12月中旬にアップデート予定
東芝4Kレグザの地デジ画質がさらに向上する! そのクオリティを大橋伸太郎が先行チェック
東芝は、同社製テレビ“4K REGZA”の「スカパー! ハイブリッド」対応アップデートを行うと先日発表した。だが、実はこのアップデートには画質が向上する内容も含まれているのだという。そのアップデートによって画質がどのように向上するのか、評論家の大橋伸太郎氏が一足先に体験した。
■4Kレグザの地デジ画質向上を一足先に体験
筆者の自宅視聴室に東芝レグザ55X910が帰ってきた。日本で初めて大画面有機ELテレビを商品化したのが東芝だ。発売されてまもない今年の春、UHD BD視聴のリファレンスとして約一カ月使用したX910の画質は、テレビ新時代を実感させてくれた。
それから半年。55X910との再見の日がきた。地上デジタル、BSデジタル、スカパープレミアム、HDMIを接続し55X910の電源をオンして真っ先に見たのが日本シリーズ。DeNAとソフトバンクのゲームが映し出された瞬間、おおっと思わず声を上げた。筆者の自宅から約20km東、カクテルライトに照らされ観客の歓声に揺れる同時刻の横浜球場がそこにあった。
そう感じさせたのが、きめこまやかで自然な解像感と色彩の純度。カクテルライトに照り映えるDeNA選手の青いヘルメットが眩しく自然な丸みが感じられ、手を伸ばせば触れられるように錯覚される。引いた画では、星空の下、外野スタンドへ向けて遠ざかる横浜球場の広大な奥行きを実感。「ライブ感覚」という言葉で表現し切れない実景そのものがそこにあった。
再会以来、日夜55X910と生活を共にし、他社有機ELモデルを含む他の全てのテレビとの違いに気付く。有機ELの特徴が端的に発揮される夜景より、NHKのニュース番組に映し出される何気ない日本各地の実景がこれまでのテレビと違う。現場で実景を目視しているように、現実感に溢れているのだ。4KでもHDRでもないソースなのに、なぜなのか。55X910は日々発見と驚きの連続だ。
このところ放送から遠ざかっていた筆者だが、テレビを見ることが俄然楽しくなった。「TeleVision」の本義である「遠くの出来事を目の前にする」にぐっと近づいた実感がさらに視聴へ駆り立て、画面に釘付けになる。レグザ開発陣に55X910をいつバージョンアップしたのか、何をどう変えたのかを訊いてみた。
「12月中旬に実施予定の、スカパー!ハイブリッド対応アップデートの際、実は画質も向上します。今回の取材用にセッティングしたX910には先行してそのファームウェアが組み込み済です。これまで取材等で見たX910とかなり印象が違うはずです。なお、X910以外でもスカパー!ハイブリッド対応アップデートを行う全モデルで画質向上も行われますが、その内容は機種ごとに若干異なっています」
アップデートのポイントの第一は、超解像の進化だ。チューナーやDLNAで地デジやBSハイビジョン放送を受信している時、HDMIでコンテンツモード「AUTO」で音声がAACの時、そしてHDMI入力でコンテンツモード「放送」の時。つまり2K放送(あるいは、それに準じるコンテンツ)が入力されたと判定したときの超解像処理を一歩進めたのだ。
東芝の場合、2K→4Kアップコンバート後に再超解像処理を行う。従来は地デジやBSの2Kを4Kテレビらしい精細感で表現しようとして、コンテンツによってはエンハンスが過剰になり、書き割り的な平板な映像になる場合があった。
今回これにメスを入れ、再超解像処理のアルゴリスムとエンハンスのゲイン値を改め、地デジやBSを見る場合も4Kらしい自然な精細感と奥行き感、立体感が生まれるよう設定をやり直した。4K有機ELで先行した東芝だから出来た、次の一手といえるだろう。
55X910が再びリファレンスになり、ほどなくして大相撲九州場所が始まった(余談だがこの取材時点でまさかこんなに世間を騒がす事件が発覚するとは思ってもみなかった)。その55X910の映し出す映像が凄い。
大相撲は地デジの最高画質コンテンツのひとつだが、一方で難関コンテンツでもある。土俵正面を捉えたメインのカメラの映像は力士、行司、呼び出し、砂被りの観客が一定の画角にひしめいて構成要素が多く色彩も豊富。テレビの画質判定の試金石なのだが、55X910の映像は4Kアップコンバート後の再超解像のエンハンスがきわめて適切でエッジ表現が自然なため、近距離での遠近の表出が実に自然だ。
アダプティブフレーム超解像の5フレーム参照型ノイズリダクションで生まれるノイズの少なさも、この立体感に役立っているはずだ。悠然と動き立ち会いで躍動する力士の肉体の質量、丸みが現れ、十両格、幕内格、三役格、立行司と取り組みにつれ格が上がると変化する行司の華麗な装束の錦糸の縫い込みや絹地の肌理が手で触れられるように目の前に。55X910がある限り、会場へ出掛けなくてもよいだろうといったら言い過ぎだろうか。
4K有機ELテレビといえど、多くの人にとってメインソースは地デジ放送だ。レグザ55X3で4Kに先行し、本機で大画面有機ELを国内初導入した東芝らしい、テレビへの深い洞察が感じられる映像だ。
ただしX910の今回のアップデート、実はより大きな、もう一つの画質再設定が含まれる。HDMI経由の4Kコンテンツ、つまりUHD BD入力を想定した際の、BT.2020色表現の再チューニングだ。これについては次回で報告したい。
■4Kレグザの地デジ画質向上を一足先に体験
筆者の自宅視聴室に東芝レグザ55X910が帰ってきた。日本で初めて大画面有機ELテレビを商品化したのが東芝だ。発売されてまもない今年の春、UHD BD視聴のリファレンスとして約一カ月使用したX910の画質は、テレビ新時代を実感させてくれた。
それから半年。55X910との再見の日がきた。地上デジタル、BSデジタル、スカパープレミアム、HDMIを接続し55X910の電源をオンして真っ先に見たのが日本シリーズ。DeNAとソフトバンクのゲームが映し出された瞬間、おおっと思わず声を上げた。筆者の自宅から約20km東、カクテルライトに照らされ観客の歓声に揺れる同時刻の横浜球場がそこにあった。
そう感じさせたのが、きめこまやかで自然な解像感と色彩の純度。カクテルライトに照り映えるDeNA選手の青いヘルメットが眩しく自然な丸みが感じられ、手を伸ばせば触れられるように錯覚される。引いた画では、星空の下、外野スタンドへ向けて遠ざかる横浜球場の広大な奥行きを実感。「ライブ感覚」という言葉で表現し切れない実景そのものがそこにあった。
再会以来、日夜55X910と生活を共にし、他社有機ELモデルを含む他の全てのテレビとの違いに気付く。有機ELの特徴が端的に発揮される夜景より、NHKのニュース番組に映し出される何気ない日本各地の実景がこれまでのテレビと違う。現場で実景を目視しているように、現実感に溢れているのだ。4KでもHDRでもないソースなのに、なぜなのか。55X910は日々発見と驚きの連続だ。
このところ放送から遠ざかっていた筆者だが、テレビを見ることが俄然楽しくなった。「TeleVision」の本義である「遠くの出来事を目の前にする」にぐっと近づいた実感がさらに視聴へ駆り立て、画面に釘付けになる。レグザ開発陣に55X910をいつバージョンアップしたのか、何をどう変えたのかを訊いてみた。
「12月中旬に実施予定の、スカパー!ハイブリッド対応アップデートの際、実は画質も向上します。今回の取材用にセッティングしたX910には先行してそのファームウェアが組み込み済です。これまで取材等で見たX910とかなり印象が違うはずです。なお、X910以外でもスカパー!ハイブリッド対応アップデートを行う全モデルで画質向上も行われますが、その内容は機種ごとに若干異なっています」
アップデートのポイントの第一は、超解像の進化だ。チューナーやDLNAで地デジやBSハイビジョン放送を受信している時、HDMIでコンテンツモード「AUTO」で音声がAACの時、そしてHDMI入力でコンテンツモード「放送」の時。つまり2K放送(あるいは、それに準じるコンテンツ)が入力されたと判定したときの超解像処理を一歩進めたのだ。
東芝の場合、2K→4Kアップコンバート後に再超解像処理を行う。従来は地デジやBSの2Kを4Kテレビらしい精細感で表現しようとして、コンテンツによってはエンハンスが過剰になり、書き割り的な平板な映像になる場合があった。
今回これにメスを入れ、再超解像処理のアルゴリスムとエンハンスのゲイン値を改め、地デジやBSを見る場合も4Kらしい自然な精細感と奥行き感、立体感が生まれるよう設定をやり直した。4K有機ELで先行した東芝だから出来た、次の一手といえるだろう。
55X910が再びリファレンスになり、ほどなくして大相撲九州場所が始まった(余談だがこの取材時点でまさかこんなに世間を騒がす事件が発覚するとは思ってもみなかった)。その55X910の映し出す映像が凄い。
大相撲は地デジの最高画質コンテンツのひとつだが、一方で難関コンテンツでもある。土俵正面を捉えたメインのカメラの映像は力士、行司、呼び出し、砂被りの観客が一定の画角にひしめいて構成要素が多く色彩も豊富。テレビの画質判定の試金石なのだが、55X910の映像は4Kアップコンバート後の再超解像のエンハンスがきわめて適切でエッジ表現が自然なため、近距離での遠近の表出が実に自然だ。
アダプティブフレーム超解像の5フレーム参照型ノイズリダクションで生まれるノイズの少なさも、この立体感に役立っているはずだ。悠然と動き立ち会いで躍動する力士の肉体の質量、丸みが現れ、十両格、幕内格、三役格、立行司と取り組みにつれ格が上がると変化する行司の華麗な装束の錦糸の縫い込みや絹地の肌理が手で触れられるように目の前に。55X910がある限り、会場へ出掛けなくてもよいだろうといったら言い過ぎだろうか。
4K有機ELテレビといえど、多くの人にとってメインソースは地デジ放送だ。レグザ55X3で4Kに先行し、本機で大画面有機ELを国内初導入した東芝らしい、テレビへの深い洞察が感じられる映像だ。
ただしX910の今回のアップデート、実はより大きな、もう一つの画質再設定が含まれる。HDMI経由の4Kコンテンツ、つまりUHD BD入力を想定した際の、BT.2020色表現の再チューニングだ。これについては次回で報告したい。