も、基本的にはシリーズ6と同じDNAヘリックス構造を採用している。大きな違いは絶縁体にある。シリーズ6でワイヤーワールドが開発した独自の絶縁体はテフロンを含む複合体で、Composilexと呼ばれている。これが第2世代となり、Composilex2と名づけられた。
新素材「コンポジレックス2」が従来にないレベルの再現力を実現
材質の内容は企業秘密だが、絶縁性能を示す比誘電率はテフロン以上に優れているということで、当然伝搬速度も速いはずである。改良されてさらにその性能が向上したのは間違いない。絶縁体がなぜ重要かというのは、従来専ら伝搬速度の点から説明されてきたが、デビッドはそれだけではないという。つまりプラス/マイナスの導体間にできる電磁場こそが信号エネルギーの通り道なのであって、電子の流れ(実際は振動)がエネルギーを伝達するのではないという。この電磁場の形成に決定的な役割を果たすのが絶縁体であるわけだが、長くなるのでこれだけに留めておく。
実はDNAヘリックス構造も、こうした観点から採用されたものである。平行する多数の導体は、横一列に置かれて平行構造となるが、その全体を緩く捻じることによって螺旋状となる。このため折り曲げても内部構造に変化がなく、ケーブルのどの部分でも同一の状態を保つことが可能だ。つまり精度が最大限に保てるわけで、これがこの構造の利点の第一。
もうひとつ、多数の導体がプラス/マイナスで向き合うことによって先に述べたエネルギーの通り道が増え、単純な2芯構造などに比べてはるかに強力な情報が伝送できるということがある。この点に関する理論が、シリーズ7の発表と同時に明らかにされたことも興味深い。
いずれにしろ絶縁体の改良とそれに伴う信号エネルギーの増加および高精度化によって、明らかにその再現力は向上している。そのことを個々のジャンル別に見てゆくことにしたい。
すべてがワイド&ハイスピード
位相がきれいに揃い、色付けがない
ひとつだけ総論を言っておくと、どのジャンルでも音調は全く変わらない。ワイドレンジでハイスピード。位相がきれいに揃い、カラーレーションが生じない。さらにグレードの違いによってキャラクターが変わることがない。どのモデルでも基本的な音調は一緒で、ただ上級モデルになるほど情報量が増えていく。その変わり方が、どのジャンルでも同じだということがまた驚異的だ。よくここまで作り分け、そして管理できるものだと感心するほかないのである。
■デジタルケーブル
ハイスピードでピントが合う
最上位は全てが生に近づく
普通デジタルケーブルは同軸構造とするものだが、ワイヤーワールドではここでもDNAヘリックス構造を採用している。特性インピーダンスの点で容易に決断できるものではないが、測定による確かな自信があったのだと推測する。
スターライト7は銀クラッドOCCとOFCを導体に使用。S/Nがよく、ハイスピードでピントもよく合う。輪郭がくっきりして、普通に聴けばこれで特に不満も感じないように思う。しかしシルバー・スターライト7になると、余韻が明らかに増して、ピアノなどのステージ感が出てくる。バロックも音数が増え、潤いが豊かだ。さらにヴォーカルでは低域がひと回り下がる。導体はOCCと銀クラッド銅線である。
ゴールド・スターライト7はOCCとシルバーの単線で構成される。ニュアンスがいっそう細かく、低域のリアリティが高い。バロックは音楽的で音場が生々しく、オーケストラは柔軟で音数が多い。ディテールの情報量が違うという印象で、ヴォーカルは全体が奥へ引きながら実在感が明瞭である。
最上位のプラチナム・スターライトは、あえて7とは呼ばずにそのまま残している。低域の解像度、バロックやピアノのニュアンス、ステージのイメージなど、全てが生に近づき、情報量の違いが明らかである。