【特別企画】ベーシックモデル「M-100」もチェック
有線でハイレゾにも対応!米V-MODAのワイヤレスヘッドホン「CROSSFADE II WIRELESS」をレビュー
■現代の音楽にマッチするサウンドとルックスを追求
「CROSSFADE M-100」は、V-MODAというブランドのベーシックを最も明確に体現しているヘッドホンだ。
V-MODAらしさとは、現代の多様なポップスやクラブミュージックなど全てに対応するサウンドクオリティとそれ引けを取らないクールなルックスを兼ね備えること。どちらかだけを満たすものは他にもあった。しかしどちらかだけでは、ブランド創設者のヴァル・コルトン氏自身が満足できなかった。それこそがV-MODAの始まりであり、他にはない個性的なルックスとDJモニタリングにも最適な高い分解能を兼ね備えた「M-100」に込められた想いだ。
まず目を奪われるのはヘキサゴン形状のイヤーカップ。円形はありきたり、五角形以下だとシャープすぎるし音響容積を確保しにくい、八角形以上だと遠目には円形との違いがわかりにくい。そう考えると六角形は理屈としても納得できる。
ハウジングの他も、「なるべく曲線を使わない」というモットーのもと、逆V字型のアームやヘッドバンドに至るまで、直線を活かしたシャープなデザインを採用。アルマイト加工が施されたメタルハウジングも相まって、スタイリッシュに仕上がっている。そうしてルックスで強いインパクトを与えつつ装着時のフィットには何の違和感もない、そこも六角形というセレクトのおかげだろう。
違和感がないどころか、計算し尽くしたというヘッドバンドのイヤーパッドによる装着感は、ヘッドホン全般のなかでもかなりよい部類。しっかり密着するので遮音性も高い。柔軟性と耐久性に富むSTEELFLEXヘッドバンドも含めて、各部の素材は米国軍用規格程度の品質検査をクリアした頑強さを満たすので、多少ラフに取り扱っても問題なさそうだ。10回以上フラットな状態に曲げても使用できるほどだという。
■強烈なルックスに誠実な音、そのギャップこそが真骨頂
そしてサウンド。尖ったデザインからはいわゆる「重低音」「クラブサウンド」が想像されがちかもしれない。しかしこちらのモデルはクラブミュージックにも対応できる低音再生能力も備えつつ、そこに偏ることはない。φ50mmドライバーには特許取得のデュアル・ダイヤフラム方式を採用しており、内外のリングに中高域と低域を分離し干渉を防ぐことで、豊かでキレのある低域と中高域の抜けの良さを両立している。ロックもクラブも含めて、コンテンポラリーなポップス全般をクリアに描き出すオールラウンダーだ。
例えば流行のシティポップス感覚をいち早く取り入れていたロックバンド、「ペトロールズ」。「M-100」は、ほどよく硬質な高域によって、ギターカッティングのチャキッとした心地よい音色やハイハットシンバルのキレによる細かなグルーヴを、そして、膨らみすぎないほどよい太さの低域によって、ベースによる大きなグルーヴを、バランスよく届けてくれる。
例えばジャズからヒップホップ、ソウルなどのハイブリッドミュージック、「ロバート・グラスパー・エクスペリメント」の「Human」。「M-100」は、迫力の低音はもちろん、低域から高域までのワイドさ、そして空間性のワイドさで、音の配置の緻密さやディレイなど空間系エフェクトの立体感といった作り込みの要素まできっちり届けてくれる。
どんなジャンル、演奏にせよ録音にせよ、ミュージシャンやエンジニアのこだわりを細部まで届けてくれる、誠実なサウンドだ。その誠実なサウンドがこの強烈なデザインに収められている。そのギャップがこのモデルの真骨頂。そしてそのギャップを埋めることがこのブランドの本懐。それを見事に体現するヘッドホンだ。
(特別企画協力:ローランド)