[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第195回】イヤモニ界の秘境「くみたてLab」に潜入取材!独自の“くみたてらしさ”の源を探る
まずはハイエンドモデル「KL-Lakh」の話からスタートした。
●「KL-Lakh」基本価格18万5000円
・ドライバー構成:
High /2 BA Driver
Mid /2 BA Driver
Low /2 BA Driver
・VESPERモジュール搭載
・排圧機構搭載
伊藤氏:「こちらは山崎が設計したモデルで、『Lakh』はシンガポール語だったかな?『たくさん』みたいなニュアンスの言葉です。ドライバー数もうちのモデルでは一番多いですが、技術的にも『盛りだくさん』なモデルとなっています」
ーー 文字面的にどう見ても気になるのは「VESPERモジュール」だが、これは何かの略語なのか?だとしたらどのような意味なのか?
伊藤氏:「そうです。このモジュールの機能を表すワードをつなげた略語です。ええと、VはVented……だったはず……あとはですね、なんだっけ……」
ーー あ、これ、「なんかカッコイイ名前を考えてから後付けで略語ってことにしたけどそれあんまり覚えてないパターン」だ……そういうことなのか?
伊藤氏:「低域用BAドライバーを高能率に駆動させるためには、ドライバーの筐体にバックベント、空気孔を設けるという手法が一般的です。ですがそのやり方だけだと確かに能率は高くなるんですが、振動板の振幅が大きくなることで歪率も大きくなってしまいます」
ーー ぶっちゃけF91が背負ってる可変速ビームライフル「ヴェスバー」の響きにそれっぽいワードを当てはめただけではないのか?
伊藤氏:「対応策としては『自分たちが作りたいモデルに合わせた特性のドライバーをドライバーメーカーに特注する』『ドライバーを多く搭載することで一基ごとの負荷を減らす』などがあります。ですが前者は我々規模のメーカーの生産数では難しい、後者も複数基搭載となればやはりコストに跳ね返ってきますし、ユーザーさんの耳のサイズによっては実装が難しくなる場合もあり得ます」
ーー そういえばさっき「ガンプラが好きだった」と話していた。やはりF91が元ネタなのでは…?
伊藤氏:「そこでLakhでは、既製品のBAドライバーに設けられているベントポートの上にかぶせるようにモジュールを装着。そのモジュール内部のフィルターによって、バックベントの具合を調整して振動板の振幅を適正な範囲にコントロールすることで歪率を下げる、ということをやったわけです。このVESPERモジュールは3Dプリンターで製造しています」
ーー なるほど。「作ってもらうのではなく自分で作る」という自作精神でコストをかけずに問題を解決したわけだ。必要に迫られてのこういった発想やアプローチが「くみたてらしさ」なのかもしれない。ところでその「VESPER」モジュールのネーミンg
伊藤氏:「もうひとつのポイントの!『背圧機構』はKL-REFから継承したものですので、そちらの話に移りましょう」
■「KL-REF」低域ボリューム誕生秘話
●「KL-REF」基本価格15万0000円
・ドライバー構成
High /2 BA Driver
Mid /1 BA Driver
Low /2 Dynamic Driver
・物理的ローパスフィルタ搭載
・排圧機構搭載
・低域調節ボリュームオプション
伊藤氏:「こちらも山崎の設計です。ハイブリッド構成で、低域はダイナミック型ドライバーを2基を使うことでBAだと難しい歪率の小ささを実現しています」
先ほどのKL-Lakh、このあとに登場するモデルについても、伊藤氏の口からは「中低域の歪率を下げる」というテーマが度々登場した。そこは伊藤氏、くみたてLabが特に重視するポイントのひとつのようだ。
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