<山本敦のAV進化論 第130回>
「Netflix」VS「Amazon」、VODを海外で使い比べたら“オフライン再生”に差があった
■Netflixを視聴:海外でのストリーミング視聴の自由度が高い
それではオフライン再生と海外に到着したあとのストリーミング視聴の使用感を報告しよう。まずはNetflixから。
オフライン再生用にキャッシュしたコンテンツの中には視聴期限が定められている作品もあり、一定時間を過ぎた後はダウンロードを更新しなければ再度見られない場合がある。作品によっては更新ができる回数が限られているものもあるので注意したい。
今回は『ソードアート・オンライン』の全25エピソードなどを色々ピックアップして、自宅でiPadに詰め込んでから出かけた。画質はスタンダードに設定したが、ダウンロードのスピードがとても速くて快適だ。飛行機の中ではiPadの設定を機内モードにして視聴。
1つの作品を見終わるとダウンロードされているファイルを削除して、次のエピソードを視聴するための「いっき見」のアイコンが表示される。タップすると見終わった作品は自動的に消去される。もう一度内容を確認したいエピソードは消さないでおく選択もできる。ただし本作は48時間の視聴期限付きだった。
Netflixは3種類の契約形態によって1度にコンテンツをストリーミング、またはダウンロードできる端末の数が決まっている。最も安価な「ベーシックプラン」の場合は1ストリーミング/1ダウンロードに。以降「スタンダードプラン」が2台ずつ、「プレミアムプラン」が4台ずつとなる。複数の端末で視聴、またはたくさんの作品を持ち歩きたいならスタンダードよりも上のプランを選ぶ手もある。
結局20時間の長旅のあいだ、寝たり本を読んだりもしたので、SAOのタイトルは16本まで機内で消化した。あとはホテルで過ごす時間や帰国便の楽しみに取っておこうと思っていたところ、ポルトガルで滞在する宿に到着して17話目を再生しようとしたら画面にエラー通知が表れ、「この作品はいまお前が滞在している地域では見られない」的なメッセージが書かれているではないか。
楽しみにしていたストーリーの続きをどうしてくれるのか? そして帰りの飛行機はどうやって退屈を凌げばいいのか…。いま呆然としながら本稿を書いている。
取りあえず気を取り直して、ポルトガルではNetflixでどんなコンテンツが視聴できるのか確かめておこう。さすが、いま全世界190以上の国でサービスを提供しているNetflixだ。日本でつくった自身のアカウントがポルトガルでも使えるし、作品の内容はポルトガルで見られるものに切り替わるが、日本語の音声や字幕付きで楽しめるコンテンツも充実している。
中にはダウンロードできるものもあるので、これをキャッシュしなおせば帰りの便もエンタメ不足にはならなそうだ。ただ、また日本に帰ってから見られなくなることを想定して、欲張らずに道中で見るぶんだけにしておこう。
ポルトガルでは日本オリジナルの作品『テラスハウス ALOHA STATE』や『火花』を見ることができた。ダウンロードもできるので、これらの作品なら日本と海外をまたぎながら、全部のエピソードがシームレスに楽しめそうだ。細かくチェックはできなかったが、ポルトガルで見られる日本のアニメの中には、いま現在の時点では日本のNetflixで公開されていないものありそうだ。
当然ながら日本のNetflixで視聴できないコンテンツも数多く揃っている。中でもディズニーの映画作品をポルトガルで楽しめたのが大きな差だ。
『アナと雪の女王』(ポルトガル語のタイトルは「FROZEN - O Reino do Gelo」)は音声と字幕の選択肢が英語/ポルトガル語になってしまうが、一度視聴したことのある作品なのでストーリーは何となく追えるし楽しめた。
■Amazonプライム・ビデオを視聴:ダウンロードしておけば安心
続いてAmazon PVのオフライン再生と海外でのストリーミング視聴をレポートする。
Amazon PVはここのところオリジナル作品も含めて、国内で楽しめるカタログがますます充実してきたように感じる。iPadアプリは画面のインターフェースも使いやすく、Fire TV Stickなどテレビに組み合わせて楽しむストリーミング端末との親和性も高いように思う。オフライン再生に対応するコンテンツも豊富だ。ダウンロードも素速くできる。ただ、Netflixと比べてみると色々な使い勝手の違いが見えてきた。
日本でつくったユーザーアカウントはポルトガルでも有効なのだが、まず日本向けのカタログに並ぶコンテンツのストリーミング再生ができない。トップバナーに表示される「海外でも視聴可能」なコンテンツのメニューに入ると、いくつかのテレビドラマとキッズ向けのコンテンツが全部で13本ほど並んでいるだけ。内容も馴染みの薄い作品ばかりで、見てみたい気持ちが沸いてこない。
ダウンロードしておいたコンテンツは海外の宿泊先などに落ち着いてからでも、日本にいるのと同じ感覚で再生できた。ただしAmazon PVではオフライン再生の制限時間が見始めてから48時間になる。
国内にいる場合はデバイスをインターネットに再接続すれば48時間以上続けて見ることも可能だが、海外では再接続ができないので、視聴を始めるタイミングは慎重に、海外での全滞在期間の過ごし方を計算しながら決定したい。
Amazon PVは1アカウントで最大3台までのデバイスを使って同時に再生ができるので、家族で海外に出かけて各人の端末でリラックスタイムを過ごすこともできる。このあたりにも年会費3,900円(税込)の中にお得なサービスが色々詰まっていることが実感された。
それぞれのサービスを海外旅行の際に上手に使う方法をまとめておこう。Netflixはアニメーション作品など日本ローカル色の強い作品の視聴については“片道チケット”になる可能性を覚悟したい。往路の飛行機の中などで視聴できる範囲で、端末にダウンロードして見る使い方がおすすめだ。
Netflixオリジナルのコンテンツは海外でも見られる可能性が高いので、往路の飛行機で視聴するぶんをダウンロードしておいて、現地でストリーミング再生を楽しみ、復路のぶんはまた出発前にダウンロードできる。比較的ゆとりを持った使い方に対応していると言える。
Amazon PVは基本、デバイスの空きストレージが許す限り往路・現地滞在中・復路の間に見たいぶんだけ端末にダウンロードしてから出かけるのが良さそうだ。
以上、これから海外に出かける方のために、VODサービスを活用した上手なリラックスタイムの過ごし方の一例として参考になれば幸いだ。
(山本 敦)